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カモミールの花言葉
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「イザベラ、君との婚約を破棄する!俺の愛しいアイリスを虐めるような醜い性根の人間の顔など、二度と見たくない!国外追放を命ずる!」
俺は卒業パーティホールの階段上の踊り場にて、可愛いアイリスを背でかばいながら、イザベラを指さし大声で言ってやった。
こうして間近で男爵令嬢のアイリスと公爵令嬢のイザベラを見比べると、やはりアイリスの可愛さは秀でて見えた。王太子である俺の婚約者となるものは、のちに王妃になるのだから美しい人間であるべきなのだ。自分の選択は間違っていなかったと改めて感じた。
大きな瞳いっぱいに涙を湛えたアイリスは、ピンクブロンドが艶々しており、赤い頬とぷっくりしたみずみずしい唇の可愛らしい女性だ。
一方のイザベラは黒髪で、公爵令嬢だけあり顔は整っているが、少しツリ目がちできつい印象を与える顔立ちであった。そして血色はあまり良くなく、いつも仮面のような硬い笑みを浮かべていて気味が悪かった。
そのイザベラがいつもの気味の悪い笑みをなくし、顔を真っ青にして震えていた。
俺の発言でイザベラの表情が変わったことに満足した瞬間、イザベラが気を失って俺に倒れ込んできた。
俺は慌てて払い除けてイザベラを階段の方に押しやったが、イザベラの黒髪が俺の服の胸元の飾りに絡みついていた。
気を失ったイザベラの体重は驚くほど重く、胸元を引っ張られバランスを失った俺はイザベラと共にもつれるように階段を転げ落ちた。
体中を強い衝撃が襲った後、内心で役に立たない護衛共に舌打ちしつつ、クラクラする頭でなんとか立ち上がった俺は足元がスースーする事に驚いた。
そして、目線を下にしてギョッとした。
なんと、さっきまでイザベラが着ていたような濃紺のドレスを俺が着ているのだ。
「な、なんだこれ·····」
目線の先を揺れる長い黒髪を引っ張ってみると、自分の頭皮が痛む。
「な、なにが起こったのでしょう、これは·····」
聞き覚えのある男の声に振り向き、驚愕した。
そこには、内股座りで座り込み、護衛に囲まれている金髪碧眼の俺がいたのだ。
金髪碧眼の王太子の姿をした人物と目が合い、頭がスーッと冷えていった。
この状況、思い当たることがひとつあった。
そして、俺達は叫んだ。
「私たち、入れ替わっている!?」
「俺たち、入れ替わっている!?」
***
イザベラは呆然とした表情で何も言わぬまま、王太子として手厚く別室に運ばれて行ってしまった。アイリスが王太子の後を必死について行きながら、こちらをチラリと見た。アイリスのその顔が、こちらを見下した酷く歪んだ表情をしていることに、俺はゾッとして思わず叫んだ。
「待ってくれアイリス、俺が王太子なんだ!」
アイリスを引き留めようとしたが、王太子護衛のザックに肩を蹴り飛ばされた。
「『自分が王太子だ』などと戯言を抜かしたら、今度はその首斬り捨ててやるから二度と口にするなよ」
ザックのあまりの不敬に俺は殴りかかろうとしたが、射殺すような瞳でザックに睨みつけられ、その殺気に俺は言葉を飲み込み固まるしか無かった。
ザックに蹴られた跡も痛いが、階段から落ちたためか体中が痛かった。そして何故かへその下あたりを誰かに殴られ続け、内蔵を捻りちぎられるような痛みが続いていて、痛みのあまり目の前がチカチカした。
誰かに助けを求めようと周りを見渡すも、近づくと皆、俺を避ける。
そんな中、1人の厳しい表情の40代のメイドが来て、俺の手を引いて馬車へと連れ出してくれた。イザベラ付きのメイドだと言う。
すぐに元の身体を取り戻さねばと気が急いだものの、この体調の悪さをなんとかしないと死んでしまいそうだ。
俺の手を引っ張って歩くメイドに下腹部の痛さを訴えると、驚く答えが返ってきた。
