姫金魚乙女の溺愛生活 〜「君を愛することはない」と言ったイケメン腹黒冷酷公爵様がなぜか私を溺愛してきます。〜

水垣するめ

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32話 いざお茶会へ

そしてお茶会当日になった。

私は社交界の時と同様に以前ノエル様に買ってもらったドレスを着て支度をする。
お茶会という名前だったのでもっと緩やかな集まりかと思いきや、実際はパーティーの時と同じくらいの規模のパーティーらしい。
ノエル様曰く、「昼間にする社交界」だそうだ。

当然今日来るのはアーノルド王子やイザベラ様だけではなく、アーノルド王子が招待した人物が来ているらしい。
勿論本来のような一対一のお茶会を最初は想定していたみたいだが、ノエル様が私への負担を鑑みてこのパーティーの形式に変更してくれたらしい。

その情報を聞いて私は安堵した。
もし一対一形式のお茶会だったらどんなボロを出していたか分からない。私がボロを出したら迷惑がかかるのはノエル様なのでそれだけは避けたかった。
ただ、その分人が増えるのでそこは気をつけなければならない。
しかしノエル様は守ってくれると約束してくれたので心の中に不安はなかった。

「よし、バッチリできたわ」
「ありがとうございますアンナさん」
「ノエル様をお呼びするわね」
「はい」

ドレスの着付けが終わってアンナが満足そうに頷いた。
このドレスを着ると自然と前回の社交界の記憶が蘇ってきた。
その時、私の準備が終わったことをアンナの知らされたノエル様が部屋の中に入ってきた。

「今日もよく似合っていますね」
「ノエル様はいつも似合っていると言ってくださいますね」
「事実ですから」

当然のような顔をしてそんな言葉をサラッと吐くノエル様に照れていると、ノエル様が私に手を差し出してきた。

「よろしくお願いします」

私はその手をとり、馬車へと乗り込んだ。
馬車に揺られながら目的地に到着するのを待つ。
馬車の中で待っている間、今日初めて会う公爵令嬢のイザベラ様について質問することにした。

「イザベラ様はどういったお方なのですか?」
「そうですね……以前も言いましたが、アーノルド王子に似て思いつきで行動するところはありますが、人間は良いですよ」
「そうなんですね」

ノエル様が「人間がいい」と言ったということは、少なくとも出会った瞬間嫌味を言われたりすることは無さそうだ。
ノエル様は人間を見る目は確かなので、そこの評価は信用できる。

「彼女は基本的に面倒見のいい性格です。見た目で怖いと思うこともあるでしょうが、中身を見てあげてください」
「はい、分かりました」

私はノエル様の言葉を心のメモに書きつけておく。
ノエル様の言葉関係なしに見た目じゃなくて中身で見るのは大切だ。

「そういえば、今日は王宮へ行くわけではないのですね」
「ええ、アーノルド王子は王宮とは別の屋敷に住んでいますので」

ノエル様の話ではアーノルド王子は王宮から離れた屋敷で暮らしているらしい。
その方がアーノルド王子の名前で社交界を開きやすかったり、他にも何か用事があるたびに動きやすいようだ。

「王宮でパーティーを開くとなると様々な許可が必要ですからね。歴代の王子は大抵屋敷で暮らすことが多いです」
「そうなんですね」
「ええ、王族といえど王宮の堅苦しいところで暮らすのは嫌だそうです」
「初めは王宮に行くと思っていたのでとても緊張してましたけど、お屋敷と聞いて少しだけ緊張がほぐれた気がします」
「それは良かったです」

ノエル様はニコリと微笑んだ。






そしてしばらく経つとアーノルド王子のお屋敷に到着した。

「ここがアーノルド王子のお屋敷……」

私は到着した屋敷を見上げる。
アーノルド王子のお屋敷はノエル様のお屋敷と同じくらい大きかった。

「リナリア」
「あ、はい!」

屋敷を見ているとノエル様に名前を呼ばれたのでハッとして差し出された手を握る。
馬車から降りるとノエル様が怪訝そうな表情で辺りを見渡した。

「変ですね……馬車も人も少ないです」
「他の参加者の方がいらっしゃらないのですか?」
「ええ、この時間ならもっと馬車が停まって、人が降りてきているはずです。それなのに──」
「来たか、ノエル」

その時声をかけられた。
聞き覚えのある声。アーノルド王子の声だ。
振り返るとそこには予想通りアーノルド王子が立っていた。

「アーノルド王子」
「ノエル、いつものように名前呼びで構わない。どうせ他に聞き耳を立てる人間はいないのだからな」
「まさか……してやられた!」

ノエル様はアーノルド王子の言葉で真の意図に気がついたのか、「しまった!」と額に手を当てた。

「私たちには本来より早い時間を伝えていましたね、アーノルド」
「えっ?」
「ああその通りだ。すまないノエル。伝えていた時間は本来のパーティーの時間より早いんだ」
「最初からおかしいとは思っていたんです。パーティーの形式に変更しようと手紙で言った時あっさりと認めるなんて……! リナリアに会いたいと言い出したのはあなたなのに……!」
「ははっ、まだ俺の理解がいないようだなノエル」

アーノルド王子が悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべる。
一方でいまだに私はアーノルド王子の意図が分からなくて首を傾げる。

「時間をずらして伝えるって、なぜそのようなことを……?」
「何故って、そうしないとじっくり話す機会がないだろう。二対二のお茶会が断られたからな、こうでもしないとパーティーの最中は避けられてじっくり話す機会がないと思ったんだ。どうせ、パーティーの最中は俺を避けるんだろう?」

アーノルド王子は肩をすくめた。

「何故避けられるのかはご自身の言動をよく思い返せば分かると思いますよ」

ノエル様はアーノルド王子を睨んだ。
しかしアーノルド王子はそれをどこ吹く風でいなす。

「せっかくノエルにできた婚約者だ。昔からの友人として見定める義務がある。そう思うだろう?」
「わ、私に聞かれても……」

アーノルド王子は当然かのようにそう言ったが、私に聞かれても困る。
それにアーノルド王子は私が『生贄』であることを知らないのだろうか。
どうせいつかは婚約破棄される身なのに私を見定めてもしょうがないと思うのだが……。
そう考えると寂しい気持ちになってきた。
私の表情に気がついたノエル様が私へ心配そうな表情で大丈夫かと尋ねてきた。

「リナリア?」
「いえ、何でもありません」

私は笑顔で首を振った。

「よし、そうと決まれば今から歓談といこう。どうせパーティーまですることは無いんだ。楽しくお茶会と行こうじゃないか」

こう、何というか面の皮が厚いというか、「あなたが言わないでください!」と言いたくなる。

「あなたが言わないでください」

と思っていたらノエル様が言った。
ノエル様はため息をついて私を気遣うように尋ねてきた。

「こうなれば仕方がありませんね……リナリア、少しだけ付き合ってもらっても構いませんか?」
「はい」

どうやらノエル様はもうアーノルド王子がもう止まらないと判断したようだ。
思いつきで行動する人物だとは聞いていたが、これほどとは。

「申し訳ありません。あなたには負担をかけないと言ったのに」
「問題ありません。私はノエル様がそばにいてくれさえすれば構いませんから」
「お前たち……」

そんなやり取りをしているとアーノルド王子が振り返った。
私は何か不味いことを言ってしまったのかと思ってドキリとした。

「……あまり見せつけるんじゃない」

私たちの前を歩いていたアーノルド王子がどこか呆れたような口調でそう言ってきた。
私は怒られたわけではないことにほっと息を吐く。

「ノエル様、見せつけるってなんでしょう……?」
「……何でしょうね」
「お前たち、行くぞ」

ノエル様は言葉でそう言いながらも意味が分かっていそうな表情だったのだが、聞く前にアーノルド王子に急かされたので結局聞くことはできなかった。
私たちはアーノルド王子のお屋敷の中に入った。
屋敷のなかは歴史のありそうな家具がたくさん置かれていた。

「この屋敷は昔から王族が使っていた屋敷なのでアンティークがたくさん置かれているんです」
「そうなんですね」

辺りを見渡していた私にノエル様がこっそり教えてくれた。
そしてしばらく歩いているとアーノルド王子がある部屋の前で止まった。

「ここだ」

アーノルド王子が扉を開いて部屋の中へ入っていく。

「では、行きましょう」
「はい」

私は緊張を抑えるために深呼吸して部屋の中へと入っていった。

「アーノルド様、遅いですわよ」

部屋の中には黒髪の美女がすでにソファに座って紅茶を飲んでいた。
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