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第1部 すべては経験
第8話-3 奪う者、奪われる者/Dog-Eat-Dog World
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人間を食っている。その言葉を聞いたキャンディスが不安そうに喋る。
「いったい向こうはどうなっているんですか?」
「まず、オーガの数は五匹。全員が床に座って、人間の腕だの足だのをボリボリ食ってる。奴ら、食事に夢中で油断してると見えるぜ」
「食べられている人たちは、やはり戦いに負けて……」
「負けて死体になり、今はオーガのメシ。そうだろうな」
ギンはキャンディスに声をかける。
「大丈夫、俺たちは負けない。死体になるのはあいつらだ、しっかりして」
「はい」
「リッチー、もう近づかなくていいだろ? これ以上は俺たちの存在がバレるよ」
「分かってる、ここで止まろう。もう狙撃の射程圏内に入ってる……」
リッチーはクロス・ボウを構え、狙いをつけ始める。キャンディスは魔法を使うために意識を集中させ、レーヴもそうしようとする。身動きする場所を取るためにレーヴの足が動く、その時、彼女は何かぬめぬめしたものを踏みつけた。
「うわっ!」
ドシン! 彼女は派手に転んで尻もちをつく、その音がダンジョン内に反響し、オーガたちの耳に入る。オーガたちはギンたちの存在に気づいた!
「グォーッ……!」
リッチーはいら立ちの声を上げる。「馬鹿、何やってんだ!」。レーヴの反撃、「だって、しょーがないじゃん!」。言い争う二人にキャンディスが割り込む、「ケンカは後です、奴らが来ます!」。
「グォーッ!」
オーガたちは棍棒を手に、ギンたちへ向かって走り出す。リッチー、舌打ちしながらクロス・ボウを撃つ。「ったくよぉ!」。矢は一匹のオーガの頭を撃ち抜いて即死させる、これで残りは四匹。仲間の死、だが、オーガたちはひるまずに突き進む。カールが叫ぶ。
「ギンくん、いくぞ!」
二人は走りだす。その背中にキャンディスが魔法の光球を飛ばす。レーヴがやっと態勢を立て直す、彼女は右手を空中へ真っすぐ伸ばし、手の上に大きな魔法の光球を作り出す。
「ヘマした分、頑張らなきゃね! いっけーーーっ!」
炎の色に輝く魔法の光球は、オーガたちへ向けて次々に炎の矢を撃ちだす。何本もの矢が二匹のオーガたちに襲いかかり、体を焼き尽くす。「グォォォッ!」、肉の焦げる匂い、そのオーガたちは燃え尽きて死ぬ。これで計三匹が死亡、残りは二匹。
ギンとカールはそれぞれの敵へと突っこみ、剣を振り下ろす。オーガたちも負けてはいない、力任せに棍棒を振るって攻撃に応じる。それぞれの武器が空中でぶつかり合い、大きな音を出す。
「グォッ! グォッ!」
ギンと戦っているオーガが雄たけびをあげ、何度も激しく棍棒を振るう。その攻撃をギンはしっかりと受け止め、逆に斬り返す。全力を込めて上からの一撃、棍棒ごとオーガの頭蓋骨を破壊する。
「グェッ!」
そのオーガは悲鳴を上げて倒れる。頭蓋骨の割れ目から脳しょうが流れ出し、床に飛び散る。一方のカールは、ボス格と思われる大柄なオーガと戦う。
「力はなかなかのものだが!」
カールは、剣を持っていない手……つまり左手だが、そこに魔法力を集中させる。稲妻のような青白い光が現れ、バチバチと火花を散らす。
「終わりだ!」
彼はライトニング(lightning, 稲妻)の魔法を放つ。左手から稲妻がほとばしり、オーガの体を焼く。
「グォォォッーーー!」
オーガは大きく態勢を崩し、隙をさらす。カールはそれを見逃さない。
「はっ!」
ビュンッという鋭い音と共に剣が振るわれ、オーガの首をはねる。切り口から鮮血が噴き出し、オーガの首が地面に転がり落ちる。電紋だらけになったオーガの体が地面に倒れ、その死を証明する。
戦いが終わったのを見て、リッチーたちが駆けつける。彼は首なしとなったオーガの死体を見ながら言う。
「さすがだねぇ、仕事が早い」
カールは答える。
「さっさと殺してやるのが冒険者の情けって奴だからね。さぁ、奥に行って、何があるか確かめようじゃないか」
彼らは一まとまりになって通路を歩く。ほどなくして、オーガたちが食事をしていた地点にたどり着く。
そこには人間の死体がいくつか転がっている。あたりは人間の赤い血で汚れ、ところどころには剣や杖、冒険者用の肩掛けバッグなどが床に放り出されている。レーヴはそのバッグを手に取り、中を調べてみる。
「ん……。お金と……薬草、かな? あと……ポーシェン(potion, 水薬)……」
キャンディスは死体を調べている。ギンが声をかける。
「どう、何か収穫は?」
「……これなど、どうでしょう?」
彼女は死体の手の指から指輪を抜き取り、ギンに見せる。
「へぇ、なかなかキレイだな」
「魔法の力を感じます」
カールが近づき、それを見てコメントする。「単なる金の指輪だな。質は悪いが、価値はそれなりにある」。リッチーが発言する。
「持って帰ろうぜ、それ。あと、レーヴが見つけたバッグも」
嫌そうな顔をしながらギンが言う。
「死体から物を取っていくって、なんかおかしいだろ、それ」
「でもよ、放っておけば別の誰かが持ってくだけだぜ? なら、いま俺たちが取ったっていいだろよ。俺たちがやるか、俺たち以外がやるか、その程度の違いしかねぇんだから」
結局、ギンはリッチーの意見に負け、死体から取っていくことに同意した。彼らはそれからもいろいろと調べたが、指輪とバッグの他には良い物を見つけられなかった。そして相談の結果、まだ探索を続けることにした。
ランプの魔法を頼りにダンジョンを歩き、地下2階へ。そこは、奇怪な虫が多く生息している場所。同時に、多少は金になるものが見つかる場所でもある。良いモンスターを殺して角や爪を奪えば、まぁまぁの収入になるだろう。
今よりも更に深い闇の中へ、ギンたちは降りていく。
「いったい向こうはどうなっているんですか?」
「まず、オーガの数は五匹。全員が床に座って、人間の腕だの足だのをボリボリ食ってる。奴ら、食事に夢中で油断してると見えるぜ」
「食べられている人たちは、やはり戦いに負けて……」
「負けて死体になり、今はオーガのメシ。そうだろうな」
ギンはキャンディスに声をかける。
「大丈夫、俺たちは負けない。死体になるのはあいつらだ、しっかりして」
「はい」
「リッチー、もう近づかなくていいだろ? これ以上は俺たちの存在がバレるよ」
「分かってる、ここで止まろう。もう狙撃の射程圏内に入ってる……」
リッチーはクロス・ボウを構え、狙いをつけ始める。キャンディスは魔法を使うために意識を集中させ、レーヴもそうしようとする。身動きする場所を取るためにレーヴの足が動く、その時、彼女は何かぬめぬめしたものを踏みつけた。
「うわっ!」
ドシン! 彼女は派手に転んで尻もちをつく、その音がダンジョン内に反響し、オーガたちの耳に入る。オーガたちはギンたちの存在に気づいた!
「グォーッ……!」
リッチーはいら立ちの声を上げる。「馬鹿、何やってんだ!」。レーヴの反撃、「だって、しょーがないじゃん!」。言い争う二人にキャンディスが割り込む、「ケンカは後です、奴らが来ます!」。
「グォーッ!」
オーガたちは棍棒を手に、ギンたちへ向かって走り出す。リッチー、舌打ちしながらクロス・ボウを撃つ。「ったくよぉ!」。矢は一匹のオーガの頭を撃ち抜いて即死させる、これで残りは四匹。仲間の死、だが、オーガたちはひるまずに突き進む。カールが叫ぶ。
「ギンくん、いくぞ!」
二人は走りだす。その背中にキャンディスが魔法の光球を飛ばす。レーヴがやっと態勢を立て直す、彼女は右手を空中へ真っすぐ伸ばし、手の上に大きな魔法の光球を作り出す。
「ヘマした分、頑張らなきゃね! いっけーーーっ!」
炎の色に輝く魔法の光球は、オーガたちへ向けて次々に炎の矢を撃ちだす。何本もの矢が二匹のオーガたちに襲いかかり、体を焼き尽くす。「グォォォッ!」、肉の焦げる匂い、そのオーガたちは燃え尽きて死ぬ。これで計三匹が死亡、残りは二匹。
ギンとカールはそれぞれの敵へと突っこみ、剣を振り下ろす。オーガたちも負けてはいない、力任せに棍棒を振るって攻撃に応じる。それぞれの武器が空中でぶつかり合い、大きな音を出す。
「グォッ! グォッ!」
ギンと戦っているオーガが雄たけびをあげ、何度も激しく棍棒を振るう。その攻撃をギンはしっかりと受け止め、逆に斬り返す。全力を込めて上からの一撃、棍棒ごとオーガの頭蓋骨を破壊する。
「グェッ!」
そのオーガは悲鳴を上げて倒れる。頭蓋骨の割れ目から脳しょうが流れ出し、床に飛び散る。一方のカールは、ボス格と思われる大柄なオーガと戦う。
「力はなかなかのものだが!」
カールは、剣を持っていない手……つまり左手だが、そこに魔法力を集中させる。稲妻のような青白い光が現れ、バチバチと火花を散らす。
「終わりだ!」
彼はライトニング(lightning, 稲妻)の魔法を放つ。左手から稲妻がほとばしり、オーガの体を焼く。
「グォォォッーーー!」
オーガは大きく態勢を崩し、隙をさらす。カールはそれを見逃さない。
「はっ!」
ビュンッという鋭い音と共に剣が振るわれ、オーガの首をはねる。切り口から鮮血が噴き出し、オーガの首が地面に転がり落ちる。電紋だらけになったオーガの体が地面に倒れ、その死を証明する。
戦いが終わったのを見て、リッチーたちが駆けつける。彼は首なしとなったオーガの死体を見ながら言う。
「さすがだねぇ、仕事が早い」
カールは答える。
「さっさと殺してやるのが冒険者の情けって奴だからね。さぁ、奥に行って、何があるか確かめようじゃないか」
彼らは一まとまりになって通路を歩く。ほどなくして、オーガたちが食事をしていた地点にたどり着く。
そこには人間の死体がいくつか転がっている。あたりは人間の赤い血で汚れ、ところどころには剣や杖、冒険者用の肩掛けバッグなどが床に放り出されている。レーヴはそのバッグを手に取り、中を調べてみる。
「ん……。お金と……薬草、かな? あと……ポーシェン(potion, 水薬)……」
キャンディスは死体を調べている。ギンが声をかける。
「どう、何か収穫は?」
「……これなど、どうでしょう?」
彼女は死体の手の指から指輪を抜き取り、ギンに見せる。
「へぇ、なかなかキレイだな」
「魔法の力を感じます」
カールが近づき、それを見てコメントする。「単なる金の指輪だな。質は悪いが、価値はそれなりにある」。リッチーが発言する。
「持って帰ろうぜ、それ。あと、レーヴが見つけたバッグも」
嫌そうな顔をしながらギンが言う。
「死体から物を取っていくって、なんかおかしいだろ、それ」
「でもよ、放っておけば別の誰かが持ってくだけだぜ? なら、いま俺たちが取ったっていいだろよ。俺たちがやるか、俺たち以外がやるか、その程度の違いしかねぇんだから」
結局、ギンはリッチーの意見に負け、死体から取っていくことに同意した。彼らはそれからもいろいろと調べたが、指輪とバッグの他には良い物を見つけられなかった。そして相談の結果、まだ探索を続けることにした。
ランプの魔法を頼りにダンジョンを歩き、地下2階へ。そこは、奇怪な虫が多く生息している場所。同時に、多少は金になるものが見つかる場所でもある。良いモンスターを殺して角や爪を奪えば、まぁまぁの収入になるだろう。
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