43 / 328
教師1年目
体育祭へ
しおりを挟む
「おはようー」
「「おはようございます!」」
おぉ、元気のいいことで。
「そんな固くなるなよ。昨日も変わらないって言っただろ?」
そんなこと言っても全く改善されない様子。
やっぱ言わない方が良かったか?
「さて、今日は授業は一旦置いておいて、大切なお話がある」
ゴクリと唾をのむ皆。
「体育祭があるぞ」
アジャイブ魔術学校は魔術学校という名前がついてはいるが、日本で言う義務教育の類である数学とか、歴史とか体育とかも存在する。
そして生徒数が多いため学年を超えた関わりは少ないが、学年内の関わりをもたらす数少ない行事のうちの一つが体育祭である。
学年内でS級からF級まで存在するが、人数がピラミッドのような形になっているので各チームの人数をできるだけ均等にするためにSとF、AとE、BとDが組むことになる。
C級のチームは人数が少なくなる分、1人2回出場する場合が多い。
「それで、体育祭のジレンマは知っているな?」
簡単に言えば、組む級の実力が近ければ近いほど勝ちやすいのである。
平均値で勝負できるというのはあるが、一番はS級とA級がチームメイトを下に見て協力しないからだ。
魔術学校であるのだから体育祭にも魔法は用いられる。
しかし単純な体力勝負の競技だってあるし、団体競技も存在する。
そんな中で協力する姿勢がなければ順位が下がってしまうのは当然ではないだろうか。
「でも、先生たちの年は違いましたよね?」
「そりゃアンがいたからな」
いつも一緒にいるC級に息が合うのは当然だし、同じ平民同士のB級とD級が協力できるのも当然だ。
しかし、俺たちの代はS級にアンと言う一際カリスマのある存在がいたため、他のS級がF級をないがしろにするのを許さなかったのである。
F級は農民出身で子供の時から家業を手伝っている子たちも多いため、体力に関しては他よりも優れている。
そこにS級の魔法と戦略性が加われば最も優勝に近いのはこの組だと言える。
そこを考慮して学園長はこの組み合わせにしているはずなのだが、上手くはいっていない。
ちゃんとSとFの組が勝ったのは俺たちの代くらいじゃないだろうか。
「……先生は、勝てなかったんですか……?」
「ん?」
「……先生と、アン王女は別々ですよね……?」
なるほど。
アンが勝ってたってことは俺が負けてたってことだもんな。
「一応、7年間のうち2回は勝った。だが、他の5回は全てSとFの勝ちだったな」
未だに悔しいことの一つでもある。
「それで、お前たちにも頑張って欲しいなってことなんだよ。折角なんだから1位目指してくれってことだな。あぁ、もちろんF級を適当に扱ったりしたらどうなるかわかってるよな?」
「任せてください」
お、ウィルがいつになく乗り気だ。
「先生」
「ん?」
「これで1位になれたらご褒美を所望します」
「あ? あぁ、うん。俺に出来ることなら。みんなも考えてくれていいぞ」
幸いお金も余ってるし。
多少なりとも何か買えるだろう。
「では、皆さん頑張りますよ!」
「「はい!」」
すんごいやる気だ。
「というわけで、一緒に体育祭を戦うので挨拶に参りました」
放課後、先生に少しだけ早く終わらせてもらい、F級(クラス)の教室に来ました。
少しでも自分たちのことを知ってもらおうというわけですね。
ただ、こう見ると生徒数の違いが如実過ぎて少々気圧されますね。
凡そ1000人ほどでしょうか。
「ウィ、ウィル王女!? どうしてまたF級に……」
「先ほども申し上げました通り、顔合わせです。少々お時間よろしいですか、先生?」
「それは、まぁ、構いませんが……」
ここの先生もA級のはずなのですけど、自信がなさげですね。
先生になれているのだからもっと自信を持てばよろしいのに。
「皆さま、ごきげんよう。ウィル・シャラルと申します。今度行われる体育祭にて同じチームになるという事で一緒に戦って頂きたいと思い、ご挨拶に参りました。S級は私含めこの7人での参加になります。数は少ないですが、一生懸命頑張りますのでどうかよろしくお願いしますね」
シャロンさんはただでさえ体が小さいのにマロンさんの後ろに隠れているから皆様からちゃんと見えているか微妙なところですが、まぁいいでしょう。
「偽善者が……!」
「?」
「こ、こら!」
なにやら言い争いをしていますね。
「どうせお前らは俺たちをいいように使う気なんだろう! 優しく見せかけようったってそうはいかないぞ!」
「お、王女様なんだよ!? ダメだよ!」
どうやら騒いでいるのは男の子で、女の子がそれを止めようとしているようですね。
「何か?」
「お前ら貴族はそうやって俺たちをいいように使うんだ! 俺は騙されないぞ!」
「私は王族ですが?」
「え? あ、うーん……。いや、もっとだろ!?」
流れるようなツッコミ。
「今まであなたに何があったのかは申し訳ありませんが知りません。しかし、私たちの中に何かした者はいないはずです。よね?」
周りを見ると、スッと目をそらす者が1人。
「ゲイルさん?」
「ちょっと前に、多少貶すようなことを、言ったかもしれねぇ……」
何してるんですか。
「でも、彼のことではないですよね?」
「……とにかく、俺は協力しないからな! 先生、さようなら!」
彼はさっさと荷物をまとめて帰ってしまいました。
それを皮切りに私たちにいい感情を持っていないのでしょう。
3分の1ほどが帰ってしまいました。
「すみません、王女様……」
「いえいえ、あなたのせいではないですよ」
止めようとしてくれてた女の子が謝ってくれますが、彼女は悪くありません。
これは先が長そうですね……。
「「おはようございます!」」
おぉ、元気のいいことで。
「そんな固くなるなよ。昨日も変わらないって言っただろ?」
そんなこと言っても全く改善されない様子。
やっぱ言わない方が良かったか?
「さて、今日は授業は一旦置いておいて、大切なお話がある」
ゴクリと唾をのむ皆。
「体育祭があるぞ」
アジャイブ魔術学校は魔術学校という名前がついてはいるが、日本で言う義務教育の類である数学とか、歴史とか体育とかも存在する。
そして生徒数が多いため学年を超えた関わりは少ないが、学年内の関わりをもたらす数少ない行事のうちの一つが体育祭である。
学年内でS級からF級まで存在するが、人数がピラミッドのような形になっているので各チームの人数をできるだけ均等にするためにSとF、AとE、BとDが組むことになる。
C級のチームは人数が少なくなる分、1人2回出場する場合が多い。
「それで、体育祭のジレンマは知っているな?」
簡単に言えば、組む級の実力が近ければ近いほど勝ちやすいのである。
平均値で勝負できるというのはあるが、一番はS級とA級がチームメイトを下に見て協力しないからだ。
魔術学校であるのだから体育祭にも魔法は用いられる。
しかし単純な体力勝負の競技だってあるし、団体競技も存在する。
そんな中で協力する姿勢がなければ順位が下がってしまうのは当然ではないだろうか。
「でも、先生たちの年は違いましたよね?」
「そりゃアンがいたからな」
いつも一緒にいるC級に息が合うのは当然だし、同じ平民同士のB級とD級が協力できるのも当然だ。
しかし、俺たちの代はS級にアンと言う一際カリスマのある存在がいたため、他のS級がF級をないがしろにするのを許さなかったのである。
F級は農民出身で子供の時から家業を手伝っている子たちも多いため、体力に関しては他よりも優れている。
そこにS級の魔法と戦略性が加われば最も優勝に近いのはこの組だと言える。
そこを考慮して学園長はこの組み合わせにしているはずなのだが、上手くはいっていない。
ちゃんとSとFの組が勝ったのは俺たちの代くらいじゃないだろうか。
「……先生は、勝てなかったんですか……?」
「ん?」
「……先生と、アン王女は別々ですよね……?」
なるほど。
アンが勝ってたってことは俺が負けてたってことだもんな。
「一応、7年間のうち2回は勝った。だが、他の5回は全てSとFの勝ちだったな」
未だに悔しいことの一つでもある。
「それで、お前たちにも頑張って欲しいなってことなんだよ。折角なんだから1位目指してくれってことだな。あぁ、もちろんF級を適当に扱ったりしたらどうなるかわかってるよな?」
「任せてください」
お、ウィルがいつになく乗り気だ。
「先生」
「ん?」
「これで1位になれたらご褒美を所望します」
「あ? あぁ、うん。俺に出来ることなら。みんなも考えてくれていいぞ」
幸いお金も余ってるし。
多少なりとも何か買えるだろう。
「では、皆さん頑張りますよ!」
「「はい!」」
すんごいやる気だ。
「というわけで、一緒に体育祭を戦うので挨拶に参りました」
放課後、先生に少しだけ早く終わらせてもらい、F級(クラス)の教室に来ました。
少しでも自分たちのことを知ってもらおうというわけですね。
ただ、こう見ると生徒数の違いが如実過ぎて少々気圧されますね。
凡そ1000人ほどでしょうか。
「ウィ、ウィル王女!? どうしてまたF級に……」
「先ほども申し上げました通り、顔合わせです。少々お時間よろしいですか、先生?」
「それは、まぁ、構いませんが……」
ここの先生もA級のはずなのですけど、自信がなさげですね。
先生になれているのだからもっと自信を持てばよろしいのに。
「皆さま、ごきげんよう。ウィル・シャラルと申します。今度行われる体育祭にて同じチームになるという事で一緒に戦って頂きたいと思い、ご挨拶に参りました。S級は私含めこの7人での参加になります。数は少ないですが、一生懸命頑張りますのでどうかよろしくお願いしますね」
シャロンさんはただでさえ体が小さいのにマロンさんの後ろに隠れているから皆様からちゃんと見えているか微妙なところですが、まぁいいでしょう。
「偽善者が……!」
「?」
「こ、こら!」
なにやら言い争いをしていますね。
「どうせお前らは俺たちをいいように使う気なんだろう! 優しく見せかけようったってそうはいかないぞ!」
「お、王女様なんだよ!? ダメだよ!」
どうやら騒いでいるのは男の子で、女の子がそれを止めようとしているようですね。
「何か?」
「お前ら貴族はそうやって俺たちをいいように使うんだ! 俺は騙されないぞ!」
「私は王族ですが?」
「え? あ、うーん……。いや、もっとだろ!?」
流れるようなツッコミ。
「今まであなたに何があったのかは申し訳ありませんが知りません。しかし、私たちの中に何かした者はいないはずです。よね?」
周りを見ると、スッと目をそらす者が1人。
「ゲイルさん?」
「ちょっと前に、多少貶すようなことを、言ったかもしれねぇ……」
何してるんですか。
「でも、彼のことではないですよね?」
「……とにかく、俺は協力しないからな! 先生、さようなら!」
彼はさっさと荷物をまとめて帰ってしまいました。
それを皮切りに私たちにいい感情を持っていないのでしょう。
3分の1ほどが帰ってしまいました。
「すみません、王女様……」
「いえいえ、あなたのせいではないですよ」
止めようとしてくれてた女の子が謝ってくれますが、彼女は悪くありません。
これは先が長そうですね……。
0
あなたにおすすめの小説
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる