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第4章 現代の監視社会における具体的な監視方法とその運用の実態について
第77話 ポイント・カード Invisible stealer
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やがてウェンはコンビニに入っていく。森がつぶやく。
「なるほど、買い出しってわけね……」
映像のいくつかが店内の様子に変わる。防犯カメラのものだ。
ウェンは菓子パンなどを買い物カゴに入れ、レジに向かう。
女性店員とのやり取り。ウェンは一枚の黄色いカードを財布から出し、レジのそばの機械に読み取らせ、現金を使わずに決済する。
そしてレシートと緑の紙きれ……クーポンを受け取り、商品を自分のバッグに入れて退店する。
また映像が切り替わる。ウェンが歩道を歩いていくのが見える。この先は公園だ、彼はそこで軽食を取りつつ休憩する計画なのだろう。
森は軽蔑したような表情を浮かべ、言う。
「理堂、忠告しておくけどね。賢く生きたいならポイント・カードなんて使うな」
「あの黄色いカードですか?」
「そうだ。あれが何か、知ってるか?」
「確か、SSカード……」
SSカード。これは日本のいろいろな店で使え、割引やクーポンといった特典を大量に受け取れるため、爆発的に普及した。
ある学者の調査によれば、2084年の日本人は、3人に1人の割合でSSカードを持っているという。
別に犯罪性の感じられるブツではない。なのになぜ森は嫌うのか。理堂は言う。
「こんなん、どこが危険なんです」
「知らんのなら教えてやる。なぁ、理堂。どうしてSSカードは業種の異なる店で使えるのか、考えたことがあるか?
スーパー、本屋、ペット・ショップ、レストラン。どれも扱っている商品が違うのに、なぜSSカードで共通の割引サービスを受けられる?
答えは簡単。連中は、お前の個人情報を引っこ抜くのと引き換えに割引を行っているのさ……」
なんとも陰謀論めいた話だ。理堂は困惑する、構わずに森は続ける。
「SSカードのサービスを提供しているのは、スリム・スワンという会社だ。
そして、さっき並べ立てたいろんな店は、スリム・スワンと提携することで様々な利益を得ている。
具体的に言おう。たとえばお前がスーパーで買い物し、SSカードで決済する。
すると、お前がいつどこで何を買ったか、そういうデータがスリム・スワンのサーバーに送られ、保存される。
SSカードを使うたび、あらゆるデータがスリム・スワンに蓄積され、やがて巨大なかたまりとなる」
「それのどこに問題が?」
「話はちゃんと最後まで聞け。いいか、そういうデータを解析すると、お前の個人情報が浮かび上がってくるんだ。
たとえば、お前が薬局で鉄のサプリを買い、スーパーでは鉄を多く含む食べ物、レバーとかほうれん草とか、そういうのを日常的に買っているとする。
ならばこういう推理が成り立つ。”このカードの持ち主は、鉄欠乏性の貧血に悩んでいる可能性が高い”」
「……」
「スリム・スワンが使っているAIは、こうやっていろんな仮説を立て、それを元にお前をからめとる。
お前がどこかで、たとえばコンビニで買い物すると、すかさずクーポンを出し、ささやくのさ。
”日頃の感謝の気持ちとして、電子書籍のクーポンを差し上げます。今なら貧血に関する本が10パーセント・オフ!”
ここまでされたら買いたくなるだろう? でもそれは、お前の意思に基づく選択ではない。企業に誘導された結果に過ぎないんだ」
理堂は絶句する。
「……本当ですか?」
「私は専門家だ。嘘など言わない。それに、仲間であるお前を騙すのは無意味だ。
もう一度、改めて言うが、ポイント・カードなんて使うな。どんどん個人情報を抜き取られる。
企業はプライバシーなんて守らないぞ。奴らが考えてるのは、法律に違反しない範囲で個人情報を集め、ビジネスに利用し、儲ける。ただそれだけだ……」
二人が会話している間、ウェンは移動し続け、今は公園のベンチで菓子パンを食べている。理堂は気を紛わせるため、その様子をながめようと思って映像を見る。
公園の防犯カメラがウェンの一挙手一投足を監視している。そう、監視だ。
2084年の日本では、あらゆる行動が監視されている。コンビニで物を買う程度のことですら監視され、そして、個人情報を取られるリスクとなり得る。
「なるほど、買い出しってわけね……」
映像のいくつかが店内の様子に変わる。防犯カメラのものだ。
ウェンは菓子パンなどを買い物カゴに入れ、レジに向かう。
女性店員とのやり取り。ウェンは一枚の黄色いカードを財布から出し、レジのそばの機械に読み取らせ、現金を使わずに決済する。
そしてレシートと緑の紙きれ……クーポンを受け取り、商品を自分のバッグに入れて退店する。
また映像が切り替わる。ウェンが歩道を歩いていくのが見える。この先は公園だ、彼はそこで軽食を取りつつ休憩する計画なのだろう。
森は軽蔑したような表情を浮かべ、言う。
「理堂、忠告しておくけどね。賢く生きたいならポイント・カードなんて使うな」
「あの黄色いカードですか?」
「そうだ。あれが何か、知ってるか?」
「確か、SSカード……」
SSカード。これは日本のいろいろな店で使え、割引やクーポンといった特典を大量に受け取れるため、爆発的に普及した。
ある学者の調査によれば、2084年の日本人は、3人に1人の割合でSSカードを持っているという。
別に犯罪性の感じられるブツではない。なのになぜ森は嫌うのか。理堂は言う。
「こんなん、どこが危険なんです」
「知らんのなら教えてやる。なぁ、理堂。どうしてSSカードは業種の異なる店で使えるのか、考えたことがあるか?
スーパー、本屋、ペット・ショップ、レストラン。どれも扱っている商品が違うのに、なぜSSカードで共通の割引サービスを受けられる?
答えは簡単。連中は、お前の個人情報を引っこ抜くのと引き換えに割引を行っているのさ……」
なんとも陰謀論めいた話だ。理堂は困惑する、構わずに森は続ける。
「SSカードのサービスを提供しているのは、スリム・スワンという会社だ。
そして、さっき並べ立てたいろんな店は、スリム・スワンと提携することで様々な利益を得ている。
具体的に言おう。たとえばお前がスーパーで買い物し、SSカードで決済する。
すると、お前がいつどこで何を買ったか、そういうデータがスリム・スワンのサーバーに送られ、保存される。
SSカードを使うたび、あらゆるデータがスリム・スワンに蓄積され、やがて巨大なかたまりとなる」
「それのどこに問題が?」
「話はちゃんと最後まで聞け。いいか、そういうデータを解析すると、お前の個人情報が浮かび上がってくるんだ。
たとえば、お前が薬局で鉄のサプリを買い、スーパーでは鉄を多く含む食べ物、レバーとかほうれん草とか、そういうのを日常的に買っているとする。
ならばこういう推理が成り立つ。”このカードの持ち主は、鉄欠乏性の貧血に悩んでいる可能性が高い”」
「……」
「スリム・スワンが使っているAIは、こうやっていろんな仮説を立て、それを元にお前をからめとる。
お前がどこかで、たとえばコンビニで買い物すると、すかさずクーポンを出し、ささやくのさ。
”日頃の感謝の気持ちとして、電子書籍のクーポンを差し上げます。今なら貧血に関する本が10パーセント・オフ!”
ここまでされたら買いたくなるだろう? でもそれは、お前の意思に基づく選択ではない。企業に誘導された結果に過ぎないんだ」
理堂は絶句する。
「……本当ですか?」
「私は専門家だ。嘘など言わない。それに、仲間であるお前を騙すのは無意味だ。
もう一度、改めて言うが、ポイント・カードなんて使うな。どんどん個人情報を抜き取られる。
企業はプライバシーなんて守らないぞ。奴らが考えてるのは、法律に違反しない範囲で個人情報を集め、ビジネスに利用し、儲ける。ただそれだけだ……」
二人が会話している間、ウェンは移動し続け、今は公園のベンチで菓子パンを食べている。理堂は気を紛わせるため、その様子をながめようと思って映像を見る。
公園の防犯カメラがウェンの一挙手一投足を監視している。そう、監視だ。
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