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第四章 勝てば官軍、負ければ賊軍
第27話-3 俺のための新兵器
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墓参りの翌日、朝。俺を除く第二部隊の全員は、先日のヘリエン検査の時のようにプレイグラウンドに集まり、一機のヘリエンを眺めている。そして俺はというと、そのヘリエンに搭乗している。
ヘリエンから少し離れた位置にいるクリフさんが俺に言う。
「では、さっそく新兵器の説明をするとしよう。喜べ、お前のために作られた特別製だぞ!」
「あの……。そもそも、そんなの一体どこにあるんですか?」
「右の二の腕、ヒジから手首までのところを見てみろ」
俺はその場所の映像をコクピット内に呼び出し、空中に投影させる。確かに何かが存在している。ざっくり言えば、それは、かまぼこのような形をした金属製の物体だ。もちろん、板にあたる部分が腕にくっついているわけだが。
「クリフさん、これは何ですか?」
「何だと思う?」
「そうッスね……。小型のショック・キャノンとか?」
「違うな」
「じゃあ答えは?」
「鳥もちキャノン」
「……とりもち?」
「鳥もちだ」
「鳥もちって、あの、鳥を捕まえる時に使うあれですか? 白くてベタベタしている粘着質な……」
「うむ、そうだが?」
「クリフさん、俺はこれから戦いに行くのであって、鳥を捕まえにいくわけじゃないです」
「おいおい、これを馬鹿にしちゃいかんぞ。ヘリエンに当てればすぐに固まって、ろくに動けんようになる。そこを狙えば朝飯前で撃破ってわけだ。凄いだろう?」
「でもみんなが強化ライフルもらったっていうのに、俺だけ鳥もちって……」
「まぁまぁ、ともかく使ってみろ。使えばその威力、便利さに驚くぜ」
「了解です……」
遠くに見える射撃の的に向かって腕を向け、狙いを定め、副兵装を発射するボタンを押す。
鳥もちキャノンから何かが発射され、ツバメのように素早く宙を駆け抜けて命中。べちゃっ……。白い泡のようなものが広がり、すぐに硬化する。自慢そうにクリフさんが話しかけてくる。
「なっ? すごいだろう?」
「いや全然」
「これだから素人は困るねぇ。重量が軽くて連射力があり、なによりも弾が安上がり。ヴァーチャル・ファイターズにだってあるだろうが」
「確かにありますよ。でも、ストーリー・モードで使うだけです。対戦じゃあ役立たずだ」
「ゲームと現実は違うんだぜ。その証拠に、ゲームの奴よりカッコいい見た目だろ」
「カッコ良さで勝てたら苦労しませんよ」
「まぁそう言うなって。鳥もちキャノンは三次大戦の時だって使われた、由緒正しい武器なんだ。安心しろ、必ず役に立つ」
「じゃあせめて名前を変えてくださいよ。鳥もちはバードライム(birdlime)だから、バードライム・キャノンとか」
「カッコいい名前で勝てたら苦労はしねぇ」
「俺の言ったことマネしないでくださいよ!」
隊長が通信を入れてくる。
「クロベー、そこまでにしておけ。そもそもお前の機体は射撃重視、みんなの後ろから支援するのが仕事なんだ。撃破を無理に狙うより、鳥もちで足止めしたほうがいい」
「分かりましたよ……。でも、鳥もちはマジで勘弁です。バードライムって言ってください」
「バードライムなんて長い言葉、いちいち言ってられん。鳥もちで十分だ」
「そんな……」
「はい、この件はこれまで! 忙しいんだから、次の仕事に行くよ!」
「まだなんかあるんですか」
「戦争の準備だ。もう戦いはさけられない、だから、いつでも出撃できる態勢にするんだよ」
「……いよいよですか」
