迷宮の中の青春 -Soldiers of Fortune-

夏野かろ

文字の大きさ
6 / 55
第1部 すべては経験

第6話 厄介者/What a Man

しおりを挟む
 結論から言えば、その倒れていた男は街の医院に担ぎ込まれた。今は、担ぎ込まれてから数日後。午前中の医院、その男が寝ている病室、ギンたちはそこに集まって話をしている。開口一番、リッチーが怒る。

「で、えーと、カールとか言ったっけ? まったく、とんだ疫病神だよ、あんたは。おかげで俺たちは大損だ」

 男……カール、彼は体を起こそうとする。キャンディスがそれを止めようとする。

「いけません、まだ寝ていなくては……」
「いや、いいんだ、もう大丈夫。楽になったから……」

 リッチーはなおもカールに突っかかる。

「お前の治療費、どこから出たと思う? 全部、俺たちの財布からだ。おかげですっからかん、質屋を使うはめになっちまった」
「それは……すまない」
「すまないじゃねーよお前、どうしてくれんだ? 俺たちは貧乏なんだぜ」
「すまない、本当にすまない。金なら持っているから、それで埋め合わせをするよ」
「金の問題だけじゃねーんだよ、いいか……」

 ギンは会話を止めようとする。

「リッチー、もういいだろう? ここは病室なんだ、静かにしないと」
「これが黙っていられるか? 俺の大事なクロス・ボウが質屋行きになったんだぞ」
「俺だって剣を質に入れたじゃないか。とにかく、カールから話をきこう。俺たちだけで騒いでもしかたない」

 ギンはカールに視線を向ける。カールは何を話すか迷ったように見えたが、とにかく口を開いた。

「改めて自己紹介するよ。私はカール、冒険者をやっている」
「へぇ、冒険者……」
「君たちも?」
「えぇ、そうです。それで、どうしてあんなとこに?」
「街を目指している途中、モンスターにやられてね。大した傷じゃなかったが、あいつ、毒を持っていたらしい。気づいた時にはもう病気だった。何とかあそこまではたどり着いたが、その時、体力が限界になったんだ」
「そりゃあ大変でしたね……」
「あぁ、まったくだ。本当、酷い病気だったよ」

 レーヴが口を挟む。

「それで、カールさん。今後はどうすんの?」
「おいおい、まだ治りきってないんだぜ? まずは完全復活しないと」
「でもさぁ、いつまでもここで寝てるわけにもいかないっしょ?」
「はは、それはそうさ。まぁ、君たちにかけた迷惑をつぐなって、そしたらまた旅に出るよ」
「いつも旅してるの?」
「そりゃあ、冒険者だからね」
「よかったら聞かせて欲しいんだけど、じゃあ、冒険者レベルはいくつ?」
「5だよ」

 5。その言葉を聞いて、全員の顔が驚きに包まれる。

「5!? すごいじゃん、あたしらなんてまだ2だよ」
「2? とてもそうは見えないが」
「ポイズン・リザードが倒せなくってさー、いつまでたっても3に上がれないんだ」
「ふむ……」

 冒険者レベルについて説明しよう。この世界の各地には、冒険者同士の互助組織、冒険者組合というものがある。組合は、冒険者の実力に応じて、それを証明する認定書を発行している。この認定書に書かれているレベルが「冒険者レベル」と呼ばれるものである。

 これは、冒険者の世界だけでなく、一般の社会においても一種の身分証明として機能する。レベルが高い冒険者は尊敬されて、有力者から歓待されたり、割のいい仕事を紹介されたり、様々な利益を得る。

 冒険者の中には、不正行為をして認定書を手に入れる人々も存在する。よって、高レベル、イコール、優秀、とは断定できない。それでも、冒険者レベルは大事なものであり、特に駆け出しの冒険者は、これを上げていくことを目標に頑張るのである。

 冒険者レベルを上げる方法は様々だが、よくある方法の一つは「指定されたモンスターを撃破し、その証拠を持ち帰る」ことである。セラの街の組合は、ポイズン・リザードを倒して舌を持ち帰れば、レベル3の認定書を出すことにしている。そしてギンたちは、まだリザード退治の条件を達成できず、レベル2の状態に留まっている……というわけだ。

 さて、話を戻そう。キャンディスは何かを思いつく。彼女はカールに話しかける。

「カールさん。よかったら、私たちの仲間になってくれませんか? あなたがいたら、ポイズン・リザードだって倒せると思うんです」
「それはそうかもしれないが、しかし、私は団体行動が苦手でね……」

 リッチーが会話に加わる。

「あんたは俺たちに借りがあるんだぜ? リザード退治くらい、手伝ってくれてもいいじゃねぇか」
「うーん、それを言われると弱いな……」

 カールはしばし考え込む。それから、彼は喋った。

「よし、じゃあこれならどうだろう? ポイズン・リザードを倒すまで、君たちの仲間として戦う。そしてそれが終わったらお別れする」
「おい、ギン」
「俺は賛成。カールさん、確認のために聞くけどさ。カールさんって前線で戦える?」
「戦えるも何も、それが私の仕事だよ」
「戦士ってこと?」
「戦士もやるし、魔法も使う」
「魔法戦士か、すごいなぁ……。よし、俺以外の戦士が欲しいと思ってたところだ。俺は大歓迎するよ」

 今の話がきっかけとなって、その場にいる全員がカールの仲間入りを歓迎した。彼としてはいろいろ思うところもあったのだが、話の流れがこうなってしまっては今さら断れない。彼は次のセリフを言って、話をまとめたのだった。



「それじゃあしばらくの間、ギンたちの厄介になるよ。これから、どうぞよろしく」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...