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第1部 すべては経験
第8話-2 生殺与奪/In the Bottomless Darkness
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戦闘直前の張り詰めた空気がギンたちを支配する。リッチーの耳に入ってくる聴覚情報、それは戦いの始まりを少しずつ伝える。リッチーは言う、「来るぞ……」。
ギンたちの前方、死角になっている通路には、錆びた剣で武装している二匹の緑ゴブリンたちがいる。ゴブリンたちは何も警戒せずに歩いている、ペタ、ペタ、素足が床を踏む足音がかすかに響く。ペタ、ペタ、ペタ……ついにゴブリンたちがギンたちの前に姿を現す。刹那、リッチーのボウから矢が放たれる。
矢はヒュゥッと音を上げて飛ぶ、それは一匹のゴブリンの腹をぶち抜く。傷口からモンスター特有の青い血が噴き出し、そのゴブリンは「グェ!」と悲鳴を上げ、その場で立ち止まる。リッチーは叫ぶ。
「Bingo! チャンスだ!」
ギンとカールは走り出す。走りながらカールが指示を出す。
「ピンピンしている方は私が倒す。君は、あいつに止めを」
「はい!」
「よし、いくぞ!」
カールは無傷のゴブリンに襲いかかる。ゴブリンはその剣で攻撃を防ごうとする、だが、遅い。カールの鋭い刺突攻撃がゴブリンの心臓を貫く、細胞がぐちゃぐちゃに破壊される。ゴブリンの悲鳴、「グェァッ!」。
同じ頃、ギンも剣を振るっていた。彼は苦しみもがくゴブリンの脳天に両手剣を叩きこむ。頭蓋骨が割れ、脳組織のかけらが飛び散り、血があふれ出す。そのゴブリンは倒れる、口から白い泡を吹きだしながら体をびくつかせ、やがて動かなくなる。その直後、カールがやってくる。
「ギンくん、そっちは?」
「倒しました」
「よし、一丁上がりだな」
彼らの後方からキャンディスたちがやって来る。レーヴはゴブリンたちの死体を見て声を上げる。
「うわぁ、一瞬でここまでやったの? すごい、カールさんすごーい!」
キャンディスも感嘆の声を上げる。「急所を一発、さすがですね。見ていてびっくりしました」。最後にリッチーが喋る、「それで、戦利品は?」。
ギンたちはいったん武器をしまい、ゴブリンたちの死体を漁り始める。だが、大したものは見つからない。リッチーが不満そうにつぶやく。「ちっ、錆びた剣だけかよ」。キャンディスの返事。
「しょせんはゴブリンですし、仕方ないですよ。次はなにかいいことがある、私はそう思います」
「だといいけどよ。まぁいいや、さっさと次いこうぜ」
ギンたちはその場を立ち去ることにする。床に横たわるゴブリンたちの死体、青い血で汚れた床。死体は別のモンスターが食べるだろうし、血は別の誰かの新しい血で上塗りされるだろう。ここはシャバではない、ダンジョンだ。なら、汚した後の掃除などしなくていい。立つ鳥は跡を濁さないが、冒険者は濁していく。
それからしばらくの間は平和だった。モンスターに出会うこともなく、ギンたちは1階を探索していった。そして、ダンジョン侵入から1時間後、ある扉の前。今、ギンたちはそこに集まって、扉をどうするか相談をしている。
リッチーが提案する。
「カールさん、この扉の向こうはオーガ(大鬼)の住み家になってる。ご存知の通り、奴らは俺たち人間の肉が大好物だ。……準備は?」
「いつでもどうぞ」
「みんなは?」
全員が首を縦に振り、OKの意志を示す。それを確認したリッチー、「よし……」と言いながら扉を開ける。
ギギィッ、きしんだ音をたてながら扉が開く。大きな部屋のような空間、今、そこには誰もいない。ギンたちは慎重に足を踏み入れる、その時、リッチーは何かのにおいを嗅ぎつける。
「おい……。少し、血なまぐさいぜ……」
キャンディスが不安そうに言う。
「もしかして、誰かが殺された後なんでしょうか?」
「おそらくな。これは、殺されてからあまり時間が経ってない感じだ」
「オーガの仕業……ですか?」
「さぁ、どうだろうな。オーガか誰かを殺したのか、それとも、オーガが殺されたのか。そこまではわからねぇ……」
ギンたちは今まで以上に注意深くなって進むことを決める。
オーガはそこまで強いモンスターではないが、何匹かで群れていることがあり、その場合は厄介な相手と化す。オーガには高い知能などないが、それゆえに怖いもの知らずで、仲間が死んでもまったく気にせずに冒険者へ突撃してくる。それが恐ろしい。捨て身の一撃は番狂わせを起こす、常に警戒しなくてはならない。
オーガの住み家に入ってから十分後。通路を歩くリッチーの耳に、騒がしい音が入ってくる。
「おい、この先でよぉ、誰かが何かを食ってるみたいだぜ……」
ギンとカールは剣を抜く。レーヴの質問。
「カールさん、あたしとキャンディスはどうすればいい?」
「キャンディスくんはスマイティングとプロテクション(protection, 防御力強化)を。レーヴくんは、そうだな……」
「ファイア・アロー(fire arrow, 炎の矢)の連射ってのはどう?」
「連射?」
「つまりねー、アローをばんばん飛ばすの」
「失礼だが、君の実力で出来るのか?」
「やろうと思えばそれくらい!」
彼女は胸を張る。そして言う。
「やるならさっさとやろうよ。ぼやぼやしてると気づかれちゃう。さっ、行こっ」
全員がその言葉に同意し、道を静かに進み始める。進めば進むほど、前方から聞こえてくる物音が大きくなる。リッチーの視界の奥に何かが映る、「あれはオーガだ、間違いねぇ」。全員の間に緊張が走る。
彼はそれからこのセリフを付け足す。「どうやら人間を食ってるみたいだぜ」。
ギンたちの前方、死角になっている通路には、錆びた剣で武装している二匹の緑ゴブリンたちがいる。ゴブリンたちは何も警戒せずに歩いている、ペタ、ペタ、素足が床を踏む足音がかすかに響く。ペタ、ペタ、ペタ……ついにゴブリンたちがギンたちの前に姿を現す。刹那、リッチーのボウから矢が放たれる。
矢はヒュゥッと音を上げて飛ぶ、それは一匹のゴブリンの腹をぶち抜く。傷口からモンスター特有の青い血が噴き出し、そのゴブリンは「グェ!」と悲鳴を上げ、その場で立ち止まる。リッチーは叫ぶ。
「Bingo! チャンスだ!」
ギンとカールは走り出す。走りながらカールが指示を出す。
「ピンピンしている方は私が倒す。君は、あいつに止めを」
「はい!」
「よし、いくぞ!」
カールは無傷のゴブリンに襲いかかる。ゴブリンはその剣で攻撃を防ごうとする、だが、遅い。カールの鋭い刺突攻撃がゴブリンの心臓を貫く、細胞がぐちゃぐちゃに破壊される。ゴブリンの悲鳴、「グェァッ!」。
同じ頃、ギンも剣を振るっていた。彼は苦しみもがくゴブリンの脳天に両手剣を叩きこむ。頭蓋骨が割れ、脳組織のかけらが飛び散り、血があふれ出す。そのゴブリンは倒れる、口から白い泡を吹きだしながら体をびくつかせ、やがて動かなくなる。その直後、カールがやってくる。
「ギンくん、そっちは?」
「倒しました」
「よし、一丁上がりだな」
彼らの後方からキャンディスたちがやって来る。レーヴはゴブリンたちの死体を見て声を上げる。
「うわぁ、一瞬でここまでやったの? すごい、カールさんすごーい!」
キャンディスも感嘆の声を上げる。「急所を一発、さすがですね。見ていてびっくりしました」。最後にリッチーが喋る、「それで、戦利品は?」。
ギンたちはいったん武器をしまい、ゴブリンたちの死体を漁り始める。だが、大したものは見つからない。リッチーが不満そうにつぶやく。「ちっ、錆びた剣だけかよ」。キャンディスの返事。
「しょせんはゴブリンですし、仕方ないですよ。次はなにかいいことがある、私はそう思います」
「だといいけどよ。まぁいいや、さっさと次いこうぜ」
ギンたちはその場を立ち去ることにする。床に横たわるゴブリンたちの死体、青い血で汚れた床。死体は別のモンスターが食べるだろうし、血は別の誰かの新しい血で上塗りされるだろう。ここはシャバではない、ダンジョンだ。なら、汚した後の掃除などしなくていい。立つ鳥は跡を濁さないが、冒険者は濁していく。
それからしばらくの間は平和だった。モンスターに出会うこともなく、ギンたちは1階を探索していった。そして、ダンジョン侵入から1時間後、ある扉の前。今、ギンたちはそこに集まって、扉をどうするか相談をしている。
リッチーが提案する。
「カールさん、この扉の向こうはオーガ(大鬼)の住み家になってる。ご存知の通り、奴らは俺たち人間の肉が大好物だ。……準備は?」
「いつでもどうぞ」
「みんなは?」
全員が首を縦に振り、OKの意志を示す。それを確認したリッチー、「よし……」と言いながら扉を開ける。
ギギィッ、きしんだ音をたてながら扉が開く。大きな部屋のような空間、今、そこには誰もいない。ギンたちは慎重に足を踏み入れる、その時、リッチーは何かのにおいを嗅ぎつける。
「おい……。少し、血なまぐさいぜ……」
キャンディスが不安そうに言う。
「もしかして、誰かが殺された後なんでしょうか?」
「おそらくな。これは、殺されてからあまり時間が経ってない感じだ」
「オーガの仕業……ですか?」
「さぁ、どうだろうな。オーガか誰かを殺したのか、それとも、オーガが殺されたのか。そこまではわからねぇ……」
ギンたちは今まで以上に注意深くなって進むことを決める。
オーガはそこまで強いモンスターではないが、何匹かで群れていることがあり、その場合は厄介な相手と化す。オーガには高い知能などないが、それゆえに怖いもの知らずで、仲間が死んでもまったく気にせずに冒険者へ突撃してくる。それが恐ろしい。捨て身の一撃は番狂わせを起こす、常に警戒しなくてはならない。
オーガの住み家に入ってから十分後。通路を歩くリッチーの耳に、騒がしい音が入ってくる。
「おい、この先でよぉ、誰かが何かを食ってるみたいだぜ……」
ギンとカールは剣を抜く。レーヴの質問。
「カールさん、あたしとキャンディスはどうすればいい?」
「キャンディスくんはスマイティングとプロテクション(protection, 防御力強化)を。レーヴくんは、そうだな……」
「ファイア・アロー(fire arrow, 炎の矢)の連射ってのはどう?」
「連射?」
「つまりねー、アローをばんばん飛ばすの」
「失礼だが、君の実力で出来るのか?」
「やろうと思えばそれくらい!」
彼女は胸を張る。そして言う。
「やるならさっさとやろうよ。ぼやぼやしてると気づかれちゃう。さっ、行こっ」
全員がその言葉に同意し、道を静かに進み始める。進めば進むほど、前方から聞こえてくる物音が大きくなる。リッチーの視界の奥に何かが映る、「あれはオーガだ、間違いねぇ」。全員の間に緊張が走る。
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