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カキツバタ
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テストも無事終わり、息をつく暇もなく文化祭の準備に追われる。
手芸部お手製の衣装も出来上がり、明日明後日のリハーサルに向けて最終段階に入っていた。セットをステージ脇に置き、その他機材を最後に持っていく。部員全員が力を合わせて慎重に運んでいく。
「あと必要なのは……テーブルね。すぐ近くの理科室を借りましょう。当日使用できるか確認してみるわ。日夏ちゃん、加賀美くん、上に行って音響機器が動くか見てきて」
大佳先輩が薄暗いステージ裏で慌ただしく指示を出していた。俺と預本と塔坂は最後の機材を運び終え、その場に座り込む。
「はぁ、やっと終わった……ここまで遠すぎるんだよ」
預本が疲れた声を出しながら息を吐いた。
「ここまでくると本番がすぐそこなんだって感じる。う、緊張してきた」
「何言ってたんだ、塔坂はステージに立たないだけいいよな。俺なんか去年より緊張してる。今年はあいつがステージで輝く番なのに」
「なんか言ったか、預本」
ふらふらした足取りで立つ俺はすぐそばにいた預本の足を蹴る。
「なんでもねぇよ。お前と同じ場所に立てて嬉しいって言ったんだ」
「それは俺も同じ」
笑って、背中を壁につける。携帯を取り出し時間を確認する。
「やべ、もう6時だ」
その声に塔坂が反応する。
「何か用事?」
「今日は外食するから早く帰って来いって言われたんだ」
預本の笑う声が響く。その声にみんながこちらを向く。
「おい預本休むなら外に行け。こっちはまだやることが残ってるんだ」
瀬川先輩の怒った表情と共に俺たちは急いで体育館を出る。扉より少し離れて俺たちは座る。お互いに顔を見合わせた。途端、笑いがこみ上げてくる。
「ここにいてもやること無いから俺らは先に帰るか」
「だね」
外に置いてあった鞄を持ち、俺たちは門の前まで歩く。
「んじゃ、明日頑張ろうぜ」
「おう!璃人、失敗すんなよ!」
「お前もな!」
塔坂と預本は手を振り歩いていく。俺も振り返し、角を曲がり見えなくなったところで学校に引き返す。自転車を取りに行かないと。俺は鞄を持ち直し、走り出した。
また、夢を見た。
辺り一面夕陽で赤く染まり、波の音だけが聞こえる。自分は浜辺に座り込み、ただ打ち返す波を見つめていた。ふと声がした。それは後ろから聞こえ、俺は立ち上がって振り向いた。階段を駆け下り、笑顔でこちらに手を振る塔坂がいた。安心したのもつかの間、今度は大きな波の音がして、塔坂から目をそらす。体が反射的に音のなる方へと向き、安心感が、恐怖へと変わる。赤に染まる景色は迫り来る大波で黒くなり、視界一面を暗くした。慌てて逃げ出すが、そこにはもう塔坂はいなかった。階段を登り、遠く遠くを目指して走り出す。全てを食らう波は俺の足をもつれさせ、木の根につまずき地面へと叩きつけられる。起き上がろうと足掻くも、波の勢いに飲み込まれる。目も開けられず濁流に体が回る。胸にあった恐怖は飲み込まれた途端なくなり、足掻く力も無くなっていた。薄れゆく意識の中、俺は塔坂のことだけを考えていた。どうしてこんな時に出てくるのだろう。頭の中で先輩の言葉が反響する。
"塔坂を……ちゃんと見ていてくれ"
目を離したらいなくなりそうで、俺は手を伸ばす。下も上も分からなくなる。ろうそくの火を消すように、俺の意識はそこで途絶えた。
消えた意識はかわりに俺の目を覚まさせる。アラームがけたたましく鳴り、ぼうっとする頭を抜けていく。これで2度目だ。塔坂と、漠然とした恐怖と不安を夢に見るのは。その度に俺には何か大事なことを見逃している気がしてならない。
先輩は気づいているのだろうか。だから俺に塔坂を見ていてほしいと言ったのだろうか。胸ぐらを掴み、分からない気持ちに悔しさを込める。
途端、勢いよくドアが開かれる。
「もう、起きなさい!アラームずっと鳴りっぱなしじゃない!下まで聞こえてたわよ!」
久しぶりに聞く怒号に俺はハッとする。
「ごめん!今止めるから!」
そう言いベッドから飛び出す。アラームを止め、母さんの顔を見る。
「はい。おはよう」
「おはよう、母さん」
静かになった部屋を二人で出て行き、階段を降りる。先に出た母さんがリビングのドアを開ける。朝ごはんの良い匂いがして、腹が鳴った。
「お母さん先に食べちゃうから」
「はーい」
俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
その日の放課後、リハーサルが始まった。夢で見たときと同じ夕陽が体育館を照らす。初めてステージに立ってからおよそ三か月。またこうしてステージに立ってみると、あの時とは違う空気を感じた。あの時は必死で、ステージに立つことの意味がよく分からなかった。でも今は違う。自分で選んでここに立ってる。横に預本がいて、脇で塔坂が見てる。一人で立ってるんじゃない。仲間と立つステージなんだ。心が踊り、視線が前を向く。
「それじゃあ、通してやってみるよ。各自本番だと思って気を引き締めてね。衣装替えの時はここをつかっていいから。つっかえたり間違えても気にしない!とにかく楽しくやろう!」
大佳先輩が俺たちを見て言う。明るく真っ直ぐなその声は、俺の足の震えを吹き飛ばしてくれた。あとは俺自身の問題だ。息を吐き、呼吸を整える。俺の努力、才能、仲間が勇気をくれる。セットをステージに出し各々が配置につく。放送が流れる。
「只今より、深山高校演劇部による舞台『クラウン』を開演致します」
言葉と共に俺は光り輝くステージへと一歩踏み出した。
「ほら、もう泣くなって」
預本は俺の肩を叩き励ましてくれる。
「うぅ……ごめん……」
「ったく、俺瀬川先輩のとこ行ってくるから戻ってくる頃には泣きやんでろよ」
「うん……」
そう言い預本は反対のステージ裏へと消えていった。俺はこぼれ出る涙を拭きながら下を向く。どうしたって溢れるその涙は俺の中から笑顔を奪っていく。苦しい感情が渦巻き、タオルで顔を覆う。ポルカが伝えたかった涙が俺の癖を通り越して心まで侵食する。これは悲しい涙じゃない。苦しい涙なんだ。ポルカがずっと抱えていた孤独。それを思うとまた涙が溢れて、リハーサルが終わって10分経っても俺はその場で泣いていた。
「璃人、ちょっといい?」
タオルで口を隠しながら俺は塔坂を見る。
集中するためか、眼鏡をかけていた。
「なんだ……笑いに来たのか……?」
「違うよ、璃人が泣き止むまでここにいようと思って」
「はっ。俺がどうして泣いてるのか知ってる癖に……」
塔坂はその言葉に黙って俺を見る。
ここまでひどい泣き方をするとは思わなかった。下を向き、涙が出ないように必死に目を瞑りタオルを押さえる。
「はぁ……ぐす……」
隣に座る塔坂は俺のことをどう思っているのだろう。こんなに泣いて迷惑をかけて……
やっと落ち着き、タオルを顔からはがす。目が腫れているのが自分でも分かる。乾いた涙の跡が鮮明に残り、心が軽くなる。
「悪い。迷惑かけて」
「迷惑だなんて思ってないよ。それに、璃人の涙は止めようと思って止まるものじゃないってこともわかってる」
「…………悪い」
小さく出た言葉にため息を漏らす。それぞれリハーサルをやってみて反省や改善点を見つけてるっていうのに俺は……
「璃人。ちょっと外に出て話そう」
声の調子が低くなるのを感じた。真面目な話をする気なんだな。俺は椅子から立ち上がり、塔坂の後ろをのろのろと歩く。開いた扉から漏れる光が眩しく、俺は目を細めた。
そっと扉を閉じ、塔坂は俺の正面に立つ。
「本当に落ち着いた?」
「あ、あぁ」
まだ流れているのかと思い、慌てて顔を触る。
「ふふ、それならいいや。……裏から見てて思ったんだ」
笑い声が真剣な声に変わる。
「ポルカの涙の中にはまだ残ってるものがあるって。それは笑顔を奪われたポルカにとって分からない気持ちで、理解できない感情で。でも心の中に渦巻く気持ち。ーーポルカの中にはまだ笑顔が残ってる。その笑顔がポルカの苦しい思いを救ってくれる。涙がこぼれて苦しみが溢れる。それもいいけど、苦しみの中にある笑顔のお陰で涙がこぼれずにいられる。涙目になって、溢れそうで、でも我慢する。そういうのもありかなって思ったんだ」
「つ、つまり……?」
俺は嫌な予感がしていた。だってそれはつまり……
「君の癖を使いたいって言ったけど、この作品に涙は似合わないって思った。だから、璃人。最期の場面、泣くのを我慢して欲しいんだ」
「今の見てた!?こんなに出るのにそれを我慢しろって!?」
「君ならできると思う。僕はポルカの心の中の笑顔が見たいんだ。奪われても残り続ける笑顔が。君なら、分かると思う」
言葉が心に刺さる。分からないわけがないじゃないか。ポルカの思いが分かるからこそあんなに泣いていたのに。それを打ち消す笑顔がポルカの目から涙をこぼれさせない理由だって?
