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第三章 あばよ課金ゲー
第4話 この課金バカ!
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みんなに引退を伝えたら、すっごく残念がられた。まだ一緒にいたい、遊びたい、そう言ってくれる人がたくさんいた。
でもさ、やっぱあたし限界きてるし。決心したとおり、今度の戦争終わったらやめるつもりだ。
あたしにとっちゃあ最後の戦争になる。だったら、パーッと派手にやらなきゃね。
ありったけの課金アイテム出して、全力全開でぶっ飛ばしてこうじゃないの。
時は流れて土曜日、戦争用の特別フィールド……戦場。あたしと仲間たちはそこにやってきた。
今回は平原が舞台らしい。あまり障害物のないところだ、正攻法で力押しが正解の戦術だろう。
これはギルドの底力が試されるねぇ。さて、どうなることやら。
あたしの横に立っているジャンが言う。
「リーダー、どうするんすか」
「作戦通りだよ。あたしは正面部隊の指揮、あんたは左翼部隊の隊長、エルフィが右翼だ」
「了解っす。しかし敵さんどう出てくるんですかねぇ」
「そんなんあたしに言われてもね。あちらさん、噂じゃめっちゃ課金して戦力増やしたってことじゃん。まぁ激戦になるのは間違いないよ」
「俺、友だちから聞きましたよ。マイカルさん限界まで課金したって」
「マジで?」
マイカルかぁ。『大きな子猫』の幹部の一人、そして、あのギルドの中じゃ二番目に強いプレイヤー。
あいつがそんなにやる気とは、ちょっとまずい事態かもしれん。うちの平均的なメンバーじゃあ勝てないだろう。
タイマンで勝てそうなのはあたしとエルフィぐらいか。できればみんなで袋叩きにしたいけど……。
その時、戦場に開戦を告げるラッパの音が響いた。
「パパァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
えぇい、悩んでいてもしかたない! 魔神だろうと悪魔だろうと、出会った敵は片っ端から斬り捨てるのみだ!
この愛刀、正国でな!
戦況は五分五分で推移していった。こちらが押せば向こうが押し返し、一人やれば一人やられる。
ところで、戦争イベントの時間制限は二時間だ。この間に決着がつかない場合は相手戦力を多く削ったほうの勝ちになる。
そして現在、我がマッド・ドッグは戦力負けしている。残り三十分だってのにこれはヤバい。
どうやら覚悟決めないとダメみたいだ。いこう……!
「全軍に通達! これより総攻撃をかける!」
ジャンから通信が入る。
「リーダー、俺はどうすれば?」
「あんたとエルフィは突っこむな、前に出ないで粘ってけ。飛び道具、魔法で援護射撃して」
「了解」
「タイミングいいとこで命令出すから、そしたら突撃開始」
「うっす」
「エルフィは分かった!?」
「はいよー」
「おっしゃ!」
眼前に広がる敵軍を眺める。ざっと二十人はいるだろうか、いずれも一騎当千の強者ぞろいだ。
対して、あたしの部隊は十人前後。気づけばかなりやられてしまった。
遠くにはマイカルの姿が見える。ふん、大将気取りってわけか。ギルド主はもっと後方で指示だけしてんだろう。それとも今日はお休みか?
マイカルさえやれば敵は崩れるはずだ。なら、あたしが命を殺ってやる。
まずはバフだ!
「はぁーっ! 疾風迅雷!」
これで火力と速度が三割増しだ。消費したエナジーはアイテムで回復して、っと……。
続いてこれ!
「魔神の行軍!」
これは課金アイテムだ。戦争だけで使える道具で、一定時間、指揮する部隊のメンバー全員の攻撃力と移動力を上げる。
さぁ、準備はOK。後は……。
「突撃するだけだぁぁぁっ! あたしに続けーッ!」
正国を手に駆け出す。後方にみんなの存在を感じる、ついてきてくれてる!
両翼からたくさんの矢が降り注ぎ、魔法の火球や氷柱が敵に襲いかかる。そんな中を走っていく。
「騎馬隊は相手の後ろまで突っ切れ! 戦士や侍は足止めしろ!」
叫んだ直後、目の前の敵が斬りかかってくる。
「甘い!」
一瞬で斬り伏せて次へいく。目指すはマイカルの首のみ!
味方も次々に戦いを始める。あちらこちらに武器がぶつかり合う音が響き、魔法が飛び交う。
「どけぇぇぇ!」
一人斬って二人斬って三人斬って! とらえたっ、マイカル!
「終わりッ!」
気合と共に振り下ろした正国がやつの剣に止められる。
「さすがですなぁ、ここまで来るとは」
「どうも!」
「じゃあもう帰って、どうぞ」
彼の剣が動く。「負けるかぁっ!」。こちらも応じ、斬り合う。
「あっそうだ、アヤメさん、引退するってマジすか」
「そうだけど!」
「へぇー……」
「もう、うんざりなんだよ! こんなクソゲー!」
「クソゲー?」
「そうだろう! 金を払って強くなり、ぶっ飛ばす! ゲーム性のかけらもない!」
「まぁその通りですが。でもそれでOKじゃん。世の中、金こそ正義なんだし」
「気に食わないね!」
「ちなみに俺は金持ちです」
奴の剣が動く。しまっ……!
気づいた時には遅かった。大技が直撃し、ごっそり体力が減り、吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。
「アヤメさんも弱くなったもんだ。いや、俺が強くなり過ぎたのかな?」
「……ふん!」
「俺の武器、限界まで強化しましたからね。ジェムもレア物ばっかです。攻撃力300、すごいっしょ?」
「いくら使ったんだ?」
「ざっと三百万円」
「この課金バカ!」
「貧乏人の遠吠えは見苦しいなぁ……」
「黙れぇ!」
立ち上がって正国を構える。
「なめるな、この程度で!」
「でもさっきので死にかけでしょう」
「まだまだぁ!」
飛びかかる。刀を振り下ろす、止められる、斬り返される、ひるまずにまた振るう。
「アヤメさんボロボロっすね。もう降参したらいいじゃん」
「絶対にしない!」
「気持ちだけじゃ勝てないんですー、金がないとねぇ……」
マイカルの技が炸裂する。「ギガ・ストライク!」。もろに食らってまた吹き飛ばされる。
「ぐぅ……っ……」
「降参でいいじゃないすか。アヤメさん、けっこう長く戦ったんだし。正直驚いてますよ、俺の予想以上に長持ちしたんで」
「お礼を言ったらいいわけ?」
「うわぁ、いらねぇ(笑)。で、どうするんですか。降参か、戦って死ぬか……」
やばい。このまま負けるのか? そんな、せっかく最後のイベントなのに! ちくしょう!
でもさ、やっぱあたし限界きてるし。決心したとおり、今度の戦争終わったらやめるつもりだ。
あたしにとっちゃあ最後の戦争になる。だったら、パーッと派手にやらなきゃね。
ありったけの課金アイテム出して、全力全開でぶっ飛ばしてこうじゃないの。
時は流れて土曜日、戦争用の特別フィールド……戦場。あたしと仲間たちはそこにやってきた。
今回は平原が舞台らしい。あまり障害物のないところだ、正攻法で力押しが正解の戦術だろう。
これはギルドの底力が試されるねぇ。さて、どうなることやら。
あたしの横に立っているジャンが言う。
「リーダー、どうするんすか」
「作戦通りだよ。あたしは正面部隊の指揮、あんたは左翼部隊の隊長、エルフィが右翼だ」
「了解っす。しかし敵さんどう出てくるんですかねぇ」
「そんなんあたしに言われてもね。あちらさん、噂じゃめっちゃ課金して戦力増やしたってことじゃん。まぁ激戦になるのは間違いないよ」
「俺、友だちから聞きましたよ。マイカルさん限界まで課金したって」
「マジで?」
マイカルかぁ。『大きな子猫』の幹部の一人、そして、あのギルドの中じゃ二番目に強いプレイヤー。
あいつがそんなにやる気とは、ちょっとまずい事態かもしれん。うちの平均的なメンバーじゃあ勝てないだろう。
タイマンで勝てそうなのはあたしとエルフィぐらいか。できればみんなで袋叩きにしたいけど……。
その時、戦場に開戦を告げるラッパの音が響いた。
「パパァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
えぇい、悩んでいてもしかたない! 魔神だろうと悪魔だろうと、出会った敵は片っ端から斬り捨てるのみだ!
この愛刀、正国でな!
戦況は五分五分で推移していった。こちらが押せば向こうが押し返し、一人やれば一人やられる。
ところで、戦争イベントの時間制限は二時間だ。この間に決着がつかない場合は相手戦力を多く削ったほうの勝ちになる。
そして現在、我がマッド・ドッグは戦力負けしている。残り三十分だってのにこれはヤバい。
どうやら覚悟決めないとダメみたいだ。いこう……!
「全軍に通達! これより総攻撃をかける!」
ジャンから通信が入る。
「リーダー、俺はどうすれば?」
「あんたとエルフィは突っこむな、前に出ないで粘ってけ。飛び道具、魔法で援護射撃して」
「了解」
「タイミングいいとこで命令出すから、そしたら突撃開始」
「うっす」
「エルフィは分かった!?」
「はいよー」
「おっしゃ!」
眼前に広がる敵軍を眺める。ざっと二十人はいるだろうか、いずれも一騎当千の強者ぞろいだ。
対して、あたしの部隊は十人前後。気づけばかなりやられてしまった。
遠くにはマイカルの姿が見える。ふん、大将気取りってわけか。ギルド主はもっと後方で指示だけしてんだろう。それとも今日はお休みか?
マイカルさえやれば敵は崩れるはずだ。なら、あたしが命を殺ってやる。
まずはバフだ!
「はぁーっ! 疾風迅雷!」
これで火力と速度が三割増しだ。消費したエナジーはアイテムで回復して、っと……。
続いてこれ!
「魔神の行軍!」
これは課金アイテムだ。戦争だけで使える道具で、一定時間、指揮する部隊のメンバー全員の攻撃力と移動力を上げる。
さぁ、準備はOK。後は……。
「突撃するだけだぁぁぁっ! あたしに続けーッ!」
正国を手に駆け出す。後方にみんなの存在を感じる、ついてきてくれてる!
両翼からたくさんの矢が降り注ぎ、魔法の火球や氷柱が敵に襲いかかる。そんな中を走っていく。
「騎馬隊は相手の後ろまで突っ切れ! 戦士や侍は足止めしろ!」
叫んだ直後、目の前の敵が斬りかかってくる。
「甘い!」
一瞬で斬り伏せて次へいく。目指すはマイカルの首のみ!
味方も次々に戦いを始める。あちらこちらに武器がぶつかり合う音が響き、魔法が飛び交う。
「どけぇぇぇ!」
一人斬って二人斬って三人斬って! とらえたっ、マイカル!
「終わりッ!」
気合と共に振り下ろした正国がやつの剣に止められる。
「さすがですなぁ、ここまで来るとは」
「どうも!」
「じゃあもう帰って、どうぞ」
彼の剣が動く。「負けるかぁっ!」。こちらも応じ、斬り合う。
「あっそうだ、アヤメさん、引退するってマジすか」
「そうだけど!」
「へぇー……」
「もう、うんざりなんだよ! こんなクソゲー!」
「クソゲー?」
「そうだろう! 金を払って強くなり、ぶっ飛ばす! ゲーム性のかけらもない!」
「まぁその通りですが。でもそれでOKじゃん。世の中、金こそ正義なんだし」
「気に食わないね!」
「ちなみに俺は金持ちです」
奴の剣が動く。しまっ……!
気づいた時には遅かった。大技が直撃し、ごっそり体力が減り、吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。
「アヤメさんも弱くなったもんだ。いや、俺が強くなり過ぎたのかな?」
「……ふん!」
「俺の武器、限界まで強化しましたからね。ジェムもレア物ばっかです。攻撃力300、すごいっしょ?」
「いくら使ったんだ?」
「ざっと三百万円」
「この課金バカ!」
「貧乏人の遠吠えは見苦しいなぁ……」
「黙れぇ!」
立ち上がって正国を構える。
「なめるな、この程度で!」
「でもさっきので死にかけでしょう」
「まだまだぁ!」
飛びかかる。刀を振り下ろす、止められる、斬り返される、ひるまずにまた振るう。
「アヤメさんボロボロっすね。もう降参したらいいじゃん」
「絶対にしない!」
「気持ちだけじゃ勝てないんですー、金がないとねぇ……」
マイカルの技が炸裂する。「ギガ・ストライク!」。もろに食らってまた吹き飛ばされる。
「ぐぅ……っ……」
「降参でいいじゃないすか。アヤメさん、けっこう長く戦ったんだし。正直驚いてますよ、俺の予想以上に長持ちしたんで」
「お礼を言ったらいいわけ?」
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