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教師1年目
体育祭当日 11:30
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「ということなので、会場周りの壁面。この辺りに知らない荷物があれば漏れなくチェックしてください」
「その程度であればお安い御用ですが。いいのですか?」
「何がです?」
「我々が手伝わなくても」
警備しているB級以下で構成された部隊の隊長の申し出をライヤは丁寧に断る。
「それで通常の警備が疎かになるほうが問題です。これほどの大イベントですからここで騒ぎを起こそうとする輩は計画的な奴らしかいないでしょう」
「……なるほど」
隊長はライヤの言葉から真意を察する。
裏で貴族が関わっているだろうから関わらない方がいいぞと。
「しかし、いくらライヤ殿でもおひとりで解決は難しいのでは?」
「俺がやれるのは現場を押さえるか、証拠をつかむところまでです。そこまでいけば警備隊が関与しても構いませんし、むしろそれで動かないなど言語道断ですからね」
要するに、率先して阻止しなければいいのだ。
ライヤに向けられた嫌がらせなのかは判然としないが、ここでは学園の教師というある意味そこらの貴族よりも強い独立した立場であることは有用だ。
「では、せめてミランダだけでも」
「彼女も部隊の一員でしょう。彼女が関われば部隊の関与につながります。お気持ちはありがたく」
話を終えたライヤはくるりと踵を返す。
騒動をどのタイミングで企んでいるのかわからない以上、常に警戒が必要だ。
「あ、あの」
「ん?」
部隊の決定である以上、文句は言わないだろうと思っていたミランダが声を上げたことに驚きを覚える隊長。
そんなことは知らないライヤは普通に振り返る。
「また、お仕事をご一緒させていただいてもよろしいでしょうか……」
「!!?」
「あぁ、また後で頼ることにもなるだろうし。俺としては軍とあまり関わりたくはないんだけどな……」
「個人的にでも構いませんので……」
「まぁ、そうならないことを祈るけどな」
ひらひらと手を振りながら空へと飛びあがるライヤと、固まっている隊長。
「是非にお待ちしております」
そしてライヤの背に深々とお辞儀をするミランダのその姿は貴族令嬢のそれであった。
『これで午前の部の個人種目は終了となります。生徒の皆さんは昼食休憩へと移ってください。次の種目は……』
会場にアナウンスが響く。
午前の部は予定通り終了した。
S・F級連合は予定していた点数とそれほど違わず前半戦を終えることが出来た。
「全く何をやっているんだっ!」
一方上手くいっていないA・E級連合では怒号が響いていた。
「何をやっているも何も、真剣に競技に取り組んでいるに決まっているでしょう?」
「そんなはずはあるか! ならなぜこんなにも点差が開く!」
「お言葉ですが。E級はあなたの言う基準の点数を取っているわ。お昼ごはんもあるから、あとはそっちでやってちょうだい」
E級のリーダー格の女子が離れると、他のクラスメイトも続々と家族の下へと散っていく。
後にはA級の生徒だけが残された。
「くそっ!」
上手くいかない現状に歯噛みするが解決策など出せるはずもない。
「お父様、お母様、アン姉さまも。見ていて下さりましたか?」
「えぇ、もちろんよ。いい感じじゃないかしら?」
「ライヤ先生を驚かせるために頑張っていますので」
はにかみながら答えるウィルに王妃は女の勘が働く。
だが、アンの前でする話でもないと思いとどまる。
「ウィル、ライヤは空中の警備でも頼まれているの?」
「? いいえ、聞いた話では会場周りの警備という事でしたが……」
「そ、ならいいわ」
そもそもライヤやアンのように簡単に空を飛ぶことなどできるはずもない。
学園の教師陣ですらそういった技術があると見せるために飛ぶのが精々であり、その難しさが故に戦争時の上空からの索敵があまり行われていない理由でもある。
「ライヤ先生がどうかしたのですか?」
「気にすることないわ。どうせいつものように厄介ごとに巻き込まれているだけだもの」
「それは気にした方がいいのでは……」
ライヤの身を案じるウィルにアンはため息をこぼす。
「ライヤがおかしいのはいつものことよ。自分の分は弁えているから手に負えないと思えばちゃんと頼りにくるわ」
「頼りに来ればアン姉さまはお助けになるのですね」
「当然でしょう?」
事も無げに言うが、当然であるはずもない。
今ではアンの家庭教師という肩書と学園の教師という職を持っているが、平民であるライヤの願いを第一王女が聞くなど。
「ま、まぁ、いいじゃないの。ライヤ君も優秀だからきっと何とかしてくれるわ。ほら、今日は私がお弁当を作ってきたの」
「「お母様が!?」」
立場上ほとんど機会はないが、料理が抜群に上手い王妃は他国から重要人物が来る際に厨房を任されるほどの腕前であった。
「ふふ、張り切っちゃった」
その王妃が張り切ったというのだから期待は否が応にも高まる。
「ほら、あなたも食べましょう?」
「んむ……」
王様もライヤの動きに不信感を抱きつつも王妃の作った弁当に手を付けるのであった。
「その程度であればお安い御用ですが。いいのですか?」
「何がです?」
「我々が手伝わなくても」
警備しているB級以下で構成された部隊の隊長の申し出をライヤは丁寧に断る。
「それで通常の警備が疎かになるほうが問題です。これほどの大イベントですからここで騒ぎを起こそうとする輩は計画的な奴らしかいないでしょう」
「……なるほど」
隊長はライヤの言葉から真意を察する。
裏で貴族が関わっているだろうから関わらない方がいいぞと。
「しかし、いくらライヤ殿でもおひとりで解決は難しいのでは?」
「俺がやれるのは現場を押さえるか、証拠をつかむところまでです。そこまでいけば警備隊が関与しても構いませんし、むしろそれで動かないなど言語道断ですからね」
要するに、率先して阻止しなければいいのだ。
ライヤに向けられた嫌がらせなのかは判然としないが、ここでは学園の教師というある意味そこらの貴族よりも強い独立した立場であることは有用だ。
「では、せめてミランダだけでも」
「彼女も部隊の一員でしょう。彼女が関われば部隊の関与につながります。お気持ちはありがたく」
話を終えたライヤはくるりと踵を返す。
騒動をどのタイミングで企んでいるのかわからない以上、常に警戒が必要だ。
「あ、あの」
「ん?」
部隊の決定である以上、文句は言わないだろうと思っていたミランダが声を上げたことに驚きを覚える隊長。
そんなことは知らないライヤは普通に振り返る。
「また、お仕事をご一緒させていただいてもよろしいでしょうか……」
「!!?」
「あぁ、また後で頼ることにもなるだろうし。俺としては軍とあまり関わりたくはないんだけどな……」
「個人的にでも構いませんので……」
「まぁ、そうならないことを祈るけどな」
ひらひらと手を振りながら空へと飛びあがるライヤと、固まっている隊長。
「是非にお待ちしております」
そしてライヤの背に深々とお辞儀をするミランダのその姿は貴族令嬢のそれであった。
『これで午前の部の個人種目は終了となります。生徒の皆さんは昼食休憩へと移ってください。次の種目は……』
会場にアナウンスが響く。
午前の部は予定通り終了した。
S・F級連合は予定していた点数とそれほど違わず前半戦を終えることが出来た。
「全く何をやっているんだっ!」
一方上手くいっていないA・E級連合では怒号が響いていた。
「何をやっているも何も、真剣に競技に取り組んでいるに決まっているでしょう?」
「そんなはずはあるか! ならなぜこんなにも点差が開く!」
「お言葉ですが。E級はあなたの言う基準の点数を取っているわ。お昼ごはんもあるから、あとはそっちでやってちょうだい」
E級のリーダー格の女子が離れると、他のクラスメイトも続々と家族の下へと散っていく。
後にはA級の生徒だけが残された。
「くそっ!」
上手くいかない現状に歯噛みするが解決策など出せるはずもない。
「お父様、お母様、アン姉さまも。見ていて下さりましたか?」
「えぇ、もちろんよ。いい感じじゃないかしら?」
「ライヤ先生を驚かせるために頑張っていますので」
はにかみながら答えるウィルに王妃は女の勘が働く。
だが、アンの前でする話でもないと思いとどまる。
「ウィル、ライヤは空中の警備でも頼まれているの?」
「? いいえ、聞いた話では会場周りの警備という事でしたが……」
「そ、ならいいわ」
そもそもライヤやアンのように簡単に空を飛ぶことなどできるはずもない。
学園の教師陣ですらそういった技術があると見せるために飛ぶのが精々であり、その難しさが故に戦争時の上空からの索敵があまり行われていない理由でもある。
「ライヤ先生がどうかしたのですか?」
「気にすることないわ。どうせいつものように厄介ごとに巻き込まれているだけだもの」
「それは気にした方がいいのでは……」
ライヤの身を案じるウィルにアンはため息をこぼす。
「ライヤがおかしいのはいつものことよ。自分の分は弁えているから手に負えないと思えばちゃんと頼りにくるわ」
「頼りに来ればアン姉さまはお助けになるのですね」
「当然でしょう?」
事も無げに言うが、当然であるはずもない。
今ではアンの家庭教師という肩書と学園の教師という職を持っているが、平民であるライヤの願いを第一王女が聞くなど。
「ま、まぁ、いいじゃないの。ライヤ君も優秀だからきっと何とかしてくれるわ。ほら、今日は私がお弁当を作ってきたの」
「「お母様が!?」」
立場上ほとんど機会はないが、料理が抜群に上手い王妃は他国から重要人物が来る際に厨房を任されるほどの腕前であった。
「ふふ、張り切っちゃった」
その王妃が張り切ったというのだから期待は否が応にも高まる。
「ほら、あなたも食べましょう?」
「んむ……」
王様もライヤの動きに不信感を抱きつつも王妃の作った弁当に手を付けるのであった。
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