23 / 78
二十二話
しおりを挟む「どうした、レアンドル。今日も顰めっ面して随分と機嫌が悪そうだな。いや、顰めっ面は生まれつきか」
「……」
自分で言って自分で突っ込み豪快に笑っている。
朝から面倒な人物に遭遇してしまった、といっても目的地は同じ訳でどの道顔を合わせる事にはなるのだが。
早朝登城したレアンドルが、騎士団の稽古場へと向かい城の廊下を歩いていると大柄の男に呼び止められた。
明るい金色の短髪が窓から射し込む朝日に照らされている。頭だけ見れば実に爽やかな人物に思えるが、騙されてはいけない後のパーツは厳つく巨漢だ。レアンドルも割合身長は高い方だが、その自分と比較してもかなり高い。彼と話す時は視線を上げなくてはならないし、縦だけでなく横にも大きい。だが無駄な肉は一切ついておらず略筋肉というのだから、そこは素直に凄いと思う。レアンドルは体質の所為かどんなに鍛えてもそれなりに筋肉はつくものの、こうはならない。それに実際は割とガッチリとしているが、衣服を着用していれば細身に見られる事も多い。そんな程度だ。たまに羨ましいやら嫉妬心が湧く。
「どうした、最近はずっと機嫌が斜めらしいな? ルネから聞いたぞ」
相変わらず余計な事を報告しているルネに呆れる。
「貴方こそ、暫く休んで何していたんですか」
人にあんな物を押し付けて何が快気祝いだと文句の一つでも言ってやるつもりだったが、レアンドルが復帰後、色々とあり失念していた。それに彼はこの一ヶ月ずっと休んでおり会わず仕舞いだった。今に始まった事ではないが、自由奔放過ぎて正直レアンドルの手に余る。
それにしてもこれで騎士団副団長なのだから聞いて呆れる。しかもレアンドルが団長に就任する以前は彼が騎士団長を務めていた。ジークハルト・フォートリエ公爵。王弟でありレアンドルの叔父だ。そして彼もまた剣豪と呼ばれ、その腕は確かだ。
「まあお子様なお前には分からない大人の事情ってやつだ。それよりどうだ? ちゃんとやってるか?」
国中探してもレアンドルの事を未だにお子様扱いするのは彼くらいだろう。反論したいが話が進まなくなるので我慢して聞き流した。
「はい。お借りした彼女は確り仕事をこなしてくれています」
「だがその道の専門家ではないからなぁ。役に立っているならいいが、余り無理させないでやってくれよ」
「分かっています」
ガサツで気遣いなんて無縁そうな人だが、意外と面倒見のいい所がある。そんな人だから皆、彼に一目置いているのだろうと改めて思った。レアンドルも随分彼には救われてきた。自分も何時か彼の様になれるだろうか……。
「あぁそういえば、あれはどうだ?」
「あれとは」
「あれだよ、あれ。ルネに預けて置いただろう? 快気祝い」
彼の人柄に感服した矢先、実に下らない話をされて現実に引き戻された。流石に苛ついてくる。
「凄かっただろう? 一晩じゃおさまらなかったんじゃないか? だが女性に無理強いはダメだぞ。嫌われてしまうからな。彼女を少しは休ませてやれよ」
「……」
前言撤回する、彼の様には絶対にならない。
10
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
望月 或
恋愛
◆第18回恋愛小説大賞で【優秀賞】を戴きました。
ありがとうございました!
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」
ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。
まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。
彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。
そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。
仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。
そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。
神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。
そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった――
※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。
※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる