ひまわりの涙

ゆうぜん

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プリムラ

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夏の暑さが終わりを告げ、秋の予感を感じさせる。吹く風は自然と涼しくなり、秋の足音が聞こえてくるようだった。学校が始まり、一つ変わったことがあった。それは、
「おはよう、璃人。また夜遅くまで起きてたの?」
塔坂が学校に来るようになったことだ。クラスメイトは初めは驚いていたが、もう慣れていた。塔坂もなんだか嬉しそうだ。こうして見ると夏休み前が嘘のようだった。部活にも入らず預本や他の友達と笑い合う毎日。思えばその時ほど泣くことに対して感情を露わにすることはなくなった。これも、塔坂のおかげかもな。そう思いつつ俺は襲いくる眠気に勝てずそのまま眠りについた。
ーーそこは真っ暗な部屋だった。ただベッドと本棚があるだけで、他には何もない。途端、窓から強烈な風が入ってきた。風が止み、うっすらと目を開ける。そこには散らばった紙とレンズの割れた眼鏡。そしてなにも映さないパソコンをただ見つめる塔坂の姿があった。ベッドの上でパソコンを見つめる塔坂の瞳は、光を映さず、まるで深海のように静かにそのを見つめていた。全身に走る不安と恐怖が視界をブレさせる。足元が歪み、奈落へと落ちていく。手足が震え、寒さに体が強張る。落ちていった先には、真っ白な空間が広がっていた。先が見えない空間を歩く塔坂が見え、俺はその後を追いかける。ひたすら歩く塔坂に、俺は声をかけようとした。だが出来なかった。目の前にいるのに、何故かそこで足が止まった。先ほど感じた恐怖が心を圧迫する。立っていることができず、その場に崩れ落ちる。これは何なんだ?一体これはどこから来るんだ?俺は目の前の塔坂を見る。見下す塔坂の口が開く。
『君も感じるんだね。自身の喪失を。それは君の心を付いて回る。どうか、忘れないで』
再び床が崩れて奈落へと落ちていく。どんどん小さくなるその姿に俺は必死に手を伸ばす。だが暗闇がその姿を覆い尽くす。自分の形も分からなくなり、残ったのは心の痛みだけだった。
「……っ!」
驚いて顔を上げる。目の前には塔坂が立っており、心配そうに俺を見ている。
汗が止まらず、奈落へ落ちた感覚が体に残っている。
「大丈夫、璃人?うなされてたみたいだけど…」
俺は汗を拭い冷静を取り戻す。
「あ、あぁ。ごめん、もう大丈夫だ」
「そう。良かった。そろそろ先生が来るから席戻るね。授業中も寝ちゃダメだよ」
「分かってるよ」
嫌でも眠れそうにない。あの恐怖は一体何だったのだろう。俺はまだ残る心の痛みに、不安を覚えた。


劇の練習は終盤に差し掛かり、最後のシーンを通すだけだった。
ポルカは人々を笑わせるために町へ行き修行を始めた。ケインとルミアも無事家に到着したと今朝手紙が届いた。人を笑わせるのは好きだ。溢れ出す笑顔はその人の本当の顔を表しているから。ポルカは自分を見てくれる人を大事にし、毎日町の広場でその腕を磨いた。ある日、仕事を終え小道具の片付けをしていた時、高そうなコートを着て、帽子を目深にかぶる男性が声を掛けてきた。その男はポルカの腕を見込んでサーカスのトリをやってほしいと頼む。こんなチャンスは二度とないとポルカはすぐさま返事をした。
それから懐かしいサーカスの雰囲気に心踊らせポルカは練習に励んだ。ポルカに与えられた役はクラウン。つまり道化だ。サーカスが始まる前の前説とトリをやることになった。クラウンとして前説は当たり前のことだが、トリは初めてだった。このサーカスは人々を笑わせるだけでなく観客の視線を惹きつけるストーリー性があるステージだった。元々ポルカがいたサーカス団は小規模で、何人かの役者が複数の担当を担うのが普通だった。だが今回は違う。規模も人も倍以上いる中のトリは想像を絶する程過酷なものだった。さらに自分はクラウンだ。周りを笑わせ自分の本性は見せない。ステージに出続ける限り観客から笑いを失わせちゃいけない。そのプレッシャーがポルカの心に重くのしかかる。
舞台の本番が近づき、空気は一層ピリピリしていた。そんなある日、ポルカをスカウトしたコートの男性が練習を見にきた。ポルカはお礼を言おうと前に出る。すると、男性はポルカを突き倒した。そして、
「よう。このサーカスでちゃんと道化としてできているか?」
周囲から笑いが起こる。ポルカはすぐさま立ち上がり、その人にお辞儀をする。
「僕は、あなたのおかげでまた人を笑わせることが出来ます。このチャンスに感謝を。道化としてこのサーカスをかならず成功してみせます」
「それでいい。おい、今回はバロッサ家が見に来る。恥を晒すなよ」
「バロッサ家って……」
ポルカは男性の袖を掴み、
「あなた……ケインとルミアのお父様ですか?」
「ほう……お前、あの二人を知っているのか?話を聞かせろ」
男性はポルカの腕を掴み外へと出る。他の役者が笑いながらポルカを見ている。ポルカ自身も気付いていた。この話はしてはいけなかったと。だってバロッサ家は……
「さぁ、言え!二人はどこにいる!?」
男性はポルカの腹を殴り凄まじい怒号と共にポルカの胸ぐらを掴む。
「かは……二人は…貴方にひどく怯えて、いた。知っていても、言うことは出来ない……」
「そうか。なら、これではどうだ?」
男性は地面に倒れるポルカを足で蹴り、両手を足で踏みつけた。
「がっ……!」
「言わなければ足はどかん。さぁ、言え!!」


