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七十一話
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ベルティーユの胸を剣が貫いたーー。
レアンドルを庇ったベルティーユは胸を貫かれるが、倒れる事なく剣を掴んだ。
血がポタリと刃を伝い床に溢れる。
「ベルティーユっ‼︎‼︎‼︎」
レアンドルの叫び声が響き渡る。
彼がベルティーユに触れるが、彼女は構う事なくディートリヒを見据えた。
「お願いします、お兄様……。私は、裏切り者だって言われても、構いません。私を、嫌って、憎んでも、恨んだって……構わない……」
尋常じゃない痛みを感じている筈なのに、驚愕する程気丈に話す彼女に対して、ディートリヒは取り乱す。
目を見開き口元を震わせ「あ、あ……」言葉にならない声を発する。剣を握る手すら震え力が入らない様だ。
「だから、私で最後にして下さい……。これ以上、誰も、殺さないでっ……奪わないで、奪わせないでっ‼︎」
高く掠れた声が耳につく。
それはディートリヒに投げかけた言葉というより、彼女の悲痛の心の叫びに聞こえた。
「ブランシュ様も、他の誰も、こんな事望んでません……。どうか、ブルマリアスとの、和平を……。覚えて、いますか? お兄、様……約束、して下ったでしょう?」
「ベル、ティー、ユ……あ、あ、ああ"ー‼︎‼︎」
ディートリヒは震える手で彼女から剣を引き抜くと奇声を上げその場に崩れ落ち顔面を掻きむしる様に押さえた。
「ベルティーユっ‼︎‼︎‼︎」
力なくベルティーユの身体は崩れ落ちるが、レアンドルが抱き留めた。
「ベルティーユー‼︎ ベルティーユっ‼︎」
「姉上‼︎」
「ベルティーユ様っ‼︎」
「ベル‼︎」
一斉に皆が彼女へと駆け寄る。
レアンドルが上着を脱ぎ、必死に止血を試みるが血は止めどなく溢れ出し意味を成さない。
「ルネっ、早く処置をしてくれ‼︎‼︎」
「っ……」
「ルネッ‼︎⁉︎」
何も言わないルネにレアンドルの怒号が響くが、ルネは唇を噛み締め静かに首を横に振った。
「ルネ‼︎ ルネ‼︎‼︎ っ⁉︎」
それでも食い下がり、何もしようとしないルネを責め立てるレアンドルの腕に彼女がそっと触れた。
「レアンドル、様……」
「ベルティーユっ⁉︎」
「私……レアンドル様から、愛して……頂けて、幸せでした……」
「そんな事っ、これから幾らでも愛してやるっ!」
ベルティーユの白を基調としたドレスは徐々に赤く染まっていく。それだけで彼女の傷の深さが窺え、誰もが彼女が助からないと分かってしまった。
そんな中でも彼女はレアンドルを真っ直ぐに見つめ微笑んでいた。
「頼む、ベルティーユっ……行くなっ、俺を、おいて行かないでくれ……」
身体を震わせ必死に愛する人に逝くなと嘆願する姿は、何処にでもいるごく普通の青年に見えた。そこに冷酷非道と名を馳せたブルマリアスの戦士の面影はない。
「……レアンドル、さま、どうか……リヴィエを、和平を……お願い、します」
「約束する。必ず、和平を成す。そして君の望んだ平和な世を創る。だから、君は俺の側でっ、見守っていてくれ……そう、約束しただろう?」
「約束……守れそうに、なくて……ごめんなさ、い」
「っ‼︎」
彼女の大きく澄んだ瞳から涙が溢れ落ちた。
すると、ゆっくりとマリユスへと顔を傾ける。
「姉上っ‼︎」
「マリユス……リヴィエを、お願い、ね」
「はい、はいっ……」
嗚咽を洩らしながらマリユスは、どうにか言葉を絞り出すので精一杯だ。頭が真っ白だった。これが現実だと思えない。
彼女はゆっくりとモーリスやルネ、ロラン、そしてディートリヒへと順番に視線を向けた。皆静かに頷いたが、ディートリヒだけはワナワナと身体を震わせ耐え切れなくなったのか頭を抱え床に打ち付け叫び声を上げた。
哀れな姿に見ているこっちが情けなくなり、苦しくなる。
「レアン、どる……さ、ま……もし、うまれかわれ、たら…………また……あいし、て、くれ、ますか……」
「当然だ。俺が愛しているのは君だけだ。これまでも、これから先も、例え生まれ変わろうともそれは変わらない。ベルティーユ、何度でも言う、君を愛しているっ、君だけを、君をっ」
「ふふ…………わた、し……も、あいし、てま…………ーー」
ベルティーユは恥ずかしそうに笑って、ゆっくりと瞳を閉じるとそのまま目を開ける事は無かった。
長い夜が明け、窓から眩しいくらいの日差しが射し込み彼女を照らし出す。
彼の腕に抱かれ静かに瞳を閉じる姿は、神々しくさえ見えた。
レアンドルを庇ったベルティーユは胸を貫かれるが、倒れる事なく剣を掴んだ。
血がポタリと刃を伝い床に溢れる。
「ベルティーユっ‼︎‼︎‼︎」
レアンドルの叫び声が響き渡る。
彼がベルティーユに触れるが、彼女は構う事なくディートリヒを見据えた。
「お願いします、お兄様……。私は、裏切り者だって言われても、構いません。私を、嫌って、憎んでも、恨んだって……構わない……」
尋常じゃない痛みを感じている筈なのに、驚愕する程気丈に話す彼女に対して、ディートリヒは取り乱す。
目を見開き口元を震わせ「あ、あ……」言葉にならない声を発する。剣を握る手すら震え力が入らない様だ。
「だから、私で最後にして下さい……。これ以上、誰も、殺さないでっ……奪わないで、奪わせないでっ‼︎」
高く掠れた声が耳につく。
それはディートリヒに投げかけた言葉というより、彼女の悲痛の心の叫びに聞こえた。
「ブランシュ様も、他の誰も、こんな事望んでません……。どうか、ブルマリアスとの、和平を……。覚えて、いますか? お兄、様……約束、して下ったでしょう?」
「ベル、ティー、ユ……あ、あ、ああ"ー‼︎‼︎」
ディートリヒは震える手で彼女から剣を引き抜くと奇声を上げその場に崩れ落ち顔面を掻きむしる様に押さえた。
「ベルティーユっ‼︎‼︎‼︎」
力なくベルティーユの身体は崩れ落ちるが、レアンドルが抱き留めた。
「ベルティーユー‼︎ ベルティーユっ‼︎」
「姉上‼︎」
「ベルティーユ様っ‼︎」
「ベル‼︎」
一斉に皆が彼女へと駆け寄る。
レアンドルが上着を脱ぎ、必死に止血を試みるが血は止めどなく溢れ出し意味を成さない。
「ルネっ、早く処置をしてくれ‼︎‼︎」
「っ……」
「ルネッ‼︎⁉︎」
何も言わないルネにレアンドルの怒号が響くが、ルネは唇を噛み締め静かに首を横に振った。
「ルネ‼︎ ルネ‼︎‼︎ っ⁉︎」
それでも食い下がり、何もしようとしないルネを責め立てるレアンドルの腕に彼女がそっと触れた。
「レアンドル、様……」
「ベルティーユっ⁉︎」
「私……レアンドル様から、愛して……頂けて、幸せでした……」
「そんな事っ、これから幾らでも愛してやるっ!」
ベルティーユの白を基調としたドレスは徐々に赤く染まっていく。それだけで彼女の傷の深さが窺え、誰もが彼女が助からないと分かってしまった。
そんな中でも彼女はレアンドルを真っ直ぐに見つめ微笑んでいた。
「頼む、ベルティーユっ……行くなっ、俺を、おいて行かないでくれ……」
身体を震わせ必死に愛する人に逝くなと嘆願する姿は、何処にでもいるごく普通の青年に見えた。そこに冷酷非道と名を馳せたブルマリアスの戦士の面影はない。
「……レアンドル、さま、どうか……リヴィエを、和平を……お願い、します」
「約束する。必ず、和平を成す。そして君の望んだ平和な世を創る。だから、君は俺の側でっ、見守っていてくれ……そう、約束しただろう?」
「約束……守れそうに、なくて……ごめんなさ、い」
「っ‼︎」
彼女の大きく澄んだ瞳から涙が溢れ落ちた。
すると、ゆっくりとマリユスへと顔を傾ける。
「姉上っ‼︎」
「マリユス……リヴィエを、お願い、ね」
「はい、はいっ……」
嗚咽を洩らしながらマリユスは、どうにか言葉を絞り出すので精一杯だ。頭が真っ白だった。これが現実だと思えない。
彼女はゆっくりとモーリスやルネ、ロラン、そしてディートリヒへと順番に視線を向けた。皆静かに頷いたが、ディートリヒだけはワナワナと身体を震わせ耐え切れなくなったのか頭を抱え床に打ち付け叫び声を上げた。
哀れな姿に見ているこっちが情けなくなり、苦しくなる。
「レアン、どる……さ、ま……もし、うまれかわれ、たら…………また……あいし、て、くれ、ますか……」
「当然だ。俺が愛しているのは君だけだ。これまでも、これから先も、例え生まれ変わろうともそれは変わらない。ベルティーユ、何度でも言う、君を愛しているっ、君だけを、君をっ」
「ふふ…………わた、し……も、あいし、てま…………ーー」
ベルティーユは恥ずかしそうに笑って、ゆっくりと瞳を閉じるとそのまま目を開ける事は無かった。
長い夜が明け、窓から眩しいくらいの日差しが射し込み彼女を照らし出す。
彼の腕に抱かれ静かに瞳を閉じる姿は、神々しくさえ見えた。
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