VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第12章 すべてを変える時

第187話 作戦会議 Internal conflict

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《姉川/アカネの視点》
 今さらこんなことを考えるのはタイミングが遅いかもしれない、でも思う。本名が姉川だからプラネットで使う名前はアカネって、ちょっと安直すぎたかも……。
 まぁ私の本名がバレるなんてまずあり得ないから、こんなの気にしたって時間の無駄かもしれないけど。

 時間の無駄。そう、時間は大事だ、無駄にするのはよくない。だから私は(こんなくだらないことはさっさと終わって欲しい)と思い、つまんない顔であたりを見回す。
 プラネット、ウサギ王国がアジトにしている建物の一室。ここには私を含めて計5人のワンダラーがいて、さっきから対レイザーズ戦の作戦会議をやっている。

 私は自分の視界の隅にデジタル時計を出し、表示を読む。うわ、会議開始からもう1時間近く経ったのか……。本当、どうしてこう長引くの?
 まぁ原因は分かってる。我がネメシスのリーダーたるアンドリュー、そしてウサギ王国のスエナ、この二人が交渉合戦をしてるからだ。

 というか根本的に悪いのはアンドリューなんだよな。彼が自分の利益のみをゴリ押そうとするから反発されてモメる。今も懲りずになんか言ってるよ……。

「スエナ、確かにお前の言う通り、今の連合軍は以前よりずっと強大になった。
 お前があっちこっちの人々に働きかけ、連合軍に入って欲しいと勧誘したおかげだよな。その功績は認める。
 なおかつ、お前が連合軍の総大将であることも認める。しかしな、だからってお前が何でも好き放題にやっていいわけじゃない。
 率直に言わせてもらおう、この軍で最大の戦力を持つのは俺のクラン、ネメシスだ。ならば戦いに関しては俺の意見を採用するべきだ」
「じゃあボクの質問に答えてよ。なんで君は、ネメシスばかりが得をするようなアイデアを主張するの?」
「それはお前の思い過ごしだろう。俺は公平に物事を考えている」

 スエナの横の席に座っているアップルが口をはさむ。

「本当に? 私としては、やっぱりネメシスが美味しいところを独り占めって思えるけど……」
「その根拠は?」

 アップルが答えるかわりにパティが言う。

「あなたは危険な敵を他のクランに押しつけようとしている。違う?」
「お前が勝手にそう思いこんでるだけだろ」
「……ずいぶんな言い草じゃない?」
「知らん」
「……(冷たくにらむ)」

 はぁ、まったくこの人たちは……。こういう時、赤羽さんがいてくれると助かるんだけど、急病でお休みだからなぁ。彼にかわって私が場を収めなくちゃいけない。
 まさかこんな厄介事を背負うとは。もしかして赤羽さん、会議がこうなることを見越して仮病で逃げた? いや、さすがにそれは疑いすぎか……。

 とにかく何とかしなくちゃ。ダメで元々、言うだけ言ってみよう。

「ひとつ提案なんですが、いったんこの話題は終わりにして、別のことを考えてみませんか?」

 不服そうにスエナが答える。

「別って、何?」
「決戦当日の動きを確認しましょう。そもそも、私たちはそのために集まったんですから」

 言いつつ、私はテーブル中央の空間にCGを出現させる。そのCGは攻略目標のグレート・ベースの形を忠実に再現していて、まるで本物のミニチュアに思える。
 CG周辺に凸型の符号がいくつか浮かび上がる。青色の凸は味方部隊を表し、赤は敵。ようするに私は、軍人がやるような机上演習を新たな話題にしたいのだ。

 こういう時は強引にいくに限る。どんどん喋ってしまえ。

「時間がありません、素早くいきましょう。まず部隊についてですが……」


《パトリシアの視点》
 どうなることかと思ったけど、ようやく実際的な話が始まってなにより。
 もちろんアンドリューの案に納得したわけじゃなく、反論はまだいくらでもしたい。でもあの男の性格を考えるに、殴り飛ばさないと譲歩しないだろう。

 だったらこの件はひとまず保留。それより、今はアカネの提案に乗るべきだ。わたしは耳を傾ける。

「まず部隊についてですが、当初の予定通り4つです。ベースの出入口は4つなんですから、それに合わせて部隊を分けるのは当然です」

 スエナから質問が飛ぶ。

「各部隊のリーダーは?」
「スエナさん、パティさん、そしてアンドリュー。ここまではいいとして、問題は4つめの部隊です」
「そう、それ気になってたんだよね。けっきょく誰にするの?」
「この前、ゲールフォースのアンズさんが連合軍に参加してくれました。リーダーをやれるだけの実力者と思います」
「アンズさんか……」

 さっきアンドリューがちらっと言ったが、スエナの努力で多くの人が連合軍に加わった。
 まぁ予想できたことだ。レイザーズは昔から、敵とみれば片っ端からPKする方針を掲げ、数えきれないほどのワンダラーをつぶし、恨みを買ってきた。

 そんな被害者たちが、「今度の戦いで奴らに報復できるならぜひ自分も仲間に入れてくれ」、そう考えるのは当然だ。
 アンズもきっとそういう被害者なんだろう。あり得そうな話だ。

 強力なワンダラーは誰でも大歓迎。そしてアカネが言うように、アンズだったらうまくやれるだろう。わたしは後押しの意見を述べる。

「アカネさんの意見に賛成です。確かにアンズさんならリーダーにふさわしい。スエナさんもそう思うでしょう?」
「まぁね」
「……アンドリューさん、あなたの意見は?」
「アンズを起用するアイデアは、もともと俺が考えたんだ。それが採用される以上、文句などない」
「では、決まりですね」

 アンドリューの言い方には実にイライラさせられる。しかし我慢だ、多少のことは無視して、とにかく机上演習を進めよう。アカネに聞く。

「ところでアカネさん、質問が……」

 スエナが無理やり話に割りこむ。

「その前にちょっといい? ボクも質問したいんだけどさ」

 わたしは発言のチャンスをスエナに奪われてしまう。まったく、この子はいっつも……。
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