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2 エジプト、運命の地へ
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間もなくカイロ空港だった。沙良は長いフライトの間、この五日間のことを思いだしていた。
ネットで調べると、国営旅行会社で全部プランが立てられると知り、朝になって電話をかけた。入金さえ確認できれば、すぐに手配できるそうだ。
並行して旅行用品を揃え、三日後には万端整った。その翌日に佐藤に連絡を入れた。
冒頭では未成年の女の子の一人旅、さらに行き先がエジプトと聞いて反対したものの、動機を話すとしばらく黙り込み、それから了解した。佐藤も香苗がエジプト好きだったなんて覚えがない上、なにより香苗の記憶が多くない沙良が母を想って少しでもなにかを得たいと考える気持ちを察してくれたのだろう。
また、坂下との約束もすぐにキャンセルをした。エジプトに行くと聞いた坂下は、リッチだと言って騒ぎ、次の海外旅行はぜひ自分も連れて行ってほしいと頼んできた。沙良はただ旅行を狙っているのだろう。
着陸を知らせるアナウンス。そしていよいよ飛行機はカイロ空港に降り立った。
空港内を進み、ガイドが待つ出口に到着する。多くのガイドがウェルカムボードを持って客を待っていた。その中で『SARA KAYAMA』と書かれたウェルカムボードを持つ長身の男を見つけ、歩み寄った。
「サラサン?」
「はい」
「ワタシ、マジーシ。ヨロシク」
名を名乗り、手を出す。沙良は握手に応じた。隣にはスカーフで目以外の顔を隠した女が立っている。
「サラさんね、私、マヌアです。はじめまして、どぞよろしくです」
「香山沙良です。よろしくお願いします」
握手を交わすと、さっそく歩き始める。ビザを手に入れると車に乗り込んだ。
「では、今からホテル行きます。私たち、ロビーで待ってますから、三十分で降りてきてください。それからギザに行きます」
「ギザ? ピラミッドね?」
「そです。それからランチして、メンフィスとサッカラ行きます。今日のスケジュールはそれだけです。明日は一日フリーです」
空港を離れ、車は次第にカイロの街に近づいていく。
「今日はけっこう空いてますね」
道路のことを言っているようだ。かなり飛ばしている。三十分も走ると周辺が一気に賑やかになった。
「サラさん、あれ見てください」
窓の外を指さす。
「わぁ! すごい! ここから見えるんだ」
フロントガラスにピラミッドが広がっている。
「そです。大きいですから。でも、実際はけっこう距離ありますね。行けば中に入ります。明後日は考古学博物館行きます。トゥトアンクアメンの黄金の仮面見ます。日本では、ツタンカーメンと言いますね」
「ツタンカーメンの黄金のマスク! 楽しみです」
「はい。ファラオのミイラもあります。エジプトはミイラの宝庫ですね。大切な遺産ですので、ぜひ見てください」
「マヌアさんはミイラが好きなんですか?」
振り返ったマヌアの顔がしかめられている。
「気持ち悪いです」
そう言って明るく笑った。
「ミイラは死体ですから、やはり気持ち悪いです。でもエジプトの宝です。ファラオは偉大です」
沙良も笑顔で返した。
「明日、見に行きます。ツタンカーメンの黄金のマスクは絶対見なきゃ」
「そです。ツタンカーメンはとても有名はファラオですから」
「暗殺されたんですよね?」
「長くそう言われていましたが、今は病死説や乗り物からの落下による怪我説が有力視されてます。死の原因は諸説あります。頭に傷があるので、殴打されたとも言われていますが、真相は謎です」
「ツタンカーメンの次のファラオは彼の子どもですか?」
「ツタンカーメンには息子はいませんでした。娘が二人いましたが幼い時に死んでます。それにツタンカーメンの時代は王女のほうが継承権を持ってました。王家の女性と結婚して、やっとファラオになれるのです。彼の死後、妻のアンケセナーメンはアイという神官と結婚しました。アイはアンケセナーメンの祖父に当たります。そうまでしてもファラオになりたかったんでしょ。だからツタンカーメンの次はアイです」
「へぇ。アイの次は?」
「ホルエムヘブです。第十八王朝はここまでです。ホルエムヘブの後はラムセス一世。彼が第十九王朝を興しました。エジプトの遺跡がいっぱい造られた時代です。ファラオの墓は大分部盗掘されてます。ですがツタンカーメンは盗掘されていません。だから素晴らしい至宝がいっぱい発見されました。考古学博物館にあります。きっとサラさん、感動します」
「そうですね! 楽しみです」
そうこう会話をしているうちに車はホテルに到着した。マヌアがフロントでチェックの手続きをするとポーターがやってきた。
「三十分で降りてきてください。私たち、そこのカフェにいますが、待ち合わせはここでいいです」
「わかりました」
ポーターについて部屋に向かう。部屋の使い方を簡単に聞くと、チップを渡した。それから服を着替え、準備する。終わるとまだ十分ぐらい時間があったが、ロビーに行くことにした。
エレベーターを降りるとマヌアたちが来た。カフェから見ていたのだろう。再び車に乗り込み、ギザへ。
巨大なピラミッドに沙良は驚きながら感動した。内部には一人で向かった。二時間ばかりかけて内部を見学し、再び戻ってくると写真を撮ろうと言われて移動。そこで三つのピラミッドを背景にして記念撮影をし、三人はレストランへ入った。
エジプト料理は思ったほど悪くなかった。
見た目は脂っこい感じを受けるが、食べてみるとそれほどではなく、沙良は出されたものをすべて平らげた。
ネットで調べると、国営旅行会社で全部プランが立てられると知り、朝になって電話をかけた。入金さえ確認できれば、すぐに手配できるそうだ。
並行して旅行用品を揃え、三日後には万端整った。その翌日に佐藤に連絡を入れた。
冒頭では未成年の女の子の一人旅、さらに行き先がエジプトと聞いて反対したものの、動機を話すとしばらく黙り込み、それから了解した。佐藤も香苗がエジプト好きだったなんて覚えがない上、なにより香苗の記憶が多くない沙良が母を想って少しでもなにかを得たいと考える気持ちを察してくれたのだろう。
また、坂下との約束もすぐにキャンセルをした。エジプトに行くと聞いた坂下は、リッチだと言って騒ぎ、次の海外旅行はぜひ自分も連れて行ってほしいと頼んできた。沙良はただ旅行を狙っているのだろう。
着陸を知らせるアナウンス。そしていよいよ飛行機はカイロ空港に降り立った。
空港内を進み、ガイドが待つ出口に到着する。多くのガイドがウェルカムボードを持って客を待っていた。その中で『SARA KAYAMA』と書かれたウェルカムボードを持つ長身の男を見つけ、歩み寄った。
「サラサン?」
「はい」
「ワタシ、マジーシ。ヨロシク」
名を名乗り、手を出す。沙良は握手に応じた。隣にはスカーフで目以外の顔を隠した女が立っている。
「サラさんね、私、マヌアです。はじめまして、どぞよろしくです」
「香山沙良です。よろしくお願いします」
握手を交わすと、さっそく歩き始める。ビザを手に入れると車に乗り込んだ。
「では、今からホテル行きます。私たち、ロビーで待ってますから、三十分で降りてきてください。それからギザに行きます」
「ギザ? ピラミッドね?」
「そです。それからランチして、メンフィスとサッカラ行きます。今日のスケジュールはそれだけです。明日は一日フリーです」
空港を離れ、車は次第にカイロの街に近づいていく。
「今日はけっこう空いてますね」
道路のことを言っているようだ。かなり飛ばしている。三十分も走ると周辺が一気に賑やかになった。
「サラさん、あれ見てください」
窓の外を指さす。
「わぁ! すごい! ここから見えるんだ」
フロントガラスにピラミッドが広がっている。
「そです。大きいですから。でも、実際はけっこう距離ありますね。行けば中に入ります。明後日は考古学博物館行きます。トゥトアンクアメンの黄金の仮面見ます。日本では、ツタンカーメンと言いますね」
「ツタンカーメンの黄金のマスク! 楽しみです」
「はい。ファラオのミイラもあります。エジプトはミイラの宝庫ですね。大切な遺産ですので、ぜひ見てください」
「マヌアさんはミイラが好きなんですか?」
振り返ったマヌアの顔がしかめられている。
「気持ち悪いです」
そう言って明るく笑った。
「ミイラは死体ですから、やはり気持ち悪いです。でもエジプトの宝です。ファラオは偉大です」
沙良も笑顔で返した。
「明日、見に行きます。ツタンカーメンの黄金のマスクは絶対見なきゃ」
「そです。ツタンカーメンはとても有名はファラオですから」
「暗殺されたんですよね?」
「長くそう言われていましたが、今は病死説や乗り物からの落下による怪我説が有力視されてます。死の原因は諸説あります。頭に傷があるので、殴打されたとも言われていますが、真相は謎です」
「ツタンカーメンの次のファラオは彼の子どもですか?」
「ツタンカーメンには息子はいませんでした。娘が二人いましたが幼い時に死んでます。それにツタンカーメンの時代は王女のほうが継承権を持ってました。王家の女性と結婚して、やっとファラオになれるのです。彼の死後、妻のアンケセナーメンはアイという神官と結婚しました。アイはアンケセナーメンの祖父に当たります。そうまでしてもファラオになりたかったんでしょ。だからツタンカーメンの次はアイです」
「へぇ。アイの次は?」
「ホルエムヘブです。第十八王朝はここまでです。ホルエムヘブの後はラムセス一世。彼が第十九王朝を興しました。エジプトの遺跡がいっぱい造られた時代です。ファラオの墓は大分部盗掘されてます。ですがツタンカーメンは盗掘されていません。だから素晴らしい至宝がいっぱい発見されました。考古学博物館にあります。きっとサラさん、感動します」
「そうですね! 楽しみです」
そうこう会話をしているうちに車はホテルに到着した。マヌアがフロントでチェックの手続きをするとポーターがやってきた。
「三十分で降りてきてください。私たち、そこのカフェにいますが、待ち合わせはここでいいです」
「わかりました」
ポーターについて部屋に向かう。部屋の使い方を簡単に聞くと、チップを渡した。それから服を着替え、準備する。終わるとまだ十分ぐらい時間があったが、ロビーに行くことにした。
エレベーターを降りるとマヌアたちが来た。カフェから見ていたのだろう。再び車に乗り込み、ギザへ。
巨大なピラミッドに沙良は驚きながら感動した。内部には一人で向かった。二時間ばかりかけて内部を見学し、再び戻ってくると写真を撮ろうと言われて移動。そこで三つのピラミッドを背景にして記念撮影をし、三人はレストランへ入った。
エジプト料理は思ったほど悪くなかった。
見た目は脂っこい感じを受けるが、食べてみるとそれほどではなく、沙良は出されたものをすべて平らげた。
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