6 / 24
第1章
シャワー室にて
しおりを挟む
狭い関係者通路を抜けて、今は誰もいないシャワー室に入る。積み重なっているバスタオルを1枚抜き取って、真ん中のシャワーブースのカーテンを開けた。渚は昔から表彰台の真ん中ばかり追っていたせいか、並んでいると何となく真ん中を選んでしまう。もう競うことなどないのに、長年の習慣というものは不思議だ。
水着を脱ぎ捨てて、ザーッと、勢いよく温水が出るシャワーを頭から思い切り被る。手先からピリピリと冷えていた体が温まり、大きく息を吐いた。備え付けの石鹸などもあるが、どうせこの後水に浸かる予定だ。体だけ温めることにし、5分ほどでシャワーを止めた。バスタオルを肩から被る。家の洗剤とは違う匂いが体を包む。少し毛羽だった生地は強く擦ると痛い。上半身を乱雑に拭いたところで、着替えを持ち込むのを忘れていたことを思い出した。しょうがなく、バスタオルで下半身を巻きシャワーブースを出た。
タイミングとは、得てして重なり合うもので。渚がシャワーブースを出た瞬間、シャワー室の扉が開かれた。入ってきた人物は誰かがいると思っていなかったのだろう、シャワーブースの方を見て、大きく体をビクつかせた。
「――っと!びっくりした……」
大型犬っぽいな、というのがそいつへの第一印象だった。
恐らく俺より数センチ高いであろう身長。年齢は同じくらいだろうか。フワフワとした髪質の黒髪に、驚いた表情で大きく開いた目はくっきりとした二重で茶色っぽい。深い彫りに整えられた眉毛は男らしく、がっしりとした体つきに合っていた。
「悪い、始業時間前だから誰もいないと思ってた。えっと、瀬名だろ?」
「確かに俺は瀬名だけど……」
まずい、コイツに覚えがない。割と人の顔は覚えれるタイプなのだが。
「……はは!そんな顔すんなよ、俺が一方的に知ってるだけだから」
どうやら俺の気まずい気持ちがあまりにも顔に出ていたようで、向こうからフォローが入った。有難いことだが、その気安さに眉を顰めた。しかし、そんな俺にお構いなしにそいつは話を続ける。
「俺、中条 俊希。入社時期、一緒なんだよ。つまり同期」
違和感なく差し出された手を、無視するわけにはいかなかった。ぎゅ、と力強く握られた手は思っていたより冷たかった。いや、俺が温もったからなのか。
「瀬名 渚。お前に覚えがない、ごめん。えーっと、営業?」
「いや、社会教育。まだ入社してからお前のとこと関わったことないんだ」
「そうなのか。またお世話になると思う、よろしく」
「こちらこそ。ちょうど挨拶に行こうと思ってたんだ」
「挨拶?」
「次の企画、俺はお前のとことだからさ」
にっこりと伝えられた言葉に、顔が引き攣った。
水着を脱ぎ捨てて、ザーッと、勢いよく温水が出るシャワーを頭から思い切り被る。手先からピリピリと冷えていた体が温まり、大きく息を吐いた。備え付けの石鹸などもあるが、どうせこの後水に浸かる予定だ。体だけ温めることにし、5分ほどでシャワーを止めた。バスタオルを肩から被る。家の洗剤とは違う匂いが体を包む。少し毛羽だった生地は強く擦ると痛い。上半身を乱雑に拭いたところで、着替えを持ち込むのを忘れていたことを思い出した。しょうがなく、バスタオルで下半身を巻きシャワーブースを出た。
タイミングとは、得てして重なり合うもので。渚がシャワーブースを出た瞬間、シャワー室の扉が開かれた。入ってきた人物は誰かがいると思っていなかったのだろう、シャワーブースの方を見て、大きく体をビクつかせた。
「――っと!びっくりした……」
大型犬っぽいな、というのがそいつへの第一印象だった。
恐らく俺より数センチ高いであろう身長。年齢は同じくらいだろうか。フワフワとした髪質の黒髪に、驚いた表情で大きく開いた目はくっきりとした二重で茶色っぽい。深い彫りに整えられた眉毛は男らしく、がっしりとした体つきに合っていた。
「悪い、始業時間前だから誰もいないと思ってた。えっと、瀬名だろ?」
「確かに俺は瀬名だけど……」
まずい、コイツに覚えがない。割と人の顔は覚えれるタイプなのだが。
「……はは!そんな顔すんなよ、俺が一方的に知ってるだけだから」
どうやら俺の気まずい気持ちがあまりにも顔に出ていたようで、向こうからフォローが入った。有難いことだが、その気安さに眉を顰めた。しかし、そんな俺にお構いなしにそいつは話を続ける。
「俺、中条 俊希。入社時期、一緒なんだよ。つまり同期」
違和感なく差し出された手を、無視するわけにはいかなかった。ぎゅ、と力強く握られた手は思っていたより冷たかった。いや、俺が温もったからなのか。
「瀬名 渚。お前に覚えがない、ごめん。えーっと、営業?」
「いや、社会教育。まだ入社してからお前のとこと関わったことないんだ」
「そうなのか。またお世話になると思う、よろしく」
「こちらこそ。ちょうど挨拶に行こうと思ってたんだ」
「挨拶?」
「次の企画、俺はお前のとことだからさ」
にっこりと伝えられた言葉に、顔が引き攣った。
2
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる