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第2章
台風の夜(中条視点)
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ザアザアと強い雨音が聞こえる。飯を食わせてもらい、シャワーを借りて、布団まで引いて貰った。明日のために一応湯船は無しでいいか、と聞かれて首がもげるほど頷いた。一人暮らしを始めてから湯船を溜めることすら滅多にしないのだから、全く問題ない。だがこれを聞いてくるということは、瀬名はきちんと湯船に浸かっているということなのだろう。冷蔵庫から出てきた作り置きや、予約炊飯していた米、日常的に湯船に浸かること。これらを総合的に見ても、瀬名は丁寧に生きている。瀬名以外の生活している気配が感じられないこの広い家で、丁寧に生きているのだ。
風呂の後、ドライヤーが嫌いでタオルで適当に乾かしてた俺を捕まえ、柔らかく拭いてくれた。小さく笑い声を小さく漏らしながら『犬拾った時みたいだ』と意外に楽しそうに瀬名は世話をしてくれたのだった。
瀬名は今、自分のベッドで仰向けに目を瞑っている。客室を貸してくれると言ってくれたが、断固拒否したのは俺だ。せっかくのお泊まり会で何故そんなことをするのか。ヤダヤダとごねた結果、瀬名が折れてくれたのだった。
瀬名の部屋は二階にあって、一階よりも空が近くなって雷の光がよく通った。カーテンの隙間から大粒の雨が窓に当たって、薄い水の膜が流れ落ちてる。それが時折光る雷で、つるりとした渚の頬に写ってまるで水面のようだった。ゆらゆらと、長い睫毛の影が揺れている。一階よりも空が近くなって雷の光がよく通った。
もう見慣れるほど見つめていたはずの横顔だ。不思議と見飽きたとは思わない。
「――おい、見過ぎ。穴空くわ」
パチリ、と瞑っていた瞼を開けて、色素の薄い目を俺に向けた。ゆらゆらした光が瀬名の開いた目にも反射して、潤んでいるように見えた。
「綺麗だなって」
「は?……寝ぼけてんのか?」
「まず寝てないっての。なんか目冴えてるんだよな」
「枕変わると寝れねえの?今から家帰ってもいいぞ」
「こら、拾った犬は最後まで世話しないと駄目だからな」
「自認犬やめろ……。なんか話しろよ、付き合ってやる」
瀬名はくるり、と体をこちら向きにして、促すかのように口を噤んだ。さっきまで閉じていた瞳が真っ直ぐ俺に向けられると、何だかそわそわする。うーん、と少しだけ考えて、体を起こす。瀬名のベッドに凭れかかって、頭を後ろに倒すと丁度瀬名の腹に当たった。薄い布団だから、じんわりと温もりを感じる。瀬名は『チクチクする』と言いながら、俺の頭を乗せたまま体をゴソゴソと動かして位置を調整している。何となく許せるポジションがあったようで、頭を軽く叩かれて先を促されたのだった。
「――俺ね、水族館じゃないところで就職する予定だったんだよね」
風呂の後、ドライヤーが嫌いでタオルで適当に乾かしてた俺を捕まえ、柔らかく拭いてくれた。小さく笑い声を小さく漏らしながら『犬拾った時みたいだ』と意外に楽しそうに瀬名は世話をしてくれたのだった。
瀬名は今、自分のベッドで仰向けに目を瞑っている。客室を貸してくれると言ってくれたが、断固拒否したのは俺だ。せっかくのお泊まり会で何故そんなことをするのか。ヤダヤダとごねた結果、瀬名が折れてくれたのだった。
瀬名の部屋は二階にあって、一階よりも空が近くなって雷の光がよく通った。カーテンの隙間から大粒の雨が窓に当たって、薄い水の膜が流れ落ちてる。それが時折光る雷で、つるりとした渚の頬に写ってまるで水面のようだった。ゆらゆらと、長い睫毛の影が揺れている。一階よりも空が近くなって雷の光がよく通った。
もう見慣れるほど見つめていたはずの横顔だ。不思議と見飽きたとは思わない。
「――おい、見過ぎ。穴空くわ」
パチリ、と瞑っていた瞼を開けて、色素の薄い目を俺に向けた。ゆらゆらした光が瀬名の開いた目にも反射して、潤んでいるように見えた。
「綺麗だなって」
「は?……寝ぼけてんのか?」
「まず寝てないっての。なんか目冴えてるんだよな」
「枕変わると寝れねえの?今から家帰ってもいいぞ」
「こら、拾った犬は最後まで世話しないと駄目だからな」
「自認犬やめろ……。なんか話しろよ、付き合ってやる」
瀬名はくるり、と体をこちら向きにして、促すかのように口を噤んだ。さっきまで閉じていた瞳が真っ直ぐ俺に向けられると、何だかそわそわする。うーん、と少しだけ考えて、体を起こす。瀬名のベッドに凭れかかって、頭を後ろに倒すと丁度瀬名の腹に当たった。薄い布団だから、じんわりと温もりを感じる。瀬名は『チクチクする』と言いながら、俺の頭を乗せたまま体をゴソゴソと動かして位置を調整している。何となく許せるポジションがあったようで、頭を軽く叩かれて先を促されたのだった。
「――俺ね、水族館じゃないところで就職する予定だったんだよね」
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