「お嬢様の月のモノの辛さは今に始まったことではないでしょう?こんなのいつもの事でしょうに。夜会の催されるタイミングといつも被る点は同情しますが、コルセットはこれくらいキツくしておかないと見栄えがしませんからね」
イザベラはいつもこんな痛みを耐えていたのか、だからあの様な青白く硬い表情をしていたのか。
この痛みを耐えることが出来ていたイザベラの精神力に、俺は驚愕した。
それと共に痛みに耐えかねて、気を失ってしまったのだった。
***
数時間後、目を覚ますと俺は見知らぬベッドに寝かされていた。
さっきのことは夢だったのかと安心して起き上がると、目の前に黒髪がサラサラと流れてきて、俺は悪夢が続いていることに絶望した。
イザベラ付きの例のメイドが入ってきて、俺が起きてるのを見ると小言をまくしたて始めた。
「まったくもう、倒れてしまうなんて本当に困りましたよ。あの後馬車まで運ぶのに人手を借りねばならず、大変だったんですからね。早く起きてください、旦那様がお待ちですよ」
こんなに感じの悪いメイドがこの世にはいるのかと驚きながら、俺は未だ下腹部が酷く痛むことを訴えた。
だが、メイドの答えはすげないものだった。
「貴方が寝てる間にお医者様にも先程見てもらいましたが、打撲跡だけあるものの、別に異常はなさそうとのことですよ。階段から落ちて別の場所が痛むのなら考えますが、その部位ならいつもの月のモノでしょう。婚約破棄されて気まずいのでしょうけど、ワガママ言わないで早く用意してください!」
キツイ口調でそう言うと、俺を無理やり立たせて鏡台に座らせてロングの黒髪を乱暴に櫛で梳かしはじめた。
髪が引っ張られ、「痛い」と思わず声を上げると「うるさい」とメイドに叩かれて呆然としてしまった。俺が元の身体を取り戻したら、このメイドをどうしてやろうかと思うことで、なんとか溜飲を下げた。
その後、引っ立てられて公爵家当主の部屋に引っ張ってこられた。
部屋に入ると、俺の側近でもあるイザベラの兄オリバーと、リシュリー公爵がいた。
俺は居ても立っても居られず、オリバーに詰め寄って叫んだ。
「オリバー信じてくれ!俺が皇太子なんだ!階段から落ちて入れ替わっただけなんだ!その証拠にお前の女の好みだって知ってる!背の低い、守ってやりたくなるような、俺のアイリスみたいな女が好きなんだろ?」
俺がそう言った途端、オリバーに首元に短剣を突きつけられた。王太子として習った護身術で避けようとしたが、ひ弱なイザベラの体は思ったように動かず、すぐに大柄なオリバーに抑えられた。
「婚約破棄された上に王子を階段から突き落とし、挙句の果てに王子の名を騙り、下品な言動の数々·····階段から落ちて打ちどころが悪く頭がおかしくなったとしか思えない。父上、この家を守る為にも殺すか病院送りにするかしかないでしょう」
俺は首元のヒヤリとした短剣から、命の危険を感じ口を閉じた。そして縋るような目で、リシュリー公爵を見た。リシュリー公爵は王太子だった頃の俺の前ではいつも温和な態度だったから、救いがあると思ったのだ。リシュリー公爵は髭を蓄えた口をへの字にまげ、苦々しげに言った。
「病院は金がかかる。政略結婚の道具としてもう使えないなら、殺してしまいたいところだが、そもそもあのバカ王子から国外追放を言い渡されているからな。指示通りに動かないと不味いだろう。まぁ、これ以上イザベラが『自分が王太子だ』などという戯言を言うようなら隣国に向かう途中の馬車を襲わせて暗殺させよう。一週間様子を見て、頭のおかしい発言が治まるようなら、殺さずに国外に捨てるだけでいいだろう。まぁ、殺さずとも勝手にのたれ死ぬだろう」
そう言って、リシュリー公爵はため息をついた。
俺の事をバカ王子と裏で言っていたことにも腹が立ったが、仮にも自分の娘を道具だの、殺してしまいたいだのを目の前で言うのかと、開いた口が塞がらなかった。
国王である俺の父も、王妃である俺の母も、遅くにできた一人息子ということで俺の事をとても大事にしてくれていた。親というのは皆そうなのだと思っていた。こんな親が世の中にいることが信じられなかった。
