58 / 66
第四章 勝てば官軍、負ければ賊軍
第29話-2 やっぱり出てきたあの野郎
しおりを挟む
ジャイアントたちが剣を手に突進していく。敵のブラッディ・ヴァルキリーたちも突進、剣を振りかざして迎え撃つ。
ブラッディ・ヴァルキリー。ヴァルキリーとはいうものの、ブラッディ(bloody)の名前が示す通りに血なまぐさくて残虐で、それを象徴するような赤い鎧をまとったクソッタレだ。
お互いに剣を打ち合う音が戦場に響き、皮膚が斬り裂かれて血が流れ、大地を汚していく。もちろんそれはサイコ・エナジーによって生み出された偽りの血、召喚生物が倒れると同時に消える性質のものだが、やっぱ見るたびに気分が悪くなるぜ。
おっと、喋ってる場合じゃねぇよな。お仕事お仕事! 右肩のミサイル・ランチャーから分裂ミサイルを五発、目標は右の前方にいる殺りく人形たちだ。
あの人形たち、マインド・ブラストでジャイアントたちを混乱させてヴァルキリーたちを援護しようってつもりだろうが、そんなことさせねぇよ。無理やりにでも動きを止める。
ミサイルたちが分裂、大量の子ミサイルをばらまく。それらは人形たちへ一気に襲いかかって着弾していく。「ケエェェェェェッ!」、奴らの悲鳴がこだまする。そこへ走り込んでいくジャイアント隊、彼らは手にしている剣で相手を斬り裂く。
俺の少し前ではエイミーがショック・キャノンを撃っている。彼女のヘリエン、両肩に乗っている三角錐の物体が青く光り、ロボット・アニメのビーム砲のようにショック・ブラストを放つ。
ブラストたちは遠くにいるキマイラたちに命中、ある程度のダメージを与えて流血させる。悲鳴、「グオォォオ!」、動きがひるむ。そこへ味方のヘリエンたちがライフル射撃を浴びせているのが見える。
ここまでは順調だ。しかし、そう思った途端、ずっと前で戦闘中の隊長から通信が来る。
「クロベー! 十一時の方角、ギンスキーがいる!」
「マジですか!」
「ヘリエンもだ! お前やエイミーのところへ向かってる!」
「俺たちの援護射撃を止めるために!?」
「あたしのヘリエン隊で迎撃する、でも気をつけろ! 突破されるかもしれない」
「了解」
やはりこうなるよな。敵としちゃ、俺やエイミーがうざったくてたまらないんだから。別の見方をすれば、俺たちの援護がちゃんと効果を上げてるからこそ、それをつぶすために敵が来るんだ。そこまで悪い話じゃない。
とはいえこのままの状態で撃ち続けるのはよくない。エイミーに通信する。
「隊長の話は聞こえたか?」
「うん」
「場所を変えようぜ。ジャイアント隊、ラムダ、ミュー。護衛を頼みます」
ラムダからの返答が来る。
「軍師殿、そうはいかないみたいですが」
「どういうことです?」
「二時の方角から敵が来てます!」
コクピットのレーダーに目を走らす。確かに、敵影を示す光点がいくつも映っている。
「クソッタレ、このタイミングで……!」
「軍師殿、どうしますか?」
「ラムダ、ミューは敵の足止めを! 俺とエイミーはその間に移動します」
「了解!」
ラムダたちが走り出していく。これで彼らという盾はなくなった、敵の突進を止めてくれる味方はもういない。ここからは自分たちの力だけが頼りだ。
「エイミー、後退するぞ。八時へ行った先に崖があるだろ。そこに陣取ろう。到着したらガーゴイル隊を護衛に呼ぶ」
「了解」
「いくぞ」
車輪を展開、俺たちは走り出す。直後、ヘルメット内のスピーカーからダーカーの声が流れてくる。
「ヤバい、ギンスキーが突破した!」
「クソッタレ!」
「味方のヘリエン一機が追いかけてる! 援護してくれ!」
「おうよ!」
レーダーに映っている金色の交点。いうまでもない、これがギンスキーだ。猛スピードでこちらに進んでいる。それを追いかけている青い光点、これは味方ヘリエンだ。どうにかあいつのスピードについていっているらしい。
エイミーの声が耳に入ってくる。
「どうしたらいい?」
「あいつから逃げきるなんて不可能だ。逃げるんじゃなくて攻める、ここでつぶす!」
「うん!」
崖へ進むのを中止、鋭くUターンして引き返す。そのまま移動し続ける、はるか前方にヘリエン二機が見えてくる。ギンスキーと味方ヘリエンだ。
味方が必死にライフルを撃ちまくっているのが見える。それらのいくつかはギンスキーのヘリエンに命中しているが、大部分は外れてしまっている。このままでは撃破なんて無理だろう。それは味方だって分かっているはずだ、なら、どうする?