俺は笑顔になってほしい人の顔を思い出す。
「ずるいじゃん、そんなの……俺が誰のために泣いてるのか分かってるのに、お前は……簡単にそんなことを言う……止まらない涙をこらえるのは大変なんだ……」
「知ってる」
「それでも……笑顔が見たいんだ……涙じゃなくて、笑顔が見たい。ずっとずっと見たかった……」
その為なら、俺は……
「はぁ……分かった。やってみるよ」
塔坂は少し笑い、
「急でごめんね。ポルカのことを一番理解できるのは璃人だと思うから。その気持ちを忘れないで」
忘れないで。その言葉が俺の中で反響する。今まで何度その言葉を耳にし目にしたことか。塔坂の夢を最初に見た時。たしかあの時は喪失…?は付いて回るから忘れないでって……その後は塔坂のノートに書いてあったワスレナグサの花言葉。"私を忘れないで"。やはり何か見逃している。何を見逃しているかは分からない。けど、塔坂はその答えを知っていると思う。俺は塔坂の腕に手を伸ばす。
「古海!ちょっといいか?」
途端、扉が開かれ瀬川先輩が現れる。俺は驚き手を引っ込めた。
「はい!」
「さっきのリハーサルで言いたいことがあるから戻ってくれ」
「分かりました」
ふと塔坂を見る。笑ってこちらを見ていた。
「さっきのこと、先輩に言っておいて」
「あぁ、分かった」
後で言えばいいか。俺はそっと扉を閉じた。
その日の夜。俺は塔坂に言われたことを考えていた。瀬川先輩もそのことを聞いて驚いていたが、泣くよりは簡単だと言った。そう、それが癖じゃなければ。涙がこぼれてしまうのはポルカの苦しみが笑顔に勝ってしまうことを意味している。ポルカが必死に泣くのをこらえているのに俺が泣いてどうするんだ。ポルカを演じるのは俺で、ポルカの涙も人を笑顔にしたい気持ちも痛いほど分かる。それなのに涙を流してはいけないなんて。塔坂はなんて課題を押し付けたんだ。
俺は台本を持ち、机の上にある鏡の前に立つ。こればかりは練習あるのみだな。頰を叩き、目を見開く。
目の前にはケインとルミアが不安そうにポルカを見つめ、コートの男性が不敵な笑みを浮かべる。
「お前が笑うことはもうない!一生な!」
「ポルカ!」
必死な叫びに虚ろなポルカの目が光る。
「……苦しい。苦しいんだ、ケイン……」
下を向き、小さな声で言う。その声が届いたのか、ケインとルミアは同時にポルカを見る。
「人を笑顔にするのって、大変なんだ。孤独なんだよ……独りで考えるのは苦しいんだ。耐えられないほどつらくて、一人で流す涙は、寂しいんだ……」
弱々しく、呟くように言う。その声は震えていて、今にも崩れ落ちそうだった。
「でも……」
ポルカは前を見る。
「その時救ってくれるのは、いつだって心にある笑顔だった」
そう言うポルカの目は涙であふれていて、今にも零れ落ちそうだった。
「僕は……!」
そう言った途端、頰を涙が伝う。
鏡越しの自分は明らかに涙をこらえられていなかった。俺は乱暴に涙を拭き、再び言葉を言う。
「僕は……心の中に、笑顔が……ある、限り……」
たどたどしい言葉の中に必死に涙をこらえる。思い出せ、母さんの笑顔を。あの笑顔のためなら俺は……!
「涙をなが……さない…!たとえ、どんなに辛くても…!笑顔は……」
また溢れ出る。母さんの笑顔が脳裏を駆け巡り、俺は自分の胸ぐらを掴む。
「はぁ……はぁ……」
視界がぼやけ、思わず下を向く。片手で涙を拭き、無理矢理顔を上げる。鏡に写る自分は顔が赤く、苦しそうな顔をしていた。ポルカも同じ気持ちのはずだ。これでいい。俺はそのまま続行する。
「みんなが見たいのは、道化の涙じゃない。……笑顔だ」
"なにを馬鹿なことを!完全に無くしたはずだ!お前が笑う意味も、周りの笑顔も!"
預本の低く唸るような声が頭の中に響く。
「これは……お前に取られなかった僕の…心にある笑顔だ……誰にも、奪えやしない…!」
手を乱暴に振る。近くに置いてあったペン立てに当たり、倒れる。構わず台本を見る。涙が溢れそうで何度も鼻をすする。
「苦しみの中にも…笑顔は、あるから!!」
風が吹き、声が響く。男性の支配から逃れたポルカは男性の胸ぐらを掴む。
手を前に出し、体が前のめりになる。姿勢が崩れ、思わず鏡を掴む。その拍子に膝から崩れ落ちた。大きな音と共に鈍い痛みが走る。
「ってぇ……」
割れた鏡の破片が飛び散り、破片が腕に刺さる。なんとか体を起こし、そばにあったティッシュで腕を押さえながら下に向かう。変に転びはしたものの、腕以外は大した怪我はしていなかった。リビングのドアを開け、救急箱を探す。
「どうしたの?すごい音だったけど」
後からリビングに入ってきた母さんは俺の腕を見て驚いた顔をした。
「そこに座ってて!」
母さんはそう言いたんすを開ける。あっさりと見つかり、ソファに座る俺の横で正座をする。中からガーゼや消毒液を取り出し、慣れた手つきで俺の腕を診る。
「何で切ったの、こんなところ」
「えーと、鏡を割っちゃって……」
目をそらした時、消毒液が傷に染み、思わず声が出る。
「我慢しなさい。後で破片片付けるから今日はもう何もしないこと。いいわね?」
本当はまだまだ練習したかったが、破片がどこに飛んだか分からないまま進めるのは危険だった。俺は黙って従うことにした。
あっという間に傷の手当てを終えた母さんは急いで箱をしまい、
「片付くまでここにいること!終わったらすぐ寝るのよ」
「はい!」
時計を見るともう11時を回っていた。ドアが思い切り閉められ、その音に驚く。
「心配かけたくなかったのに……」
一人静かに呟く。早急に、でも優しく手当てしてくれた温もりが腕に残って離れない。いつだって俺を見守ってくれる母さんのためにももっと頑張らないと。
俺はポケットに入っていた携帯を取り出し、塔坂にメールを送る。
"明日、泣かない練習を一緒にしてほしい。自分一人じゃ何回やってもダメそうだから"
すると1分も経たないうちに返信が返ってきた。
"いいよ。やるからには厳しくいくからね!"
文面を読むと同時に塔坂の顔が思い浮かぶ。塔坂のことだから俺が泣くたびに変な罰ゲームをしそうで、思わず笑ってしまった。
"頼むな"
短い言葉を打ち、俺は携帯の電源を落とす。
あくびをし、そのままソファに横になる。体が沈み、意識が横たわる体から抜けていく。ゆっくりとまぶたが閉じ、時計の針の音だけが頭を埋め尽くす。呼吸音がかすかに聞こえ、部屋にはまた新たな音が鳴る。
「あら、寝てる……」
リビングに戻ると、ソファで気持ちよさそうに眠る璃人の姿があった。私は引き返し、階段を登り璃人の部屋に入る。布団を持ち、慎重に階段を降りる。寝顔を見つめながらそっと布団をかける。
「ありがとうね、お母さんのために頑張ってくれて」
横に座り、瞼を閉じる。果てしない闇が広がり、私は一瞬怖くなる。でもその先にはいつだって璃人がいて、私の暗い道を笑顔で灯してくれる。おかげで今、歩けてる。頑張る璃人が私に少しずつ歩く勇気をくれる。下を見ていた顔が徐々に前を向いて、止まっていた足が動き出す。私の道はそこでまだ続いていたことに気づく。璃人が先を行くから、私はそれを追いかける。真っ黒な沼から這い出て、雑草をかき分けて森の中をさまよう。先を歩く璃人は笑顔で私のことを案内してくれる。その足取りに迷いはなかった。だから私は璃人を信じて前を進む。
「ありがとう……あきと」
信じる道が、どうか、明るい未来に続きますように。
私は、その場で眠りについた。
手芸部お手製の衣装も出来上がり、明日明後日のリハーサルに向けて最終段階に入っていた。セットをステージ脇に置き、その他機材を最後に持っていく。部員全員が力を合わせて慎重に運んでいく。
「あと必要なのは……テーブルね。すぐ近くの理科室を借りましょう。当日使用できるか確認してみるわ。日夏ちゃん、加賀美くん、上に行って音響機器が動くか見てきて」
大佳先輩が薄暗いステージ裏で慌ただしく指示を出していた。俺と預本と塔坂は最後の機材を運び終え、その場に座り込む。
「はぁ、やっと終わった……ここまで遠すぎるんだよ」
預本が疲れた声を出しながら息を吐いた。
「ここまでくると本番がすぐそこなんだって感じる。う、緊張してきた」
「何言ってたんだ、塔坂はステージに立たないだけいいよな。俺なんか去年より緊張してる。今年はあいつがステージで輝く番なのに」
「なんか言ったか、預本」
ふらふらした足取りで立つ俺はすぐそばにいた預本の足を蹴る。
「なんでもねぇよ。お前と同じ場所に立てて嬉しいって言ったんだ」
「それは俺も同じ」
笑って、背中を壁につける。携帯を取り出し時間を確認する。
「やべ、もう6時だ」
その声に塔坂が反応する。
「何か用事?」
「今日は外食するから早く帰って来いって言われたんだ」
預本の笑う声が響く。その声にみんながこちらを向く。
「おい預本休むなら外に行け。こっちはまだやることが残ってるんだ」
瀬川先輩の怒った表情と共に俺たちは急いで体育館を出る。扉より少し離れて俺たちは座る。お互いに顔を見合わせた。途端、笑いがこみ上げてくる。
「ここにいてもやること無いから俺らは先に帰るか」
「だね」
外に置いてあった鞄を持ち、俺たちは門の前まで歩く。
「んじゃ、明日頑張ろうぜ」
「おう!璃人、失敗すんなよ!」
「お前もな!」
塔坂と預本は手を振り歩いていく。俺も振り返し、角を曲がり見えなくなったところで学校に引き返す。自転車を取りに行かないと。俺は鞄を持ち直し、走り出した。
また、夢を見た。
辺り一面夕陽で赤く染まり、波の音だけが聞こえる。自分は浜辺に座り込み、ただ打ち返す波を見つめていた。ふと声がした。それは後ろから聞こえ、俺は立ち上がって振り向いた。階段を駆け下り、笑顔でこちらに手を振る塔坂がいた。安心したのもつかの間、今度は大きな波の音がして、塔坂から目をそらす。体が反射的に音のなる方へと向き、安心感が、恐怖へと変わる。赤に染まる景色は迫り来る大波で黒くなり、視界一面を暗くした。慌てて逃げ出すが、そこにはもう塔坂はいなかった。階段を登り、遠く遠くを目指して走り出す。全てを食らう波は俺の足をもつれさせ、木の根につまずき地面へと叩きつけられる。起き上がろうと足掻くも、波の勢いに飲み込まれる。目も開けられず濁流に体が回る。胸にあった恐怖は飲み込まれた途端なくなり、足掻く力も無くなっていた。薄れゆく意識の中、俺は塔坂のことだけを考えていた。どうしてこんな時に出てくるのだろう。頭の中で先輩の言葉が反響する。
"塔坂を……ちゃんと見ていてくれ"
目を離したらいなくなりそうで、俺は手を伸ばす。下も上も分からなくなる。ろうそくの火を消すように、俺の意識はそこで途絶えた。
消えた意識はかわりに俺の目を覚まさせる。アラームがけたたましく鳴り、ぼうっとする頭を抜けていく。これで2度目だ。塔坂と、漠然とした恐怖と不安を夢に見るのは。その度に俺には何か大事なことを見逃している気がしてならない。
先輩は気づいているのだろうか。だから俺に塔坂を見ていてほしいと言ったのだろうか。胸ぐらを掴み、分からない気持ちに悔しさを込める。
途端、勢いよくドアが開かれる。
「もう、起きなさい!アラームずっと鳴りっぱなしじゃない!下まで聞こえてたわよ!」
久しぶりに聞く怒号に俺はハッとする。
「ごめん!今止めるから!」
そう言いベッドから飛び出す。アラームを止め、母さんの顔を見る。
「はい。おはよう」
「おはよう、母さん」
静かになった部屋を二人で出て行き、階段を降りる。先に出た母さんがリビングのドアを開ける。朝ごはんの良い匂いがして、腹が鳴った。
「お母さん先に食べちゃうから」
「はーい」
俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