文句を言ってやりたいが、きっと今余計なことを言うと殺される可能性が高いと思い、俺は内心腸煮えくり返りながらも口を噤んだ。
いっそ死ねば元の身体を取り戻せるのか?いや、危険だ。
生きてさえいればきっとまた、元の身体に戻れるだろう。イザベラの体で何を言っても、きっと誰にも伝わらない。今は口をつぐみ、全てを耐えて大人しく過ごす、それしか俺には方法がないのだ。
イザベラの体になってから、人の醜い部分ばかりを見せつけられてうんざりしていた。それもこれもどれも、すべてはイザベラのせいだ。
俺が怒りを内に秘めながら部屋に戻ると、机の上の日記帳が目に止まった。
壁の本棚を見ると、同じ柄の日記帳が何冊もあった。手に取って見ると精霊歴156年からはじまり、今年の166年まで表紙に書いてあった。
あの、イザベラの仮面のような硬い笑顔の下でどんな醜い事を考えていたのか読んでやろうと、俺は1番初めの156年の本を手に取り、ベッドに潜り込んだ。
***
寝落ちしていたらしく、俺は日記を片手に眠っていた。
相変わらずの黒髪と豊かな胸の膨らみを見て、悪夢が冷めてないことに俺はガッカリしたが、とりあえずイザベラの日記を読み始めた。
10冊全部読み終わる頃には、俺は心が洗われた気持ちだった。
イザベラの事を見直していた。日記の中身は王太子妃教育の復習とその日あった辛かったこと、悲しかったこと、楽しかったことが書かれていた。
イザベラは7歳の時に、俺と婚約した。もちろん政略結婚だ。始めの頃はコロコロ表情が変わる彼女と一緒にいて楽しかった記憶が俺も朧気に残っている。だがいつの頃からか、仮面のような硬い表情になった。
たどたどしくも丁寧な文字で書かれたイザベラの10年前の日記に、その理由は書かれていた。
『将来王妃になる人はいつも微笑みの仮面をつけないといけないそうです。表情を変えると、鞭で叩かれるので気をつけなくては。辛いけど、外国の方にお会いした時にこの国の内情を外に知らせないために重要なことだそうです。殿下を守る為にも、国民を守る為にも仮面を常につけないといけないそうです。頑張ります』
『今日は声を出して笑ってしまいました。その様子を家庭教師が見ていたようで、あとで背中を鞭で叩かれてしまいました。国のために私の心は殺すようにとの、ご指導をうけました』
『5年後までに5カ国語を覚えないといけないそうです。1年で1ヶ国語を完璧に使いこなせるようになるようにとのご指導を受けました。めげてしまいそうで、涙をながしてしまいました。そこを家庭教師にみつかり、鞭で叩かれてしまいました。泣き顔を見せるなど、絶対にしてはいけないことだそうです。しっかりしなくてはなりません』
俺は自国の言葉しか話せないのに、イザベラは5か国語も学んでたのかと愕然とした。
俺は王妃教育がこんなに大変な内容だとは露にも思っていなかった。それどころか、イザベラが必死に教本をめくってるのを見る度に「大変そうなフリをしてイザベラは自分の気を引こうとしているのだ」とさえ思っていた。
13歳の日記にイザベラの母親が亡くなった記述があった。
『お母様は私に言いました「誰もが人の悪い点ばかりに目を向ける中、あなたは人の良い点に気がつける心優しい子です。そんなあなたを王子の婚約者という立場にしてしまって、本当にごめんなさいね。王宮のような伏魔殿であなたの清い心が病んでしまわないか母は心配です。ああ、国守の精霊神よ。どうかこの子をお守りください」そう言って、お母様は祈るように目を閉じました。その後、お母様の目は二度と開きませんでした。私は苦しくて苦しくて悲しくて悲しくて悲しくて仕方がなかったのですが、なんとか家庭教師の教えを守り人前で泣くことを堪えていました。』
そう書かれた、彼女の日記は涙で滲んだ跡が何ヶ所もあった。
『お医者様はお母様が亡くなったのは私を産んだ時に内臓を痛めた後遺症だと言ってました。お父様もお兄様もその話を聞いて、私の方を酷く睨みました。きっと、私なんて生まれてこなければよかったのに、そうすればお母様は今も生きていただろうにと思っているに違いありません。私もそう思います。』
