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二人と一緒に生活すると決めたフィーリアは、お供を連れて街にくり出す。
第16話 生きるための助け合い(1)
しおりを挟む特に買う物を決めて来たわけではない。ただ、できるだけたくさん食べさせたい。
となると、とりあえず調理法次第で何にでもできそうなものを選ぶのが無難だろうか。味に飽きないように工夫しやすいものも良いかも。
「じゃぁおばさんの所では、ジャガイモとニンジンとタマネギと……それから何か安くておいしいオススメはありますか?」
「あぁ、じゃぁこれなんてどうかねぇ? タケノコなんだが、今年はちょっと豊作すぎてね。そもそも料理するのに面倒臭いから、あんまり売れないんだよ」
彼女が「どうだい?」と言いながら、そのタケノコとやらを差しだしてくる。
流れのままに受け取ると、思ったよりもズッシリときて驚いた。
なんだかちょっと、木の枝みたいな見た目だ。少なくとも私は初めて見る。
「今日買ってくれるんなら、ちょっと安くしとくけど」
「え、良いんですか?」
「あぁ、タケノコは採ると鮮度が落ちるのが早くてね。どうせこのままじゃぁ私達の腹の中か、それでも余れば捨てるしかない。買ってくれると、こっちも助かるんだよ」
なるほど。日持ちしないのは難点だけど、ジャガイモとタマネギはある程度日持ちがするから、使う順番さえ気を付ければ問題なさそうか。
「じゃぁそれを、今日食べるので三人分の量くらい」
「まいどあり!」
「ところで私、その品を料理した事が無いのですが、どのようにして食べるものなのでしょう」
少し妙なものを見るような顔をされたので「もしかしたら普通は買うと決める前に料理方法を聞くものかもしれない」と自らの立ち回りを恥じたのだけど、予想外な所を不思議がられた。
「おやそうなのかい? この辺じゃよく食べるのに」
彼女の言葉に、唐突に自身のここでの常識外れを自覚した。
羞恥と共に尻込みをする。
変な子だと思われたらどうしよう。社交界で一人場の空気に浮いてしまっていた自分を思い出して、人見知りが発動しそうになる。
しかし、いくら思い出してみても厨房でこの状態の食材を一度も見た事がない。
もしかしたら屋敷でも使っていたのかもしれないが、この状態の代物を見た事がないのだから、調理法なんて想像もつかない。
結局のところ、買うのならば聞く他ないのである。
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