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教師1年目
体育祭当日 13:05
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「なんか思ってたよりも多いな」
想像ではいても10人か20人ほどだと思っていた。
王女の誘拐なんてことを企てて実行する奴なんて相当限られると思っていたのだ。
だが、下で動いている人数は50人を軽く超えている。
全員が全員生徒たちの親ではないだろうが、これだけのことをしでかす覚悟がある者がこんなにもいるという事だ。
思っていたよりも闇が深いな。
「だが、間違っているのには違いないしな」
何か事情はあれ、間違っていることをしていることには違いない。
「そこらへんはアンに任せよう。俺は俺のやれることをするだけだ」
ひとまず、火薬を会場の周りに運んでいる奴らに目をつける。
何かを実行したわけではないが、会場の周りに得体のしれない荷物を運んでいる時点で止める理由にはなる。
「そこでなにをしてる?」
「ん? いやぁ……」
会場警備の部隊が遠いところから声をかける。
仮に何か起こってもあそこの部隊だったら対処してくれるだろうから。
「うちの体育祭中に会場周りに荷物を運び込むことがアウトなのはわかってるよな?」
「い、いや、俺たちはこれを運んでくれと頼まれただけでよぅ」
「なら頼んだ張本人のところに連れて行ってもらってもいいか? 教師として話をつけなくちゃいけない」
ライヤは今日も今日とて白ローブなので彼らもライヤが教師であることはわかっているだろう。
その上で、しらを切っている。
「後ろから襲おうとしてるやつ。今ならまだ未遂だぞ」
「!!」
ライヤの背後に回っていた男が持っているのは鍬。
先ほどの連中と比べればお粗末にもほどがある武器だ。
外側に重心が寄っていて、殺傷能力自体は十分とはいえ、戦闘用に作られたものではない。
「何が目的か教えてくれたら助かるんだけど、そういう訳にもいかないよな?」
「……火をつけろ!」
ライヤが確信をもって止めに来ていると判断した男たちは火薬に火を放つが、火種も無しにそう簡単に火はつかない。
「く、くそっ」
「やっぱり火薬の扱いもなれてないし、自分たちで用意したわけじゃなさそうだ」
「うわぁ!」
若干ずつ燃え広がっていた火薬の上にライヤによって空中から水がかけられる。
街中であれば用水路が張り巡らされていることもあり、水魔法の発動は容易い。
そして火薬。
火縄銃とかの時代にはなるが、しけているだけで使えなくなるような代物で、めっぽう水に弱い。
火の勢いを止めるのはそう難しいことではなかった。
「く、くそ」
「どうするんだ?」
「どうするって言っても……」
意思の統一も出来ていない。
鍬を武器代わりに持っていると言っても戦闘なんて経験せずに生きているのだから戦うという選択肢が出てこないのは当然だ。
というか、この場におけるリーダーとかもいないのか。
「お縄についてもらえれば俺としては嬉しいんだが?」
「う、うわあぁ!」
1人がどうすればいいかわからなくなってライヤに飛び掛かり、それを皮切りにその場にいた15人ほどがバラバラに襲い掛かる。
「面倒な……」
相手をすることはライヤにとって難しいことではない。
先ほど相手にした集団に比べれば武器も練度も格段に落ちる。
だが、自首してもらえないのであれば拘束するのに多少の手間はかかる。
武器が鍬というのも予想外だった。
元は各個人を拘束せずとも土魔法で集団ごと囲む予定だった。
魔法が使えなければ脱出は困難だ。
しかし、鍬は土を耕す専用の道具である。
この作戦とは壊滅的に相性が悪い。
バシッ!
「ぐっ、つる?」
周りの木々に巻き付いているつるを操って各個拘束していく。
「確か、有機物を魔法で操作するのは難易度が高いはずだ! そう簡単には出来ない!」
つるに絡めとられる仲間を見つつも冷静にライヤを狙う男たち。
少しは魔法に対する知識がある者もいたようだ。
その知識は間違っていない。
常人にとっては。
「残念。惜しいな」
ライヤを攻撃しようと近づいたことによってつるに絡めとられる男たち。
確かにライヤでもつるを扱うのは難しいことの中には入る。
しかし、ライヤの体に近づくという事は魔法の制御自体が簡単になるという事に他ならない。
時間稼ぎという意味ではライヤから距離をとっておくほうが彼らにとっては正解だった。
「周りに木があって助かった。次だな」
「お、おい! 俺たちは……!」
地面に転がされた男たちはライヤに抗議の声を上げる。
「いや、無力化した奴らに用はないだろ。じゃあな」
速攻で立ち去るライヤに男たちは悲痛な叫びをあげる。
「せめて誰かに預けて行ってくれぇ!」
「こっちだ、親父」
「よくやった。はは」
子供の誘導によって会場への潜入を果たした男たちは笑う。
彼らとしては正しいことをしているつもりである。
そんな彼らに笑うような余裕はないはずである。
だが、これから彼らがしでかすことを考えれば笑うしかなかった。
「S級はこのあと待機場所に戻ってくるはずだ。このタイミングが最もこちらに近い。ここを狙って……」
「何をするつもりかしらね?」
「!!」
カツンカツンと硬いブーツの足音が響く。
会場の歓声もこの廊下には少ししか届かない。
それでも小さな声は届かない程度にはうるさい。
しかし、侵入した彼らに近づく者の声は不思議とはっきり聞こえた。
「さぁ、話を聞きましょうか」
立ち止まり腕を組んだアンネ先生はそう高圧的に言うのだった。
想像ではいても10人か20人ほどだと思っていた。
王女の誘拐なんてことを企てて実行する奴なんて相当限られると思っていたのだ。
だが、下で動いている人数は50人を軽く超えている。
全員が全員生徒たちの親ではないだろうが、これだけのことをしでかす覚悟がある者がこんなにもいるという事だ。
思っていたよりも闇が深いな。
「だが、間違っているのには違いないしな」
何か事情はあれ、間違っていることをしていることには違いない。
「そこらへんはアンに任せよう。俺は俺のやれることをするだけだ」
ひとまず、火薬を会場の周りに運んでいる奴らに目をつける。
何かを実行したわけではないが、会場の周りに得体のしれない荷物を運んでいる時点で止める理由にはなる。
「そこでなにをしてる?」
「ん? いやぁ……」
会場警備の部隊が遠いところから声をかける。
仮に何か起こってもあそこの部隊だったら対処してくれるだろうから。
「うちの体育祭中に会場周りに荷物を運び込むことがアウトなのはわかってるよな?」
「い、いや、俺たちはこれを運んでくれと頼まれただけでよぅ」
「なら頼んだ張本人のところに連れて行ってもらってもいいか? 教師として話をつけなくちゃいけない」
ライヤは今日も今日とて白ローブなので彼らもライヤが教師であることはわかっているだろう。
その上で、しらを切っている。
「後ろから襲おうとしてるやつ。今ならまだ未遂だぞ」
「!!」
ライヤの背後に回っていた男が持っているのは鍬。
先ほどの連中と比べればお粗末にもほどがある武器だ。
外側に重心が寄っていて、殺傷能力自体は十分とはいえ、戦闘用に作られたものではない。
「何が目的か教えてくれたら助かるんだけど、そういう訳にもいかないよな?」
「……火をつけろ!」
ライヤが確信をもって止めに来ていると判断した男たちは火薬に火を放つが、火種も無しにそう簡単に火はつかない。
「く、くそっ」
「やっぱり火薬の扱いもなれてないし、自分たちで用意したわけじゃなさそうだ」
「うわぁ!」
若干ずつ燃え広がっていた火薬の上にライヤによって空中から水がかけられる。
街中であれば用水路が張り巡らされていることもあり、水魔法の発動は容易い。
そして火薬。
火縄銃とかの時代にはなるが、しけているだけで使えなくなるような代物で、めっぽう水に弱い。
火の勢いを止めるのはそう難しいことではなかった。
「く、くそ」
「どうするんだ?」
「どうするって言っても……」
意思の統一も出来ていない。
鍬を武器代わりに持っていると言っても戦闘なんて経験せずに生きているのだから戦うという選択肢が出てこないのは当然だ。
というか、この場におけるリーダーとかもいないのか。
「お縄についてもらえれば俺としては嬉しいんだが?」
「う、うわあぁ!」
1人がどうすればいいかわからなくなってライヤに飛び掛かり、それを皮切りにその場にいた15人ほどがバラバラに襲い掛かる。
「面倒な……」
相手をすることはライヤにとって難しいことではない。
先ほど相手にした集団に比べれば武器も練度も格段に落ちる。
だが、自首してもらえないのであれば拘束するのに多少の手間はかかる。
武器が鍬というのも予想外だった。
元は各個人を拘束せずとも土魔法で集団ごと囲む予定だった。
魔法が使えなければ脱出は困難だ。
しかし、鍬は土を耕す専用の道具である。
この作戦とは壊滅的に相性が悪い。
バシッ!
「ぐっ、つる?」
周りの木々に巻き付いているつるを操って各個拘束していく。
「確か、有機物を魔法で操作するのは難易度が高いはずだ! そう簡単には出来ない!」
つるに絡めとられる仲間を見つつも冷静にライヤを狙う男たち。
少しは魔法に対する知識がある者もいたようだ。
その知識は間違っていない。
常人にとっては。
「残念。惜しいな」
ライヤを攻撃しようと近づいたことによってつるに絡めとられる男たち。
確かにライヤでもつるを扱うのは難しいことの中には入る。
しかし、ライヤの体に近づくという事は魔法の制御自体が簡単になるという事に他ならない。
時間稼ぎという意味ではライヤから距離をとっておくほうが彼らにとっては正解だった。
「周りに木があって助かった。次だな」
「お、おい! 俺たちは……!」
地面に転がされた男たちはライヤに抗議の声を上げる。
「いや、無力化した奴らに用はないだろ。じゃあな」
速攻で立ち去るライヤに男たちは悲痛な叫びをあげる。
「せめて誰かに預けて行ってくれぇ!」
「こっちだ、親父」
「よくやった。はは」
子供の誘導によって会場への潜入を果たした男たちは笑う。
彼らとしては正しいことをしているつもりである。
そんな彼らに笑うような余裕はないはずである。
だが、これから彼らがしでかすことを考えれば笑うしかなかった。
「S級はこのあと待機場所に戻ってくるはずだ。このタイミングが最もこちらに近い。ここを狙って……」
「何をするつもりかしらね?」
「!!」
カツンカツンと硬いブーツの足音が響く。
会場の歓声もこの廊下には少ししか届かない。
それでも小さな声は届かない程度にはうるさい。
しかし、侵入した彼らに近づく者の声は不思議とはっきり聞こえた。
「さぁ、話を聞きましょうか」
立ち止まり腕を組んだアンネ先生はそう高圧的に言うのだった。
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