幼いイザベラの震える文字で書かれた内容に俺は胸が締め付けられる思いがした。
『今日はお母様のお葬式です。雨模様は私の心のようです。お母様が亡くなってからずっと、皆に責められている気がして世界が灰色に見えます。お母様のお墓に手向けられる花達さえも、私が生きている事を責めたてているかのようです。そんな中、殿下が「まぁ。なんだ、元気出せよ」と言って、カモミールの花を1輪くださりました。色をなくしていた世界が、その花を中心に途端に色づいて見えるようになりました。帰って調べたところ、カモミールの花言葉は「逆境に耐える」だそうです。私は、これからは殿下のために生きていきたいと思います。』
その文章とともに、雑草のような白い花の押し花がそのページに挟まっていた。
その花を見て俺は、ある記憶を思い出した。
その日は雨だった。雨の中、無表情な婚約者のために葬式なぞ行かねばならず、とても面倒だったのを覚えている。
しっかりした花束が用意されていたのだが、俺が適当にブラブラ持っていたので水たまりに落としてしまい、仕方なくそこら辺の花をちぎって渡した覚えがある。
彼女の母親の墓の前に並べるには、他の立派な花束に比べてあまりにお粗末だったので彼女に直接手渡したのだ。
花を渡した瞬間、彼女の無表情の仮面がおちて、ふわりと可愛く微笑んでくれて、俺はしばらくポーっとなっていたのだった。
俺は、相手を思いやる心に欠けていたのかもしれない·····人の悪口は一切書かれていない思いやりに溢れるイザベラの日記を読み俺は少し反省しはじめていた。
また、イザベラの日記を読むと、俺の母上である王妃からの嫌がらせの数々が目に付いた。
イザベラの母親が亡くなってから、俺の母がリシュリー公爵家に色々口出しするようになったようだ。
優しかったイザベラの昔のメイド達も甘やかされるという理由で解雇され、代わりに今のモネという厳しいメイドが派遣されたそうだ。
王妃教育の内容も王太子である俺より数倍難しく、厳しい内容であったことが日記から分かった。むしろ王妃教育と王太子教育の両方受けていたようですらある。
俺は、イザベラが王妃から虐められていたことにまったく気づかなかった。
内容からイザベラが王妃に虐められていたことは間違いないが、イザベラは一切悪く書かずに『王妃様のような素敵な女性になるためには必要なことなのです』『殿下のためにもっともっと頑張らないと』と健気な内容ばかり書かれていた。
最後の今年の日記を読み始めると、途中入学したアイリスの様子が書かれ始めた。
『アイリス様のような、天真爛漫な女の子に惹かれる気持ちは分かります。悲しいけど、私に魅力がないせいです。私は出来損ないなのだと家庭教師も言いました。だから私は誰からも愛されないのですね。もっと頑張らなくてはなりません』
『アイリス様と、殿下が仲睦まじく手を繋いで歩いていらっしゃった。私は婚約者として努力不足だったのだと思います。もう殿下のためには、身を引くしかないのでしょうか。どのように身を引いたら家にも国にも迷惑がかからないでしょうか』
『学園でアイリス様を私が虐めているという噂が流れています。私はアイリス様とお話したこともないし、クラスも違うから席も存じ上げないから虐めることは出来ないとお伝えしたのですが、誰にも信じていただけませんでした』
俺はイザベラの心情を初めて知り、苦しくなっていた。
日記の内容が真実ならば、イザベラはアイリスを虐めてはいない。
だが、アイリスは「イザベラ様に、酷いこと言われるんです!教科書も破かれましたし、ドレスも破かれました!」と言っていた。
誰にも読まれない日記でイザベラが嘘をつく理由はない、まさかアイリスの言ったことが嘘だったのだろうか·····そんな考えが俺の脳裏をよぎった時に部屋がノックされて例のメイドが入ってきた。
俺に会いたいと、王太子側近のクロムとアイリスが来ているらしい。
イザベラに虐められていたというのも誤解だったのかどうか確かめよう。
俺は、アイリスに会いに行くために部屋を出た。
俺は卒業パーティホールの階段上の踊り場にて、可愛いアイリスを背でかばいながら、イザベラを指さし大声で言ってやった。
こうして間近で男爵令嬢のアイリスと公爵令嬢のイザベラを見比べると、やはりアイリスの可愛さは秀でて見えた。王太子である俺の婚約者となるものは、のちに王妃になるのだから美しい人間であるべきなのだ。自分の選択は間違っていなかったと改めて感じた。
大きな瞳いっぱいに涙を湛えたアイリスは、ピンクブロンドが艶々しており、赤い頬とぷっくりしたみずみずしい唇の可愛らしい女性だ。
一方のイザベラは黒髪で、公爵令嬢だけあり顔は整っているが、少しツリ目がちできつい印象を与える顔立ちであった。そして血色はあまり良くなく、いつも仮面のような硬い笑みを浮かべていて気味が悪かった。
そのイザベラがいつもの気味の悪い笑みをなくし、顔を真っ青にして震えていた。
俺の発言でイザベラの表情が変わったことに満足した瞬間、イザベラが気を失って俺に倒れ込んできた。
俺は慌てて払い除けてイザベラを階段の方に押しやったが、イザベラの黒髪が俺の服の胸元の飾りに絡みついていた。
気を失ったイザベラの体重は驚くほど重く、胸元を引っ張られバランスを失った俺はイザベラと共にもつれるように階段を転げ落ちた。
体中を強い衝撃が襲った後、内心で役に立たない護衛共に舌打ちしつつ、クラクラする頭でなんとか立ち上がった俺は足元がスースーする事に驚いた。
そして、目線を下にしてギョッとした。
なんと、さっきまでイザベラが着ていたような濃紺のドレスを俺が着ているのだ。
「な、なんだこれ·····」
目線の先を揺れる長い黒髪を引っ張ってみると、自分の頭皮が痛む。
「な、なにが起こったのでしょう、これは·····」
聞き覚えのある男の声に振り向き、驚愕した。
そこには、内股座りで座り込み、護衛に囲まれている金髪碧眼の俺がいたのだ。
金髪碧眼の王太子の姿をした人物と目が合い、頭がスーッと冷えていった。
この状況、思い当たることがひとつあった。
そして、俺達は叫んだ。
「私たち、入れ替わっている!?」
「俺たち、入れ替わっている!?」
***
イザベラは呆然とした表情で何も言わぬまま、王太子として手厚く別室に運ばれて行ってしまった。アイリスが王太子の後を必死について行きながら、こちらをチラリと見た。アイリスのその顔が、こちらを見下した酷く歪んだ表情をしていることに、俺はゾッとして思わず叫んだ。
「待ってくれアイリス、俺が王太子なんだ!」
アイリスを引き留めようとしたが、王太子護衛のザックに肩を蹴り飛ばされた。
「『自分が王太子だ』などと戯言を抜かしたら、今度はその首斬り捨ててやるから二度と口にするなよ」
ザックのあまりの不敬に俺は殴りかかろうとしたが、射殺すような瞳でザックに睨みつけられ、その殺気に俺は言葉を飲み込み固まるしか無かった。
ザックに蹴られた跡も痛いが、階段から落ちたためか体中が痛かった。そして何故かへその下あたりを誰かに殴られ続け、内蔵を捻りちぎられるような痛みが続いていて、痛みのあまり目の前がチカチカした。
誰かに助けを求めようと周りを見渡すも、近づくと皆、俺を避ける。
そんな中、1人の厳しい表情の40代のメイドが来て、俺の手を引いて馬車へと連れ出してくれた。イザベラ付きのメイドだと言う。
すぐに元の身体を取り戻さねばと気が急いだものの、この体調の悪さをなんとかしないと死んでしまいそうだ。
俺の手を引っ張って歩くメイドに下腹部の痛さを訴えると、驚く答えが返ってきた。
「お嬢様の月のモノの辛さは今に始まったことではないでしょう?こんなのいつもの事でしょうに。夜会の催されるタイミングといつも被る点は同情しますが、コルセットはこれくらいキツくしておかないと見栄えがしませんからね」
イザベラはいつもこんな痛みを耐えていたのか、だからあの様な青白く硬い表情をしていたのか。
