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第一章
運命を変える意志
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「……お兄様……私は自分で歩いて部屋まで行けますから……。どうかおろして、食事の席に戻って……」
エルファンス兄様に迷惑をかけたくなくて涙目で懇願する。
「駄目だ。このまま部屋に戻っても気になって、とても食事が喉を通りそうにない。まったく、我ながらどうかしてしまったらしい。お前があまりにも健気だから……」
ほどなく寝室へ到着すると、エルファンス兄様は壊れ物のように私をベッドに下ろした。
それから侍女を呼んで洗面器を持って来させ、下がらせる。
二人きりになるとベッドの端に腰掛け、お兄様は寝ている私の頭を撫でてくれた。
そうしながら上から観察するようにじっと見つめてくる。
「まだ本調子じゃないようだな。酷く顔色が悪い」
「少し休めば大丈夫……。食後のお茶までには戻って、皆に元気な顔を見せないと……」
私の言葉にエルファンス兄様が深く溜め息をつく。
「他人に気を使うなんてお前らしくない。本当にどうしてしまったんだ……どうしてこんなに可愛くなってしまったんだ……」
「……お兄様……だめ……!」
顔が下りてくるのを見て、何をされるか察知した私は、慌てて顔を手で覆う。
けれど非力な腕は一瞬ではがされ、次の瞬間、エルファンス兄様の唇で唇を塞がれていた。
幸いにも短いキスで私はほっとする。
だってされている間、心臓がドキドキし過ぎて呼吸がうまくできないんだもん。
甘い沈黙のあと、お兄様が話を重い調子で話を切り出す。
「……実は先日、父から皇子達とお前の婚約についての意見を求められたんだ」
衝撃を受けて私は息を飲む。
知らなかった! 11歳の時点で婚約話が出ていたなんて!
「先日セシリア様から打診があったらしい。お前を息子のどちらかと婚約させたいと」
「そんな……」
思わず血の気が引いてめまいがする。
頭を抱えた私にエルファンス兄様が意外そうな声を上げる。
「まさか、ショックを受けてるのか? お前はあの双子達が大好きだろう?」
「私は……私は…」
婚約して死亡ルートは絶対嫌!
「婚約なんてしたくない」
恐怖で全身が震える。
「うん、俺も同じ気持ちだ。以前は早く追い払ってしまいたかったが、今はお前を俺の手の届かないところにはやりたくない」
「お兄様……」
私は嬉しさにぼーっとしてしまう。
「ところが、決まってないのは双子のどちらとするかということだけで、婚約自体は決定事項らしい」
そっ、そんなっ――嘘でしょう!?
ということは、婚約回避不能?
どうにかならないの!?
死にたくない一心で頭をフル回転させた私は、その時、天啓のように閃く。
皇族の花嫁は「純潔」でなくてはいけないということを。
たしか以前エルファンス兄様に夜這いをかけた時も「お前の大好きな皇子達と結婚出来なくなるぞ?」と脅され記憶がある。
そうやっていつもお兄様には拒絶されっぱなしだったけど……。
しかし、この私フィーネは、早熟な肉体をした美少女。
13歳までに男性と事に及べば、お父様も皇子達との縁談を断るしかなくなる。
探せば絶対、相手をしてくれる男性がいるはずだよね。
そうだ、13歳の春までに経験しちゃえばいいのだ!
「フィーネ? 何を考えている?」
「……私、二人とは絶対婚約しないわ……絶対に……!」
そう、どんな手を使っても。
「ああ、そうだな。お前が嫌なら俺も協力しよう」
エルファンス兄様の優しい言葉に力を得て立ち上がる。
「もう大丈夫。お兄様、食堂に戻りましょう」
「無理していないか?」
「うん」
エルファンス兄様は観察するように私の顔を見つめたあと、さっと唇を重ねてくる。
「なら、行こう」
いつまでも弱ってばかりいられない。とにかくせっかく生まれ変わったんだもの。
味方してくれるお兄様に報いるためにも、長生きして幸せにならなくちゃ!
エルファンス兄様に迷惑をかけたくなくて涙目で懇願する。
「駄目だ。このまま部屋に戻っても気になって、とても食事が喉を通りそうにない。まったく、我ながらどうかしてしまったらしい。お前があまりにも健気だから……」
ほどなく寝室へ到着すると、エルファンス兄様は壊れ物のように私をベッドに下ろした。
それから侍女を呼んで洗面器を持って来させ、下がらせる。
二人きりになるとベッドの端に腰掛け、お兄様は寝ている私の頭を撫でてくれた。
そうしながら上から観察するようにじっと見つめてくる。
「まだ本調子じゃないようだな。酷く顔色が悪い」
「少し休めば大丈夫……。食後のお茶までには戻って、皆に元気な顔を見せないと……」
私の言葉にエルファンス兄様が深く溜め息をつく。
「他人に気を使うなんてお前らしくない。本当にどうしてしまったんだ……どうしてこんなに可愛くなってしまったんだ……」
「……お兄様……だめ……!」
顔が下りてくるのを見て、何をされるか察知した私は、慌てて顔を手で覆う。
けれど非力な腕は一瞬ではがされ、次の瞬間、エルファンス兄様の唇で唇を塞がれていた。
幸いにも短いキスで私はほっとする。
だってされている間、心臓がドキドキし過ぎて呼吸がうまくできないんだもん。
甘い沈黙のあと、お兄様が話を重い調子で話を切り出す。
「……実は先日、父から皇子達とお前の婚約についての意見を求められたんだ」
衝撃を受けて私は息を飲む。
知らなかった! 11歳の時点で婚約話が出ていたなんて!
「先日セシリア様から打診があったらしい。お前を息子のどちらかと婚約させたいと」
「そんな……」
思わず血の気が引いてめまいがする。
頭を抱えた私にエルファンス兄様が意外そうな声を上げる。
「まさか、ショックを受けてるのか? お前はあの双子達が大好きだろう?」
「私は……私は…」
婚約して死亡ルートは絶対嫌!
「婚約なんてしたくない」
恐怖で全身が震える。
「うん、俺も同じ気持ちだ。以前は早く追い払ってしまいたかったが、今はお前を俺の手の届かないところにはやりたくない」
「お兄様……」
私は嬉しさにぼーっとしてしまう。
「ところが、決まってないのは双子のどちらとするかということだけで、婚約自体は決定事項らしい」
そっ、そんなっ――嘘でしょう!?
ということは、婚約回避不能?
どうにかならないの!?
死にたくない一心で頭をフル回転させた私は、その時、天啓のように閃く。
皇族の花嫁は「純潔」でなくてはいけないということを。
たしか以前エルファンス兄様に夜這いをかけた時も「お前の大好きな皇子達と結婚出来なくなるぞ?」と脅され記憶がある。
そうやっていつもお兄様には拒絶されっぱなしだったけど……。
しかし、この私フィーネは、早熟な肉体をした美少女。
13歳までに男性と事に及べば、お父様も皇子達との縁談を断るしかなくなる。
探せば絶対、相手をしてくれる男性がいるはずだよね。
そうだ、13歳の春までに経験しちゃえばいいのだ!
「フィーネ? 何を考えている?」
「……私、二人とは絶対婚約しないわ……絶対に……!」
そう、どんな手を使っても。
「ああ、そうだな。お前が嫌なら俺も協力しよう」
エルファンス兄様の優しい言葉に力を得て立ち上がる。
「もう大丈夫。お兄様、食堂に戻りましょう」
「無理していないか?」
「うん」
エルファンス兄様は観察するように私の顔を見つめたあと、さっと唇を重ねてくる。
「なら、行こう」
いつまでも弱ってばかりいられない。とにかくせっかく生まれ変わったんだもの。
味方してくれるお兄様に報いるためにも、長生きして幸せにならなくちゃ!
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