迷宮の中の青春 -Soldiers of Fortune-

夏野かろ

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第1部 すべては経験

第13話 宿から出よう、ダンジョンに入ろう/About Time You Went

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 カールが仲間から外れた後、しばらくの間、ギンたちは何もする気になれずにいた。特にキャンディスのアパシー(apathy,  無気力、無感動、無関心)は深刻で、いつもボーッとして、夕方までベッドで過ごすような生活を送るようになった。だが、このままでいいはずがない。
 ある日、みんなを宿の一室に集め、レーヴが言った。

「ねぇ、そろそろしっかりしようよ! これじゃあたしたち、ゾンビみたいだよ!」

 ギンが少しだるそうに返す。

「俺だって分かってるよ、気合い入れなくちゃならないことは……。でもなんか、やる気が迷子なんだよ……」
「シャキッとしなよ、ギン! お金だっていつまでもあるわけじゃない、お金と氷は、放っておいたらなくなっちゃうんだから」
「……みんな、どうしようか?」

 多少はしっかりした顔つきのリッチーが言う。

「俺たちの夢を思い出せよ。俺たち、ダンジョンを一番最初に攻略して、有名人になって、金持ちになるんだろうが。そろそろ腰上げて、またダンジョンへ行くんだよ。ギン、それ以外に何があるってんだ?」
「……ダンジョンか」
「おうよ、ダンジョンよ。俺たち、せっかく冒険者レベル3になったんだぜ? この調子でどんどん上げて、バンバン稼いで、いい装備買って強くなって、ガンガン突き進むんだよ。うまいメシ、いい宿、イケてる彼女、その他その他。手に入れようと思ったら、頑張るしかねぇだろ?」
「……そうだ、その通りだな」

 ギンの顔に少し気合が入る。彼はキャンディスに話を振る。

「キャンディス、君がふさぎ込むのもわかるけどさ。カールさんのことはもう一区切りつけようよ。いずれまた会えるかも知れないだろ。今は、俺たちの夢に向かって頑張る時だよ」
「はい」
「なんか、頼りないなぁ……」
「いえ、大丈夫です。大丈夫ですよ」

 レーヴが言う。

「ベッドでへたばってると、そのうちマジで心も体もやられちゃうよ。すっごい辛いなら休むことも必要だけどさ、どうなの、そこんとこ? まだ本調子じゃない?」
「辛い部分は少しありますよ。でも、お金のこともありますし。そろそろ頑張ろうかなって思います」
「……無理してない?」
「多少はそうかもしれません。でも、活動しているうちに調子が良くなってくる、そういうこともあると思うんです」
「分かった。でも、辛くなったら言ってよ?」
「はい、ありがとうございます」

 二人の会話が終わったのをみてギンが喋る。

「とりあえずさ、地下四階へ行ってみようよ。俺たち強くなったと思うし、今なら行っても大丈夫だと思うんだ」

 これに返すのはキャンディス。

「本当に大丈夫でしょうか?」
「危なくなったら逃げればいいんだよ」
「でも……」

 リッチーが援護射撃する。

「もちろん、今のままじゃ少し不安だな。だから、装備を買おうぜ。今よりいいもの買えば、多少強い奴が来たって安心だ」
「うーん……」
「いずれ、四階を攻略することになるんだぜ? なら、早いうちに偵察したほうがいいだろ?」

 レーヴも説得に加わり、数分の間、全員がキャンディスに話をする。その結果、彼女はこのようなことを提案した。

「地図を買いませんか? 地図があれば、初めてのところでもうまく探索できると思うんです」

 話し合いの末、このアイデアが採用された。そのうえでさらに話し合いが行われ、買い物の担当が決まる。ギンがそれについて発表する。

「まず、キャンディスは地図の買い出し。レーヴは身を守る装備を、俺とリッチーは、武器や鎧、膝当てなんかを買う。薬はこの前買ったのがあるから、それでいこう。これで問題ないかな?」

 特に質問は出ない。ギンは話をまとめる。

「よし、じゃあ明日は買い物に行こう。ついでに何か美味しい物でも食べて元気出して、その次はダンジョンだ」



 レベル3に成長したギンたちの冒険が、いよいよ始まる。
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