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一部 プリステラ王国編
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しおりを挟む「あら、予定よりも早いのではなくて」
ロンメイに案内され朝食室に挨拶に現れたジェメイの登場に、ファルナは全く驚きのない表情で告げた。
「姉に手紙をもらった時点で、シェステに寄港せず河を遡ってまいりました」
挨拶もそこそこに現状を報告するジェメイに、ちょうど良いとばかりににっこり微笑む。
「侯爵様から今日中に侯爵邸を出るように申し渡されていましたので、しばらく商会で厄介になる心積りでしたが、船があるならそちらにしようかしら」
今日が期限の三日目だ。とりあえず数日分の身の回りの荷物だけを持って、商会の客室で旅支度を整えるつもりだった。てっきりジェメイだけ先にくるかと思っていたのだが、船があるなら船室を宿代わりにすればいい。海と違って河に停泊するならさほど揺れもないだろうから、メイファの身体にも差し支えないだろう。
シャオメイがジェメイに朝食のトレーを運んできた。
「この時間ですもの、朝食はまだでしょう。食事をしながら今後について相談しましょう」
自身も朝食中だったファルナはプリステラ式の朝食、ベーコンにスクランブルエッグを絡めてフォークで口に運ぶ。ジェメイはシャオメイに礼を言ってナイフとフォークを手にした。
ジェメイは意外そうにファルナをみる。
「プリステラ式の朝食ですか?」
「これからは食べる機会もなくなるでしょう?」
ファルナの今の経済状態では、スーシェン帝国に帰ってからもプリステラの食材を手に入れることは可能だ。全く機会がなくなるわけではないけど、なんとなく今朝はこちらを選んだのだった。
「そうですか? なら支店は撤収出るので?」
ジェメイは焼きたてのロールパンにジャムを塗り口に運ぶ。秋の味覚である栗を使ったジャムだった。
食事中、そして食後も二人はプラムブル商会の今後について話し合った。
ウーステラの商会は今まで通り、デルーナ支店は半年から一年をかけて撤収することに。代わりにウエイス領の南に位置するカルヴァ伯爵領に新たな支店を作ることにした。
北のウエイス侯爵領から流れるノス川と、南のカルヴァ伯爵領から流れるラス側は国を越えウーステラ共和国に流れ込む。二つの川はモーラス郡で合流し、ウノラス河はとなってシェステ港へ続き海へと至る。
プリステラ王都はカルヴァ伯爵領からさらに南に位置するので、国の最北のウエイス侯爵領より、王都に近いカルヴァ伯爵領の方が地理的にも商売をする上では良いのだ。
支店をデルーナに作ったのはメイファたちのためであって、最大の理由が無くなったのならデルーナで商売をする必要がない。
空魔石の取引については規模を縮小して続けるつもりなので、プリステラ王国に窓口は必要だが、デルーナの方が輸送コストが嵩むのだ。
商会の今後については、支店長のミシェウとも話す必要がある。
ジェメイがミシェウとともに来ると思っていたが、ジェメイは荷下ろしの指示だけして店には寄らずにここへ直行したようだ。
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