VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第2章 2084年

第37話 どうせLMには逆らえない Subliminal mind-feck Japanese

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 デモ参加者たちの怒号が響く。

「監視だ!」「監視反対!」「監視社会反対!」「政府はドローンの使用を中止せよ!」「空からの監視に反対!」「プライバシー侵害に抗議する!」「今の社会は監視社会だ!」「監視をやめろ!」「ドローン反対!」「責任者はどこだ!」「監視反対!」「必要以上の監視だ!」「ドローンによる監視は禁止すべきだ!」

 混乱が始まる中、デモに興味を持った人々が騒ぎながら広場へ向かっていく。

「なんだなんだ?」「やべぇよ、マザーが怒るぜ!」「ねえ、あれって何?」「デモだよデモ!」「監視反対!」「そうだそうだ!」「監視反対に賛成!」「賛成に反対!」「どいてくれ、写真撮れないだろ!」「監視反対!」「体さわんないで!」「ドローン反対!」「痴漢じゃないって!」「おい、パトカーだ!」

 何台ものパトカーが広場の近くに到着する。ライアット・シールドや警棒といった装備の警官たちが降車し、広場へ突き進む。
 あるパトカーから拡声器による大声が発せられる。

「君たちは交通を妨害している! ただちに解散しなさい!」

 デモに参加している一人の男が叫ぶ。

「俺たちが抗議する権利を奪うな! デモの権利を奪うな!」

 一人の男性警官が反論する。

「騒ぐだけ騒いで! 単なる身勝手じゃないか!」
「うるせぇ、権力持ってるからって好き放題に言いやがって! バカヤロー!」
「バカヤローだって!?」
「バカヤローーー!」
「黙れ!」
「かかってこいよションベン小僧! ほらほらほら!(中指を突き立て、地面にペッと唾を吐き捨てる)」
「貴様ぁッ!」

 警官が警棒を振り上げ、激しい勢いでその男に叩きつける。彼はよろめき、顔を苦痛の色に染める。それを見て警官はあざ笑う。

「これで分かったかッ!? バカヤローーーーーーー!」
「てめぇ……ぶっ殺す!」

 事態がこうなると理性は役立たずだ。警官隊がデモ隊に襲いかかり、警棒を振り回して叩きのめしていく。
 デモ隊も反撃し、石を投げたり殴ったりと徹底抗戦を始める。

 野次馬の一人に石が当たり、額から血が流れる。別の一人が激しい勢いで転び、頭を郵便ポストにぶつけて気絶する。
 男性警官の一人が股間を思いきり蹴られてうずくまり、それをデモ隊が取り囲んで蹴り飛ばす。

 熊里は強い恐怖を感じる。このままでは危ない、自分も巻きこまれて大ケガをするかもしれない。
 幸いなことに、今のうちなら逃げられる。いったん日曜大工店の付近まで後戻りして、そこから広場を迂回するように駐車場へ進むのだ。

 彼は一目散に逃げだす。心の底からこのトラブルを呪う。
 くそっ、せっかくの休日が台無しだ。デモ隊が怒鳴るなら自分だって怒鳴りたい。

 デモなんてくだらないからやめろ、どうせLMには逆らえないのだから。そんなことをしてもあぁやって警察につぶされるのが落ちだ。
 監視社会? 別にそれでいいじゃないか。俺は悪いことなんてしてないから、いくら監視されようと逮捕なんてあり得ない。

 みんな過剰に不安がっているだけだ。おとなしく生きる限り、監視はたいした問題にならない。
 バカヤロー? デモをやる連中こそ正真正銘のバカヤローだ!



 数時間後、プラネット。小さな山の途中にある公園。そこには展望台があって、眼下に広がるクラッシュ・シティを眺めることができる。
 展望台の手すり付近に二人のワンダラーがいる。一人はタイガー、もう一人は熊里……すなわちベアだ。

 慰めるようにタイガーが言う。

「デモとかさ、そういう災難って困るよな、マジで」
「まったく……!」
「実際どうだった、その場にいて?」
「くだらないの一言だよ。本当くだらない。バカヤローだ」
「バカヤローか……」
「だってマジでバカヤローじゃないか。今回のことで二人も死んだんだろ?」
「三人だって聞いたぜ」
「とにかく人が死んだのは確実なわけだ。バカヤローだ、バカヤロー! 無意味なことでくたばって、秩序を乱して。バカヤローのすることだろ」
「まぁな」
「いったいデモで何が変わるんだよ!」
「じゃあなんだよ、お前あれか? 革命解放軍とか武装戦線とか、あぁいう過激な奴らが日本を変えるって思うのか?」
「そんなわけないだろ! とにかく理屈はなんだろうとね、クソむかつく日だわ、今日は」

 展望台の隅にある階段から一人の男性がやってくる。ポールだ。彼はベアたちのところへ行って声をかける。

「こんにちは!」

 ベアたちは振り向いて挨拶を返す。ベアはいらいらした調子で「こんちはッ!」、タイガーは比較的おだやかに「おう、こんちは」。
 なぜベアが怒っているのか、ポールにはその理由が分からない。不思議に思う。

「あの、ベアさんどうしたんですか? ひょっとして俺、遅刻でした?」
「そういうわけじゃなくて、いや、ちょっとリアル(※現実世界、the real world)で嫌なことがあって……」
「クレジット・カード盗まれたとか?」
「そんなたいしたことじゃない。バカみたいなトラブルで、ほんともうバカヤローっていうか……。
 まぁとにかく冒険に行こう。やっとメンツが揃ったわけだし」

 三人は公園の出口へ歩き出す。そしてベアは思う。
 現実世界でたまったイライラは、この前みたいにゲームの世界で発散してしまおう。
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