ロボット乗りは夢を見ない 犬が犬を食う世界の物語

夏野かろ

文字の大きさ
40 / 66
第三章 冷酷非情の世界に生きる

第21話-2 これが俺の街のやり方だ

しおりを挟む
 パトロールを終えた後は、特に大きな事件など起きずに時間が流れていった。そして夕方を迎え、やっと仕事から解放されて自由時間になる。
 さっきからずっと、何となくブルーな気持ちだよ。ずぶぬれになった靴を履いているような感じだ。たまに、世の中や人生が嫌になっちまうんだよ。そういう時ってお前にもあるだろ? 今の俺がちょうどそうなんだ。

 自室に戻り、制服を脱ぎ捨て、私服……少しボロくなった革ジャンにジーンズとブーツ……に着替え、街へ繰り出す。行くあてもなく、ブラブラとうろつき回る。頭の中にレモンズの曲が流れてくる。


♪Boredom つまらねぇ 退屈
 Boredom つまらねぇ 退屈

 テレビはくだらない ラジオはうるさい
 映画は見飽きた 漫画もウンザリ

 つまらねぇ Boredom


 エレキ・ギターのトゲトゲした音が聞こえる。ベースやドラムスが力いっぱい演奏しているのが聞こえる。ヴォーカルがイライラしながら歌っている姿が見える。
 いや、もちろん実際に聞こえたりしてるわけじゃなく、俺の頭の中で曲のイメージが再生されてるってだけなんだが。それでも十分だ、多少の慰めにはなる。

 そうだ、ちょっとミュージック・ウェル(music well, 音楽の井戸)にでも寄ってくか。
 ミュージック・ウェルって、要するに音楽を売ってる店なんだけど、ダウンロード販売だけじゃなくてCDやレコードなんかも扱ってんだ。要するに音楽おたく、マニアック向けの店なんだよ。

 今の時代にCDだのなんだの、骨董品みたいなもんだからな。そんなもん嬉しがるのは俺みたいな間抜けぐらいのものさ。それでも、好きなもんは好きだからさ。
 まぁ何を買うってわけじゃないが、店内のロック・スターたちのポスターをながめてるだけでも憂さ晴らしになるだろう。

 例の駅前へ足を向け、歩くこと約十五分。俺はアーケード街の中に入り、ミュージック・ウェル目指して進み続ける。その途中、洋服屋から出てくるケイトさんを見つけ、声をかける。

「こんちは、ケイトさん」
「クロベーさん、こんなところで会うなんて……」
「どうしたんです、買い物ですか?」
「いえ、ちょっと散歩でもしようかと思って」
「なら一緒に行きましょうよ」
「いいんですか?」
「もうじき日が暮れて物騒な時間になります。だからボディーガードしたいんです」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか……」

 俺たちは横に並んで歩き出す。ケイトさんが話を始める。

「クロベーさん、どこに行くつもりなんですか?」
「まぁ音楽の店でも行こうかと……」
「へぇ、どんなもの聴くんです?」
「ロックですね。パンク、ハード・ロック、ヘヴィ・メタル。プログレなんかも聴きます」
「プログレ! 私、プログレ好きなんですよ」
「レッド・クィーンとか?」
「あれすごくいいですよね! 大好きなんです!」

 しばらくの間、俺たちは音楽の話で盛り上がりなら歩き続ける。そしてくだらない騒動に出くわす。

 道の途中、シケた博打屋の前、そこで若い男二人が殴り合いのケンカしている。どちらも白人で、片方は黒い短髪、もう片方は金の短髪だ。どうやら黒髪の奴が金髪を叩きのめしているらしい。ケイトさんは不安そうに言う。

「あれ、どうしたんでしょう?」
「どうせイカサマしたとかしてないとか、そういうアレですよ」
「あっ!」

 金髪はポケットに手を入れ、何かを出す。それは飛び出しナイフで、即座に刃が出てくる。金髪の怒鳴り声が聞こえる。

「殺すぞてめぇ!」

 黒髪が怒鳴り返す。

「うるせぇぞサンピンが! 家に帰ってエロ動画でも見てろ!」
「黙れクソ野郎!」
「やるなら来いよオラァ!」

 やべぇな、このままだと血を見る騒ぎになる。警備隊の人間として、こういうのを放置するわけにはいかねーな。俺はケイトさんに声をかける。

「あいつらを止めてきます。ここで待ってて下さい」
「大丈夫なんですか?」
「ケガしないように気をつけますよ」

 俺は奴らに怒鳴りつけながら走る。

「お前ら、おとなしくしろ! 警備隊だ!」

 すぐに騒ぎの現場に到着。懐からリボルバー式の拳銃を抜き、それを見せつけて威圧しながらさらに怒鳴る。

「そこの金髪の男! 武器を捨てて、両手を頭の後ろで組め!」

 金髪は俺をにらみつけ、言い返す。

「なんだてめぇ、すっこんでろ!」
「もう一度だけ言うぞ。武器を捨てて両手を頭の後ろで組め!」
「そんなチャチなレンコン(リボルバー拳銃)にビビると思ってんのかてめぇ!」

 問答無用、俺は金髪の肩を撃ち抜く。

「うぉっ……!」

 金髪の手からナイフが落ちる。さらに発砲、奴の左の太ももに一発ぶち込む。

「ぐっ……!」
「安心しろ、殺しはしねぇ。だが、暴れられたら面倒なんでな」
「だからっていきなり撃つのか!」
「一つ言っておく。俺は現代の警備隊の人間であって、旧時代の警察官とは違う。必要なら迷わず撃つし、それをしても処分されないんだ」
「ふざけんな!」
「よその街は知らねぇが、これが俺の街のやり方だ」
「くそっ……」
「すぐに再生カプセルに入れて治してやる。その後で事情聴取だ」

 俺は黒髪にも話をする。

「お前にも事情聴取だ。分かったな?」
「あっ、あぁ……」

 うむ、おとなしくなったな。そりゃそうだろう、目の前で人が撃たれるのを見たら、普通はビビるんだから。
 俺がやったことは荒っぽいかもしれない、だが、今の時代じゃあこれくらいしないと生き残れないんだ。下手すると逆襲されて俺が死ぬ。だから先手必勝だ。

 まったく、デートできるかと思ったのにこれだよ。ついてねぇなぁ。
 ちなみに、さっき話に出てきた再生カプセルってのは、生物を入れてケガを治す機械のことだ。よほど重傷でなけりゃ、これでだいだい何とかなる。もっとも、金がかかるから簡単には使えないが……。

 金髪は俺をにらみながらブツブツ言っている。

「殺してやる……てめぇ、いつかぶっ殺す……!」

 こいつ、身なりから判断するに難民だな。まったく、面倒な事件を起こしやがって……。今後もこんなことが起きるのか? だとしたら、どこにいても気が抜けねーな……。


 かったるい話だぜ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...