銀狼公子の導き手

竜胆 琳

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一部 プリステラ王国編

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「出港!」

 舵をとるフォウシュンの号令で錨が巻き上げられると、船はゆっくりゆっくりノス川を下リ始めた。 
 エッダルに向かって川を下るため帆がなくても船は進む。今の時間、向かい風がて吹いており帆は帰って邪魔になる。
 魔道具船であるため帆以外の推進力はあるが、メイファの負担にならないようしばらくは船速を抑える予定だ。

 港で出国手続きをするときに一悶着があった。
 領主夫人と令嬢が船で国を出るなどと言う知らせは受けていないと、港の出入国管理官に止められたのだ。
 シャオメイはファルナから預かった二枚の離縁と貴族席除籍の書類を管理官に見せた。

「わたくしたち、平民ですの。ですから出国になんの手続きも必要ありませんわ」

 ファルナがにっこりそう言うと、信じられないとあんぐりと口を開け固まったままの管理官の手から書類を取り返した。
 プリステラ王国では貴族が入出国する場合、人と荷の重さにより税がかかるが、平民の場合は入国のときにしかかからない。
 ファルナたちは馬車や力車に生活用品を積み込んでいる。貴族のままであったらかなりの税がかかったのだ。
 しかし貴族席を除籍されているので平民として国を出るので無税である。
 

 ファルナはゆっくりと遠ざかっていくルーナの街並みを眺める。
 出国手続きで手間取り予定より遅れてしまった。船長のフォウシュンが言うにはエッダル港に着く頃には日が沈んでいるだろうとのことだ。
 メイファの体調優先なので大丈夫そうなら速度をあげる予定だ。

「お嬢様、風が冷たいのでお身体に差し障ります」

 シャオメイがショールをファルナの肩にかけた。
 季節は秋、まだ冬の寒さは訪れないが、水気を含んだ川風は少し冷たい。 

「スーシェンはもう冬なのよね」
「暦の上ではそうですね。こちらよりはもう少し寒いと思います」

 三日月大陸を二分する天龍ティェンロン山脈の北と南では季節が若干異なる。
 山脈より北にあるスーシェン帝国とは使っている暦も違うのだが、向こうでは季節は冬に入りこれから寒くなる。
 スーシェンでは一年が16ヶ月、春夏秋冬それぞれ4ヶ月で新年は春から始まる。
 ウーステラやプリステラなど、山脈から北は一年は12ヶ月で冬の中頃に新年を迎える。
 一月の長さが違うこともあり、年明けはほぼ同じ日になる。

「スーシェン帝国はもっと寒くて雪も降ってるんでしょう?」
「雪の季節はもう少し先ですね。特にスーミンは帝都に比べ雪は遅いのでまだ先のことですよ」
「なんだ、雪だるまを作れるかと思ったのに」

 プリステラ王国の北にあるデルーナは一年を通して暖かく、冬でも雪は滅多に降らず、ましてや積もることなどない。
 シャオメイは珍しく子供らしい主人の言葉に微笑むのだった。
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