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教師1年目
聖女
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「あ、もちろん自分で名乗ってるわけじゃないですよ? 恥ずかしいですし……」
むしろ自分で名乗っているだけなら痛いやつで片付けられたのだが。
「……ライヤ、知ってる?」
「噂程度なら」
曰く、攻撃的な魔法がからっきしな代わりに回復系の魔法に対して異常なまでの適性があるとか。
死者蘇生とまではいかないが、植物状態の人間を通常の状態まで復帰させたことがあるらしい。
噂では辺境の出身で立場は弱いとは聞いていた。
「なんで気づかなかったんだ……!」
魔力制御のうまさに対して魔物から逃げまどっていたのがおかしいとはライヤも思っていたのだ。
だからこそ罠だと警戒したのだが、まさか本当に攻撃魔法が使えないとは。
「仕方ないわよ。私も今思い出したくらいだし。それで、ヨルは本当に魔法攻撃が出来ないの?」
「恥ずかしながら……。原因もわからずじまいでして……」
回復系の魔法は基本的に水魔法と光魔法の合成によって行われる。
だが、もちろんそれだけではない。
「火魔法は使えないのか?」
「一応、使えます。ほら、傷を塞いだりするのにも使えますし……」
いくら傷がすぐに塞がるとはいえ、2属性の合成魔法をそう乱発していては魔力が持たない。
「じゃあ、それを敵に向ければ攻撃できるんじゃないのか? 他にも水魔法で溺れさせたりとかさ」
「試したことはあるんですけど……。なぜか消えちゃうんですよねー」
「魔法の神秘だな」
人を傷つけることが出来ない代わりに治すことに関して人一倍適性がある。
そりゃ聖女と言われても仕方ないだろう。
「?」
愛くるしい見た目も相まってよほど祭り上げられたに違いない。
よくもまあこんなにまともな人間でいられたものだ。
プレッシャーに押しつぶされるか傲慢になってもおかしくなかっただろうに。
「あ、そうです! ここで朗報が!」
「お、なんだ?」
「先ほど言った通り、私回復魔法に優れていまして……」
「うん」
「ライヤさんがへにょっても即座に回復させることが出来ます!」
「何の話だ!?」
「何って……。ナニの……」
「やめとけ!」
何が朗報やねん。
「いや、ちょっと待て。冗談はマジで置いといて」
なぜか目を輝かせているアンとウィルを正気に引き戻す。
「俺たちが知ってるんだぞ? 他国にまで噂が届いているほどの人材って諸国連合に何人いるよ」
「「!」」
「そんな人物が王国に逃げてきている状況ってヤバくないか?」
考えていた戦争のための口実。
ヨルの存在が戦争の口実にすらなり得るのではないか。
真実はともかくとして、ヨルが王国にいることが問題になり得る。
王国に聖女を奪われたと言われたらどうにもならない。
「……ヨルは何で逃げてきたんだ?」
「え?」
「国境付近をうろついてたって話だけど、十中八九王国に亡命目的だろ? 領主の立場が弱いことから考えると、戦争になったら娘が使いつぶされることを危惧したのかな。ヨルだって何も聞かされずに放り出されたわけじゃないだろ?」
「……」
諸国連合もヨルの能力を頼りにしていたのではないだろうか。
戦争になって動員さえできれば戦力差を補って余りある能力を手に入れられていたはずなのだ。
もちろん、ヨルの亡命は王国にとってはプラスの話ではある。
「うちに来るという事はその能力を活かすことが前提になりますよ? 今ならまだ道に迷った人を助けたというだけで済ませることは出来ますが」
「……優しいですね」
王国でも戦争になればヨルに協力を仰ぐことになるだろう。
ヨルの能力が故郷の人たちを脅かすことになるのだ。
そんなことはアンも、もちろんライヤも望んでいないが。
それでも惜しいと思ってしまうほどにヨルの能力は魅力的だ。
「覚悟の上です。お父様にも別れは済ませてきました」
「もし、人質に取られても?」
「動揺は、正直すると思います。ですが、それで私がどうこうなることはありません」
「ふぅーん……」
ここまで聞けば、もはやライヤに主導権はない。
アンの采配を待つのみだ。
「そうね……」
考え込むアン。
「ライヤとの子作りを引き換えに協力してくれないかしら?」
「喜んで!」
「まだその話続いてたのか!?」
話が進まない。
むしろ自分で名乗っているだけなら痛いやつで片付けられたのだが。
「……ライヤ、知ってる?」
「噂程度なら」
曰く、攻撃的な魔法がからっきしな代わりに回復系の魔法に対して異常なまでの適性があるとか。
死者蘇生とまではいかないが、植物状態の人間を通常の状態まで復帰させたことがあるらしい。
噂では辺境の出身で立場は弱いとは聞いていた。
「なんで気づかなかったんだ……!」
魔力制御のうまさに対して魔物から逃げまどっていたのがおかしいとはライヤも思っていたのだ。
だからこそ罠だと警戒したのだが、まさか本当に攻撃魔法が使えないとは。
「仕方ないわよ。私も今思い出したくらいだし。それで、ヨルは本当に魔法攻撃が出来ないの?」
「恥ずかしながら……。原因もわからずじまいでして……」
回復系の魔法は基本的に水魔法と光魔法の合成によって行われる。
だが、もちろんそれだけではない。
「火魔法は使えないのか?」
「一応、使えます。ほら、傷を塞いだりするのにも使えますし……」
いくら傷がすぐに塞がるとはいえ、2属性の合成魔法をそう乱発していては魔力が持たない。
「じゃあ、それを敵に向ければ攻撃できるんじゃないのか? 他にも水魔法で溺れさせたりとかさ」
「試したことはあるんですけど……。なぜか消えちゃうんですよねー」
「魔法の神秘だな」
人を傷つけることが出来ない代わりに治すことに関して人一倍適性がある。
そりゃ聖女と言われても仕方ないだろう。
「?」
愛くるしい見た目も相まってよほど祭り上げられたに違いない。
よくもまあこんなにまともな人間でいられたものだ。
プレッシャーに押しつぶされるか傲慢になってもおかしくなかっただろうに。
「あ、そうです! ここで朗報が!」
「お、なんだ?」
「先ほど言った通り、私回復魔法に優れていまして……」
「うん」
「ライヤさんがへにょっても即座に回復させることが出来ます!」
「何の話だ!?」
「何って……。ナニの……」
「やめとけ!」
何が朗報やねん。
「いや、ちょっと待て。冗談はマジで置いといて」
なぜか目を輝かせているアンとウィルを正気に引き戻す。
「俺たちが知ってるんだぞ? 他国にまで噂が届いているほどの人材って諸国連合に何人いるよ」
「「!」」
「そんな人物が王国に逃げてきている状況ってヤバくないか?」
考えていた戦争のための口実。
ヨルの存在が戦争の口実にすらなり得るのではないか。
真実はともかくとして、ヨルが王国にいることが問題になり得る。
王国に聖女を奪われたと言われたらどうにもならない。
「……ヨルは何で逃げてきたんだ?」
「え?」
「国境付近をうろついてたって話だけど、十中八九王国に亡命目的だろ? 領主の立場が弱いことから考えると、戦争になったら娘が使いつぶされることを危惧したのかな。ヨルだって何も聞かされずに放り出されたわけじゃないだろ?」
「……」
諸国連合もヨルの能力を頼りにしていたのではないだろうか。
戦争になって動員さえできれば戦力差を補って余りある能力を手に入れられていたはずなのだ。
もちろん、ヨルの亡命は王国にとってはプラスの話ではある。
「うちに来るという事はその能力を活かすことが前提になりますよ? 今ならまだ道に迷った人を助けたというだけで済ませることは出来ますが」
「……優しいですね」
王国でも戦争になればヨルに協力を仰ぐことになるだろう。
ヨルの能力が故郷の人たちを脅かすことになるのだ。
そんなことはアンも、もちろんライヤも望んでいないが。
それでも惜しいと思ってしまうほどにヨルの能力は魅力的だ。
「覚悟の上です。お父様にも別れは済ませてきました」
「もし、人質に取られても?」
「動揺は、正直すると思います。ですが、それで私がどうこうなることはありません」
「ふぅーん……」
ここまで聞けば、もはやライヤに主導権はない。
アンの采配を待つのみだ。
「そうね……」
考え込むアン。
「ライヤとの子作りを引き換えに協力してくれないかしら?」
「喜んで!」
「まだその話続いてたのか!?」
話が進まない。
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