60 / 78
五十九話
しおりを挟む
リヴィエから書簡が届けられた。
結局頑なに譲らなかったベルティーユが出した書簡の返事だった。
レアンドルはベルティーユがリヴィエに行く事に賛成は出来ない。だが正直手詰まりではある。此方がどんなに話し合いを申し入れても、リヴィエが首を縦に振らない限り進展は無いだろう。
「ベルティーユ、リヴィエ国王は何と?」
封を開け中身を確認していたベルティーユは怪訝な表情のまま黙り込んでいた。
「もし話し合いがしたいならば、私だけでなくレアンドル様の同席が不可欠だと。そうでなければ話し合いには一切応じないそうです。ただ和平に向けて前向きには検討したいとも書いてあります」
リヴィエ側の真意は分からない。だがどの道レアンドルは自ら赴くつもりだった。それもレアンドルが行った所で話し合いに応じて貰えるかすら分からなかった。それが向こうから提示してきたのだ。此方としては断る理由はない。ただ、気掛かりなのはベルティーユの事だ。やはり彼女を連れて行くのはどうしても躊躇われる。
「そうか。ならやはり、俺が直接赴くべきだろう。だが君は連れて行けない」
半月後ーー。
朝靄の中、城門の前に騎士団等が整然と並んでいる。そして旅支度を整えたレアンドルの隣にはベルティーユの姿があった。
「本当に一緒に行くつもりか?」
「勿論です」
結局レアンドルが折れる事となり、ベルティーユを連れて行く事となってしまった。彼女はレアンドルが思っていたよりも遥かに頑固だった。将来尻に敷かれる未来が見えた気がした。
「叔父上、留守を頼みます」
「まあこうなったら仕方ないな。留守は任せておけ。但し、必ず帰って来い」
「はい」
ジークハルトに留守を頼み、レアンドルはベルティーユと共に馬車へ乗り込みリヴィエに向けて出立をした。
「身体は大事ないか?」
「レアンドル様、そんなに心配なさらなくても大丈夫です」
「だが先は長いんだ。無理はするな」
「はい、ありがとうございます」
城を出て早くも半月が経った。
リヴィエ国までは陸路を一ヶ月、その後は海路を十日程だ。女性であるベルティーユには体力的にきつい筈だ。
「レアンドル様、見て下さい! 街が見えます!」
だが今の所彼女は頗る元気だ。
馬車の窓の外を眺め時折り子供の様に燥いでいる。普段物静かな彼女が珍しい。だが新たな一面を知れて嬉しくも思う。無意識に頬が緩む。
こんな時に不謹慎ではあるがまるで二人で周遊でもしている気分になった。
「ベルティーユ、おいで」
「はい……」
手招きすると、彼女はおずおずと身体を寄せてくる。本当に愛らしい。
膝の上に乗せ抱き締めてその柔らかな身体を堪能する。
きっとこれから先、朝から晩までこんなに長い時間彼女と過ごせる事はないだろう。ならば今の内に満喫してもバチは当たらない筈だ。
城を出立してから一ヶ月程ーー。
「ベルティーユ、平気か?」
「申し訳ありません……」
「謝る必要はないが、少し休んだ方がいいな」
馬車を止めさせ、ベルティーユを椅子の上に寝かせた。身体を冷やさない様に毛布を掛ける。
朝から気分が優れず時折り気持ちが悪いと言っていた。今更だが馬車に酔ったのかも知れない。故に目的地まではもう直ぐだが、今日は此処で休む事にした。幸い野営には丁度良く森の開けた場所で近くに川もある。団員等もゆっくり休息を取る事が出来るだろう。
翌日、ベルティーユの体調は回復した。
そしてその日の夕刻には目的地である、港のある街へと到着をした。
結局頑なに譲らなかったベルティーユが出した書簡の返事だった。
レアンドルはベルティーユがリヴィエに行く事に賛成は出来ない。だが正直手詰まりではある。此方がどんなに話し合いを申し入れても、リヴィエが首を縦に振らない限り進展は無いだろう。
「ベルティーユ、リヴィエ国王は何と?」
封を開け中身を確認していたベルティーユは怪訝な表情のまま黙り込んでいた。
「もし話し合いがしたいならば、私だけでなくレアンドル様の同席が不可欠だと。そうでなければ話し合いには一切応じないそうです。ただ和平に向けて前向きには検討したいとも書いてあります」
リヴィエ側の真意は分からない。だがどの道レアンドルは自ら赴くつもりだった。それもレアンドルが行った所で話し合いに応じて貰えるかすら分からなかった。それが向こうから提示してきたのだ。此方としては断る理由はない。ただ、気掛かりなのはベルティーユの事だ。やはり彼女を連れて行くのはどうしても躊躇われる。
「そうか。ならやはり、俺が直接赴くべきだろう。だが君は連れて行けない」
半月後ーー。
朝靄の中、城門の前に騎士団等が整然と並んでいる。そして旅支度を整えたレアンドルの隣にはベルティーユの姿があった。
「本当に一緒に行くつもりか?」
「勿論です」
結局レアンドルが折れる事となり、ベルティーユを連れて行く事となってしまった。彼女はレアンドルが思っていたよりも遥かに頑固だった。将来尻に敷かれる未来が見えた気がした。
「叔父上、留守を頼みます」
「まあこうなったら仕方ないな。留守は任せておけ。但し、必ず帰って来い」
「はい」
ジークハルトに留守を頼み、レアンドルはベルティーユと共に馬車へ乗り込みリヴィエに向けて出立をした。
「身体は大事ないか?」
「レアンドル様、そんなに心配なさらなくても大丈夫です」
「だが先は長いんだ。無理はするな」
「はい、ありがとうございます」
城を出て早くも半月が経った。
リヴィエ国までは陸路を一ヶ月、その後は海路を十日程だ。女性であるベルティーユには体力的にきつい筈だ。
「レアンドル様、見て下さい! 街が見えます!」
だが今の所彼女は頗る元気だ。
馬車の窓の外を眺め時折り子供の様に燥いでいる。普段物静かな彼女が珍しい。だが新たな一面を知れて嬉しくも思う。無意識に頬が緩む。
こんな時に不謹慎ではあるがまるで二人で周遊でもしている気分になった。
「ベルティーユ、おいで」
「はい……」
手招きすると、彼女はおずおずと身体を寄せてくる。本当に愛らしい。
膝の上に乗せ抱き締めてその柔らかな身体を堪能する。
きっとこれから先、朝から晩までこんなに長い時間彼女と過ごせる事はないだろう。ならば今の内に満喫してもバチは当たらない筈だ。
城を出立してから一ヶ月程ーー。
「ベルティーユ、平気か?」
「申し訳ありません……」
「謝る必要はないが、少し休んだ方がいいな」
馬車を止めさせ、ベルティーユを椅子の上に寝かせた。身体を冷やさない様に毛布を掛ける。
朝から気分が優れず時折り気持ちが悪いと言っていた。今更だが馬車に酔ったのかも知れない。故に目的地まではもう直ぐだが、今日は此処で休む事にした。幸い野営には丁度良く森の開けた場所で近くに川もある。団員等もゆっくり休息を取る事が出来るだろう。
翌日、ベルティーユの体調は回復した。
そしてその日の夕刻には目的地である、港のある街へと到着をした。
0
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
望月 或
恋愛
◆第18回恋愛小説大賞で【優秀賞】を戴きました。
ありがとうございました!
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」
ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。
まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。
彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。
そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。
仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。
そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。
神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。
そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった――
※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。
※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる