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二部
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しおりを挟むなんだか周りが慌ただしく動き出した。
何事かとシャオメイが船長のフォウシュンに確認へ行った。
「スーシェン帝国の軍船がこちらにまっすぐ向かってきているそうです」
「軍船?」
そう行っているところにジェメイがやってきた。
「メイファ様、お嬢、ここでしたか」
「ジェメイ、何事ですか?」
「わかりません、軍船がこちらに停船指示を出してきたそうで」
そこに見張りの船員の報告の声が聞こえた。
「確認しました。明州州軍旗です!」
「明州軍の……ああ」
ジェメイが何かに納得したように緊張をといた。
「ジェメイ?」
ロンメイが弟を訝しげに見ると、ジェメイも姉をみた。
「はあ、あれ、ガオミン様ですよ、多分」
「……ああ」
姉弟は共にため息を付いて近く軍船の方を見るのだった。
「母さん、よくわからないんだけど?」
シャオメイが二人だけでわかり合っている母親と叔父を見る。
メイファも二人を見て小首をかしげる。
「俺が、お嬢のために医者を港に待機させるよう手紙を飛ばしたせいです。きっとガオミン様はメイファ様の具合が悪くなったとでも思って飛び出してきたんでしょう」
「ガオミン様とは明家の?」
名前から明家の人間で、自分たち親子を援助してくれた人物だとわかるが、ファルナにはなぜ軍船と関係があるのかわからなかった。
ジェメイが言うにはガオミン様は明家当主の兄、元帝国禁軍将軍で、現在は州軍将軍の地位にあるという。
「ガオミン様がこちらに?」
「お母様はご存知なのですか」
「ええ、子供の頃、チァンミン様とよく遊んでいただきました」
チァンミンは現明家当主でガオミンの弟である。通常兄のガオミンが当主を継ぐはずだが、当時のガオミンは禁軍将軍の役職にあったため、弟のチァンミンに当主の座を譲ったとされている。
だが先王が崩御され、現皇帝が即位された後、職を辞し民州にもでってきたそうだ。
「でもどうしてそんな方が?」
ファルナの疑問にジェメイが耳打ちする。
「先代の明家と華家当主との間で、メイファ様とガオミン様の結婚話があったんですよ。メイファ様の卒業を待ってガオミン様に嫁入り予定でした」
それが皇帝の指示で卒業を待たず、メイファはプリステラ王国に嫁ぐことになってしまった。
「数年後、ガオミン様もご結婚なされましたが、まあ色々あって現在は独り身です」
ジェメイは愚直で脳筋な将軍が、初恋の女性を忘れられず現在独り身を貫いているなどと、その女性の娘にはいい辛い。
メイファ様は三十五歳、ガオミン様は四十一歳で再婚は十分可能だな、なんて考えるジェメイだった。
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