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last birthday 1
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田辺 夏美に呼ばれた伊鶴は、「どうして千夜莉を一人で行かせたのか」を問われていた。
だが千夜莉が学校にいたのは自分の意思なわけで、伊鶴にはさっぱり分からなかった。
「なっちゃんは勘違いしてるの」
千夜莉は本当のことを話した。自分が夏美のことを思って自ら学校に行ったこと。そこでたまたま伊鶴達に会ったこと。自分だけではなにも出来なかった不甲斐なさや、犯人を見つけられなかったこと。
それを聞いた夏美は、千夜莉に抱きつき、「ごめんな!勘違いして!千夜莉が私のことをそんなに思ってたなんて知らなかった。ありがとう。でももう私のために無茶をするのはやめてくれ。これからは私も協力するから」
「なっちゃん……」
と、キラキラ女子展開でこの話は終わり。
それから伊鶴達は他のクラスメイトにも犯人探しを手伝ってほしいと言う。徐々に数を増やしていき、いつしかクラスメイトの半分が犯人探しに参加していた。
6月の初め、再びお菓子の袋が置いてあり、中をみると、そこには以前勝斗が袋の中に入っていたという紙切れが入っていた。たった一文字「ソ」と書いてあった。勝斗が持っていた紙には「ノ」。今回は「ソ」。この紙が何を示しているのか分からないが、とりあえず取っておこう。
それからも誕生日の人の机にはかならずお菓子が置いてあった。前のように夜の学校に泊まり犯人を探す人がいたが、気づいたら机に袋が置いてあることが多い。それに防犯カメラに映り、呼び出しをくらう人もいた。これ以上学校に泊まることは禁止だと、夜は警官が代わりに校舎を見回ることが決まった。
しかし、それも意味なく相変わらず袋は置かれていた。
そんなことをしている内にクラスの仲は良くなり、いつしか伊鶴を中心に色んな話題が飛び交うようになった。
そんなある日、突然学年集会が開かれた。何事かと生徒がざわめく中告げられたのは、片瀬一晴についてだった。
5月の初めに家を調査して以来初めての進展だった。
内容は、片瀬一晴の母と思われる人物が防犯カメラに目撃されたとのことだった。どうやらここからそう遠くない商店街を歩いている所が目撃されたらしく、近くに父と一晴もいるのでは?ということらしい。それは伊鶴にしても大変良い情報だった。一晴が行方不明になってからもう5ヶ月が過ぎようとしていた。これまで新たな発見はなく安否も分からないままだったが、今回のことで一つ一晴達発見に近づいたと思う。
伊鶴はそれを聞き、一人安堵していた。一晴がいなくなってから。いやもっと詳しく言えば春休みが始まる直前。
桜がポツポツと咲き始め、町にある公園が鮮やかなピンクに染まる頃、伊鶴はある決心をしていた。それは、片瀬一晴に告白をすることだった。無理も承知で、ただ自分の気持ちを整理したいだけなのだとしても。今まで一晴を一番近くで見てきた伊鶴にとってその告白は自分の殻を破る行為に近かった。だからその日一晴に告白したのは彼女が好きという気持ちにけじめをつけたかったからである。伊鶴のその気持ちを聞いた一晴は、一言。“ごめんなさい、今は難しい”と言った。振られることは分かってた。なのにいざ振られるとショックはでかく、一晴の前では平気そうでも、内面では取り繕うのに精一杯だった。そのまま春休みになり、3年になっても会えるものだと思ってた。
だが、一晴は学校に来なかった。それどころか行方も分からず、こうして今も見つからずにいる。
告白をしたことを悔いている訳ではない。だが、もしそれが一晴と伊鶴の関係を崩したなら、謝りたかった。3年になって、また幼馴染の友達でいたかった。
一晴が見つかったらそれをまず謝ろう。伊鶴は一晴の無事を心から願った。
体育祭、文化祭と過ぎ、冬休みが間近に迫っていた。めっきり寒くなり、白い息を吐きながら登校する毎日。
9月の初めに一晴のお母さんが見つかってから、依然進展はなかった。それと同じく、袋を置いた犯人の正体も見つかっていない。袋の中に入っていた紙も「ソ」「ノ」「ヨ」「イ」という文字があるだけでこれだけではなんのことだかさっぱりだった。
この事件に飽きている人も徐々に出てきており、犯人発見も時間の問題だった。
今日でこのクラスとも、学校とも別れる。結局犯人は見つからず、紙も不揃いなまま。最後ぐらいみんなで犯人を見つけたかったという気はするが、それも中学の良い思い出として刻まれるのだろう。そう思い、家を飛び出す。
自転車にまたがり、公園を突っ切る。そこでふと視界の端に映った。あれは……
「良かった。この時間にいつも出て行くから、もしかしたら会えると思って来てみたらやっぱりいた」
俺は目を疑った。そこには、1年間学校に来ず、行方不明となっていた片瀬一晴が立っていた。春の兆しを感じる柔らかい風に髪をなびかせ、何も変わらない面持ちで俺の前に歩み寄った。
「どうして一晴がここに…1年も何してたんだよ…」
「ごめんね、心配かけて。もう大丈夫だから、来たの」
「?」
「ねぇ、あの桜見に行こう!」
「あ、ちょ…!」
一晴に手を引かれ、自転車をその場に置いたまま公園を突っ切る。
丘の上にのぼり、まだ蕾ができたばかりの桜を見る。
この桜…確か名前は…
「ソメイヨシノだよ」
一晴が俺の心を読んだかの様にそう言った。ふとお菓子に入っていた紙を思い出す。あの紙に書かれていた文字…まだ不揃いかと思ったがこの名前だったのか。でもどうしてこれなんだ?ここに来てもなにもならないぞ。
「伊鶴。今日、誕生日だよね?」
「うん、そうだよ」
「へへっ、ちょっと後ろ向いてて」
可愛い笑顔を向けられ、思わず後ろを向く。
ちいさな音がした。
「いいよ、こっち向いて」
何事かと一晴の方を向くと、一晴は一言言った。
「はっぴーばーすでー、伊鶴。
大好きだよ」
そこで俺の記憶は途切れた。
だが千夜莉が学校にいたのは自分の意思なわけで、伊鶴にはさっぱり分からなかった。
「なっちゃんは勘違いしてるの」
千夜莉は本当のことを話した。自分が夏美のことを思って自ら学校に行ったこと。そこでたまたま伊鶴達に会ったこと。自分だけではなにも出来なかった不甲斐なさや、犯人を見つけられなかったこと。
それを聞いた夏美は、千夜莉に抱きつき、「ごめんな!勘違いして!千夜莉が私のことをそんなに思ってたなんて知らなかった。ありがとう。でももう私のために無茶をするのはやめてくれ。これからは私も協力するから」
「なっちゃん……」
と、キラキラ女子展開でこの話は終わり。
それから伊鶴達は他のクラスメイトにも犯人探しを手伝ってほしいと言う。徐々に数を増やしていき、いつしかクラスメイトの半分が犯人探しに参加していた。
6月の初め、再びお菓子の袋が置いてあり、中をみると、そこには以前勝斗が袋の中に入っていたという紙切れが入っていた。たった一文字「ソ」と書いてあった。勝斗が持っていた紙には「ノ」。今回は「ソ」。この紙が何を示しているのか分からないが、とりあえず取っておこう。
それからも誕生日の人の机にはかならずお菓子が置いてあった。前のように夜の学校に泊まり犯人を探す人がいたが、気づいたら机に袋が置いてあることが多い。それに防犯カメラに映り、呼び出しをくらう人もいた。これ以上学校に泊まることは禁止だと、夜は警官が代わりに校舎を見回ることが決まった。
しかし、それも意味なく相変わらず袋は置かれていた。
そんなことをしている内にクラスの仲は良くなり、いつしか伊鶴を中心に色んな話題が飛び交うようになった。
そんなある日、突然学年集会が開かれた。何事かと生徒がざわめく中告げられたのは、片瀬一晴についてだった。
5月の初めに家を調査して以来初めての進展だった。
内容は、片瀬一晴の母と思われる人物が防犯カメラに目撃されたとのことだった。どうやらここからそう遠くない商店街を歩いている所が目撃されたらしく、近くに父と一晴もいるのでは?ということらしい。それは伊鶴にしても大変良い情報だった。一晴が行方不明になってからもう5ヶ月が過ぎようとしていた。これまで新たな発見はなく安否も分からないままだったが、今回のことで一つ一晴達発見に近づいたと思う。
伊鶴はそれを聞き、一人安堵していた。一晴がいなくなってから。いやもっと詳しく言えば春休みが始まる直前。
桜がポツポツと咲き始め、町にある公園が鮮やかなピンクに染まる頃、伊鶴はある決心をしていた。それは、片瀬一晴に告白をすることだった。無理も承知で、ただ自分の気持ちを整理したいだけなのだとしても。今まで一晴を一番近くで見てきた伊鶴にとってその告白は自分の殻を破る行為に近かった。だからその日一晴に告白したのは彼女が好きという気持ちにけじめをつけたかったからである。伊鶴のその気持ちを聞いた一晴は、一言。“ごめんなさい、今は難しい”と言った。振られることは分かってた。なのにいざ振られるとショックはでかく、一晴の前では平気そうでも、内面では取り繕うのに精一杯だった。そのまま春休みになり、3年になっても会えるものだと思ってた。
だが、一晴は学校に来なかった。それどころか行方も分からず、こうして今も見つからずにいる。
告白をしたことを悔いている訳ではない。だが、もしそれが一晴と伊鶴の関係を崩したなら、謝りたかった。3年になって、また幼馴染の友達でいたかった。
一晴が見つかったらそれをまず謝ろう。伊鶴は一晴の無事を心から願った。
体育祭、文化祭と過ぎ、冬休みが間近に迫っていた。めっきり寒くなり、白い息を吐きながら登校する毎日。
9月の初めに一晴のお母さんが見つかってから、依然進展はなかった。それと同じく、袋を置いた犯人の正体も見つかっていない。袋の中に入っていた紙も「ソ」「ノ」「ヨ」「イ」という文字があるだけでこれだけではなんのことだかさっぱりだった。
この事件に飽きている人も徐々に出てきており、犯人発見も時間の問題だった。
今日でこのクラスとも、学校とも別れる。結局犯人は見つからず、紙も不揃いなまま。最後ぐらいみんなで犯人を見つけたかったという気はするが、それも中学の良い思い出として刻まれるのだろう。そう思い、家を飛び出す。
自転車にまたがり、公園を突っ切る。そこでふと視界の端に映った。あれは……
「良かった。この時間にいつも出て行くから、もしかしたら会えると思って来てみたらやっぱりいた」
俺は目を疑った。そこには、1年間学校に来ず、行方不明となっていた片瀬一晴が立っていた。春の兆しを感じる柔らかい風に髪をなびかせ、何も変わらない面持ちで俺の前に歩み寄った。
「どうして一晴がここに…1年も何してたんだよ…」
「ごめんね、心配かけて。もう大丈夫だから、来たの」
「?」
「ねぇ、あの桜見に行こう!」
「あ、ちょ…!」
一晴に手を引かれ、自転車をその場に置いたまま公園を突っ切る。
丘の上にのぼり、まだ蕾ができたばかりの桜を見る。
この桜…確か名前は…
「ソメイヨシノだよ」
一晴が俺の心を読んだかの様にそう言った。ふとお菓子に入っていた紙を思い出す。あの紙に書かれていた文字…まだ不揃いかと思ったがこの名前だったのか。でもどうしてこれなんだ?ここに来てもなにもならないぞ。
「伊鶴。今日、誕生日だよね?」
「うん、そうだよ」
「へへっ、ちょっと後ろ向いてて」
可愛い笑顔を向けられ、思わず後ろを向く。
ちいさな音がした。
「いいよ、こっち向いて」
何事かと一晴の方を向くと、一晴は一言言った。
「はっぴーばーすでー、伊鶴。
大好きだよ」
そこで俺の記憶は途切れた。
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