冷徹王太子の愛妾

月密

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四話(閲覧注意)

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 あれから何日経ったのだろう……。朦朧とする意識の中、ぼんやりとただ思った。

 身体中が痛い。思考が鈍り何も考えられない。
 鎖で繋がれた脚に力を込めてみるが、上手く動かす事は叶わない。

「あれ、まだ寝てるの? 君はどうしようもない怠け者だね」
「っーー」

 薄暗い部屋に彼の靴音と声だけが響いている。その音は枕元で止まった。
 ベルティーユは戻って来たクロヴィスに恐怖を感じ自らの身体を抱き締め震わせた。

「何時までそうしてるの?」
「ゔっ……」

 乱暴に肩を掴まれ引き摺る様にして身体を起こされると、彼はズボンのベルトを緩め既に怒張した肉棒を取り出した。そしてそれをベルティーユの顔の前に突き出す。

「舐めて」
「っ、ぃや……」
「ほら、あ~んしないとダメだよ」

 何度見ても慣れない男の陰茎に顔を背け嫌だと首を横に振る。だが彼が赦してくれる筈もなく、ベルティーユの後頭部を掴むと無理矢理口の中に肉棒を押し入れた。

「うッ……ん、ふっ……」
「んっ、あぁ‼︎……温かくて、ヌルヌルする」

 喉の奥まで押し込まれ息が出来ない。どうにかして空気を吸おうと踠くが、クロヴィスは逃すまいと更に掴んでいた頭を自らへと押し付ける。苦しさに涙が溢れ出た。
 懇願する思いで彼を見上げると、腰を揺らしながら時折り艶声を洩らしながら恍惚な表情を浮かべていた。

「はぁっ……気持ちが、善い……。ねぇベル、もっとちゃんと奥まで咥えてくれないと何時になっても射精出来ないよ。ほら舌も上手に使って、この前教えただろう? 君の兄も、こうやって妹を使って愉しんでいたんだよ。その所為で……その所為で、ブランシュはっ、死んだんだ‼︎」
「い''ッ……やめて……痛、いの……」

 急に怒声を上げたクロヴィスは、乱暴にベルティーユの髪を掴むとベッドに叩きつけた。

「君の兄はブランシュを凌辱した! 可哀想にブランシュは、その事で精神的に追い詰められ自ら命をっ……。何が和平だ! 約束一つ守れないけだものじゃないか⁉︎」

 人質交換には幾つかの制約があった。その中の一つに、人としての尊厳を傷付けないとある。意味は一つではないが、性的な虐待も含まれている。だがそれを兄のディートリヒは破りブランシュを陵辱したという。ベルティーユには信じられない。あの曲がった事が嫌いで正義を重んじる誠実な兄がそんな事をする筈がない。それにーー。

『今年のベルティーユ様のお誕生日の贈り物は、陛下自らお渡ししたいからとお預かりはしておりません』

 モーリスがそう話していた。それは和平条約が結ばれて、妹であるベルティーユが国へと帰還する事を示唆している。だがクロヴィスの言う通りならば、和平協議は決裂し延いてはもう二度と機会は訪れない。兄だってそんな事は理解している筈だ。

(私は……お兄様を信じる)

「あ、兄は……そんな事を、する様な人間ではありません‼︎」

 もう何度目か分からないやり取りをする自分に呆れた。反抗すればする程クロヴィスは更に逆上し、更にベルティーユに酷く当たる事は分かっている。だがそれでも黙ってはいられない。

「ベルはさ、本当に莫迦だよね。何度言えば分かるのかな……。君の兄は、人の皮を被った獣だ‼︎」

 溜息を吐き肩を竦める姿は以前と変わらない穏やかな彼だ。だが次の瞬間、氷の様に冷たい眼差しと怒声を浴びられ頬を叩かれた。

「だからブランシュが苦しんだ分、君にも同じ思いを味わって貰う」

 何度も何度も頬だけでなく全身を殴られ痛めつけられた。次第にまた意識が朦朧としてくる。感覚が麻痺してもう痛みが分からない。
 不意に彼の爪がベルティーユの頬に引っ掛かり皮膚が切れ血が流れた。すると彼は驚愕した表情を見せると傷口を異様な程に舐め出した。

「あぁ、ベル……可哀想に、痛かったね」

 優しく抱き寄せると背中を摩ってくる。頭や身体を労わる様に撫で回しながら仕切りに「可哀想に……可哀想に……」と呟き続けていた。

「可愛い、僕のベル……」

 先程の彼が嘘の様に、クロヴィスはベルティーユの額や頬に優しい口付けを落とした。
 きっと彼は壊れてしまったのかも知れない。身体の痛みよりも、胸が押し潰されそうになる程の痛みを感じた。


 
 
 
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