未来に向かって突き進め!

夏野かろ

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序章 父が君にのこしたモノ

白銀小翼記章の記憶

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国際歴3119年。その年、ある地域で戦争が始まった。
戦いが始まってから数日後。虎太郎とらたろうの父……彼は軍人である……に、前線への配属命令が下された。
これは、虎太郎の父が戦地に往く前に残した、虎太郎との会話の記録。

「虎太郎、よく聞いてくれ。父さんは、戦争に行かなくちゃいけない」
「せんそう? つまり、戦うの?」
「そうだ。ロボットに乗って戦うんだ」
「ロボットって、あの”ヘリエン”って奴でしょ」
「パパはな、あれを上手く動かせるんだ。みんな、パパに期待してる。
 パパが敵をやっつけるのを期待してるんだ」
「ねぇ、パパは大丈夫なの? 負けたりしない?」
「ははは、大丈夫さ。パパは誰にも負けないよ。
 パパは強いんだ、だから、安心して待っていなさい。すぐに帰ってくるから。
 その時はきっと、すごいお土産を持ってきてやるぞ」
「おみやげ? ほんとう?」
「本当だとも。だから、いい子にしてるんだぞ」
「うん!」

虎太郎の父が戦地に往ってから1週間後。
彼は、味方の撤退戦で殿しんがり……敵からの追撃を食い止める役を引き受け、奮戦し、10を超える敵機を撃破した後……戦死した。
彼は確かに約束を守った。彼はすぐに虎太郎のもとへ帰ってきた。……棺に納められた遺体として。
そして、彼の軍服の胸には、特に勇猛果敢だった兵士に贈られる名誉の記章……白銀小翼記章が置かれ、鈍い輝きを放っていた。
そう、彼はそういう意味でも約束を守ったのだ。彼は記章というすごいお土産を持ってきた。その命と引き換えに。

父の葬式が終わり、悲しみが癒えた時、虎太郎は記章を手にしながら誓った。
「ぼくは、父さんのような立派なパイロットになる!」
やがて彼は成長し、15歳となり、軍が設立した学校へ入学した。そして、パイロットになるための訓練を開始した。
この物語は、彼が入学してから約10ヶ月後の学校を舞台として始まる……。
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