【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜

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第一章:奔走する者と、機を待つ者。

第12話 何事も、数があれば大変で(2)

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 そういう物が、大体1日に2、3通程送られてくる。

 セシリアはそれらを、ティータイムや邸内散策などの合間に、行っていた。
 時間的にも精神的にも余裕があった当時のセシリアにとって、それは全く苦になって居なかったのだが。


 数日前、その平穏は突如として崩れ去った。

 その予兆があったのは、モンテガーノ侯爵からセシリア宛にお茶会の誘いがあった日の事である。


 赤ペンを片手に父と楽しい時間を過ごしたセシリアは、その日の昼下がり、ゼルゼンにこんな事を言っていた。

「招待しても来てくれない、他の社交に出る予定も無い。そうなれば、きっと向こうは他貴族経由で社交への招待をしてくる」

 それは確信じみていた。
 予想というにはあまりに生ぬるい、そう思わせるに足る声色だった。

「で。そうなった場合、多分手紙を書く手が足りなくなる。だからその時は、ゼルゼンに手紙の代筆をお願いするからね」

 心の準備をしておいて。

 彼女はそう言って、ティーカップを片手に微笑んだ。


「本来なら、返信手紙は本人の直筆が望ましいけど、返信が遅くなる事もそれはそれで相手に対して失礼だから」

 だから、捌けない分の中からモンテガーノ侯爵経由だと思われるの招待状は全てゼルゼンに回す。
 ゼルゼンはそれへの、返信を書いて欲しい。

 そんな主人の言葉に、従者であるゼルゼンが断る理由もない。
 その時彼は「本当にそんな事になるのだろうか」と半信半疑のまま頷いた。


 そして、その数日後。

 その言葉の通り、セシリアの元には大量の招待状が押し寄せ始めたのだった。



 ティーポットにお湯を注ぎ、茶葉を蒸らしている合間に、ゼルゼンはこっそりと自身の肩を揉んだ。
 
 つい先ほどまで慣れない業務に従事していたのだ、肩が凝るのは当たり前である。


 そんな彼を、セシリアはボーッと眺めていた。
 そしてポツリとこんな言葉を零す。

「……幾ら断り文句の定型文があるって言っても、こんなに分量があれば時間も掛かるよね」

 その言葉を受けて、ゼルゼンは彼女の机上を無言で見遣る。
 そしてその上にある未返信の手紙を遠目に数えて、小さくため息をついた。


 返信が必要な手紙の残りは、少なくともあと10通。

 今日既に書き終わった手紙が10通ほどあるから、現在は総量の丁度半分を熟した事になる。

 つまり。

(今までやったのと同じくらいの時間と体力が、まだ必要だって事だ)

 そうしなければ、今日の作業は終わらない。
 彼女の呟きには十分に同情の余地がある。

「昨日も片付けたのに、全く減らない……」

 セシリアのそんな呟きに、ゼルゼンは「確かに」と思わず頷く。
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