この痛みを耐えることが出来ていたイザベラの精神力に、俺は驚愕した。
それと共に痛みに耐えかねて、気を失ってしまったのだった。
***
数時間後、目を覚ますと俺は見知らぬベッドに寝かされていた。
さっきのことは夢だったのかと安心して起き上がると、目の前に黒髪がサラサラと流れてきて、俺は悪夢が続いていることに絶望した。
イザベラ付きの例のメイドが入ってきて、俺が起きてるのを見ると小言をまくしたて始めた。
「まったくもう、倒れてしまうなんて本当に困りましたよ。あの後馬車まで運ぶのに人手を借りねばならず、大変だったんですからね。早く起きてください、旦那様がお待ちですよ」
こんなに感じの悪いメイドがこの世にはいるのかと驚きながら、俺は未だ下腹部が酷く痛むことを訴えた。
だが、メイドの答えはすげないものだった。
「貴方が寝てる間にお医者様にも先程見てもらいましたが、打撲跡だけあるものの、別に異常はなさそうとのことですよ。階段から落ちて別の場所が痛むのなら考えますが、その部位ならいつもの月のモノでしょう。婚約破棄されて気まずいのでしょうけど、ワガママ言わないで早く用意してください!」
キツイ口調でそう言うと、俺を無理やり立たせて鏡台に座らせてロングの黒髪を乱暴に櫛で梳かしはじめた。
髪が引っ張られ、「痛い」と思わず声を上げると「うるさい」とメイドに叩かれて呆然としてしまった。俺が元の身体を取り戻したら、このメイドをどうしてやろうかと思うことで、なんとか溜飲を下げた。
その後、引っ立てられて公爵家当主の部屋に引っ張ってこられた。
部屋に入ると、俺の側近でもあるイザベラの兄オリバーと、リシュリー公爵がいた。
俺は居ても立っても居られず、オリバーに詰め寄って叫んだ。
「オリバー信じてくれ!俺が皇太子なんだ!階段から落ちて入れ替わっただけなんだ!その証拠にお前の女の好みだって知ってる!背の低い、守ってやりたくなるような、俺のアイリスみたいな女が好きなんだろ?」
俺がそう言った途端、オリバーに首元に短剣を突きつけられた。王太子として習った護身術で避けようとしたが、ひ弱なイザベラの体は思ったように動かず、すぐに大柄なオリバーに抑えられた。
「婚約破棄された上に王子を階段から突き落とし、挙句の果てに王子の名を騙り、下品な言動の数々·····階段から落ちて打ちどころが悪く頭がおかしくなったとしか思えない。父上、この家を守る為にも殺すか病院送りにするかしかないでしょう」
俺は首元のヒヤリとした短剣から、命の危険を感じ口を閉じた。そして縋るような目で、リシュリー公爵を見た。リシュリー公爵は王太子だった頃の俺の前ではいつも温和な態度だったから、救いがあると思ったのだ。リシュリー公爵は髭を蓄えた口をへの字にまげ、苦々しげに言った。
「病院は金がかかる。政略結婚の道具としてもう使えないなら、殺してしまいたいところだが、そもそもあのバカ王子から国外追放を言い渡されているからな。指示通りに動かないと不味いだろう。まぁ、これ以上イザベラが『自分が王太子だ』などという戯言を言うようなら隣国に向かう途中の馬車を襲わせて暗殺させよう。一週間様子を見て、頭のおかしい発言が治まるようなら、殺さずに国外に捨てるだけでいいだろう。まぁ、殺さずとも勝手にのたれ死ぬだろう」
そう言って、リシュリー公爵はため息をついた。
俺の事をバカ王子と裏で言っていたことにも腹が立ったが、仮にも自分の娘を道具だの、殺してしまいたいだのを目の前で言うのかと、開いた口が塞がらなかった。
国王である俺の父も、王妃である俺の母も、遅くにできた一人息子ということで俺の事をとても大事にしてくれていた。親というのは皆そうなのだと思っていた。こんな親が世の中にいることが信じられなかった。
文句を言ってやりたいが、きっと今余計なことを言うと殺される可能性が高いと思い、俺は内心腸煮えくり返りながらも口を噤んだ。
いっそ死ねば元の身体を取り戻せるのか?いや、危険だ。
生きてさえいればきっとまた、元の身体に戻れるだろう。イザベラの体で何を言っても、きっと誰にも伝わらない。今は口をつぐみ、全てを耐えて大人しく過ごす、それしか俺には方法がないのだ。
イザベラの体になってから、人の醜い部分ばかりを見せつけられてうんざりしていた。それもこれもどれも、すべてはイザベラのせいだ。
俺が怒りを内に秘めながら部屋に戻ると、机の上の日記帳が目に止まった。
壁の本棚を見ると、同じ柄の日記帳が何冊もあった。手に取って見ると精霊歴156年からはじまり、今年の166年まで表紙に書いてあった。
あの、イザベラの仮面のような硬い笑顔の下でどんな醜い事を考えていたのか読んでやろうと、俺は1番初めの156年の本を手に取り、ベッドに潜り込んだ。
***
寝落ちしていたらしく、俺は日記を片手に眠っていた。
相変わらずの黒髪と豊かな胸の膨らみを見て、悪夢が冷めてないことに俺はガッカリしたが、とりあえずイザベラの日記を読み始めた。
10冊全部読み終わる頃には、俺は心が洗われた気持ちだった。
イザベラの事を見直していた。日記の中身は王太子妃教育の復習とその日あった辛かったこと、悲しかったこと、楽しかったことが書かれていた。
イザベラは7歳の時に、俺と婚約した。もちろん政略結婚だ。始めの頃はコロコロ表情が変わる彼女と一緒にいて楽しかった記憶が俺も朧気に残っている。だがいつの頃からか、仮面のような硬い表情になった。
たどたどしくも丁寧な文字で書かれたイザベラの10年前の日記に、その理由は書かれていた。
『将来王妃になる人はいつも微笑みの仮面をつけないといけないそうです。表情を変えると、鞭で叩かれるので気をつけなくては。辛いけど、外国の方にお会いした時にこの国の内情を外に知らせないために重要なことだそうです。殿下を守る為にも、国民を守る為にも仮面を常につけないといけないそうです。頑張ります』
『今日は声を出して笑ってしまいました。その様子を家庭教師が見ていたようで、あとで背中を鞭で叩かれてしまいました。国のために私の心は殺すようにとの、ご指導をうけました』
『5年後までに5カ国語を覚えないといけないそうです。1年で1ヶ国語を完璧に使いこなせるようになるようにとのご指導を受けました。めげてしまいそうで、涙をながしてしまいました。そこを家庭教師にみつかり、鞭で叩かれてしまいました。泣き顔を見せるなど、絶対にしてはいけないことだそうです。しっかりしなくてはなりません』
俺は自国の言葉しか話せないのに、イザベラは5か国語も学んでたのかと愕然とした。
俺は王妃教育がこんなに大変な内容だとは露にも思っていなかった。それどころか、イザベラが必死に教本をめくってるのを見る度に「大変そうなフリをしてイザベラは自分の気を引こうとしているのだ」とさえ思っていた。
13歳の日記にイザベラの母親が亡くなった記述があった。
『お母様は私に言いました「誰もが人の悪い点ばかりに目を向ける中、あなたは人の良い点に気がつける心優しい子です。そんなあなたを王子の婚約者という立場にしてしまって、本当にごめんなさいね。王宮のような伏魔殿であなたの清い心が病んでしまわないか母は心配です。ああ、国守の精霊神よ。どうかこの子をお守りください」そう言って、お母様は祈るように目を閉じました。その後、お母様の目は二度と開きませんでした。私は苦しくて苦しくて悲しくて悲しくて悲しくて仕方がなかったのですが、なんとか家庭教師の教えを守り人前で泣くことを堪えていました。』
そう書かれた、彼女の日記は涙で滲んだ跡が何ヶ所もあった。
『お医者様はお母様が亡くなったのは私を産んだ時に内臓を痛めた後遺症だと言ってました。お父様もお兄様もその話を聞いて、私の方を酷く睨みました。きっと、私なんて生まれてこなければよかったのに、そうすればお母様は今も生きていただろうにと思っているに違いありません。私もそう思います。』
幼いイザベラの震える文字で書かれた内容に俺は胸が締め付けられる思いがした。
『今日はお母様のお葬式です。雨模様は私の心のようです。お母様が亡くなってからずっと、皆に責められている気がして世界が灰色に見えます。お母様のお墓に手向けられる花達さえも、私が生きている事を責めたてているかのようです。そんな中、殿下が「まぁ。なんだ、元気出せよ」と言って、カモミールの花を1輪くださりました。色をなくしていた世界が、その花を中心に途端に色づいて見えるようになりました。帰って調べたところ、カモミールの花言葉は「逆境に耐える」だそうです。私は、これからは殿下のために生きていきたいと思います。』
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その花を見て俺は、ある記憶を思い出した。
その日は雨だった。雨の中、無表情な婚約者のために葬式なぞ行かねばならず、とても面倒だったのを覚えている。
しっかりした花束が用意されていたのだが、俺が適当にブラブラ持っていたので水たまりに落としてしまい、仕方なくそこら辺の花をちぎって渡した覚えがある。
彼女の母親の墓の前に並べるには、他の立派な花束に比べてあまりにお粗末だったので彼女に直接手渡したのだ。
花を渡した瞬間、彼女の無表情の仮面がおちて、ふわりと可愛く微笑んでくれて、俺はしばらくポーっとなっていたのだった。
俺は、相手を思いやる心に欠けていたのかもしれない·····人の悪口は一切書かれていない思いやりに溢れるイザベラの日記を読み俺は少し反省しはじめていた。
また、イザベラの日記を読むと、俺の母上である王妃からの嫌がらせの数々が目に付いた。
イザベラの母親が亡くなってから、俺の母がリシュリー公爵家に色々口出しするようになったようだ。
優しかったイザベラの昔のメイド達も甘やかされるという理由で解雇され、代わりに今のモネという厳しいメイドが派遣されたそうだ。
王妃教育の内容も王太子である俺より数倍難しく、厳しい内容であったことが日記から分かった。むしろ王妃教育と王太子教育の両方受けていたようですらある。
俺は、イザベラが王妃から虐められていたことにまったく気づかなかった。
内容からイザベラが王妃に虐められていたことは間違いないが、イザベラは一切悪く書かずに『王妃様のような素敵な女性になるためには必要なことなのです』『殿下のためにもっともっと頑張らないと』と健気な内容ばかり書かれていた。
最後の今年の日記を読み始めると、途中入学したアイリスの様子が書かれ始めた。
『アイリス様のような、天真爛漫な女の子に惹かれる気持ちは分かります。悲しいけど、私に魅力がないせいです。私は出来損ないなのだと家庭教師も言いました。だから私は誰からも愛されないのですね。もっと頑張らなくてはなりません』
『アイリス様と、殿下が仲睦まじく手を繋いで歩いていらっしゃった。私は婚約者として努力不足だったのだと思います。もう殿下のためには、身を引くしかないのでしょうか。どのように身を引いたら家にも国にも迷惑がかからないでしょうか』
『学園でアイリス様を私が虐めているという噂が流れています。私はアイリス様とお話したこともないし、クラスも違うから席も存じ上げないから虐めることは出来ないとお伝えしたのですが、誰にも信じていただけませんでした』
俺はイザベラの心情を初めて知り、苦しくなっていた。
日記の内容が真実ならば、イザベラはアイリスを虐めてはいない。
だが、アイリスは「イザベラ様に、酷いこと言われるんです!教科書も破かれましたし、ドレスも破かれました!」と言っていた。
誰にも読まれない日記でイザベラが嘘をつく理由はない、まさかアイリスの言ったことが嘘だったのだろうか·····そんな考えが俺の脳裏をよぎった時に部屋がノックされて例のメイドが入ってきた。
俺に会いたいと、王太子側近のクロムとアイリスが来ているらしい。
イザベラに虐められていたというのも誤解だったのかどうか確かめよう。
俺は、アイリスに会いに行くために部屋を出た。
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