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一部 プリステラ王国編
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令和元年、新作をアルファポリスで始めてみました。
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「ファルナ・ウエイス侯爵令嬢。其方との婚約をここに解消することを宣言する」
公衆の面前、しかも国王主催の夜会という最も多くの貴族が集まる場で、第二王子であるロシャス・カデール・プリステラは声高に宣言した。
突然名を呼ばれたファルナは、手にしていたグラスを通りすがりのウェイターに渡すと、表情を変えることなくロシャス王子の方へ身体を向けた。
今年十八歳の成人を迎えたロシャス王子の傍には、コットンキャンディーのような桃色髮の、これ見よがしに胸元の開いたドレスを纏った女性がしがみつくようにへばりついていた。
「御意に御座います。国王陛下並びに王妃殿下、そして我が父への了承はすでにお済みのことと存じますので、わたくしはこれにてお暇させていただきとう存じます」
「「え?」」
シンと静まり返った広間に、ロシャス王子と、しがみつくローズ・ナライト男爵令嬢の間の抜けた声が響き渡る。
齢十三歳の少女とは思えぬ落ち着きと、綺麗な所作で行われたカーテシーに、周囲からの注目の視線が注がれる。
夜会に出席できるのは十五歳の社交界デビューを済ませた令嬢なのだが、ファルナは王子の婚約者ということで、成人を祝う夜会に招かれていた。
このような特別な招待客は保護者、ファルナの場合はウエイス侯爵がエスコートするべきなのだが、ファルナのそばにそれらしい人影はない。
なにかを言いたげにハクハクと口を動かすも言葉の出てこない王子に、再度礼をしファルナは身を翻し広間を後にした。
扉がパタンと音を立てて閉じられた一瞬後、広間に突如怒涛のように響く喧騒に、扉の横に控えていた兵士が、身体をびくんと跳ね上げた。
ファルナは、外装はかろうじて貴族用と言えそうな、だが中身は一見質素に見えて実は様々な仕掛けがあり、高性能な自分用の馬車に乗り込む。
臨時雇いの御者は王都のウエイス侯爵邸ではなく、ファルナが王都滞在のため借りている館に向かって馬車を進める。
今日の夜会は父親とは別々で登城したのだから馬車も別だ。
城のエントラスで待ち合わせと言われたものの、一時間待っても父親は現れなかった。
なんてことはない。会場に入れば愛妾とその娘を連れた姿が、宰相閣下の取り巻きの中にあったのだ。
待ち合わせする気などはなからなかったのだ。なら帰りも知らせる必要はない。
王子が高らかに宣言した時は姿が見えなかったので、一件が父親の知ることかどうかはファルナには判らなかった。だが現場を見ていなくともすぐに伝わるはず。
馬車が走り出し王城の外門をくぐった頃、ファルナは一つ大きな溜息をついた。
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「ファルナ・ウエイス侯爵令嬢。其方との婚約をここに解消することを宣言する」
公衆の面前、しかも国王主催の夜会という最も多くの貴族が集まる場で、第二王子であるロシャス・カデール・プリステラは声高に宣言した。
突然名を呼ばれたファルナは、手にしていたグラスを通りすがりのウェイターに渡すと、表情を変えることなくロシャス王子の方へ身体を向けた。
今年十八歳の成人を迎えたロシャス王子の傍には、コットンキャンディーのような桃色髮の、これ見よがしに胸元の開いたドレスを纏った女性がしがみつくようにへばりついていた。
「御意に御座います。国王陛下並びに王妃殿下、そして我が父への了承はすでにお済みのことと存じますので、わたくしはこれにてお暇させていただきとう存じます」
「「え?」」
シンと静まり返った広間に、ロシャス王子と、しがみつくローズ・ナライト男爵令嬢の間の抜けた声が響き渡る。
齢十三歳の少女とは思えぬ落ち着きと、綺麗な所作で行われたカーテシーに、周囲からの注目の視線が注がれる。
夜会に出席できるのは十五歳の社交界デビューを済ませた令嬢なのだが、ファルナは王子の婚約者ということで、成人を祝う夜会に招かれていた。
このような特別な招待客は保護者、ファルナの場合はウエイス侯爵がエスコートするべきなのだが、ファルナのそばにそれらしい人影はない。
なにかを言いたげにハクハクと口を動かすも言葉の出てこない王子に、再度礼をしファルナは身を翻し広間を後にした。
扉がパタンと音を立てて閉じられた一瞬後、広間に突如怒涛のように響く喧騒に、扉の横に控えていた兵士が、身体をびくんと跳ね上げた。
ファルナは、外装はかろうじて貴族用と言えそうな、だが中身は一見質素に見えて実は様々な仕掛けがあり、高性能な自分用の馬車に乗り込む。
臨時雇いの御者は王都のウエイス侯爵邸ではなく、ファルナが王都滞在のため借りている館に向かって馬車を進める。
今日の夜会は父親とは別々で登城したのだから馬車も別だ。
城のエントラスで待ち合わせと言われたものの、一時間待っても父親は現れなかった。
なんてことはない。会場に入れば愛妾とその娘を連れた姿が、宰相閣下の取り巻きの中にあったのだ。
待ち合わせする気などはなからなかったのだ。なら帰りも知らせる必要はない。
王子が高らかに宣言した時は姿が見えなかったので、一件が父親の知ることかどうかはファルナには判らなかった。だが現場を見ていなくともすぐに伝わるはず。
馬車が走り出し王城の外門をくぐった頃、ファルナは一つ大きな溜息をついた。
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