その日の放課後、リハーサルが始まった。夢で見たときと同じ夕陽が体育館を照らす。初めてステージに立ってからおよそ三か月。またこうしてステージに立ってみると、あの時とは違う空気を感じた。あの時は必死で、ステージに立つことの意味がよく分からなかった。でも今は違う。自分で選んでここに立ってる。横に預本がいて、脇で塔坂が見てる。一人で立ってるんじゃない。仲間と立つステージなんだ。心が踊り、視線が前を向く。
「それじゃあ、通してやってみるよ。各自本番だと思って気を引き締めてね。衣装替えの時はここをつかっていいから。つっかえたり間違えても気にしない!とにかく楽しくやろう!」
大佳先輩が俺たちを見て言う。明るく真っ直ぐなその声は、俺の足の震えを吹き飛ばしてくれた。あとは俺自身の問題だ。息を吐き、呼吸を整える。俺の努力、才能、仲間が勇気をくれる。セットをステージに出し各々が配置につく。放送が流れる。
「只今より、深山高校演劇部による舞台『クラウン』を開演致します」
言葉と共に俺は光り輝くステージへと一歩踏み出した。
「ほら、もう泣くなって」
預本は俺の肩を叩き励ましてくれる。
「うぅ……ごめん……」
「ったく、俺瀬川先輩のとこ行ってくるから戻ってくる頃には泣きやんでろよ」
「うん……」
そう言い預本は反対のステージ裏へと消えていった。俺はこぼれ出る涙を拭きながら下を向く。どうしたって溢れるその涙は俺の中から笑顔を奪っていく。苦しい感情が渦巻き、タオルで顔を覆う。ポルカが伝えたかった涙が俺の癖を通り越して心まで侵食する。これは悲しい涙じゃない。苦しい涙なんだ。ポルカがずっと抱えていた孤独。それを思うとまた涙が溢れて、リハーサルが終わって10分経っても俺はその場で泣いていた。
「璃人、ちょっといい?」
タオルで口を隠しながら俺は塔坂を見る。
集中するためか、眼鏡をかけていた。
「なんだ……笑いに来たのか……?」
「違うよ、璃人が泣き止むまでここにいようと思って」
「はっ。俺がどうして泣いてるのか知ってる癖に……」
塔坂はその言葉に黙って俺を見る。
ここまでひどい泣き方をするとは思わなかった。下を向き、涙が出ないように必死に目を瞑りタオルを押さえる。
「はぁ……ぐす……」
隣に座る塔坂は俺のことをどう思っているのだろう。こんなに泣いて迷惑をかけて……
やっと落ち着き、タオルを顔からはがす。目が腫れているのが自分でも分かる。乾いた涙の跡が鮮明に残り、心が軽くなる。
「悪い。迷惑かけて」
「迷惑だなんて思ってないよ。それに、璃人の涙は止めようと思って止まるものじゃないってこともわかってる」
「…………悪い」
小さく出た言葉にため息を漏らす。それぞれリハーサルをやってみて反省や改善点を見つけてるっていうのに俺は……
「璃人。ちょっと外に出て話そう」
声の調子が低くなるのを感じた。真面目な話をする気なんだな。俺は椅子から立ち上がり、塔坂の後ろをのろのろと歩く。開いた扉から漏れる光が眩しく、俺は目を細めた。
そっと扉を閉じ、塔坂は俺の正面に立つ。
「本当に落ち着いた?」
「あ、あぁ」
まだ流れているのかと思い、慌てて顔を触る。
「ふふ、それならいいや。……裏から見てて思ったんだ」
笑い声が真剣な声に変わる。
「ポルカの涙の中にはまだ残ってるものがあるって。それは笑顔を奪われたポルカにとって分からない気持ちで、理解できない感情で。でも心の中に渦巻く気持ち。ーーポルカの中にはまだ笑顔が残ってる。その笑顔がポルカの苦しい思いを救ってくれる。涙がこぼれて苦しみが溢れる。それもいいけど、苦しみの中にある笑顔のお陰で涙がこぼれずにいられる。涙目になって、溢れそうで、でも我慢する。そういうのもありかなって思ったんだ」
「つ、つまり……?」
俺は嫌な予感がしていた。だってそれはつまり……
「君の癖を使いたいって言ったけど、この作品に涙は似合わないって思った。だから、璃人。最期の場面、泣くのを我慢して欲しいんだ」
「今の見てた!?こんなに出るのにそれを我慢しろって!?」
「君ならできると思う。僕はポルカの心の中の笑顔が見たいんだ。奪われても残り続ける笑顔が。君なら、分かると思う」
言葉が心に刺さる。分からないわけがないじゃないか。ポルカの思いが分かるからこそあんなに泣いていたのに。それを打ち消す笑顔がポルカの目から涙をこぼれさせない理由だって?
