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教師1年目
課外授業へ
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「はい、ということで課外授業の日程が決まりましたー」
「どこへ行くんですか?」
「うちだそうだ」
「え?」
キョトンとする生徒たち。
「だから、うちだ」
「先生のご実家ですか? 確か、王家御用達の商家だったような……」
「それだ。その肩書も怪しいところではあるが。とにかく、俺の実家に課外授業に行くことになった」
理由はいくつかある。
まず、俺と関わりがあるという事で事情を抜きにしても協力を得やすいこと。
これは課外授業に関してもその警備に関しても共通している。
そして、それなりに整った商家であること。
王家も含めて貴族が初めて平民の世界を知るにはここからという事らしい。
ライヤとしては最初から畑仕事とかで大変さを知ってもらいたかったのだが、流石にそこまでのことをいきなりはさせられないとのこと。
「そんな感じだ。おやつの値段とかはまだ決まってないから聞くなよ? ただ、言っておく。平民のとこに行くんだから平民の金銭感覚に沿った値段を設定する。いつも食っているような上等なものを持っていけると思わないことだ」
各クラスの金銭感覚に合わせておやつの値段を決めていたらSとFでえげつない差が出るだろう。
そんなことを許してなるものか。
学生時代、同じ日に課外授業に行っていたアンが持っていたおやつを見て血の涙を流したライヤの経験がここに詰まっている。
「お昼ご飯はどうするのでしょう?」
「なんかうちの母親が張り切ってるらしい。平民の料理ですまんが、そこでとることになるだろう」
「先生のお母様の料理が食べられるんですか!?」
「お、おぅ?」
謎のゲイルの食いつき。
「その料理に先生が強くなった秘密が隠されているのでは……」
「それはない。安心しろ」
「しかし、幼少期の育ち方で成長の仕方が変わると文献で……」
「何も食事に限った話じゃないだろ。うちの料理は間違いなく一般的な平民のものだから変に勘ぐるな」
そんな秘訣があるのなら、学生時代からライヤが生徒用の寮に住んでなどいない。
「確かに幼少期の育ち方で変わってくるものはあるだろうな。俺にも心当たりがある」
ライヤに関しては幼少期どころか物心ついた段階で自らを高めだしていたのだ。
成長したいなら、始めるのは早ければ早いほどいいに決まっている。
「だが、それは与えられるものじゃないだろう。皆だって覚えがあるだろ? 好きな科目の勉強はより進むけど、嫌いな科目は全く進まないし頭にも入らない」
結局は心の持ちようだ。
「嫌いな科目でも詰め込むのが勉強なわけだが、より好きな形に近づける努力は出来る」
ライヤの暗記法がクイズ形式によるもののように。
「いや、何の話してんだ俺は。とにかく、日程すら決まっていないが行く場所は決まったので親御さんに伝えておいてくれ」
毎年のように「我が子をそんなところに……!」という苦情が絶えないらしい。
行く場所の格式というか、貴族的にセーフと判断できるかは今回ましな方だと思われるが、ライヤが関わっているとなると難色を示す親もいるのではないだろうか。
そういう親を説得する時間も必要なのだ。
そんな中、意気込んでいる生徒が1人。
「(先生のご両親にお会いできるなんてチャンスはそうそうありません! 是非とも覚えを良くしていただかなくては……!)」
当人へのアタックも忘れず、外堀を埋めるのにも余念がない。
恋する少女は無敵である。
予定が決まったとはいえ、そんなすぐにその日になるわけでもない。
今回に至っては日にちすら決まっていないが。
それまでも通常の授業は続いていくのだ。
「割り算をやっていこうか」
四則演算の中で最もややこしいのが割り算である。
ライヤ調べではあるが。
問題となるのはゼロの概念。
ゼロを割るとゼロだがゼロでは割れないという説明の難しさ。
数学ではそういうものだとして定義しているのだ、という説明で事足りるならいいのだが、そうもいかない。
「ゼロが成立しない理由だけど、俺は問題が成立するかどうかだと思ってる。例えば、3つのリンゴをゼロ人で分けるとする。1人何個でしょうという問題があったとする。すると、この問題文おかしいだろ? ゼロ人で分けてるのに1人幾つとかいう問題になるわけがない。つまり、ゼロで割るという概念は成り立たないわけだ」
説明するとしたらこのくらいだろうか。
というか、他に説明のしようがない。
「これで理解できたか?」
「わからないけど出来ないってことはわかりました!」
「うん、まぁ、そのデラロサの感覚が正しいと思う。実際、俺もそんな感じだし。ひとまず割り算を解くことに関しては出来ないってことだけわかっとけばいいから」
数学者にならない限りこの話を始めるのはタブーだと思う。
それほどまでに際限のない話なのだ。
「よし、じゃあ割り算を実践でやっていこうか」
今日も今日とて授業は続く。
「どこへ行くんですか?」
「うちだそうだ」
「え?」
キョトンとする生徒たち。
「だから、うちだ」
「先生のご実家ですか? 確か、王家御用達の商家だったような……」
「それだ。その肩書も怪しいところではあるが。とにかく、俺の実家に課外授業に行くことになった」
理由はいくつかある。
まず、俺と関わりがあるという事で事情を抜きにしても協力を得やすいこと。
これは課外授業に関してもその警備に関しても共通している。
そして、それなりに整った商家であること。
王家も含めて貴族が初めて平民の世界を知るにはここからという事らしい。
ライヤとしては最初から畑仕事とかで大変さを知ってもらいたかったのだが、流石にそこまでのことをいきなりはさせられないとのこと。
「そんな感じだ。おやつの値段とかはまだ決まってないから聞くなよ? ただ、言っておく。平民のとこに行くんだから平民の金銭感覚に沿った値段を設定する。いつも食っているような上等なものを持っていけると思わないことだ」
各クラスの金銭感覚に合わせておやつの値段を決めていたらSとFでえげつない差が出るだろう。
そんなことを許してなるものか。
学生時代、同じ日に課外授業に行っていたアンが持っていたおやつを見て血の涙を流したライヤの経験がここに詰まっている。
「お昼ご飯はどうするのでしょう?」
「なんかうちの母親が張り切ってるらしい。平民の料理ですまんが、そこでとることになるだろう」
「先生のお母様の料理が食べられるんですか!?」
「お、おぅ?」
謎のゲイルの食いつき。
「その料理に先生が強くなった秘密が隠されているのでは……」
「それはない。安心しろ」
「しかし、幼少期の育ち方で成長の仕方が変わると文献で……」
「何も食事に限った話じゃないだろ。うちの料理は間違いなく一般的な平民のものだから変に勘ぐるな」
そんな秘訣があるのなら、学生時代からライヤが生徒用の寮に住んでなどいない。
「確かに幼少期の育ち方で変わってくるものはあるだろうな。俺にも心当たりがある」
ライヤに関しては幼少期どころか物心ついた段階で自らを高めだしていたのだ。
成長したいなら、始めるのは早ければ早いほどいいに決まっている。
「だが、それは与えられるものじゃないだろう。皆だって覚えがあるだろ? 好きな科目の勉強はより進むけど、嫌いな科目は全く進まないし頭にも入らない」
結局は心の持ちようだ。
「嫌いな科目でも詰め込むのが勉強なわけだが、より好きな形に近づける努力は出来る」
ライヤの暗記法がクイズ形式によるもののように。
「いや、何の話してんだ俺は。とにかく、日程すら決まっていないが行く場所は決まったので親御さんに伝えておいてくれ」
毎年のように「我が子をそんなところに……!」という苦情が絶えないらしい。
行く場所の格式というか、貴族的にセーフと判断できるかは今回ましな方だと思われるが、ライヤが関わっているとなると難色を示す親もいるのではないだろうか。
そういう親を説得する時間も必要なのだ。
そんな中、意気込んでいる生徒が1人。
「(先生のご両親にお会いできるなんてチャンスはそうそうありません! 是非とも覚えを良くしていただかなくては……!)」
当人へのアタックも忘れず、外堀を埋めるのにも余念がない。
恋する少女は無敵である。
予定が決まったとはいえ、そんなすぐにその日になるわけでもない。
今回に至っては日にちすら決まっていないが。
それまでも通常の授業は続いていくのだ。
「割り算をやっていこうか」
四則演算の中で最もややこしいのが割り算である。
ライヤ調べではあるが。
問題となるのはゼロの概念。
ゼロを割るとゼロだがゼロでは割れないという説明の難しさ。
数学ではそういうものだとして定義しているのだ、という説明で事足りるならいいのだが、そうもいかない。
「ゼロが成立しない理由だけど、俺は問題が成立するかどうかだと思ってる。例えば、3つのリンゴをゼロ人で分けるとする。1人何個でしょうという問題があったとする。すると、この問題文おかしいだろ? ゼロ人で分けてるのに1人幾つとかいう問題になるわけがない。つまり、ゼロで割るという概念は成り立たないわけだ」
説明するとしたらこのくらいだろうか。
というか、他に説明のしようがない。
「これで理解できたか?」
「わからないけど出来ないってことはわかりました!」
「うん、まぁ、そのデラロサの感覚が正しいと思う。実際、俺もそんな感じだし。ひとまず割り算を解くことに関しては出来ないってことだけわかっとけばいいから」
数学者にならない限りこの話を始めるのはタブーだと思う。
それほどまでに際限のない話なのだ。
「よし、じゃあ割り算を実践でやっていこうか」
今日も今日とて授業は続く。
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