VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

文字の大きさ
151 / 227
第9章 この社会を革命するために 前編

第148話 座談会 The rebel

しおりを挟む
 俺は寝汗まみれの状態で目覚める。悪夢にうなされた時はいつだってこうだ。クソッ、後でベッド・シートを取り換えなくちゃ。
 いやそんなことを考えている場合か? 今日からは例の仕事をしなくちゃならないんだ、とにかく職場に急げ! 御託は後回し!



 下民地区の中でもかなり酷いと評されるような場所に、一軒の小さな工場がある。自動車を修理するためのもので、俺は数年前からここに勤めている。
 そして今はかなり大型のトラックと格闘中だ。車体の下に潜りこんで方々をいじくっている。もっとも修理をしているわけではない。

 率直に言えばこれは違法改造だ。ある目的を果たすため、遠隔操作で車を動かす装置を取りつけたり、爆弾を入れる空間を設けたりしている。
 このことが同僚や上司にバレる心配はない。俺は奴らをうまく誤魔化す方法を知っているし、そもそもこの工場自体が裏の商売として違法改造を請け負っているのだ。

 よほど妙なことをしない限り、誰も俺のやることに気を留めない。ありがたい話だ。それでこそ、この工場で働く意味がある。
 まぁそれはそれとして、今日はどこまで作業を進めよう? 可能な限り頑張りたいところだが、夜に”座談会”に参加の予定だからな。疲労困憊したくない。

 ほどほどの仕事量に留めておいて、残りは明日以降。そのプランでいこう。



 第三次世界大戦の業火が東京を焼き尽くした後、経済力のある土地はそこそこの復興を遂げた。しかし貧乏なところは放ったらかしだ。
 終戦からもう数十年が経ったが、未だに倒壊した建物だらけ、そんな場所は数えきれないほどある。非合法な奴らが身を隠すにはうってつけだ。

 そういった事情は革命活動をする者にとっても同じであり、だから俺は今ここに、即ち、半分崩れたビルの地下フロアにいる。
 もう少し正確に言えば、地下フロアの片隅にある小さな部屋だ。数脚の粗末な椅子とボロい木製の机1つがあるだけの、実に殺風景な一室。

 だがそれでいい。俺にせよ、同席中の数人の仲間たちにせよ、お茶会を楽しむためにここに集まったわけではないのだ。
 俺たちは”座談会”を、率直に言うなら反LM武装戦線の会議をするためにここにいる。そうだ、今の俺は革命家。命を懸けてLMと戦う男だ。

 レヴェリー・プラネットを引退した直後、ある事件がきっかけで俺はこの革命組織に身を投じた。工場作業員に転職して違法改造のスキルを学んだのも革命のためだ。
 当時の俺は世の中にほとほと嫌気がさしていて、社会を変えたいと本気で願っていた。だから最初はデモや署名活動に参加した、しかし結果から言えば無意味だったな。

 何かやるとすぐ警察や情報局がきて邪魔をする。そのうち俺は気づいた、全てはLMによる自作自演、マッチポンプで、人々は踊らされているに過ぎないのだと。
 本気で社会を変えたいならデモなんぞ役に立たない。他のことをしなければ。だからこそ武装戦線の一員となったわけだが、まぁそれはそれとしてだ。

 俺は向かいの席にいる中年男性、武装戦線の副リーダーである倉間さんにたずねる。

「あの……。会議が始まる予定時刻、とっくに過ぎてませんか?」
「そりゃそうですけど、でもリーダーがまだ来てませんから」
「遅刻ですかね?」
「あるいは不測の事態でも起きたか……」

 全員に緊張が走る。武力闘争をやっている俺たちにとって、”不測の事態”とは「情報局による急な逮捕や暗殺」に他ならない。
 もし本当にそうなら一刻も早く解散して逃げなくては。しかしただ単に交通渋滞か何かで遅れているだけという可能性もあり得る。

 どうしたものかな……。そう思った時、倉間さんが全体に向けて発言した。

「あと5分だけ待って、それでもし来なければお開きにしましょう。規則ではそうなっているわけですしね」

 俺は「分かりました」と答える。他の人たちも似たような返事だ。やれやれ、気が抜けない展開とは歓迎しないな。
 早く来てくれるといいんだが。このまま黙って5分間を過ごすのはちょっとした苦痛だぜ。俺は倉間さんに視線を向けて、何か話して欲しいと言外に伝える。

 彼はそれに気づいた。だから穏やかな声で話しかけてきた。

「そういえば久泉くん。前から聞いてみたいと思っていたんですが……」
「はい」
「あなたがLMを憎む理由とはなんですか?」
「……」
「無理に話してくれとは言いませんよ。ですが、あなたの気持ちをここでみんなに説明しておけば、将来なにかの役に立つかもしれない」
「……」
「どうです?」
「少しだけ。少しだけなら話します。面白い話じゃありませんが、それでよければ……」
「構いません。お願いします」

 もしかしたら俺は、この悔しい気持ちを誰かに伝えたくてたまらなかったのかもしれない。そんなふうに思いつつ、俺は記憶を探り始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...