【完結】君に捧げる異世界ゾンビゲーム

黒塔真実

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第四話「こんなゾンビだらけの世界なんてもう沢山だ!」と彼はわたしに銃口を向けた

Chapter 4、突然の銃声と急展開からの緑のみぃくん話

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 わたしと怜は同時にソファーから立ち上がる。

 ゾンビには銃を撃つような知能はないから、表で生存者が応戦しているのだ。
 ベランダからでは援護するのに死角が多い。

 わたし達は一瞬顔を見合わせたあと、それぞれ銃を手にして廊下へ飛びだした。


 階段を一気に駆け下りている途中、追加でキャーーーッという悲鳴が聞こえてくる。

 ぶつかるように怜が玄関扉を開けた瞬間、ゾンビに追われながら緑が走ってきた。

 わたしは瞬時にショットガンの狙いを定め、1番近くのゾンビの頭を吹き飛ばす。
 すかさず怜が緑の腕を掴んで玄関内に引き入れ、素早く扉を閉めた。

「大丈夫か、緑!」

「……みぃくんに……似た服装が見えたから……」

 床に座り込んだ緑は、激しく肩で呼吸をしながら、うめくように言った。
 右手にはマグナム銃が握られていた。

「だからって、なんで俺に黙って、勝手に外に出た?」

「……だって、怜さんは、みぃくんを……撃ち殺すって言ったでしょう!」

 緑は癇癪を起こしたように叫ぶ。
 玄関は鉄板で窓が塞がれていて暗かったので、わたしはポケットからスマホをだしてライトモードにした。

 照らしだされた緑の首のつけ根にはえぐれたような傷口があった。
 状況と位置と大きさから、ゾンビに噛まれた痕としか思えない。
 緑を見下ろしている怜も絶句した。




 ――数十分後、二階のリビングはすっかりお通夜ムードになっていた。
 ベランダの窓を背に床に座る緑は、先刻からえんえんと彼氏との思い出話を語っている。

「それでね、それでね、みぃくんは、初めての時も、すっごく優しくて……」

(これはあれだ、みぃくん話が止まった時が、緑が人間を止めた合図だな)

 ゾンビの毒が回っていくのに比例し、緑の顔から血の気が失せていく。

 圭は見るに耐えないというように両手で顔を覆って、キッチンの食卓に座っていた。

 わたしと並んでソファーに座っている怜が耳打ちしてくる。

「ゾンビになる前に俺が緑をベランダから落とす」
「大丈夫? 説得して、自分から飛び降りて貰ったほうがいいんじゃない?」

 緑の体重は推定100キロ以上だった。
 
「聞こえてるよ」

 緑がギロっとわたし達を睨みつけ、声を低める。

「わたしがこんな状況なのに、よく二人でいちゃついていられるね? どーせ二人で隠れてヤリまくっているんでしょう? 分かっているんだから! わたしのこともデブだと馬鹿にして、彼氏の画像も加工で全部作り話だと思っているんだっ!!」

 やりまくるどころか、まだ一度もやってないし、誰もそんなこと言ってない。

「緑、落ちついて」

 一応、なだめてみる。

「ちょっとルックスがいいからって、揃ってわたしを見下しやがって!」

 今まで溜まっていたうっぷんを吐き出すように、緑は言葉を続ける。

「ねぇ、晶ぁっ! 言っておくけどあんたみたいな見てくれだけの女は、男にとってヤるためだけの存在なんだからぁ。本当に愛されるのはわたしみたいな尽くす女なんだからねっ。みぃくんだってわたしが一番好きだったんだぁっ。なのにあのビッチが、わたしはみぃくんの財布だって……!」

 なんだか複雑な三角関係だったらしい。
 興奮した緑は尖った爪で自分の顔をかきむしりながら、だんだんわたしが恋敵の女にでも見えてきたのか、ペッ、ペッと唾を吐きかけてきた。

 幸い唾液は届かなかったが、こらえきれなくなったように怜が立ち上がって宣告する。

「緑! 自分でベランダから飛ぶか、俺に落とされるか選べ」

 
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