味方の右肩のミサイル・ランチャーが大量のミサイルを吐き出す。それらはギンスキーよりも速く飛び、ギンスキーの前方の地面に着弾していく。ドォン、ドォン、ドォン、爆発音が連続して発生し、煙が宙を漂い始める。
行く手を邪魔されているギンスキーは、直線的な突進をやめて速度を落とし、ミサイルをよけるようにカーブを描きながら進み始める。味方からの通信が入る、若い男性の声だ。
「援護を頼みます!」
エイミーが「了解」と返し、ヘリエンを停止させる。彼女にならって俺も自機を停止させる。エイミーが喋っているのが聞こえる。
「ショック・キャノン、撃ち抜く……!」
彼女のヘリエンからショック・ブラストが放たれる。それはギンスキーのすぐそばを駆け抜けて地面に当たり、砂ぼこりを巻き上げる。ギンスキーは悪態をつく。
「前から後ろから攻めてくるか!」
エイミーは返事などせずブラストを撃ち続ける。火力の低いショック・ブラストといえど、砲撃レベルの威力ならかなりのダメージを与えられる。直撃させれば大破までもっていけるかもしれない。それに期待して彼女は攻撃し続けているだ。
ギンスキーの機体は先ほどよりもさらに速度を落とし、攻撃の回避に専念し始める。この状態なら味方機のスピードでも追いつける、彼は少しずつギンスキーに近づいていく。彼のヘリエンの右手に振動剣が見える、それを振りかざし、彼は叫ぶ。
「仕留めるッ!」
危険を察知したギンスキーは急加速して前方へ駆け抜ける、直後に味方の斬撃、それはついさっきまでギンスキーがいた場所を走り抜ける。攻撃失敗、だが味方機はなおも追いすがる。
「ギンスキー! 年貢の納め時だ!」
「来週に延期してもらおう!」
ギンスキーの機体が、コマが回転する時のようにくるっと向きを変え、正面に味方機をとらえる。黒の右腕から青白く光る透明な物体が出る、あれは……! 思わず俺は叫ぶ。
「やめろ、ギンスキー!」
「まずは捕まえる……」
透明な物体は手のようになり、味方機へ襲いかかってそれを握る。ギンスキーの動きが止まる、彼は攻撃行動に集中し始める。
「握り潰す……」
透明な手は味方機を強く握り締め、少しずつ潰していく。
「放り捨てる!」
まるで空き缶を投げ捨てる時のように味方機が放り投げられる。それは空中を何メートルか飛んだ後、地面に激突。砕けた装甲のかけらを周囲にまき散らし、そのまま動かなくる。
俺は必死に呼びかける。
「おい、しっかりしろ!」
返事はない。気絶したのか、それとも、頭の打ちどころが悪くて死んだのか。やはりあいつに近づいてはいけない、あの透明な手はヤバすぎる……!
ギンスキーから通信が送られてくる。
「久しぶりだな、君たち。では、殺す」
ブラッディ・ヴァルキリー。ヴァルキリーとはいうものの、ブラッディ(bloody)の名前が示す通りに血なまぐさくて残虐で、それを象徴するような赤い鎧をまとったクソッタレだ。
お互いに剣を打ち合う音が戦場に響き、皮膚が斬り裂かれて血が流れ、大地を汚していく。もちろんそれはサイコ・エナジーによって生み出された偽りの血、召喚生物が倒れると同時に消える性質のものだが、やっぱ見るたびに気分が悪くなるぜ。
おっと、喋ってる場合じゃねぇよな。お仕事お仕事! 右肩のミサイル・ランチャーから分裂ミサイルを五発、目標は右の前方にいる殺りく人形たちだ。
あの人形たち、マインド・ブラストでジャイアントたちを混乱させてヴァルキリーたちを援護しようってつもりだろうが、そんなことさせねぇよ。無理やりにでも動きを止める。
ミサイルたちが分裂、大量の子ミサイルをばらまく。それらは人形たちへ一気に襲いかかって着弾していく。「ケエェェェェェッ!」、奴らの悲鳴がこだまする。そこへ走り込んでいくジャイアント隊、彼らは手にしている剣で相手を斬り裂く。
俺の少し前ではエイミーがショック・キャノンを撃っている。彼女のヘリエン、両肩に乗っている三角錐の物体が青く光り、ロボット・アニメのビーム砲のようにショック・ブラストを放つ。
ブラストたちは遠くにいるキマイラたちに命中、ある程度のダメージを与えて流血させる。悲鳴、「グオォォオ!」、動きがひるむ。そこへ味方のヘリエンたちがライフル射撃を浴びせているのが見える。
ここまでは順調だ。しかし、そう思った途端、ずっと前で戦闘中の隊長から通信が来る。
「クロベー! 十一時の方角、ギンスキーがいる!」
「マジですか!」
「ヘリエンもだ! お前やエイミーのところへ向かってる!」
「俺たちの援護射撃を止めるために!?」
「あたしのヘリエン隊で迎撃する、でも気をつけろ! 突破されるかもしれない」
「了解」
やはりこうなるよな。敵としちゃ、俺やエイミーがうざったくてたまらないんだから。別の見方をすれば、俺たちの援護がちゃんと効果を上げてるからこそ、それをつぶすために敵が来るんだ。そこまで悪い話じゃない。
とはいえこのままの状態で撃ち続けるのはよくない。エイミーに通信する。
「隊長の話は聞こえたか?」
「うん」
「場所を変えようぜ。ジャイアント隊、ラムダ、ミュー。護衛を頼みます」
ラムダからの返答が来る。
「軍師殿、そうはいかないみたいですが」
「どういうことです?」
「二時の方角から敵が来てます!」
コクピットのレーダーに目を走らす。確かに、敵影を示す光点がいくつも映っている。
「クソッタレ、このタイミングで……!」
「軍師殿、どうしますか?」
「ラムダ、ミューは敵の足止めを! 俺とエイミーはその間に移動します」
「了解!」
ラムダたちが走り出していく。これで彼らという盾はなくなった、敵の突進を止めてくれる味方はもういない。ここからは自分たちの力だけが頼りだ。
「エイミー、後退するぞ。八時へ行った先に崖があるだろ。そこに陣取ろう。到着したらガーゴイル隊を護衛に呼ぶ」
「了解」
「いくぞ」
車輪を展開、俺たちは走り出す。直後、ヘルメット内のスピーカーからダーカーの声が流れてくる。
「ヤバい、ギンスキーが突破した!」
「クソッタレ!」
「味方のヘリエン一機が追いかけてる! 援護してくれ!」
「おうよ!」
レーダーに映っている金色の交点。いうまでもない、これがギンスキーだ。猛スピードでこちらに進んでいる。それを追いかけている青い光点、これは味方ヘリエンだ。どうにかあいつのスピードについていっているらしい。
エイミーの声が耳に入ってくる。
「どうしたらいい?」
「あいつから逃げきるなんて不可能だ。逃げるんじゃなくて攻める、ここでつぶす!」
「うん!」
崖へ進むのを中止、鋭くUターンして引き返す。そのまま移動し続ける、はるか前方にヘリエン二機が見えてくる。ギンスキーと味方ヘリエンだ。
味方が必死にライフルを撃ちまくっているのが見える。それらのいくつかはギンスキーのヘリエンに命中しているが、大部分は外れてしまっている。このままでは撃破なんて無理だろう。それは味方だって分かっているはずだ、なら、どうする?
味方の右肩のミサイル・ランチャーが大量のミサイルを吐き出す。それらはギンスキーよりも速く飛び、ギンスキーの前方の地面に着弾していく。ドォン、ドォン、ドォン、爆発音が連続して発生し、煙が宙を漂い始める。
行く手を邪魔されているギンスキーは、直線的な突進をやめて速度を落とし、ミサイルをよけるようにカーブを描きながら進み始める。味方からの通信が入る、若い男性の声だ。
「援護を頼みます!」
エイミーが「了解」と返し、ヘリエンを停止させる。彼女にならって俺も自機を停止させる。エイミーが喋っているのが聞こえる。
「ショック・キャノン、撃ち抜く……!」
彼女のヘリエンからショック・ブラストが放たれる。それはギンスキーのすぐそばを駆け抜けて地面に当たり、砂ぼこりを巻き上げる。ギンスキーは悪態をつく。
「前から後ろから攻めてくるか!」
エイミーは返事などせずブラストを撃ち続ける。火力の低いショック・ブラストといえど、砲撃レベルの威力ならかなりのダメージを与えられる。直撃させれば大破までもっていけるかもしれない。それに期待して彼女は攻撃し続けているだ。
ギンスキーの機体は先ほどよりもさらに速度を落とし、攻撃の回避に専念し始める。この状態なら味方機のスピードでも追いつける、彼は少しずつギンスキーに近づいていく。彼のヘリエンの右手に振動剣が見える、それを振りかざし、彼は叫ぶ。
「仕留めるッ!」
危険を察知したギンスキーは急加速して前方へ駆け抜ける、直後に味方の斬撃、それはついさっきまでギンスキーがいた場所を走り抜ける。攻撃失敗、だが味方機はなおも追いすがる。
「ギンスキー! 年貢の納め時だ!」
「来週に延期してもらおう!」
ギンスキーの機体が、コマが回転する時のようにくるっと向きを変え、正面に味方機をとらえる。黒の右腕から青白く光る透明な物体が出る、あれは……! 思わず俺は叫ぶ。
「やめろ、ギンスキー!」
「まずは捕まえる……」
透明な物体は手のようになり、味方機へ襲いかかってそれを握る。ギンスキーの動きが止まる、彼は攻撃行動に集中し始める。
「握り潰す……」
透明な手は味方機を強く握り締め、少しずつ潰していく。
「放り捨てる!」
まるで空き缶を投げ捨てる時のように味方機が放り投げられる。それは空中を何メートルか飛んだ後、地面に激突。砕けた装甲のかけらを周囲にまき散らし、そのまま動かなくる。
俺は必死に呼びかける。
「おい、しっかりしろ!」
返事はない。気絶したのか、それとも、頭の打ちどころが悪くて死んだのか。やはりあいつに近づいてはいけない、あの透明な手はヤバすぎる……!
ギンスキーから通信が送られてくる。
「久しぶりだな、君たち。では、殺す」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる