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第6章 レヴェリー・プラネット運営方針
第106話 子ども騙し Cheap tricks
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話し出したことで治の心に火がつく。彼は勢いこむ。
「確率絡みのインチキって、ほんともう常態化してて、いろんなことが行われてんだよ。
もちろんガチャだってインチキまみれさ」
「あー、やっぱり?」
「過去にはハッキリと法律違反なインチキすらあったからね。
『アナザー・エデン』ってゲームでは、ガチャの確率を不正操作していたことが2018年に判明し、運営が謝る事態になった。
まぁこれは極端な例だけど、でも、あれから80年近くたったこの2084年でも、やっぱり不正なガチャをやるゲームは多いよ。
というか、やってないゲームの方が珍しいんじゃない? どうせこの世はインチキ天国だ!」
怒る治に対し、直矢は冷静な突っこみを浴びせる。
「でも、インチキがバレたらお詫びの品を配るわけだろ?
そうやって損するリスクがあるんだし、だったらインチキしないって考えるのが普通じゃねぇか?」
「あぁ、それか……」
治はうんざり顔になって言う。
「ソシャゲのお詫びの品なんて、軍票と同じさ。リスクもコストもゼロ同然」
「軍票?」
「軍隊がお金のかわりに出す紙切れだよ。
たとえば、ある軍隊が村を占領して、物を買おうとするだろ? でもお金が無い。
そういう時、軍票を出してこう言うのさ。
”戦争が終わったら、この紙を会計事務所に持ってきてくれ。書かれている金額を払うから”」
「なんも問題ねぇじゃん」
「いやいや大有りだよ。だって、その軍隊が負けて、一文無しになる場合がある。
そしたらどうなると思う? 金が無いんだから、支払いを求めても無駄さ。何ももらえない」
「んなふざけた話が……」
「たとえば第二次世界大戦では、日本軍はたくさんの軍票を出した。
でもズタボロに敗北、経済が崩壊して、自分たちが食べ物を買うお金すら無くなった。
そんな状況で他人に支払う金は無い、だから、軍票で決済したフィリピンの人とかは大損するはめになった」
「最悪じゃん。でも、それとソシャゲのお詫びの品と、なんの関係があるんだ」
少し乱れた呼吸を整え、治は解説する。
「いま言った通り、軍票の価値はデタラメさ。敗北と共にゼロになる、そんな可能性を抱えてる。
ソシャゲのお詫びの品、つまり、ゲーム内通貨とかアイテムも同じことだよ。
ゲームのサービスが終わると同時にゼロになる」
「いや、返金義務があるだろうが」
「ソシャゲの場合、返金義務は課金で買ったものに適用される。
別の言い方をすると、無料で配られたものに関しての義務は無い。だって、ユーザーからお金をとってないものにまで返金するなんて、おかしな話だろ?」
「まぁな」
「軍票も詫びアイテムも、激安コストで量産できる。それでいてお金と同じような価値を持ち、都合が悪くなったらチャラにしてオッケー。
こんな便利なもの、乱発されるに決まってるじゃないか」
「なるほどねぇ……」
グロッタに滞在できる時間は残りわずかだ。しかし、治はこの話題を続ける。
「そういうわけで、何かしくじってお詫びを配るなんて、運営にとっちゃ大した損失じゃない。
だから事あるごとに運営は配るんだ、そうやってユーザーのご機嫌を取るわけ。そして、配った分を後で奪い取る」
「奪うなんて出来んのかよ」
「奪うというか、帳尻合わせと表現するほうが分かりやすいかな。
運営は、その月にどれだけのアイテムを無料配布するか、あらかじめ計画している。仮に、今月はガチャ・チケット20枚を配布する予定としよう。
で、例えば今月初めに炎上して、詫びのガチャ・チケ5枚を配るだろ?
そういう時、運営はどうするか? 予定の配布分20枚からこの詫びチケ5枚を引き、計15枚を配布する計画に切り替える」
「つまり詫びの配布ってのは、予定分を前倒しで配ってるだけってことか?」
「そういうこと。少なくとも我がレヴェリー・プラネットの運営方針はそうさ。
くだらないインチキ、チャチな手品! 馬鹿々々しい子ども騙しだ……!」
一気に喋ったせいで治は疲れを感じる。だがまだ言い足りない。
「確率絡みのインチキって、ほんともう常態化してて、いろんなことが行われてんだよ。
もちろんガチャだってインチキまみれさ」
「あー、やっぱり?」
「過去にはハッキリと法律違反なインチキすらあったからね。
『アナザー・エデン』ってゲームでは、ガチャの確率を不正操作していたことが2018年に判明し、運営が謝る事態になった。
まぁこれは極端な例だけど、でも、あれから80年近くたったこの2084年でも、やっぱり不正なガチャをやるゲームは多いよ。
というか、やってないゲームの方が珍しいんじゃない? どうせこの世はインチキ天国だ!」
怒る治に対し、直矢は冷静な突っこみを浴びせる。
「でも、インチキがバレたらお詫びの品を配るわけだろ?
そうやって損するリスクがあるんだし、だったらインチキしないって考えるのが普通じゃねぇか?」
「あぁ、それか……」
治はうんざり顔になって言う。
「ソシャゲのお詫びの品なんて、軍票と同じさ。リスクもコストもゼロ同然」
「軍票?」
「軍隊がお金のかわりに出す紙切れだよ。
たとえば、ある軍隊が村を占領して、物を買おうとするだろ? でもお金が無い。
そういう時、軍票を出してこう言うのさ。
”戦争が終わったら、この紙を会計事務所に持ってきてくれ。書かれている金額を払うから”」
「なんも問題ねぇじゃん」
「いやいや大有りだよ。だって、その軍隊が負けて、一文無しになる場合がある。
そしたらどうなると思う? 金が無いんだから、支払いを求めても無駄さ。何ももらえない」
「んなふざけた話が……」
「たとえば第二次世界大戦では、日本軍はたくさんの軍票を出した。
でもズタボロに敗北、経済が崩壊して、自分たちが食べ物を買うお金すら無くなった。
そんな状況で他人に支払う金は無い、だから、軍票で決済したフィリピンの人とかは大損するはめになった」
「最悪じゃん。でも、それとソシャゲのお詫びの品と、なんの関係があるんだ」
少し乱れた呼吸を整え、治は解説する。
「いま言った通り、軍票の価値はデタラメさ。敗北と共にゼロになる、そんな可能性を抱えてる。
ソシャゲのお詫びの品、つまり、ゲーム内通貨とかアイテムも同じことだよ。
ゲームのサービスが終わると同時にゼロになる」
「いや、返金義務があるだろうが」
「ソシャゲの場合、返金義務は課金で買ったものに適用される。
別の言い方をすると、無料で配られたものに関しての義務は無い。だって、ユーザーからお金をとってないものにまで返金するなんて、おかしな話だろ?」
「まぁな」
「軍票も詫びアイテムも、激安コストで量産できる。それでいてお金と同じような価値を持ち、都合が悪くなったらチャラにしてオッケー。
こんな便利なもの、乱発されるに決まってるじゃないか」
「なるほどねぇ……」
グロッタに滞在できる時間は残りわずかだ。しかし、治はこの話題を続ける。
「そういうわけで、何かしくじってお詫びを配るなんて、運営にとっちゃ大した損失じゃない。
だから事あるごとに運営は配るんだ、そうやってユーザーのご機嫌を取るわけ。そして、配った分を後で奪い取る」
「奪うなんて出来んのかよ」
「奪うというか、帳尻合わせと表現するほうが分かりやすいかな。
運営は、その月にどれだけのアイテムを無料配布するか、あらかじめ計画している。仮に、今月はガチャ・チケット20枚を配布する予定としよう。
で、例えば今月初めに炎上して、詫びのガチャ・チケ5枚を配るだろ?
そういう時、運営はどうするか? 予定の配布分20枚からこの詫びチケ5枚を引き、計15枚を配布する計画に切り替える」
「つまり詫びの配布ってのは、予定分を前倒しで配ってるだけってことか?」
「そういうこと。少なくとも我がレヴェリー・プラネットの運営方針はそうさ。
くだらないインチキ、チャチな手品! 馬鹿々々しい子ども騙しだ……!」
一気に喋ったせいで治は疲れを感じる。だがまだ言い足りない。
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