「ちょっといいか?」
瀬川先輩が手を挙げ俺たちを見る。その声はやけに暗かった。
「このシーンについてなんだが、塔坂。ちょっと話がある。いいか?」
「はい」
「すまんな。急に止めて。悪いが今のシーン抜きで練習しててくれ」
「分かりました」
そう言い塔坂を連れて会議室を出る。俺は立ち上がり、手首を回す。コートの男性を演じる預本に近寄り、
「どうしたんだろう、変更点でもあるのかな?」
「さぁな、それより手は大丈夫か?思い切り踏んではいないが……」
「ん、大丈夫」
二人が出て行った先を見て、何故だか不安になる。瀬川先輩はこのシーンでどうして急にストップをかけたのだろう。塔坂を連れて行ったって事は台本に何らかの違和感があったのか、それとも……
「璃人!おい、聞いてんのか?」
「え、何?」
預本は俺の手を掴み、
「この後のシーンやってみようぜ」
「でも、もしかしたら変更になるかも…!」
「だが、ラストは変わらないだろ」
「……そうだな」
塔坂の話によると、最後の場面は最初から決まっていたらしい。今のシーン抜きでやるのは少し腑に落ちないが、
「いいよ。先にやってみよう」
「そうこなくっちゃ!」
俺たちは台本を持ち直し、ページをめくる。他の人も台本を持ち集まってくる。
「じゃあ、瀬川に代わって私が監督するからみんな準備はいい?」
「はい!」
「よし、それじゃあ30ページの最初から。コートの男性とポルカが向かい合うシーン!」
俺の前に預本が立ち、お互い目を見る。二人が長く話すのはここからだ。預本と同じ舞台の上で演じられる。それが叶うんだ。俺は弾む気持ちを抑え、目を瞑る。辺りは薄暗い森の中。不気味で怪しい雰囲気の中、目の前にいるのは
目を開け前を見る。僕は重い口を開けた。



「台本について。何か変更点があるんですか?」
会議室から離れて、階段を降りたすぐの廊下。部活動が始まり外の声が遠くから聞こえる。分かってはいた。こうなる事を。だって瀬川先輩は……
「ここで話そう」
理科準備室のドアを開け、入るよう促される。カーテンが閉めきったその部屋は薄暗く、物が散乱していた。
瀬川先輩が中に入り、ドアを閉める。途端、鍵がかかった音がした。驚いて振り返ると、手を後ろに回し、ドアが開かないかチェックしていた。
「穏やかじゃないですね。どうしてここまでして話す必要があるんですか?」
「お前も分かってるだろ」
後ずさりした足に段ボールが当たり、思わず後ろに尻餅をつく。埃が舞い、咄嗟に腕で口を押さえる。
瀬川先輩はその場にしゃがみ、台本を突き出す。
「なんだこの結末は!?お前が書きたかったのはこんなものか!?こんな……生きてる心地がしない、空っぽの心か……?」
前髪で隠れてうまく前が見えない。ずしんと心が重くなる。
「自分でも分かってるだろ。ポルカは古海をイメージして作られたキャラだ。あいつのが上手いのを利用してるのは分かる。だが、このシーンでお前はあいつに何を求めてる?傷ついて、兄妹の事を言わないポルカに男性はポルカから笑顔を奪う。笑わなくなったポルカが、生きる意味をなくす。それで……どうしてこんな結末になるんだ……」
分かってる……僕の中にある無視できない心が。どうしてもそれを求めてしまう。それを書かずにはいられないんだ。
「僕は璃人に期待してるんです。この劇が終わったらきっと璃人は分かるでしょう。を。僕はこの話で気付かせてあげたい。璃人が、もうで泣かなくていいってことを。本当の気持ちに素直になればいいって」
「だからって!!」
瀬川先輩が僕の顔を上げさせる。必死な顔が、目に映る。
「お前が居なくなるような、この結末に古海は本当に気づかないとでも思ってるのか!……この台本はお前の古海に対する思いが溢れてる。でも!それより濃く書かれてるのは、お前自身の心だ。もう少し周りに頼って自分を大切にしたほうがいい……じゃないとお前は……」
激昂する思いが俺の言葉に熱を帯びさせる。塔坂がふと笑った。目に光がない、まるでこの世界を見ていないかのような諦めた笑み。思わず汗が出る。こんな顔をするのか……こいつは……
「……先輩がそこまで言うなら少しだけ変えてみます」
俺の手を顔から剥がし、塔坂は立ち上がる。
「まて、塔坂……!」
俺は手を伸ばした。だが、塔坂は見向きもせずドアの鍵を開ける。
「このことは、璃人には秘密ですよ」
そう言い部屋を出る。
まだ内に残る熱が、やり場のない思いが、拳を振るわす。
「くそっ…!!」
壁に打ち付けられた拳は爪が食い込むくらいに握られ、やがて音もなく下される。
塔坂が一番分かっているはずなんだ。この話はポルカだけじゃなくて、みんなが何かを失っている。それは境遇とか感情だけじゃなくて、作者自身の心もそうなんだ。それに気付いているのにどうしてあいつは一人で抱え込もうとしてるんだ。どうして傷付かずにいられるんだ。耐えられないだろう、こんな苦しみ。俺は理解してお前を救ってやりたいのに…
「やっぱり……古海じゃないとダメなのか……」
流す涙が綺麗すぎて思わず魅入ってしまったのを思い出す。
どうか、塔坂を救ってやってくれ……アイツは、支えてくれる人がいないとダメなんだ……
胸が苦しくなる。分かっているのに何もできない自分が嫌になる。古海なら、救えるだろうか。あいつの心を、受け止めてくれるだろうか。もうそれしか道がない。あいつが、救われる道が。
どうか、気付いてくれ……

会議室に続く廊下を歩く。時折声が聞こえて、それが璃人の声だと分かる。練習をしているのか。熱心だな…
思わず口が緩む。だが、瀬川先輩が言った言葉が頭をよぎり、緩んでいた口がつぐむ。気付かずにいられれば良かったのに。この思いが、他人に気付かれるなんて。璃人は僕に秘密を言われた時、こんな気持ちだったのかな。それはすごく悪いことをしたな。居心地が悪くて、心が落ち着かない。隠していた心が暴かれるのは、こんなにも苦しいのか。
ひとつ深呼吸をし、会議室のドアを開く。
何もないように、振る舞わなくちゃ。
「ごめんね、中断させちゃって」
「お、塔坂!何話してたんだ?」
璃人は笑顔でこちらに向かってくる。僕はそれに困った顔で返す。
「んー、ちょっと台本に変更があってね……みんな覚えてきてくれたのに悪いけど最後のシーン、書き直すことになったから」
「えー!?今そのシーンやってたのに!?」
「ごめん……だから……」
璃人は僕の顔を見て言う。
「いいよ。俺は気にしてない」
「……ありがとう。今日はもう帰ります。台本書き直さないと」
僕は部屋の隅に置かれていた鞄を持ち、帰る支度をする。
「塔坂君、台本、ゆっくりでいいから」
「ありがとうございます、大佳先輩。でもみんなの練習を止めるわけにはいかないのでなるべく早く書きますね」
軽く会釈をして会議室を後にする。前から瀬川先輩が歩いて来た。その足取りは少し重くて、暗い顔をしていた。
「塔坂、帰るのか?」
「はい、台本を直さないとなので」
瀬川先輩は一瞬目を逸らし、決意したように僕を見る。
「どうしても、言えないのか?せめて家族にくらい」
「先輩」
途中で言葉を遮る。その声は強く、でも少し寂しい表情をしていた。
「僕は、一人で生きられる人なんていないと思ってますよ。僕は、誰かに頼らないと生きていけない奴なんです」
「なら、お前のその気持ちだって誰かに頼れば…!」
「それは無理です」
「どうして!?」
途端、開けられた窓から風が吹く。風になびく髪は塔坂の表情に影を落とす。
「僕は、この気持ちを誰かに知られたくない」
言葉が喉に詰まって声が出ない。いくら俺が言っても、こいつにはもう届かない。それが分かってしまって、空いた口が塞がらない。
「瀬川先輩、どうか、璃人にだけは言わないで下さい。璃人は自分の事だけ考えればいい。それが、最優先ですから」
古海のことを語る塔坂はいつも優しい笑みをする。それと同じくどこか寂しい声色で話す。お前が古海と話したのは夏休みに入ってすぐだったと聞く。どうして古海にそんなに固執するんだ。お互いのことを知って間もない二人の間にどれだけの言葉が交わされたんだ。塔坂の中で古海はどれだけ大きい存在なんだ。
ゆっくり通り過ぎる塔坂に、俺は動けずにいた。掛けてやる言葉が見当たらないどころか声が発せられない。塔坂と俺の距離が離れていく。
心と、歩幅が遠くなる。手は届かず、声も響かない。俺は真逆に会議室へと足を運ぶ。前へ前へと進む足取りは重く、張り詰めていた糸がぷつんと切れる。
後は…お前に任せた。
会議室のドアを開け、詰まっていた喉から言葉が出る。
「待たせてごめんな!今日はもう解散!明日も部活は休みだ!」
声が響きざわざわと動き出す部員を横目に俺はドアのすぐ近くにいた古海に話しかける。
「古海、ちょっといいか」
「はい、何ですか?」
「塔坂を……ちゃんと見ていてくれ」
「?……分かりました」
もう、お前の行動だけが頼りなんだ。
俺はそのままみんなが会議室から出ていくのを見届けようとその場に留まった。ふと横から俺を呼ぶ小さな声が聞こえた。声がした方向をみると、大佳が小さく手招きしていた。俺は近づき、前を見る。
「なんだ?俺もすぐ帰るぞ」
「塔坂君と何話してたの?」
さすがにさっきの事は言えないので俺は台本の話をした。
「あのシーンと最後の場面、ちょっと気になったんだ。だから塔坂に直しを」
「違うでしょ。明らかに様子がおかしいもの」
「台本でちょっとな。塔坂もこの話には思うところがあってそれで…」
大佳は俺の顔を覗き込み、
「ま。そういうことにしておくよ。私は部員全員のことを気にかけてはいるけど、内面の問題は個々が解決しないと意味がないって思ってる。それは私が入っていい問題じゃないことぐらい分かってるから」
大佳はみんなが帰る背中を眺めて言った。こいつは表に出るより裏方に徹する方が好きなんだ。一人一人の動きをよく見てる。それはなんでも助ける訳じゃなくて、引いて見ることも大事だってことも分かってる。俺とは全く違う。やっぱすげぇや、こいつは。
「お前はほんと小さい頃から変わんねぇな」
「幼馴染だもの、友也を見てこんな考え方になっちゃったのかも」
「俺のせいか?」
「ふふ、そうかも」
そう言いながら俺たちも帰る準備をする。
「塔坂君、心配なの分かるよ」
「え?」
突然の言葉に驚いて鞄を落とす。慌てて拾い上げ、大佳の顔を見る。
「気づいてなかった訳じゃないの。あの作品はどこか寂しい気持ちが隠れてる。私、古海君に言われて塔坂君の他の話も読んでみたの。それで分かった。塔坂君の書く小説は小説の中で本当の自分を探してるような、答えを求めて彷徨ってる気がするの」
「どういうことだ?」
「塔坂君は、生きることに意味を持たせたいんじゃないかな」
「生きる、意味……」
「きっと自分でも分かってるんだと思う。でもそれを本人はどこか諦めてる。生きる意味が、本人の中ではもう分からないのかも」
俺はそれを塔坂に言おうとした。でも、ダメだった。あいつにはもう言葉が届かなくて、俺じゃあもうどうしようもない。
「それを知ってるのに、どうして塔坂に言わないんだ?」
「だって……」
大佳は真っ直ぐ前を見ながらひとつ息をついた。
「私じゃあ何もできないって分かってるから。私は塔坂君の苦しみを完全には理解出来ない……」
「大佳……」
俺も無理で大佳も言葉が届かない。どこまでいけば気がすむんだあいつは。本当の意味であいつを救ってあげたいのに。
「本人が嫌だって言うんだから無理には出来ねぇよな……」
ぼそりと呟いた。それに気づいた大佳は俺を少し見てまた下を向く。悔しいのに体が動かない。ずしんと心までもが地面と張り付いて動こうとしない。前に進む言葉がなくなる。先へ行く塔坂を完全に見失った。俺たちができることはもうない。重くなる心と身体が思考をゆっくりにさせる。歪んだ顔で手を伸ばし、くうを掴む。届いて欲しかった思いが手の中で粉々になる。
そのカケラは風に乗って空へと消える。
それは、誰にも届かない。今度こそ自分の出る幕がなくなった。目を閉じ深く息を吐く。すっかり涼しくなった風が体を震わせる。もう、一ヶ月しかない。俺たちは上手くできるだろうか。
答えのない問いかけは心に深く刺さったまま、痛みと共に根付いていく。
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