俺は笑顔になってほしい人の顔を思い出す。
「ずるいじゃん、そんなの……俺が誰のために泣いてるのか分かってるのに、お前は……簡単にそんなことを言う……止まらない涙をこらえるのは大変なんだ……」
「知ってる」
「それでも……笑顔が見たいんだ……涙じゃなくて、笑顔が見たい。ずっとずっと見たかった……」
その為なら、俺は……
「はぁ……分かった。やってみるよ」
塔坂は少し笑い、
「急でごめんね。ポルカのことを一番理解できるのは璃人だと思うから。その気持ちを忘れないで」
忘れないで。その言葉が俺の中で反響する。今まで何度その言葉を耳にし目にしたことか。塔坂の夢を最初に見た時。たしかあの時は喪失…?は付いて回るから忘れないでって……その後は塔坂のノートに書いてあったワスレナグサの花言葉。"私を忘れないで"。やはり何か見逃している。何を見逃しているかは分からない。けど、塔坂はその答えを知っていると思う。俺は塔坂の腕に手を伸ばす。
「古海!ちょっといいか?」
途端、扉が開かれ瀬川先輩が現れる。俺は驚き手を引っ込めた。
「はい!」
「さっきのリハーサルで言いたいことがあるから戻ってくれ」
「分かりました」
ふと塔坂を見る。笑ってこちらを見ていた。
「さっきのこと、先輩に言っておいて」
「あぁ、分かった」
後で言えばいいか。俺はそっと扉を閉じた。
その日の夜。俺は塔坂に言われたことを考えていた。瀬川先輩もそのことを聞いて驚いていたが、泣くよりは簡単だと言った。そう、それが癖じゃなければ。涙がこぼれてしまうのはポルカの苦しみが笑顔に勝ってしまうことを意味している。ポルカが必死に泣くのをこらえているのに俺が泣いてどうするんだ。ポルカを演じるのは俺で、ポルカの涙も人を笑顔にしたい気持ちも痛いほど分かる。それなのに涙を流してはいけないなんて。塔坂はなんて課題を押し付けたんだ。
俺は台本を持ち、机の上にある鏡の前に立つ。こればかりは練習あるのみだな。頰を叩き、目を見開く。
目の前にはケインとルミアが不安そうにポルカを見つめ、コートの男性が不敵な笑みを浮かべる。
「お前が笑うことはもうない!一生な!」
「ポルカ!」
必死な叫びに虚ろなポルカの目が光る。
「……苦しい。苦しいんだ、ケイン……」
下を向き、小さな声で言う。その声が届いたのか、ケインとルミアは同時にポルカを見る。
「人を笑顔にするのって、大変なんだ。孤独なんだよ……独りで考えるのは苦しいんだ。耐えられないほどつらくて、一人で流す涙は、寂しいんだ……」
弱々しく、呟くように言う。その声は震えていて、今にも崩れ落ちそうだった。
「でも……」
ポルカは前を見る。
「その時救ってくれるのは、いつだって心にある笑顔だった」
そう言うポルカの目は涙であふれていて、今にも零れ落ちそうだった。
「僕は……!」
そう言った途端、頰を涙が伝う。
鏡越しの自分は明らかに涙をこらえられていなかった。俺は乱暴に涙を拭き、再び言葉を言う。
「僕は……心の中に、笑顔が……ある、限り……」
たどたどしい言葉の中に必死に涙をこらえる。思い出せ、母さんの笑顔を。あの笑顔のためなら俺は……!
