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第9章 この社会を革命するために 前編
第149話 理由ある反抗 Why am I a fighting man
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言いたいことはたくさんあるが、長話をするだけの時間的余裕はない。じゃあこの程度を話しておくのが適当だろう。
「何年か前、俺の友達がひき逃げにあって死にました。小学生の頃から付き合ってきた古いダチです」
倉間さんは「ふむ」と言い、うなずいた。俺は続きを話す。
「誰が犯人かはすぐ判明したんですよ。だって多くの人が事故の瞬間を目撃していたし、それに、民家の防犯カメラが一部始終を記録してました」
「なるほど」
「俺は期待しましたよ。すぐに犯人が捕まって、裁判でしかるべき刑を宣告されるんだと。しかしそうはならなかった」
「どうして?」
「犯人は電話会社の役員だったからです。倉間さんも、他のみなさんも、電話会社がどれだけリトル・マザーに愛されてるかよくご存知でしょう。
だって奴らは客の個人情報を彼女に渡して、監視社会のお手伝いをしてるわけですからね。そのかわりに不祥事をあのクソビッチにもみ消してもらうわけだ」
悲しそうな顔で倉間さんは「嫌な話ですね……」と言った。俺は続ける。
「えぇ、本当! だが実際に起きてしまった事実です。未だに認めたくない話ですが、でも本当にそうなんです」
「それからはどうなったんですか?」
「俺はすべてを明るみに出そうと、必死に頑張りました。事故を見た人たちの証言を集め、カメラの映像記録を手に入れようとしました。
でもどちらも失敗に終わったんです。誰もが言いましたよ、事故なんて起きなかったと。映像記録はさらにひどい、誰かが消したせいで復元できなかった!」
「もし本当のことを言えばLMに暗殺されるかもしれない。その恐怖が人々を沈黙させ、映像を闇に葬ったんですね……」
「倉間さん、こんなのはインチキですよ! くだらない誤魔化しだ、違いますか!?」
「実際どう見てもインチキでしょう。そう思います」
「だから俺はリトル・マザーを憎むんです! 奴を殺したいと思うんです! だいたい、こんな世の中はとても受け入れられない!(バンと机を叩く)。
力を持つ者がやりたい放題に振る舞って、都合の悪い話を暴力的に叩きつぶし、弱い者をしいたげる! そんなことにはウンザリなんです!」
「安心してください、久泉くん。ここにいる誰もが君と同じ気持ちですよ。誰もがLMの支配にうんざりし、彼女を倒そうと決意した。それを忘れないでください」
「はい」
そうだ、俺は一人きりじゃない。仲間がいる。今までだって助け合ってきたんだ、きっとこれからも固い絆で結ばれ、運命を共にしていく。
クソッ……それにしてもLMめ。すべてを監視するあのビッチがいる限り、言論の自由なんて存在しないも同然だ。
どうして昔の人たちはこの自由をもっと大事にしなかったのだろう? 監視社会に反対し、それが成立しないように努力することをしなかったのだろう?
自由というのは自然環境といっしょで、失われてしまったら回復に多くの時間とコストを要する。だから絶対に守らなくちゃいけなかった。なのに……。
トントントン。いきなりドアが室外から叩かれる。全員いっせいに黙る。誰だ……リーダーか、それとも情報局のメンバーか。
倉間さんが席を立ち、ドアへ行き、身分確認のために問いかける。
「雪を墨」
すぐに答えが返ってくる。
「サギをカラス」
いわゆる合言葉だ。真っ白い雪を見て「墨のように黒い」と詭弁を言う、それと同じように、真っ白いサギを「カラスのように黒い」と主張して言いくるめる。
どちらもLMやその翼賛者たちが得意とする論法だ。だからこそ武装戦線は、唱えるたびに彼女の本性を思い出すため、合言葉に採用した。
今回の受け答えは正解であり、よって倉間さんはドアの鍵を開ける。室外の人物が中に入ってくる。
彼女こそ、この武装戦線のリーダーである柳さんだ。歳は四十代の半ばに思えるが、完全サイボーグなので本当にそうかは分からない。おそらくもっと上だろう。
席に着くなり柳さんは言った。
「(軽く頭を下げ、)遅れてすみません。ドローンがいつもより多く飛んでいて、やり過ごすのに難儀しました」
倉間さんが柳さんの横に座って質問した。
「ドローンが? なにかあったのですか」
「近所の大きなレストランが派手に燃えたんですよ。それが原因でしょうね」
「ふむ……」
「とにかく、申し訳ありません。リーダーとしての自覚が足りなかったと反省します」
「仕方ありませんよ、不可抗力じゃありませんか」
「そうはいっても倉間、私にはみなに規範を示す義務があります。こんな体たらくでは……」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。それよりすぐ会議を始めましょう、時間がありません」
「確かに……。では、みなさん、よろしくお願いします」
いよいよ本番だな。
「何年か前、俺の友達がひき逃げにあって死にました。小学生の頃から付き合ってきた古いダチです」
倉間さんは「ふむ」と言い、うなずいた。俺は続きを話す。
「誰が犯人かはすぐ判明したんですよ。だって多くの人が事故の瞬間を目撃していたし、それに、民家の防犯カメラが一部始終を記録してました」
「なるほど」
「俺は期待しましたよ。すぐに犯人が捕まって、裁判でしかるべき刑を宣告されるんだと。しかしそうはならなかった」
「どうして?」
「犯人は電話会社の役員だったからです。倉間さんも、他のみなさんも、電話会社がどれだけリトル・マザーに愛されてるかよくご存知でしょう。
だって奴らは客の個人情報を彼女に渡して、監視社会のお手伝いをしてるわけですからね。そのかわりに不祥事をあのクソビッチにもみ消してもらうわけだ」
悲しそうな顔で倉間さんは「嫌な話ですね……」と言った。俺は続ける。
「えぇ、本当! だが実際に起きてしまった事実です。未だに認めたくない話ですが、でも本当にそうなんです」
「それからはどうなったんですか?」
「俺はすべてを明るみに出そうと、必死に頑張りました。事故を見た人たちの証言を集め、カメラの映像記録を手に入れようとしました。
でもどちらも失敗に終わったんです。誰もが言いましたよ、事故なんて起きなかったと。映像記録はさらにひどい、誰かが消したせいで復元できなかった!」
「もし本当のことを言えばLMに暗殺されるかもしれない。その恐怖が人々を沈黙させ、映像を闇に葬ったんですね……」
「倉間さん、こんなのはインチキですよ! くだらない誤魔化しだ、違いますか!?」
「実際どう見てもインチキでしょう。そう思います」
「だから俺はリトル・マザーを憎むんです! 奴を殺したいと思うんです! だいたい、こんな世の中はとても受け入れられない!(バンと机を叩く)。
力を持つ者がやりたい放題に振る舞って、都合の悪い話を暴力的に叩きつぶし、弱い者をしいたげる! そんなことにはウンザリなんです!」
「安心してください、久泉くん。ここにいる誰もが君と同じ気持ちですよ。誰もがLMの支配にうんざりし、彼女を倒そうと決意した。それを忘れないでください」
「はい」
そうだ、俺は一人きりじゃない。仲間がいる。今までだって助け合ってきたんだ、きっとこれからも固い絆で結ばれ、運命を共にしていく。
クソッ……それにしてもLMめ。すべてを監視するあのビッチがいる限り、言論の自由なんて存在しないも同然だ。
どうして昔の人たちはこの自由をもっと大事にしなかったのだろう? 監視社会に反対し、それが成立しないように努力することをしなかったのだろう?
自由というのは自然環境といっしょで、失われてしまったら回復に多くの時間とコストを要する。だから絶対に守らなくちゃいけなかった。なのに……。
トントントン。いきなりドアが室外から叩かれる。全員いっせいに黙る。誰だ……リーダーか、それとも情報局のメンバーか。
倉間さんが席を立ち、ドアへ行き、身分確認のために問いかける。
「雪を墨」
すぐに答えが返ってくる。
「サギをカラス」
いわゆる合言葉だ。真っ白い雪を見て「墨のように黒い」と詭弁を言う、それと同じように、真っ白いサギを「カラスのように黒い」と主張して言いくるめる。
どちらもLMやその翼賛者たちが得意とする論法だ。だからこそ武装戦線は、唱えるたびに彼女の本性を思い出すため、合言葉に採用した。
今回の受け答えは正解であり、よって倉間さんはドアの鍵を開ける。室外の人物が中に入ってくる。
彼女こそ、この武装戦線のリーダーである柳さんだ。歳は四十代の半ばに思えるが、完全サイボーグなので本当にそうかは分からない。おそらくもっと上だろう。
席に着くなり柳さんは言った。
「(軽く頭を下げ、)遅れてすみません。ドローンがいつもより多く飛んでいて、やり過ごすのに難儀しました」
倉間さんが柳さんの横に座って質問した。
「ドローンが? なにかあったのですか」
「近所の大きなレストランが派手に燃えたんですよ。それが原因でしょうね」
「ふむ……」
「とにかく、申し訳ありません。リーダーとしての自覚が足りなかったと反省します」
「仕方ありませんよ、不可抗力じゃありませんか」
「そうはいっても倉間、私にはみなに規範を示す義務があります。こんな体たらくでは……」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。それよりすぐ会議を始めましょう、時間がありません」
「確かに……。では、みなさん、よろしくお願いします」
いよいよ本番だな。
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