迷宮の中の青春 -Soldiers of Fortune-

夏野かろ

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第2部 闇に死す

第9話-4 電気処刑

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 街の広場には臨時の処刑場が作られ、そこには、縛られた罪人たちと、処刑を執行する役人たちとがいる。町人たちは、罪人たちがいる場所から少し離れた場所に集まって、処刑が行われるのを見物している。処刑場を見渡せる位置には、処刑役人たちの上司となる上級役人たちが席に座って、一連の作業を監督している。
 役人たちの長と思われる男が席を立ち、処刑場へ行き、大声を出す。

「諸君! これより、公開処刑を始める!」

 場が静かになる。その男は続けて言う。

「そこに縛られてある者たちは、このコーメルキムの街にて、幾多の罪を犯した者たちである! 盗み、詐欺、麻薬取引、人さらい、人殺し! 我らコーメルキム治安維持隊は、こういった犯罪を断固許さない! ゆえに、我らは法に従い、この者たちを死刑に処す!」

 場の沈黙はまだ続いている。

「処刑執行人、前へ!」

 剣を手にした役人たちが罪人のそばへと進み出る。

「一番、クローディアス・ダーマルク! 罪状は、殺人!」

 罪人クローディアスは怒りの表情を浮かべながら町人たちを睨みつけている。彼は何かを叫びたそうにしている、だが、きつく締め付ける猿ぐつわがそれを許さない。執行人が剣を構える。クローディアスの怒りは高まる、猿ぐつわは強く噛みしめられる……処刑執行。
 ビュッという鋭い音と共に剣が振り下ろされ、直後、クローディアスの首が地面に落ちる。首の切断面からは血が噴き出し、あたりの地面に飛び散る。ぐったりと崩れるクローディアスの体。
 町人たちは誰も喋らない。続いての処刑が始まる。

「二番、マックス・スコート! 罪状は、強盗と殺人!」

 マックスのそばに立っている執行役人が剣を構える。緊迫する空気、その時、処刑場にギンたちとカールが乱入する。カールは叫ぶ。

「突然の無礼、お許し願いたい! 私はカール・ゲイジ、罪人マックスについて申し上げたいことがある!」

 処刑役人の長はカールに怒鳴る。

「何事だ!」
「私は、マックスが殺した女性の兄と、親友なのです!」
「どういうことだ!」

 上級役人の一人が席を立ち、役人長のそばへ行き、何かを話す。それを聞いた役人長はカールに言う。

「カール・ゲイジ。君はどうしたいのだ?」
「この男を処刑させて欲しいのです」
「処刑の権利を買う、ということか?」
「はい!」
「高いぞ?」

 カールは役人長の元へと走り、腰につけたバッグから小袋を出し、それを渡す。役人長は袋の中を覗き見る、そして満足そうに言う。

「いいだろう。特例として、処刑の権利を与える」
「ありがとうございます!」

 カールはマックスの正面へ行き、マックスの背後にいる処刑役人へ話しかける。

「この男の猿ぐつわを解いてください。それが終わったら後ろへ下がってください」

 役人はうなずき、カールに言われた通りにする。猿ぐつわがなくなって、口が自由に動くようになったマックスが言う。

「俺を処刑するって、つまり、お前は人殺しをするってことだぜ? 友だちのためにそんなことをするたぁ、なかなかのヤクザ者だな、お前?」
「友だちのため? それもあるが、それ以上の事情もある……」

 カールは剣を抜く。マックスはなおも言う。

「やるならさっさとやれよ。クソッタレめ」

 カールは剣を突き刺す、マックスの腹に。

「ぐぉっ……」

 剣を伝って血が流れる。マックスが着ている囚人服が朱に染まる。カールはそれを黙って見ている。気を失いそうなほどの激痛、マックスはそれに耐えるために大きく呼吸する。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ…」

 カールはそれを黙って見ている。

「やれよ……はぁっ……おい……もう、十分……だろ……」

 剣を握っている手に魔法力が集まる。それはライトニングの魔法となって電流を発生させ、マックスの体へと流れ込む。

「あぁああぁぁぁぁあ!」

 処刑場の空気を破壊するかのような、強烈な悲鳴。痛みだけがマックスを支配する。カールはそれを黙って見ている。さらに強められる電流。マックスの体から肉の焼けこげる臭いが漂う。
 この様子を遠くから見守っているギンたち、その中のキャンディスは、顔を真っ青にしながらつぶやく。

「ひどい……」

 ギンとリッチーは苦々しい顔をしている。レーヴは目をつむぶっている。

「ああぁぁぁあああぁぁあああぁぁ!」

 マックスの服の一部が燃え始める。彼の体はけいれんし、ガクガクと揺れ動く。カールはそれを黙ってみている。マックスは失禁する、汚水が股間を汚す。見物している町人の誰かが小声で言う。

「もうやめてやれよ……」

 電流は流れ続ける。

「あああぁぁぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁ!」

 カールはそれを黙って見ている。

「あぁぁああぁあぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!」



 カールはそれを黙って見ている。……やがて、見終わった。
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