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3話

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「裁判所ですか? 構いませんよ?」
「なっ、何だと!」
「だから裁判所に訴えればいい、と言ったんです。私がフローラを虐めたということが裁判で認められるなら、私に罰を課すことが出来るじゃないですか。あなた達の主張が正しいなら別に問題無いでしょう?」

「ただし」と私は付け加える。

「こちらからも条件を付け加えさせて貰います」
「何だ」
「万が一あなた達が裁判に負けたなら、レイ王子には冤罪をかけられたとして慰謝料を、お父様には家督の譲渡を請求させて貰います」
「なっ! それは──」

 父が叫ぶ。
 しかし私はすぐにそこへ畳み掛けた。

「あら? 自分たちは絶対に正しいんですよね? なのに裁判で勝つ自信が無いんですか?」

 私はレイ王子とアーノルドを嘲笑する。
 すると二人ともすぐに食いついた。

「いいや! ある! いいだろう! その条件、受けてやる!」
「ああ、問題ない! 私たちは正しいのだからな!」

 私は心の中で「本当に馬鹿だな」と笑った。
 こんな条件受けなくていいのに。
 ちょっと挑発しただけで勢い良く食いついた。

 当然私がフローラを虐めていた証拠など何処にもないので、裁判であちらに勝ち目は無い。
 私の勝ちだ。

「そっ、そんなの駄目よ!」

 そう考えていると、今まで黙っていたフローラが話し始めた。

「私のためにそんな大事なものを差し出さないで!」

 フローラは二人を必死に引き止める。
 フローラには私が虐めていないと分かっているから、裁判では勝ち目がないことが分かっているのだろう。
 二人がこんなふうに暴走するのも計算外だったようだ。
 思いもよらない展開になって焦っているのがバレバレだった。

 焦るフローラに、レイ王子は優しい表情を向ける。

「私たちの心配をしてくれるなんて、フローラはとても優しいね。でも大丈夫。正義は私たちにあるんだから」
「で、でも……」
「安心しろフローラ! 私たちが守ってやるから!」

 アーノルドがもう勝ったかのように笑う。
 フローラはそんな二人を見て絶望の表情になった。
 フローラが私の方を向く。

 私はそんなフローラに対してニッコリと笑いかけた。

 どうせいつもみたいに私が黙っていると思ったんだろうけど、もう我慢しないわ。
 あなたのこと、徹底的に潰してあげる。
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