26 / 29
二部
6
しおりを挟む
ファルナは、手巾を片手で押さえたまま身体を起こした。起き上がったことで広げられた手巾がペロンと半分に折れた。
「あ、もっと楽になったわ」
遮魔布が二重になったことでさらに眩しさが軽減されたようだ。
「ロンメイ、あの寝衣は持ってきているかしら」
「確か……馬車の方の衣装箱に」
「持ってきてもらえる」
「承知しました」
メイファはロンメイに遮魔布の寝衣を取りに行かせた。
多くの荷物はミシェウが後から送ってくれることになっているので、持ってきているのは旅に必要な分だけだ。
さらに船の中では数着を着まわしているため、多くは馬車に積んだままとなっている。
「シャオメイ、ジェメイに荷に遮魔布がないか聞いてもらえる? あれば天蓋のようにベッド周りを囲めば楽になると思うから」
「はい、行ってきます」
シャオメイが部屋を出て行った後、メイファはベッドに腰をおろし、ファルナの顔にかけた手巾を目隠しのようにして後頭部で結ぶ。
「ああ、お母様。これなら眩しくないです」
「でもこのままじゃ、外に出ることもできないわ」
「なんとなくものの形や人の形はわかります。お母様がここにいらっしゃることもちゃんと感じます」
そう言いながらファルナはメイファに抱きつく。
長くこのような触れ合いもなかった二人はしばらくお互いを抱きしめあった。
「あなたには子供らしい時間を送らせてあげられなくて申し訳ないと思っています。義兄様はどうしてわたくしにこのような制約をおかけになったのかしら」
ファルナの髪を撫でながら呟くように長年の疑問を言葉にした。
「叔父様にお会いしたことはありませんけど、できればもう少し長生きしていただきたかったです」
現華家当主は、メイファとファルナに対し良い感情を持っていない。
メイファからすれば恨みを買う覚えはなく、ましてや顔を合わせたこともほとんどない甥だ。
父はメイファの母とメイファを華家一族とあまり関わらせようとしなかった。
そこに何か理由があったのかもしれないが、メイファの両親はどちらもすでに亡く、理由を知ることは難しく思う。
船室の扉がノックされ、入室許可を出すとジェメイが黒い巻き布を持ってやってきた。
「シャオメイから聞いたのですが、遮魔布は無くて断魔布ならちょうど一巻きありました」
ジェメイが持ってきた布は断魔布で、断魔布より魔力を通さない布だった。
魔力がこもった魔石を包み、魔力が漏れないようにする為の布だ。
「あまり大きくないから頭側に吊り下げるようにすれば、眠りやすいのではないですか?」
部屋にロープを張って頭元だけおおうテントのように断魔布を吊り下げた。
「これで眠ることはできるけど、船室でこもりっぱなしになってしまうのかしら」
悩んでいるとロンメイが寝衣を持って戻ってきた。
「あ、もっと楽になったわ」
遮魔布が二重になったことでさらに眩しさが軽減されたようだ。
「ロンメイ、あの寝衣は持ってきているかしら」
「確か……馬車の方の衣装箱に」
「持ってきてもらえる」
「承知しました」
メイファはロンメイに遮魔布の寝衣を取りに行かせた。
多くの荷物はミシェウが後から送ってくれることになっているので、持ってきているのは旅に必要な分だけだ。
さらに船の中では数着を着まわしているため、多くは馬車に積んだままとなっている。
「シャオメイ、ジェメイに荷に遮魔布がないか聞いてもらえる? あれば天蓋のようにベッド周りを囲めば楽になると思うから」
「はい、行ってきます」
シャオメイが部屋を出て行った後、メイファはベッドに腰をおろし、ファルナの顔にかけた手巾を目隠しのようにして後頭部で結ぶ。
「ああ、お母様。これなら眩しくないです」
「でもこのままじゃ、外に出ることもできないわ」
「なんとなくものの形や人の形はわかります。お母様がここにいらっしゃることもちゃんと感じます」
そう言いながらファルナはメイファに抱きつく。
長くこのような触れ合いもなかった二人はしばらくお互いを抱きしめあった。
「あなたには子供らしい時間を送らせてあげられなくて申し訳ないと思っています。義兄様はどうしてわたくしにこのような制約をおかけになったのかしら」
ファルナの髪を撫でながら呟くように長年の疑問を言葉にした。
「叔父様にお会いしたことはありませんけど、できればもう少し長生きしていただきたかったです」
現華家当主は、メイファとファルナに対し良い感情を持っていない。
メイファからすれば恨みを買う覚えはなく、ましてや顔を合わせたこともほとんどない甥だ。
父はメイファの母とメイファを華家一族とあまり関わらせようとしなかった。
そこに何か理由があったのかもしれないが、メイファの両親はどちらもすでに亡く、理由を知ることは難しく思う。
船室の扉がノックされ、入室許可を出すとジェメイが黒い巻き布を持ってやってきた。
「シャオメイから聞いたのですが、遮魔布は無くて断魔布ならちょうど一巻きありました」
ジェメイが持ってきた布は断魔布で、断魔布より魔力を通さない布だった。
魔力がこもった魔石を包み、魔力が漏れないようにする為の布だ。
「あまり大きくないから頭側に吊り下げるようにすれば、眠りやすいのではないですか?」
部屋にロープを張って頭元だけおおうテントのように断魔布を吊り下げた。
「これで眠ることはできるけど、船室でこもりっぱなしになってしまうのかしら」
悩んでいるとロンメイが寝衣を持って戻ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる