水の庭にて

遠海

文字の大きさ
24 / 24
第2章

海の中のような(中条視点)

しおりを挟む
 その瞬間、ドン、と大きな音と共に強く光が入ってきた。『わっ』と俺の話を比較的黙って聞いていた瀬名が小さく声を上げた。顔が、見たいな。

「……なあ、そっち行っていい?」
「は?そっちって……」
「お邪魔しまーす」

 無理やり瀬名のベッドに乗り上げる。横向きだった瀬名を転がして、スペースを作り、体を滑り込ませた。思ったより抵抗がない。多分だけど、体に触れた瀬名は随分暖かいから、もうかなり眠そうだった。
「俺は、お前をずっと見てたよ」

 暗闇の中。静かな雨の音。遠くで聞こえる雷鳴は、水の中の泡のよう。まるで、二人きりで海の中に潜っているみたいだと、錯覚を起こす。
「知り合いの漁師に貰ったって珍しいクラゲを持ってって担当に感涙されて困ってたのも、先輩たちの同定の押し問答に巻き込まれてたのも、イルカに遊ばれてたのも、館長と散歩してるのとかも」
「……変なとこ、ばっか、見てんじゃねえよ……」
「はは」
 ああ、もう随分声が小さい。呂律も怪しい。半分閉じては開く目で、抗えない眠気と戦っているのがわかる。怒られるかな、なんて思いながら頭を抱き寄せれば、意外にも抵抗はなかった。瀬名家のシャンプーの匂い。同じのを使ったはずなのに、どうして甘く感じるのか。
「俺は、小さな海で自由なお前に憧れたんだ」

 そう言った俺の声を瀬名が聞いていたのか分からない。すう、と寝息が聞こえる。ぽかぽかとじんわり感じる瀬名の体温が心地良い。さっきまで冴えていたのが嘘のように、瞼が重くなってきた。俺の話を、少しでも覚えててくれたらいい。覚えてなくても、また話をする口実になる。明日はきっといい天気だ。腕の中の人魚に、一番に『おはよう』を言いたい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

処理中です...