追放殿下は隣国で、セカンドライフを決意した。 〜そしてモフっ子と二人、『ずっとやりたかった10の事』を叶える事にします〜

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とある商人との出会い編

第14話 入国審査で引っかかる。(1)

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 ここでバレなければ、何の悶着もなく安全地帯・ノーラリアに入国できる。
 しかしここでバレてしまえば……いや、バレてもどうにもならないんじゃない?
 俺はここでやっとそう思い至る。


 獣人は、我が国への入国は禁止されている。
 だからこの国への時にはそういった者を削ぎ落とす努力をするだろう。

 しかし逆はどうだろう。
 どうせ国内で見つかっても、結局は国外へ追放されるだけである。
 ならば、ここでバレても普通に『ノーラリアに追放』という形に収まるんじゃないだろうか。

「何だ……じゃぁ大丈夫だな」

 思えばそもそも、入国審査というものに対する知識がないのがいけなかった。
 
 俺は公務で過去に数度出国した事があるが、その時は王族しか乗れない馬車に乗っていた。
 その為顔パスならぬ馬車パスで国境を通過しており、一度も審査を受けた事が無い。

 もし自分にたった一度でもそんな経験があったなら、きっとこんなに無駄に慌てなくても良かったのに。
 そんな風に思いながら、少し肩の力を抜く。


 が、俺はもっと警戒すべきだった。

 まさか思わなかったのだ。
 クイナではなく、自分が審査に引っかかるとは。

「あの、すみませ……恐れ入ります」

 国境の目の前で一斉に馬車から降ろされて、全員とある部屋に通された。
 底には紫水晶が用意されていて、そこに「順番に手を当てろ」と指示される。

 だから俺は、ただ言われた通りにしただけだった。
 それなのに、今までは至って普通だった警備兵が少しざわめき、代表者が一人出てきたと思ったら突然ぎこちない丁寧語を使ってきた。

 間違いない。
 これはたぶん十中八九――。

「あの……何故こんな寄り合い馬車で出国されようとしているのですか? アルド殿――」

 殿下と言い切る前に俺は、慌てて兵士の口を塞いだ。

 彼の驚いた目と視線が交わる。
 それもそうだろう、彼からすると単に職務を全うするために質問したのにこうして口を塞がれているのだから。


 彼も仕事をしなければならない。
 しかしここでそれを言われるのは、周りに聞こえる可能性がある。

 俺は確かに王太子だったが、それは最早過去の話なのだ。
 もし身バレして、面倒事に巻き込まれたら。
 そんな事は是非とも避けたい。

「せめて端っこで」

 そう言えば、彼はまるで壊れた操り人形のようにコクコクコクと頷いた。
 そして二人で、部屋の隅っこに寄っていく。

「す、すみません。王族の方がこういう形で国境を通るのは、誘拐された時くらいしか無く、些か周りへの配慮に欠けました」

 そう言って謝ってくる兵士は、先程よりも随分小声で、それでいてとても恐縮していた。

 まぁそれはそうだろう。
 だって、ここで一番強そうなので、おそらく彼がここの責任者なのだろうが、それでも彼が直に王族と話せる機会は、後にも先にも無いだろうから。


 しかしこの男、とても真面目なようである。
 緊張と混乱を抱えながらも、自らの仕事を律儀に果たそうと聴取してきた。

「それで殿下、何故この様な形で出国を……?」
「あぁそれは、俺はもう王族専用の馬車を使える立場じゃないからだ」
「……え?」

 心底不思議そうな顔をした彼に、俺も思わず首を傾げる。

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