真夜中の独り言

papiko

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明日はどっちだ?

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 Kちゃんは、真夜中に目を覚まして急に何かを書かなくてはと思ったらしい。で?何を書きたいのかたずねたら、「自分史?」と首を傾げる。どうやら、まだ方向性は決まってない様子である。
 とりあえず、今夜のエピソードでも書いたら?ということを提案してみた。するとKちゃんは、「ああ、ゴキブリの話か」とため息をつく。
 そりゃ、いきなり目が覚めて立ち上がったら、パジャマからゴキブリがポトリとか…あんまり、気持ちいい話ではないし、無性にマロニーが食べたくなって、台所をあさったが見つからず、仕方なくバターロールを二個食ったことなど、Kちゃんにとっては忘れたい事実であろう。ちょっと気分転換とばかりに、タバコ部屋で一服するKちゃん。
 「とりあえず、思いついたことを書く」
ということらしい。

 Kちゃんは13年前にうつ病と診断されて、現在も闘病中。とはいえ、回復傾向にあり、減薬をしつつも、三歩進んで二歩下がるというのが現状だ。だが、本人が自覚的におかしいと感じていたのは高校受験が終わってからだった。最初に起こったのは、頻尿という症状。下痢もしょっちゅう引き起こしていたし、日曜日には過眠症状も見え隠れしていた。ただ、何がおかしいのかを考えるよりも、日々の生活をこなすことで手いっぱいだったし、単に疲れているんだと言う思い込みもあった。
「今考えたら、その前から徐々に壊れ始めてたなぁ」
 ああ、確かにね。
「あれだな。小学校五年生の時に起きた、いじめと学級崩壊。ばあちゃんが死んだのも、あのころだから…人生的には結構ハードな時期だったのかも」
 うん。刺されたことに気がつかないで、ナイフが刺さったまま、ふらふら何事もなかったかのように歩いてるような感じだったかもね。それまでは、結構、先生にひいきされてるタイプだったでしょ。
「優等生ってわけじゃなかったけど、どの先生も優しかったかなぁ。基本的に野ざるだったから、鬼ごっこやらかしたら、四階建ての学校中を走りまくってたし、昼休みはサッカーとか野球とかドッジボールとか…とにかく走り回ってたよ」
 まあ、授業中に騒いだりはしなかったし、成績も悪くはなかったけど、成績表にはいつも、もっと積極的に発言しましょうとか、ハンカチとティシュの忘れ物に気を付けましょうとか書かれてたわね。
「野ざるにハンカチとか…むずいw。服装も、ほぼほぼジャージだったもんなぁ」
 よく言えば、活発な子供だけど、やっぱりKちゃんは野ざるよ。ものごころついたときから、木登り得意だったし、ひとんちの塀の上を走ったり、崖に穴開けてクライミングしてみたり…。
「まあ、せいぜい膝すりむくとか、カヤでいつの間にか傷だらけってことは日常茶飯事だったし、骨折とかの大けがもしなかったからなぁ。高いところは大好き。今は、木登りとか無理だけど…」
 そうね。いろいろ育っちゃったもんね。
「薬の副作用なのか、家系的遺伝なのか…そこらへん微妙w」
 ピーク時って何キロだったけ?
「ノーコメント!」
 そこは逃げるのね。
「当然!今は、YouTube見ながら運動してるから、きっと平均体重に戻るのだ!とはいえ、別に太ったからダイエットしようと思ったわけじゃなくて、健康診断で中性脂肪がひっかかっちゃたからなんだけどね。糖尿怖いし、多臓器不全とか(´・д・`)ヤダ」
 失って気づく健康体ってやつよね。
「そうそう。まだ、食べたことない美味しいものがこの世には存在してるんだから。諦めない。絶対w」
 さすが、カレー13杯食べて腹壊した野ざるさん。言うねぇ。
「ああ、そんなこともあったっけ?そういや、いつも痩せの大食いとかいわれてたな。最近、かなり食はほそくなったけどさ」
 そりゃ、成長期のお子様が100%全力で走り回る毎日と、一日の半分くらいは寝てて、基礎代謝は低いし、年齢的にお肉がつきやすい世代になっちゃったんだから、同じ量食べたら死亡フラグ立てるようなもんでしょ。
「脂肪だけに死亡…サムッ。やばい、オヤジ化進行してるかも。まあ、いいけど」
 いいんかいっ!
「いいんだよ。今は。ようやく自由を取り戻したんだから。いやぁ、自分が好きっていいねぇ。最高w」
 はいはい、まだまだ自己肯定感には伸びしろありそうだけど。
「それはそれでいいんだよ。自己否定しなくなっただけでも十分な成長だし、まだまだ成長できると思ったらワクワクするだろ?」
 大人しく老化する気はないのね。
「当たりマエダのクラッカー!」
 それ、生まれる前のギャグよ。精神年齢の老化は止められないのかしら?
「…っぐ。い、いいじゃん。べ、別に寅さんとお友達になれたって…」
 りゅうりゅうの精神年齢鑑定ね。はじめて、家族全員で遊んだら、Kちゃんが一番年寄りだったわね。
「今は、年相応だから、問題な~しw」
 サザエさん占いは、タマだったわね。
「…それ、言う?まあ、妹子よりましかも。判定がワカメちゃんだったのに、父親は誰なのか、フネさんだけが知っているみたいなこと書かれてて爆笑したけど…あいつ、うちで一番勉強できる奴だからな。みんな笑いながら、どっか目が笑ってなかった気がするw」
 ま、おかんに不倫する勇気があったら、長子が生まれた時点で離婚してたんじゃない。
「まぁねぇ。おやじが想定外で新興宗教にはまったからなぁ。おかげで、宗教とは何ぞやってことで、色々調べたりした時期もあったけど。結局、信仰の自由が認められてるはずなのに、家族丸ごと入信させられて散々振り回されたし、現在進行形で振り回されてもいるが…」
 Kちゃんは、三行半突きつけたから、もうかかわってないでしょ。
「うん。酔った勢いとはいえ、闘病中に<俺の言うことがわからんやつは、死ね!>って言われたからな。いい機会だから、お手紙書きましたよ。今後一切、宗教的なことには加担せん。脱退じゃってね。まあ、名義だけはおやじの面子にかけてはずしてくれなかったから、今も形だけはその新興宗教団体に属してることになってるけどね」
 で、現在進行形でスピリチュアルにはまったと。
「うん、YouTubeのタロット占いが好き。もともと、占い好きだったし、タロットにも興味あったし、天野喜孝さんデザインのカードも持ってるよ」
 Kちゃんにとってタロットとか占いとかって何?
「自己的内政干渉。昔の占いって結構悪い面を強調してて、好きじゃなかったけど、最近は良い面を強調してるとこが好きかな。こうしないとダメ的な強制力はないし、自己選択の自由がある感じがかなり好きかも」
 ま、ある意味、占ってる人が責任は持ちませんよって言ってるともとれるし、サプリメントの個人的な感想です、効果・効能はお約束できません的な一面はあると思うけど。
「うん、だから、それでいいやって思う。自分でいいとこどりしちゃえば、それで満足だから。自分が満足できればそれで充分。ただ、サプリメントはえげつない感じで、科学的に証明されました的な誇大広告ばんばん流してるし、特にYouTubeだとCMとサイトは別物だって言い訳されたしね」
 某ダイエットサプリね。500円で始めて、4カ月以上利用しないと解約できないはずだったわね。
「無理矢理、3カ月で解約しました!」
 オペレーターちゃんに罪はないけど、ある意味トラウマになりそうな手段だったわね。アレは。
「黙秘します。ま、おかげで一つの交渉術を身に着けた感はあるし、いい経験だったよ」
 そうね。転職だらけの職歴が役に立ったことは確かね。
「<モノは言いよう>さ。おかげさまで、伝え方とか言葉とかについてさらに勉強したくなったし、他人の言動観察も楽しくなってる」
 楽しみが増えることはいいことね。あら、もう朝活の時間じゃないの。ほら、動いて動いて。
「へえへえ…じゃ、一服してから動きま~す」
 はい、いってらっしゃいw 
 
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