41 / 66
第三章 冷酷非情の世界に生きる
第22話-1 事態は予想の斜め上を行く
しおりを挟む
それからまた数日が過ぎ去った。その間にちょっとした事件が発生した。
今は昼休み、俺たち第二部隊の四人は、本部の食堂で飯を食っている。もぐもぐとチャーハンを食べながら隊長が話し始める。
「お前ら、グッド・ニュースだ。今度、ケニスとうちとで平和条約を結ぶことになった」
エイミーがたずねる。
「戦争が終わる?」
「そういうことになるんだろうな。うちはこれ以上の戦いで被害を増やしたくない、ケニスは前回の敗北から立ち直れない。お互いもう戦争したくないんだ」
「平和になる。いいこと」
「おう、まったくだ。それに、平和になればヘリエンでドンパチやらずにすむ。あたしらの仕事が減るってことだ、嬉しいねぇ」
話の流れに乗っていく俺。
「戦えば環境が汚れるし、資源だって無駄遣いされていく。本当、平和になるのはいいことですよ」
ダーカーが発言する。
「隊長、もう平和条約は結ばれたんですか?」
「いや、まだだよ。平原の北に小さな街があるだろ、これからあそこにお偉いさん達が集まって話し合いするんだとさ」
俺は生姜焼き定食を食べつつ喋る。
「ケニスも目が覚めたんでしょう。うちと戦ってる場合じゃないって」
「うん?」
「ボトム・ロックとケニスで戦争してたら、どちらも消耗する。それって、ノーリアにとっちゃあ嬉しいことですよ」
「将来あたしらを攻める時、有利になるからかい?」
「そうです。いわゆる漁夫の利ですよ」
「ふむ」
「もしうちがノーリアに占領されたら、次に攻められるのはケニスです。向こうとしては、それはさけたい事態でしょう。だから戦争を止めて、うちを弱らせないようにする。うちがノーリアと戦って侵略を食い止める、それを願っているんでしょう」
ここまで話したところでダーカーが口を開く。
「なら、平和条約だけでなく、お互いに協力し合うって話も必要じゃないか?」
「そりゃあ、それがベストだろう。でも、いきなりそこまでいけるわけじゃない。だから、まずは戦争終結だ」
エイミーが俺に向かって話す。
「クロベーいろいろ考えてる。すごい」
「これくらい、ムノグチ市長の側近だって考えてるだろうよ。特にすごいってわけじゃない」
「でも尊敬する」
「おう、ありがとよ」
さて、後は事態がどうなっていくかだ。まぁ、市長はハト派だし、平和条約ってことなら積極的に頑張るだろ。ケニスにも似たような奴がいるといいんだが。それを祈るとするか。
だが、話し合いが始まった後に最悪な事件が発生した。その時、俺は交流室で他の部隊の奴らとポーカーをしていたが、いきなり部屋のドアが開いたかと思うと丸坊主の男が飛びこんできて言った。
「大変だ、おい、ビッグ・ニュース!」
ポーカーのディーラー役をやっている黒人男性がそいつに返答する。
「なんだよ、うるせぇな。今ちょっと忙しいんだが……」
「遊んでる場合じゃねぇぞ! よく聞け、市長たちが殺された!」
「はぁ?」
「爆弾テロだよ! 会議してるとこに爆弾があって、それで死んじまった!」
「おい、じゃあ平和条約は……」
「たぶんダメだろ。それどころか、下手したらまた戦争だぞ」
「なんでだよ?」
「この爆弾テロ、ケニスの連中も巻き込まれたんだよ。うちのお偉いさんだけでなく、向こうのほうまで全滅しちまった」
「何ぃ……?」
確かにポーカーなどしてる場合じゃない。もしこれがマジなら実にヤバい話だからな。俺は隣の男に話しかける。
「覚悟決めたほうがいいかもな。今度は徹底的なつぶし合いになるぜ」
「徹底的って、そこまでのレベルになるのか?」
「そりゃそうだろ。ケニスからすりゃ、テロの犯人は俺たちに思える。そして俺たちからすれば、向こうが犯人だ。お互い、犯人は相手側だと非難合戦になり、それは本当の合戦……戦争に発展する」
「でもどっちの政治家も死んだってことじゃねーか。相手を殺すのはわかるけどよ、それの巻き添えで自分の街の人間も死ぬって、そんな間抜けなテロがあるわけねぇ」
「その程度はどうとでも説明できる。爆発のタイミングがズレてしまって、思わぬ展開になった……とかな」
「そんなことってあるのか?」
「さぁな。人間のやることなんてミスがつきもの、そういう失敗だってあり得るだろ」
室内はまだ騒然とした空気に包まれている。俺は思う、これからどうなっていくのだろうか、と。まぁ、ロクでもない未来ってことは間違いない。クソッタレが……。
それにしても誰がテロをやったんだか。平和嫌いで好戦的な連中による妨害? あるいは、平和条約なんてもともと嘘っぱちで、相手をだまして会見の場に引きずり出し、暗殺しようって罠だったのか?
いや、どれも何か違う気がするな……。落ち着け、よく考えろ、クロベー。うちとケニスが平和条約を結ぶ、それが不利益になるのはどこの誰だ? うちとケニスとの戦争で得する奴は誰なんだ?
嫌な展開になってきたぜ……。
今は昼休み、俺たち第二部隊の四人は、本部の食堂で飯を食っている。もぐもぐとチャーハンを食べながら隊長が話し始める。
「お前ら、グッド・ニュースだ。今度、ケニスとうちとで平和条約を結ぶことになった」
エイミーがたずねる。
「戦争が終わる?」
「そういうことになるんだろうな。うちはこれ以上の戦いで被害を増やしたくない、ケニスは前回の敗北から立ち直れない。お互いもう戦争したくないんだ」
「平和になる。いいこと」
「おう、まったくだ。それに、平和になればヘリエンでドンパチやらずにすむ。あたしらの仕事が減るってことだ、嬉しいねぇ」
話の流れに乗っていく俺。
「戦えば環境が汚れるし、資源だって無駄遣いされていく。本当、平和になるのはいいことですよ」
ダーカーが発言する。
「隊長、もう平和条約は結ばれたんですか?」
「いや、まだだよ。平原の北に小さな街があるだろ、これからあそこにお偉いさん達が集まって話し合いするんだとさ」
俺は生姜焼き定食を食べつつ喋る。
「ケニスも目が覚めたんでしょう。うちと戦ってる場合じゃないって」
「うん?」
「ボトム・ロックとケニスで戦争してたら、どちらも消耗する。それって、ノーリアにとっちゃあ嬉しいことですよ」
「将来あたしらを攻める時、有利になるからかい?」
「そうです。いわゆる漁夫の利ですよ」
「ふむ」
「もしうちがノーリアに占領されたら、次に攻められるのはケニスです。向こうとしては、それはさけたい事態でしょう。だから戦争を止めて、うちを弱らせないようにする。うちがノーリアと戦って侵略を食い止める、それを願っているんでしょう」
ここまで話したところでダーカーが口を開く。
「なら、平和条約だけでなく、お互いに協力し合うって話も必要じゃないか?」
「そりゃあ、それがベストだろう。でも、いきなりそこまでいけるわけじゃない。だから、まずは戦争終結だ」
エイミーが俺に向かって話す。
「クロベーいろいろ考えてる。すごい」
「これくらい、ムノグチ市長の側近だって考えてるだろうよ。特にすごいってわけじゃない」
「でも尊敬する」
「おう、ありがとよ」
さて、後は事態がどうなっていくかだ。まぁ、市長はハト派だし、平和条約ってことなら積極的に頑張るだろ。ケニスにも似たような奴がいるといいんだが。それを祈るとするか。
だが、話し合いが始まった後に最悪な事件が発生した。その時、俺は交流室で他の部隊の奴らとポーカーをしていたが、いきなり部屋のドアが開いたかと思うと丸坊主の男が飛びこんできて言った。
「大変だ、おい、ビッグ・ニュース!」
ポーカーのディーラー役をやっている黒人男性がそいつに返答する。
「なんだよ、うるせぇな。今ちょっと忙しいんだが……」
「遊んでる場合じゃねぇぞ! よく聞け、市長たちが殺された!」
「はぁ?」
「爆弾テロだよ! 会議してるとこに爆弾があって、それで死んじまった!」
「おい、じゃあ平和条約は……」
「たぶんダメだろ。それどころか、下手したらまた戦争だぞ」
「なんでだよ?」
「この爆弾テロ、ケニスの連中も巻き込まれたんだよ。うちのお偉いさんだけでなく、向こうのほうまで全滅しちまった」
「何ぃ……?」
確かにポーカーなどしてる場合じゃない。もしこれがマジなら実にヤバい話だからな。俺は隣の男に話しかける。
「覚悟決めたほうがいいかもな。今度は徹底的なつぶし合いになるぜ」
「徹底的って、そこまでのレベルになるのか?」
「そりゃそうだろ。ケニスからすりゃ、テロの犯人は俺たちに思える。そして俺たちからすれば、向こうが犯人だ。お互い、犯人は相手側だと非難合戦になり、それは本当の合戦……戦争に発展する」
「でもどっちの政治家も死んだってことじゃねーか。相手を殺すのはわかるけどよ、それの巻き添えで自分の街の人間も死ぬって、そんな間抜けなテロがあるわけねぇ」
「その程度はどうとでも説明できる。爆発のタイミングがズレてしまって、思わぬ展開になった……とかな」
「そんなことってあるのか?」
「さぁな。人間のやることなんてミスがつきもの、そういう失敗だってあり得るだろ」
室内はまだ騒然とした空気に包まれている。俺は思う、これからどうなっていくのだろうか、と。まぁ、ロクでもない未来ってことは間違いない。クソッタレが……。
それにしても誰がテロをやったんだか。平和嫌いで好戦的な連中による妨害? あるいは、平和条約なんてもともと嘘っぱちで、相手をだまして会見の場に引きずり出し、暗殺しようって罠だったのか?
いや、どれも何か違う気がするな……。落ち着け、よく考えろ、クロベー。うちとケニスが平和条約を結ぶ、それが不利益になるのはどこの誰だ? うちとケニスとの戦争で得する奴は誰なんだ?
嫌な展開になってきたぜ……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる