109 / 328
教師1年目
夏の終わり
しおりを挟む
「では、来学期も配置はそのままという事で異論はありませんね?」
夏休みも終わろうかという頃。
教職員が集まっての職員会議が行われていた。
適切ではないと思われた先生は周りの先生から交代を打診されることもあるのだが、今回のライヤは見逃されたらしい。
ライヤは反対意見の一つや二つ出るだろうと思っていたので拍子抜けというものだ。
「先生方はテスト範囲の差異が前学期で見られましたので、そのあたりのすり合わせの方はお願いいたします」
これは学園長からのライヤへの指示だ。
ライヤ本人は間違っていないと思っているとはいえ、学園において各クラスでテスト範囲が異なるというのはかなりの問題である。
前はぎりぎりで間に合わせたのだ。
「では、今日はお開きにしましょうか。あぁ、ライヤ先生は残ってください」
「……?」
各先生が荷物をまとめて出ていく中、ライヤは一人残るように指示された。
「なんでしょう、学園長」
「そう大したことじゃないわ。S級に転入生を迎えるかもしれないから、その報告だけしておこうかと思ったの」
「大したことじゃないですか?」
S級への転入など少なくともライヤは聞いたことがない。
才能と努力がある程度伴っていなければ入学すら難しいS級。
転入ともなればよりハードルは上がっているだろう。
その生徒は少なくともそのハードルを乗り越えられるほどだということだ。
「A級とかではないんですか?」
「私の見立てでは、まず間違いなくS級ね。詳しいことは決定してからまた伝えるわ。あなたにとってもいい話じゃない? 二人組を作りにくいって話じゃなかったかしら」
「確かにそんな話はしましたけど。こんな形で解決されるとは思ってないですよ」
ライヤの方針として、学んだことを他人に自分の言葉で説明できるようになったらその分野に関しては大丈夫だという考え方をしている。
クラス内でペアを組ませて互いに説明をさせ、違うと思った部分をすり合わせることによって知識の定着を図っているのだが、クラスの人数が7人のためどうしても1人余ってしまう。
相手にライヤがなったり、3人組になったりなど色々試してはいるが、やはり先生とでない方がいいし、時間がかかったりもする。
8人になるのは正直ありがたい。
「まだ決まっていないというのが気になりますけど、決定次第教えてくれるんですよね?」
「もちろんよ」
「じゃあ、まだ俺から聞くことは無いですね。情報共有はお願いしますよ」
まだただの転入生という事に疑いを持っていないライヤを見送りながら学園長は苦笑する。
「学園創立初めての事よ。ただの転入生のわけがないでしょう?」
「……先生!」
「おぉ! 25メートル泳げるようになったか!」
夏休み最後のプール授業。
練習の成果もあってシャロンが25メートルを泳ぎ切れるようになった。
どうもシャロンはクロールやバタフライなどの体力を消費する泳法は苦手なようで、平泳ぎと背泳ぎが得意なようだ。
最初は背泳ぎが簡単そうだから背泳ぎにさせようと思ったのだが、既に相当な質量を持っている胸部が水上にぷかぷかと浮かんでゲイルの視線を奪っていた。
もちろん、その質量のおかげで浮きやすかったのだろうが、余計な心配を増やさないためにライヤは平泳ぎをメインにすることを選択した。
ライヤとしては自らが視線を向けてしまっている立場で言うのもなんだが、少しシャロンは自分の胸をコンプレックスに感じているようだ。
元々人見知りが激しい質なので、気遣ってあげたいというのがライヤの考えだった。
「……先生。ありがとう」
しかし、感謝の気持ちを込めて抱き着いてくるシャロンの感触を意識せずにはいられない。
「(落ち着け俺……。教師としての矜持を忘れるな……!)」
必死である。
夏休みも終わろうかという頃。
教職員が集まっての職員会議が行われていた。
適切ではないと思われた先生は周りの先生から交代を打診されることもあるのだが、今回のライヤは見逃されたらしい。
ライヤは反対意見の一つや二つ出るだろうと思っていたので拍子抜けというものだ。
「先生方はテスト範囲の差異が前学期で見られましたので、そのあたりのすり合わせの方はお願いいたします」
これは学園長からのライヤへの指示だ。
ライヤ本人は間違っていないと思っているとはいえ、学園において各クラスでテスト範囲が異なるというのはかなりの問題である。
前はぎりぎりで間に合わせたのだ。
「では、今日はお開きにしましょうか。あぁ、ライヤ先生は残ってください」
「……?」
各先生が荷物をまとめて出ていく中、ライヤは一人残るように指示された。
「なんでしょう、学園長」
「そう大したことじゃないわ。S級に転入生を迎えるかもしれないから、その報告だけしておこうかと思ったの」
「大したことじゃないですか?」
S級への転入など少なくともライヤは聞いたことがない。
才能と努力がある程度伴っていなければ入学すら難しいS級。
転入ともなればよりハードルは上がっているだろう。
その生徒は少なくともそのハードルを乗り越えられるほどだということだ。
「A級とかではないんですか?」
「私の見立てでは、まず間違いなくS級ね。詳しいことは決定してからまた伝えるわ。あなたにとってもいい話じゃない? 二人組を作りにくいって話じゃなかったかしら」
「確かにそんな話はしましたけど。こんな形で解決されるとは思ってないですよ」
ライヤの方針として、学んだことを他人に自分の言葉で説明できるようになったらその分野に関しては大丈夫だという考え方をしている。
クラス内でペアを組ませて互いに説明をさせ、違うと思った部分をすり合わせることによって知識の定着を図っているのだが、クラスの人数が7人のためどうしても1人余ってしまう。
相手にライヤがなったり、3人組になったりなど色々試してはいるが、やはり先生とでない方がいいし、時間がかかったりもする。
8人になるのは正直ありがたい。
「まだ決まっていないというのが気になりますけど、決定次第教えてくれるんですよね?」
「もちろんよ」
「じゃあ、まだ俺から聞くことは無いですね。情報共有はお願いしますよ」
まだただの転入生という事に疑いを持っていないライヤを見送りながら学園長は苦笑する。
「学園創立初めての事よ。ただの転入生のわけがないでしょう?」
「……先生!」
「おぉ! 25メートル泳げるようになったか!」
夏休み最後のプール授業。
練習の成果もあってシャロンが25メートルを泳ぎ切れるようになった。
どうもシャロンはクロールやバタフライなどの体力を消費する泳法は苦手なようで、平泳ぎと背泳ぎが得意なようだ。
最初は背泳ぎが簡単そうだから背泳ぎにさせようと思ったのだが、既に相当な質量を持っている胸部が水上にぷかぷかと浮かんでゲイルの視線を奪っていた。
もちろん、その質量のおかげで浮きやすかったのだろうが、余計な心配を増やさないためにライヤは平泳ぎをメインにすることを選択した。
ライヤとしては自らが視線を向けてしまっている立場で言うのもなんだが、少しシャロンは自分の胸をコンプレックスに感じているようだ。
元々人見知りが激しい質なので、気遣ってあげたいというのがライヤの考えだった。
「……先生。ありがとう」
しかし、感謝の気持ちを込めて抱き着いてくるシャロンの感触を意識せずにはいられない。
「(落ち着け俺……。教師としての矜持を忘れるな……!)」
必死である。
0
あなたにおすすめの小説
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる