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第2部 闇に死す
第10話-3 ダンジョン最深部
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ギンたちは再度のゴーレムを撃破した。大量の魔法力や体力、薬、それらを消費することと引き換えに。肩で息をしながらギンは言う。
「やばいな。引き返したほうがいいんじゃない?」
キャンディスが話に乗ってくる。
「そうしませんか? これ以上は無理ですよ」
誰も異論を唱えない。再度、ギン。
「じゃあ、そうしよっか……。みんな、俺の周りに集まって。リターンするから」
全員がギンのそばに集まる。
「そいじゃ、お疲れ。リターン……」
何も起きない。
「あれ? リターン……」
何も起きない。カールが言う。
「まずいな。リターンを封じられている」
少しおびえた顔をしながらレーヴが返す。
「なんで!? だって、他の魔法は使えるのに!」
「とっくに滅んだ大昔の時代には、今では考えられないような、非常に高度な魔法が使われていたという。こんな巨大なダンジョンを造った連中だ、どんな魔法が使えたって不思議じゃない」
「そんな……!」
「リターン以外の魔法を封じないことで、いつでも帰れると勘違いさせ、地下へ地下へと誘導する。やがて戦いに疲れ、侵入者は帰ろうとする、だができない。引き返そうにも道は分からず、進もうにも戦闘力がない。ここで飢え死にするか、あるいは、別のゴーレムと戦って死ぬか。何が何でも侵入者を殺そうという、手の込んだ罠さ」
「ひどい……」
「だが事実だ」
全員が沈黙する。……やがて、リッチーが発言する。
「こうなりゃとことん行くしかねぇよ。ここにいて問題が解決するわけじゃねぇだろ? なら、行こうぜ。一番下に行きゃ、さすがに脱出方法が見つかるだろ。俺はそれに期待するぜ」
目を見合わせる一同。誰もが分かっているのだ、リッチーが言う通り、最下層へ行く以外に希望がないことを。導き出すべき結論は何であるか、もはや言うまでもない。
地下三階。空気はますます汚くなり、闇はどんどん深くなる。黙って進む一行、ほんの数分のことが、一時間にも二時間にも感じられる。精神の緊張は高まり続け、死への恐怖が心を窒息させようとしてくる。
どれだけ歩いた後なのだろうか。ギンたちは大きな扉を見つける。なんのためらいもなく開け、中へ。そこは今までと同じような、巨大な部屋だった。閉まる扉、起動する魔法陣、ウッデン・ゴーレム。生き残りたければ戦うしかない。
深呼吸しながらギンは言う。
「落ち着いていこう、落ち着いて。勝てる相手なんだ、恐れることないよ……」
ゴーレムはうなっている。「オオォォオォォォ……」。その姿は、今までのゴーレムよりも大きいように感じられる。もちろんはそれは間違いで、実のところ、今までのものと大差はないのだ。しかし、乱れ切った心が感覚をおかしくしている。恐怖や不安に圧倒されている時、冷静な判断力は居場所を失う。それでも敵と戦わなければならない。
低い声でカールがつぶやく。
「人間、死ぬ覚悟を決めれば何だってできる。誰かがそんなことを言っていたように思うよ」
彼は走り出す。捨て身の一撃を放つ覚悟と共に。
長い戦い、三度目のゴーレムが破壊されてばらばらに砕け散る。重い疲労感が全員にのしかかっている、ギンたちは一か所に集まって床に腰を下ろし、一休みする。
キャンディスとレーヴ、二人はバッグから魔法力回復のポーシェンを取り出して飲み始める。それを見ながらカールが言う。
「ギンくん。前、買い物をした時、癒しの水晶を買ったのを覚えているかい?」
「あの、二つ買うかわりに安くしてもらった奴ですよね?」
「思うんだが、今あれを一つ使ってしまおう。ここらで大きく回復したほういいと思うんだよ」
「俺は賛成ですけど、リッチーは?」
「異論なし」
そのセリフに続いてキャンディスも賛意を示し、レーヴも「ナイス・アイディアじゃん!」と賛成する。話はまとまった、後は実行するだけ。カールは、キャンディスのバッグにしまってあった水晶をもらい、それに魔法力をこめてから宙へ放る。水晶が砕け散り、優しい青の光が現れて全員を包み込む。
ギンは穏やかな声で言う。
「なんか、気持ちいい……。すごく楽になる……」
誰も声には出さないが、全員が同じことを思っている。辛い冒険の中の、ひと時の安らぎ。それは、飢えている時に食べるパンのよう。
階段を下りて地下四階へ。降り立った直後、ギンたちはすぐに気づく。周囲の様子がそれまでと大きく違うことに。そこかしこに生えている大量の魔法コケ、それらが放つぼんやりとした光。ダンジョンの闇は以前よりも薄く、見通しが効く。キャンディスは感想を言う。
「なんだか、少しホッとしますね……」
レーヴ、「油断しちゃダメだよ!」と注意して、リッチーが「お前こそ油断するなよ!」と返す。小さな笑いが一同の間に起きる。そして彼らは歩き出す。
進めば進むほど、道は明るくなり、それに従って周囲の状態も変わっていく。コケのおかげだろうか、空気は少しきれいで、呼吸を楽にしてくれる。
やがて彼らはたどり着く、大きな扉に。それを慎重に開けて入室、あたりの状況を確認する。
前方にくっきりと見える魔法陣、その上にある台座らしきもの、そこに置かれている赤の宝珠。リッチーはコメントする。
「こいつぁすっげぇお宝だぜぇ……」
「やばいな。引き返したほうがいいんじゃない?」
キャンディスが話に乗ってくる。
「そうしませんか? これ以上は無理ですよ」
誰も異論を唱えない。再度、ギン。
「じゃあ、そうしよっか……。みんな、俺の周りに集まって。リターンするから」
全員がギンのそばに集まる。
「そいじゃ、お疲れ。リターン……」
何も起きない。
「あれ? リターン……」
何も起きない。カールが言う。
「まずいな。リターンを封じられている」
少しおびえた顔をしながらレーヴが返す。
「なんで!? だって、他の魔法は使えるのに!」
「とっくに滅んだ大昔の時代には、今では考えられないような、非常に高度な魔法が使われていたという。こんな巨大なダンジョンを造った連中だ、どんな魔法が使えたって不思議じゃない」
「そんな……!」
「リターン以外の魔法を封じないことで、いつでも帰れると勘違いさせ、地下へ地下へと誘導する。やがて戦いに疲れ、侵入者は帰ろうとする、だができない。引き返そうにも道は分からず、進もうにも戦闘力がない。ここで飢え死にするか、あるいは、別のゴーレムと戦って死ぬか。何が何でも侵入者を殺そうという、手の込んだ罠さ」
「ひどい……」
「だが事実だ」
全員が沈黙する。……やがて、リッチーが発言する。
「こうなりゃとことん行くしかねぇよ。ここにいて問題が解決するわけじゃねぇだろ? なら、行こうぜ。一番下に行きゃ、さすがに脱出方法が見つかるだろ。俺はそれに期待するぜ」
目を見合わせる一同。誰もが分かっているのだ、リッチーが言う通り、最下層へ行く以外に希望がないことを。導き出すべき結論は何であるか、もはや言うまでもない。
地下三階。空気はますます汚くなり、闇はどんどん深くなる。黙って進む一行、ほんの数分のことが、一時間にも二時間にも感じられる。精神の緊張は高まり続け、死への恐怖が心を窒息させようとしてくる。
どれだけ歩いた後なのだろうか。ギンたちは大きな扉を見つける。なんのためらいもなく開け、中へ。そこは今までと同じような、巨大な部屋だった。閉まる扉、起動する魔法陣、ウッデン・ゴーレム。生き残りたければ戦うしかない。
深呼吸しながらギンは言う。
「落ち着いていこう、落ち着いて。勝てる相手なんだ、恐れることないよ……」
ゴーレムはうなっている。「オオォォオォォォ……」。その姿は、今までのゴーレムよりも大きいように感じられる。もちろんはそれは間違いで、実のところ、今までのものと大差はないのだ。しかし、乱れ切った心が感覚をおかしくしている。恐怖や不安に圧倒されている時、冷静な判断力は居場所を失う。それでも敵と戦わなければならない。
低い声でカールがつぶやく。
「人間、死ぬ覚悟を決めれば何だってできる。誰かがそんなことを言っていたように思うよ」
彼は走り出す。捨て身の一撃を放つ覚悟と共に。
長い戦い、三度目のゴーレムが破壊されてばらばらに砕け散る。重い疲労感が全員にのしかかっている、ギンたちは一か所に集まって床に腰を下ろし、一休みする。
キャンディスとレーヴ、二人はバッグから魔法力回復のポーシェンを取り出して飲み始める。それを見ながらカールが言う。
「ギンくん。前、買い物をした時、癒しの水晶を買ったのを覚えているかい?」
「あの、二つ買うかわりに安くしてもらった奴ですよね?」
「思うんだが、今あれを一つ使ってしまおう。ここらで大きく回復したほういいと思うんだよ」
「俺は賛成ですけど、リッチーは?」
「異論なし」
そのセリフに続いてキャンディスも賛意を示し、レーヴも「ナイス・アイディアじゃん!」と賛成する。話はまとまった、後は実行するだけ。カールは、キャンディスのバッグにしまってあった水晶をもらい、それに魔法力をこめてから宙へ放る。水晶が砕け散り、優しい青の光が現れて全員を包み込む。
ギンは穏やかな声で言う。
「なんか、気持ちいい……。すごく楽になる……」
誰も声には出さないが、全員が同じことを思っている。辛い冒険の中の、ひと時の安らぎ。それは、飢えている時に食べるパンのよう。
階段を下りて地下四階へ。降り立った直後、ギンたちはすぐに気づく。周囲の様子がそれまでと大きく違うことに。そこかしこに生えている大量の魔法コケ、それらが放つぼんやりとした光。ダンジョンの闇は以前よりも薄く、見通しが効く。キャンディスは感想を言う。
「なんだか、少しホッとしますね……」
レーヴ、「油断しちゃダメだよ!」と注意して、リッチーが「お前こそ油断するなよ!」と返す。小さな笑いが一同の間に起きる。そして彼らは歩き出す。
進めば進むほど、道は明るくなり、それに従って周囲の状態も変わっていく。コケのおかげだろうか、空気は少しきれいで、呼吸を楽にしてくれる。
やがて彼らはたどり着く、大きな扉に。それを慎重に開けて入室、あたりの状況を確認する。
前方にくっきりと見える魔法陣、その上にある台座らしきもの、そこに置かれている赤の宝珠。リッチーはコメントする。
「こいつぁすっげぇお宝だぜぇ……」
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