「いずれこうなるだろうって誰もが思ってたわけだけどね。ほら、無駄話は終わり終わり! 作業だ、作業!」
「了解です」
準備か。この話が出たってことは、上層部は数日中に開戦するつもりってことなんだろう。後で司令に詳しいことを聞かないと……。
同日の夜、司令の部屋。俺と司令は机の周りに集まって席に座り、そこにある電子地図の上にあれこれ書いたり物を置いたりしながら喋っている。
電子地図が示しているのは平原の一部、うちとケニスのちょうど中間のあたりだ。そこは西部劇に出てくるような地形で、小さな岩山や崖がたくさんあり、かなり複雑になっている。
司令が話を切り出す。
「単刀直入に言おう。例の兵器が届いた」
「PGミサイルですか……。発射の指示は俺が出していいんですよね?」
「そうだ。戦場の後ろにいる私より、前線で戦う君の方が、状況をよく理解できるからな」
「問題は風向きですよ。兵器の性質上、向かい風の時は使えません。でも天気予報によれば、ここ数日は向かい風……」
「その情報は私も知っているが、今さら作戦変更は不可能だ。落ち着け、天気予報はしょせん予報。予定ではない。外れることはよくある」
「はい」
「少しの間だけ追い風が吹けばそれで十分なんだ。そしてその可能性は決して低くない。諦めずに戦い抜こうじゃないか」
「了解です」
とはいえ、不安なものは不安だ。敵のドラゴンを攻略するにはPGミサイルしかないんだから、これが失敗したら目も当てられない。下手すると全滅までいくだろう。
司令が話しかけてくる。
「クロベーくん、もっと胸を張って、気合いを入れていくんだ。大丈夫、君と私で考えた策なんだ。きっと成功する、勝てるさ」
「はい」
「勇気を持って未来へ進む者には勝利がやって来る。私はそう思っているよ」
彼はそう言ってニッコリと笑う。激励……か。それが何を変えるわけではないが、しかし、今の俺にはありがたいものだ。
それから数日後。ボトム・ロック市長はついにケニスへ宣戦布告し、正真正銘、奴らとの戦争が始まった。どちらかが破滅するまで続く、逃げ場なしのデス・マッチ。もう後戻りなんて出来ない。
ヘリエンから少し離れた位置にいるクリフさんが俺に言う。
「では、さっそく新兵器の説明をするとしよう。喜べ、お前のために作られた特別製だぞ!」
「あの……。そもそも、そんなの一体どこにあるんですか?」
「右の二の腕、ヒジから手首までのところを見てみろ」
俺はその場所の映像をコクピット内に呼び出し、空中に投影させる。確かに何かが存在している。ざっくり言えば、それは、かまぼこのような形をした金属製の物体だ。もちろん、板にあたる部分が腕にくっついているわけだが。
「クリフさん、これは何ですか?」
「何だと思う?」
「そうッスね……。小型のショック・キャノンとか?」
「違うな」
「じゃあ答えは?」
「鳥もちキャノン」
「……とりもち?」
「鳥もちだ」
「鳥もちって、あの、鳥を捕まえる時に使うあれですか? 白くてベタベタしている粘着質な……」
「うむ、そうだが?」
「クリフさん、俺はこれから戦いに行くのであって、鳥を捕まえにいくわけじゃないです」
「おいおい、これを馬鹿にしちゃいかんぞ。ヘリエンに当てればすぐに固まって、ろくに動けんようになる。そこを狙えば朝飯前で撃破ってわけだ。凄いだろう?」
「でもみんなが強化ライフルもらったっていうのに、俺だけ鳥もちって……」
「まぁまぁ、ともかく使ってみろ。使えばその威力、便利さに驚くぜ」
「了解です……」
遠くに見える射撃の的に向かって腕を向け、狙いを定め、副兵装を発射するボタンを押す。
鳥もちキャノンから何かが発射され、ツバメのように素早く宙を駆け抜けて命中。べちゃっ……。白い泡のようなものが広がり、すぐに硬化する。自慢そうにクリフさんが話しかけてくる。
「なっ? すごいだろう?」
「いや全然」
「これだから素人は困るねぇ。重量が軽くて連射力があり、なによりも弾が安上がり。ヴァーチャル・ファイターズにだってあるだろうが」
「確かにありますよ。でも、ストーリー・モードで使うだけです。対戦じゃあ役立たずだ」
「ゲームと現実は違うんだぜ。その証拠に、ゲームの奴よりカッコいい見た目だろ」
「カッコ良さで勝てたら苦労しませんよ」
「まぁそう言うなって。鳥もちキャノンは三次大戦の時だって使われた、由緒正しい武器なんだ。安心しろ、必ず役に立つ」
「じゃあせめて名前を変えてくださいよ。鳥もちはバードライム(birdlime)だから、バードライム・キャノンとか」
「カッコいい名前で勝てたら苦労はしねぇ」
「俺の言ったことマネしないでくださいよ!」
隊長が通信を入れてくる。
「クロベー、そこまでにしておけ。そもそもお前の機体は射撃重視、みんなの後ろから支援するのが仕事なんだ。撃破を無理に狙うより、鳥もちで足止めしたほうがいい」
「分かりましたよ……。でも、鳥もちはマジで勘弁です。バードライムって言ってください」
「バードライムなんて長い言葉、いちいち言ってられん。鳥もちで十分だ」
「そんな……」
「はい、この件はこれまで! 忙しいんだから、次の仕事に行くよ!」
「まだなんかあるんですか」
「戦争の準備だ。もう戦いはさけられない、だから、いつでも出撃できる態勢にするんだよ」
「……いよいよですか」
「いずれこうなるだろうって誰もが思ってたわけだけどね。ほら、無駄話は終わり終わり! 作業だ、作業!」
「了解です」
準備か。この話が出たってことは、上層部は数日中に開戦するつもりってことなんだろう。後で司令に詳しいことを聞かないと……。
同日の夜、司令の部屋。俺と司令は机の周りに集まって席に座り、そこにある電子地図の上にあれこれ書いたり物を置いたりしながら喋っている。
電子地図が示しているのは平原の一部、うちとケニスのちょうど中間のあたりだ。そこは西部劇に出てくるような地形で、小さな岩山や崖がたくさんあり、かなり複雑になっている。
司令が話を切り出す。
「単刀直入に言おう。例の兵器が届いた」
「PGミサイルですか……。発射の指示は俺が出していいんですよね?」
「そうだ。戦場の後ろにいる私より、前線で戦う君の方が、状況をよく理解できるからな」
「問題は風向きですよ。兵器の性質上、向かい風の時は使えません。でも天気予報によれば、ここ数日は向かい風……」
「その情報は私も知っているが、今さら作戦変更は不可能だ。落ち着け、天気予報はしょせん予報。予定ではない。外れることはよくある」
「はい」
「少しの間だけ追い風が吹けばそれで十分なんだ。そしてその可能性は決して低くない。諦めずに戦い抜こうじゃないか」
「了解です」
とはいえ、不安なものは不安だ。敵のドラゴンを攻略するにはPGミサイルしかないんだから、これが失敗したら目も当てられない。下手すると全滅までいくだろう。
司令が話しかけてくる。
「クロベーくん、もっと胸を張って、気合いを入れていくんだ。大丈夫、君と私で考えた策なんだ。きっと成功する、勝てるさ」
「はい」
「勇気を持って未来へ進む者には勝利がやって来る。私はそう思っているよ」
彼はそう言ってニッコリと笑う。激励……か。それが何を変えるわけではないが、しかし、今の俺にはありがたいものだ。
それから数日後。ボトム・ロック市長はついにケニスへ宣戦布告し、正真正銘、奴らとの戦争が始まった。どちらかが破滅するまで続く、逃げ場なしのデス・マッチ。もう後戻りなんて出来ない。
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