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第四章
激しい一夜が明けて……
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――翌日……私は……見事なまでに足腰が立てなくなっていた……。
狭い寝台に一緒に寝ているので、身体がほぼお兄様の上に乗り上げている状態で、硬い胸板を枕に目覚める。
先に起きていたのか寝てないのか不明だが、既に目を開けていたお兄様が、身じろぎした私の頭に下からちゅっと口づけをしてくる。
「おはよう……フィー」
「お……おはよう、お兄様……」
肌を合わせたまま、裸同士で寝ているという構図がたまらなく恥ずかしくて死にそうだった。
お兄様の身体は朝からとても熱い。
半身を起こそうとベッドに手をつくと、ぎゅ~っとお腹が鳴ってしまい、昨日の昼食以降何も食べていない事を思い出す。
「お腹が空いたのか?」
「うん」
私の腰を抱きながらエルファンス兄様は身を起こし、最初に何をするかと思えば、枕の下から眼鏡を取り出してかけてきた。
「あの大神官は嫌いだが、この眼鏡については何重にもお礼を言いたい気分だ」
しみじみした呟きだった。
私のほうはといえば、複数の理由で立つのすら辛い状態で、着替えをするにもエルファンス兄様の助けを借りる必要があった。
弱った私を見てお兄様はなんだか嬉しそうで凄く満足そうだった。
階下へ降りるのも自力では無理そうだったので、素直にエルファンス兄様抱っこされて移動する。
一階のラウルの店の酒場兼食堂部分へ行くと、中には複数の人影があり、そこには物凄く機嫌が悪そうな仏頂面でテーブルについているカーク・クラフトもいた。
向かい側に座っているキルアスもなんだかとても神妙な面持ちをしている。
「……お前らのせいで俺はすっかり寝不足だ!」
私たちが現れるとすぐにカークの怒りの原因が、直接その口から説明される事となった。
「止せよ……カーク……そういう話はしないのが礼儀だよ」
キルアスが気まずそうに制止したが、カークは断固として言い放った。
「いや、俺はあえて言わせて貰う! この宿屋は壁が薄いのに、一晩中お前ら何してんだよ!
安眠妨害もいいところだ! まさかわざと聞かせていたんじゃないだろうな」
文句を言われたエルファンス兄様は涼しげな顔でそれに答える。
「フィーが俺の物だとお前達にも教えてやろうと思ってな」
ぎゃっ! そういう意図であんなに色々激しかったのっ!
状況を理解するとともに、私はもう恥ずかしさのあまり全身が発火しそになる。
穴があったら入りたいというか、もうどこかに潜り込んで隠れてしまいたい!
「他人の趣味をとやかく言う趣味はないが、生憎俺は面食いだから、わざわざそんな事、教えて貰う必要なんてない!」
カークはなおも怒りを発散させながら、お兄様に抗議した。
その横からキルアスが率直な質問をしてきた。
「私の思い違いでなければ、あなたはガウス帝国の魔導師で、『銀色の悪魔』と呼ばれている、エルファンス・ディー・ジルドアですよね?」
「……答える義務はないな」
相変わらずお兄様は感じが悪かった……。
そっか、エルファンス兄様って他国にも名前が知れ渡っているぐらい有名人だったのか。
妹なのに知らなかった。
しかも異名が銀色の悪魔という……お兄様のトラウマをもろに刺激するような名称だなんて……。
「へー、天才魔導師エルファンスと言えば、ガウス帝国の中枢を担う人物じゃないか。
あんたそんな凄い人物だったのか」
「人違いだ」
お兄様はきっぱりと否定したけれど、昨日あんな活躍した後では全く説得力がない。
「とにかく、これでパーティーメンバーが完璧な構成になったな!」
信じがたい事に、そこで死にかけても全然懲りてないカークが不敵にもニヤリ笑いをした。
まっ、まさか……エルファンス兄様もパーティーの一員に加えようとしている?
その神をも恐れぬ発言に私は心底びっくりして、思わずカーク・クラフトの顔を二度見してしまった。
狭い寝台に一緒に寝ているので、身体がほぼお兄様の上に乗り上げている状態で、硬い胸板を枕に目覚める。
先に起きていたのか寝てないのか不明だが、既に目を開けていたお兄様が、身じろぎした私の頭に下からちゅっと口づけをしてくる。
「おはよう……フィー」
「お……おはよう、お兄様……」
肌を合わせたまま、裸同士で寝ているという構図がたまらなく恥ずかしくて死にそうだった。
お兄様の身体は朝からとても熱い。
半身を起こそうとベッドに手をつくと、ぎゅ~っとお腹が鳴ってしまい、昨日の昼食以降何も食べていない事を思い出す。
「お腹が空いたのか?」
「うん」
私の腰を抱きながらエルファンス兄様は身を起こし、最初に何をするかと思えば、枕の下から眼鏡を取り出してかけてきた。
「あの大神官は嫌いだが、この眼鏡については何重にもお礼を言いたい気分だ」
しみじみした呟きだった。
私のほうはといえば、複数の理由で立つのすら辛い状態で、着替えをするにもエルファンス兄様の助けを借りる必要があった。
弱った私を見てお兄様はなんだか嬉しそうで凄く満足そうだった。
階下へ降りるのも自力では無理そうだったので、素直にエルファンス兄様抱っこされて移動する。
一階のラウルの店の酒場兼食堂部分へ行くと、中には複数の人影があり、そこには物凄く機嫌が悪そうな仏頂面でテーブルについているカーク・クラフトもいた。
向かい側に座っているキルアスもなんだかとても神妙な面持ちをしている。
「……お前らのせいで俺はすっかり寝不足だ!」
私たちが現れるとすぐにカークの怒りの原因が、直接その口から説明される事となった。
「止せよ……カーク……そういう話はしないのが礼儀だよ」
キルアスが気まずそうに制止したが、カークは断固として言い放った。
「いや、俺はあえて言わせて貰う! この宿屋は壁が薄いのに、一晩中お前ら何してんだよ!
安眠妨害もいいところだ! まさかわざと聞かせていたんじゃないだろうな」
文句を言われたエルファンス兄様は涼しげな顔でそれに答える。
「フィーが俺の物だとお前達にも教えてやろうと思ってな」
ぎゃっ! そういう意図であんなに色々激しかったのっ!
状況を理解するとともに、私はもう恥ずかしさのあまり全身が発火しそになる。
穴があったら入りたいというか、もうどこかに潜り込んで隠れてしまいたい!
「他人の趣味をとやかく言う趣味はないが、生憎俺は面食いだから、わざわざそんな事、教えて貰う必要なんてない!」
カークはなおも怒りを発散させながら、お兄様に抗議した。
その横からキルアスが率直な質問をしてきた。
「私の思い違いでなければ、あなたはガウス帝国の魔導師で、『銀色の悪魔』と呼ばれている、エルファンス・ディー・ジルドアですよね?」
「……答える義務はないな」
相変わらずお兄様は感じが悪かった……。
そっか、エルファンス兄様って他国にも名前が知れ渡っているぐらい有名人だったのか。
妹なのに知らなかった。
しかも異名が銀色の悪魔という……お兄様のトラウマをもろに刺激するような名称だなんて……。
「へー、天才魔導師エルファンスと言えば、ガウス帝国の中枢を担う人物じゃないか。
あんたそんな凄い人物だったのか」
「人違いだ」
お兄様はきっぱりと否定したけれど、昨日あんな活躍した後では全く説得力がない。
「とにかく、これでパーティーメンバーが完璧な構成になったな!」
信じがたい事に、そこで死にかけても全然懲りてないカークが不敵にもニヤリ笑いをした。
まっ、まさか……エルファンス兄様もパーティーの一員に加えようとしている?
その神をも恐れぬ発言に私は心底びっくりして、思わずカーク・クラフトの顔を二度見してしまった。
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