「涙をなが……さない…!たとえ、どんなに辛くても…!笑顔は……」
また溢れ出る。母さんの笑顔が脳裏を駆け巡り、俺は自分の胸ぐらを掴む。
「はぁ……はぁ……」
視界がぼやけ、思わず下を向く。片手で涙を拭き、無理矢理顔を上げる。鏡に写る自分は顔が赤く、苦しそうな顔をしていた。ポルカも同じ気持ちのはずだ。これでいい。俺はそのまま続行する。
「みんなが見たいのは、道化の涙じゃない。……笑顔だ」
"なにを馬鹿なことを!完全に無くしたはずだ!お前が笑う意味も、周りの笑顔も!"
預本の低く唸るような声が頭の中に響く。
「これは……お前に取られなかった僕の…心にある笑顔だ……誰にも、奪えやしない…!」
手を乱暴に振る。近くに置いてあったペン立てに当たり、倒れる。構わず台本を見る。涙が溢れそうで何度も鼻をすする。
「苦しみの中にも…笑顔は、あるから!!」
風が吹き、声が響く。男性の支配から逃れたポルカは男性の胸ぐらを掴む。
手を前に出し、体が前のめりになる。姿勢が崩れ、思わず鏡を掴む。その拍子に膝から崩れ落ちた。大きな音と共に鈍い痛みが走る。
「ってぇ……」
割れた鏡の破片が飛び散り、破片が腕に刺さる。なんとか体を起こし、そばにあったティッシュで腕を押さえながら下に向かう。変に転びはしたものの、腕以外は大した怪我はしていなかった。リビングのドアを開け、救急箱を探す。
「どうしたの?すごい音だったけど」
後からリビングに入ってきた母さんは俺の腕を見て驚いた顔をした。
「そこに座ってて!」
母さんはそう言いたんすを開ける。あっさりと見つかり、ソファに座る俺の横で正座をする。中からガーゼや消毒液を取り出し、慣れた手つきで俺の腕を診る。
「何で切ったの、こんなところ」
「えーと、鏡を割っちゃって……」
目をそらした時、消毒液が傷に染み、思わず声が出る。
「我慢しなさい。後で破片片付けるから今日はもう何もしないこと。いいわね?」
本当はまだまだ練習したかったが、破片がどこに飛んだか分からないまま進めるのは危険だった。俺は黙って従うことにした。
あっという間に傷の手当てを終えた母さんは急いで箱をしまい、
「片付くまでここにいること!終わったらすぐ寝るのよ」
「はい!」
時計を見るともう11時を回っていた。ドアが思い切り閉められ、その音に驚く。
「心配かけたくなかったのに……」
一人静かに呟く。早急に、でも優しく手当てしてくれた温もりが腕に残って離れない。いつだって俺を見守ってくれる母さんのためにももっと頑張らないと。
俺はポケットに入っていた携帯を取り出し、塔坂にメールを送る。
"明日、泣かない練習を一緒にしてほしい。自分一人じゃ何回やってもダメそうだから"
すると1分も経たないうちに返信が返ってきた。
"いいよ。やるからには厳しくいくからね!"
文面を読むと同時に塔坂の顔が思い浮かぶ。塔坂のことだから俺が泣くたびに変な罰ゲームをしそうで、思わず笑ってしまった。
"頼むな"
短い言葉を打ち、俺は携帯の電源を落とす。
あくびをし、そのままソファに横になる。体が沈み、意識が横たわる体から抜けていく。ゆっくりとまぶたが閉じ、時計の針の音だけが頭を埋め尽くす。呼吸音がかすかに聞こえ、部屋にはまた新たな音が鳴る。
「あら、寝てる……」
リビングに戻ると、ソファで気持ちよさそうに眠る璃人の姿があった。私は引き返し、階段を登り璃人の部屋に入る。布団を持ち、慎重に階段を降りる。寝顔を見つめながらそっと布団をかける。
「ありがとうね、お母さんのために頑張ってくれて」
横に座り、瞼を閉じる。果てしない闇が広がり、私は一瞬怖くなる。でもその先にはいつだって璃人がいて、私の暗い道を笑顔で灯してくれる。おかげで今、歩けてる。頑張る璃人が私に少しずつ歩く勇気をくれる。下を見ていた顔が徐々に前を向いて、止まっていた足が動き出す。私の道はそこでまだ続いていたことに気づく。璃人が先を行くから、私はそれを追いかける。真っ黒な沼から這い出て、雑草をかき分けて森の中をさまよう。先を歩く璃人は笑顔で私のことを案内してくれる。その足取りに迷いはなかった。だから私は璃人を信じて前を進む。
「ありがとう……あきと」
信じる道が、どうか、明るい未来に続きますように。
私は、その場で眠りについた。
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